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第7章 市政運営のガイドライン

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 「第4章 行政体制の再整備」「第5章 公共公益施設・都市基盤整備の見直し」「第6章 市民サービスの再構築」という3つに整理して,行財政改革の方向性を示してきました。これを踏まえて,「第7章 市政運営のガイドライン」においては,中長期的に収支均衡を図る財政フレームをモデルとして設定し,このモデルを基準に市政運営のガイドラインを示すこととします。

1 収支均衡モデルの概要

 この行財政改革プランは,中長期的に収支改善を図って,財政再建団体転落を回避し,財政再建することを大前提としております。この場合,行政のムダを省いて,必要な市民サービスを充実・強化し,「活力ある暮らしやすいまちづくり」や「共創的市民福祉社会」を実現しようというのが,このプランの意味する行財政改革であり,必要な市民サービスを犠牲にして財政再建のための単なる歳出カットを進めようとしているのでは断じてありません。
 もっとも,この厳しい財政状況のなかで,必要なサービスを充実・強化させながら財政再建を果たすということは,決して容易なことではありません。豊かな財政構造を前提としてきた川崎市にとって,この行財政改革プランが相当厳しい内容になることは,間違いのないところですが,現時点の試算によれば,次のようなモデルケースにおいて,「財政再建」と「活力ある暮らしやすいまちづくり」,「共創的市民福祉社会」を両立させることは可能です。なお,このモデルは,第2章で示した今後5年間の収支見通しに基づいており,6年目,7年目の収支不足額については平成19年度と同額に設定しています。

  1. 地方財政再建促進特別措置法第2条の3の規定に準じて,7年後の平成21年度を目途に,収支均衡を図ることとします。ただし,この収支均衡を達成する前提として,土地売払収入や財政健全化債の活用,減債基金積立繰延など,いわゆる財源対策を現在と同じ300億円程度,毎年,講じ続けるものと仮定します。本来は,こうした財源対策をすぐにでも解消し,後年度世代への負担先送りをやめることが財政健全化にとっては望ましいことと考えられます。しかし,必要な市民サービスを確保するためには,必要不可欠な財源措置と位置づけられます。逆に言えば,予想を上回る景気回復や市税増収があった場合には,この財源対策を最優先で廃止することが相当であり,予想を上回る市税増収が単純に自由に使える一般財源の増加を意味するものでないことに留意する必要があります。
  2. 人件費は,平成21年度に平成14年度当初予算における一般会計ベースの指定都市平均構成比(17.5%)となるように削減することとします。人件費比率の高さは,指定都市における川崎市の課題の一つでしたが,これを行財政改革の基本的な考え方に基づいて,段階的に削減していこうというのが今回の行財政改革の骨子の一つです。長期的に行政サービスを維持するために必要な一定数を除いて,退職者不補充を原則にむこう3年間で1,000人程度のペースで削減しようというのが,現在の計画であり,これは他の指定都市にもみられない大変厳しいものとなっています。川崎市の人件費比率が高度成長期以前からも高めに推移していたことを考慮すれば,ここに示した人件費の削減は限界に近い数字と位置づけられます。行財政改革においては率先して内部改革を進めることが肝要ですが,現在の市民サービスを安定的に維持していくことを前提とすれば,これ以上の内部改革努力は,現実的には相当の困難が伴うものと推測されます。
  3. 投資的経費(公共公益施設・都市基盤整備等)については,一般財源にして平成14年度ベースで300億円程度(総事業費で860億円程度)であったものを,最終的に60億円程度さらに削減する計画となっています。進めなければならない行政課題は多いのですが,景気低迷が長期化し,財政逼迫状況にある現状においては,事業量を総体として抑制せざるをえないのは必至の情勢です。現在の投資的経費の約半分に相当する150億円程度は,道路・街路・河川や公園整備等のいわゆる恒常的な普通建設事業に充当しているものですが,仮にこの恒常的な普通建設事業を聖域扱いしますと,現在,計画されている拠点整備等の大規模事業の多くに財源調達のメドが立たなくなります。逆に,ある程度拠点整備等の大規模事業を実施していくためには,恒常的建設事業にもメスを入れて,費用対効果に基づいて優先順位をつけていくことが不可避だということが理解できます。さらに,仮にここに毎年,70から80億円程度の一般財源を要する地下鉄整備相当の大規模事業が新規着工されるとすれば,それが如何に他の事業を圧迫するかは,想像に難くないところです。超過課税などの増税による特定財源がなければ,他の必要な事業と並行させて地下鉄等の大規模事業を進めていくことは極めて厳しい状況です。
  4. その他,歳出のうち扶助費に関しては,「真に必要な人に,必要なサービス」を効果的・効率的に提供できる仕組みを構築するために,生活保護費等の法定事業を含めた総額で所要額を確保し,平成14年度で682億円の扶助費総額を平成21年度までには929億円まで増加させることを見込みます。ただし,これでも単独上乗せ型事業の一般財源部分に関しては,他の歳出項目なみの抑制を前提にした数字です。このことは,少子高齢社会において単独・上乗せ型事業を除く法定事業部分だけでも維持していくことが,いかに川崎市にとって大きな財政負担になるかということを雄弁に物語っています。まして扶助費に関して単独・上乗せ措置を維持していくためには,経常的に相当程度まとまった財源が必要です。なお,公債費や法定扶助費を除く他の歳出項目は,原則として平成15年度の5%程度を皮切りとして,各年度の収支見込額に対し,7%,9%,11%,13%,15%と毎年,削減率を高くし,最終の21年度には17%程度まで抑制することを前提としています。急激な見直しが市民生活に多大な影響を与えることを懸念し,段階的な見直しを仮定しています。

2 市政運営のガイドライン

 以上の試算モデルに基づいて,今後の市政運営のガイドラインとして,改めて次の各点を指摘することができます。

  1. 財政状況が極めて厳しいなかで,バランスよく市民サービスを充実・強化していくためには,一般財源ベースで政策領域毎に相当程度の絞込みが必要なこと
  2. こうした状況において新規施策を立案する際には,それに要する財源をスクラップアンドビルドにより調達することが必要なこと
  3. 上記モデルの設定を超えて事業を実施するに際しては,どこからその財源調達を図るか,その要求者が財源調達の説明責任を果たさなければならないこと
  4. ただし,人件費・扶助費・投資的経費は,ともに既に相当程度,削減を見込んでおり,市民サービスの充実・強化を前提にこれ以上の削減は困難であること
  5. こうしたなかで,新たに大規模公共事業に着工したり,まとまった単独・上乗せ型の保健福祉施策を維持することは,将来の住民負担の増加を意味すること

財政フレーム試算モデル

目標1 7年後(平成21年度)に従来手法を併用しながらも,収支が均衡すること
目標2 平成21年度の人件費の構成比が17.5%(平成14年指定都市平均)となること
目標3 人件費以外の全項目についても,段階的な見直しを図ること

一般財源ベース

※平成20年度以降の収支不足額は試算されていないため、平成19年度と同額(775億円)と仮定
※減債基金の状況の前年度末残高から当該年度の繰替運用額を引いた数字が年度末残高と一致しないのは、これ以外に減債基金のルール通りの積立て、取崩しがあるため
※全ての項目について、収支不足に対する効果額をプラス表示

 前項に掲げた目標を達成するために各項目の見直しを想定しましたが、その結果、平成21年度における性質別収支見込みは下表のとおりです。

事業費ベース
一般財源ベース

 公債費の見直し後の金額は、見直し前の数字から当該年度における満期一括積立の繰延額を減ずる一方、平成15年度以降に行う予定の満期一括積立繰延の後年度影響額を加えたものです。

 見直し後の投資的経費に係る一般財源ベースの金額は、見直しによる一般財源縮減額を減ずるとともに、財政健全化債を充当した結果の数字となっています。

 その他経費の見直し後の金額は、見直し前の数字から見直しの目標額並びに国保会計繰出金の未計上額及び下水道会計繰出金の抑制額を控除したものです。