第103回 かわさきデザインフォーラム 開催内容

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2014年9月3日

講演テーマ

『中小企業のためのブランディングデザイン』~「良さ」を伝える手段としてのブランド戦略~

講師

第103回かわさきデザインフォーラム講師

株式会社エイトブランディングデザイン代表
ブランディングデザイナー
西澤 明洋 氏

講演内容

今回のデザインフォーラムは、数々のヒット商品を手掛ける株式会社エイトブランディングデザイン代表でブランディングデザイナーの西澤 明洋氏を講師に招き、中小企業がブランド力を高めることの意義、ブランディングデザインのポイントを講演していただき、48名の来場があった。

講演では、まず西澤氏の自己紹介から過去の実績例が紹介された。仕事を受ける際はwebやパッケージデザインのみでは受けず、CIや商品ブランドや店舗、サービスなど、ブランドユニットの単位で受けるという。実績例としては、クラフトビールであるCOEDOビール、キリン生茶のリニューアル2009-2012、和カフェのnana's green tea等。

それから、ブランディングデザインの説明があった。「ブランディングとは、ある商品、サービス、もしくは企業の全体としてのイメージにある一定の方向を作り出すこと」というのが西澤氏の定義。「ブランディング=差別化」と考えても差支えない、とも。他社とはどう違うのか、という部分をお客様に正しく伝えることがブランディングである、という。

マーケティングと混同されやすいが、西澤氏いわく「誤解を恐れずに言えば、マーケティングは『売るゲーム』。一方で、ブランディングは『伝言ゲーム』。伝えることが目的であって、良く伝われば売れるかもしれないが、それは目的ではない」とのこと。

ブランディングに必要なものは、
1、トップの熱い思い
2、良いモノ
3、プロフェッショナルチーム

2は、市場で他社製品と比較して80点を超えていないと意味がない、とのこと。3は、コミュニケーション(広告や広報、販促等)のチームのこと。大企業でもここは弱いことが多く、外部を使ってプロのチームを編成し高めなければいけない、という。

また、ブランディングの手法として西澤氏が掲げる「フォーカスRPCD」という手法が説明された。その内容は以下の通り。 これは言ってみれば、PDCAのデザイン版。

フォーカス。 一点に集中する、というのが最も重要で、ブランディングにおいて「何でもできる」「あれもこれも」というのは価値がない。これは伝言ゲームに例えるとわかりやすい。最初の人が伝える文言を20個言ったら伝わらない。

Rはリサーチ。 市場と自社の現状把握。他社のコンセプトを確認。注意したいのは、リサーチを一生懸命やると他社の良いところが見えてそれをキャッチアップしたくなるが、それは最悪のこと。

Pはプラン。 プランはブランドの市場でのポジションを決めること。自社の良いところ探しをし、他社との違うところ探しをして、良いところでかつ違うところを見つける。

Cはコンセプト。 考え方を『言葉として』集約する。ブランドコンセプトは単語1、2個。その補足として500字程度で説明する。コンセプトは判断基準となり、特に利益や金額の面で迷った際に基準にすればぶれない。

Dはデザイン。 ブランドコンセプトの具現化。パッと見て、『それ』だと認知させられれば、伝言ゲームは加速する。そのためにデザインコンセプトを定義してトータルにデザインする必要がある。 また、変わらない価値を維持するため、数年ごとにメンテナンスする必要がある。

次に、「釜浅商店」の実例が紹介された。 店舗什器などの問屋街である合羽橋に店を構える、老舗の金物屋である同社。最初webサイトの依頼だったが、ニーズはwebサイトではなく、「合羽橋に人を呼びたい」と判明。 リサーチしてみると、合羽橋全体が衰退していて、最盛期の半分の人しか来なくなっている。一方で、観光客は多かった。

そこでプランとしては、まず合羽橋に人を呼び込むことを目的とした。事業としては、BtoBからBtoB+Cへ。合羽橋はかつては卸問屋街として重宝されたが、今はホームセンターやWeb通販に代わられていた。 また、もうひとつ、「人」にもフォーカスする。仕入れる人と、製品を作っている職人さん。

コンセプトは、「良理道具」とした。ブランドステイトメントは「良い道具には良い「理」(コトワリ)があります。(以下略)」と始まる。料理道具は知恵の積み重ねでなりたっている。そうした背景まで踏まえて商品を選んでいくということを示している。

ここまで決まって初めてデザインの段階に入る。ロゴマークは釜の蓋をモチーフにした。このロゴで包材を作成した。他の店では商品を購入すると新聞紙でくるんで渡される。BtoBだけであればこれでよいが、BtoCとしてはこれではよくないので高級感のある包みを作った。

ショップも一般のお客様向けに作り替えた。まず外観について、2つの店の両店に大きな黒い暖簾を飾った。店名も大きく印刷してあるため、低予算で他の店との明確な差別化ができた。インテリア面では、他店でも見られる背の高い棚をやめ、釜をモチーフにしたオリジナルの什器を作った。これで見通しがよくなって入りやすくなり、また、商品のグループ分けが一目でわかる。

包丁販売の店舗では接客スペースを増やした。釜浅商店では包丁を販売する際、同じ製品の在庫を全部並べて、一本一本握り心地や重さを確かめて選ばせてくれる。全てが手作りなので僅かな差があり、プロに自分にあったものを選んでほしいという配慮からだ。これ自体が接客の技術だから、他のお客様にも伝わるように広くスペースをとった。

また、2Fをギャラリースペースにした。各地方から職人さんが来てレクチャーし、実演販売をする。ここはとても好評で、また、合羽橋に来る理由を増やすことにも成功している。

POPでは、職人さんに焦点を当てている。例えばこの石のかまどは20万円するが、職人さんが1ヶ月間かけて、手作業で彫っている。この事実を知ると価値がわかる。こうした背景を写真で伝えるPOPを作成している。

そしてここまできてようやくWEBサイトに至る。WEBは伝言ゲームを拡散させるためのツール。もともとの根っこがしっかりしていなければ意味がない。

講演後の質疑応答でPRについて説明があった。釜浅商店では初年度に130のメディアが取り上げてくれたという。ポイントは、まずPRのプロに任せたこと。商店側では、写真を撮る際にすぐには使用しないカットも大量にストックしておいた。取材してもらった際にその写真のストックを貸し出すと、記者もそれを使ってくれるのでこちらの意図が正しく伝わる。PR用のリリース文章も用意した。ライターが参考にしてくれるので、よりこちらの意図と正しい記事が作成されやすい、とのこと。

終了後には交流会も実施され、多くの参加者が講師に直接質問をしたり、参加者同士で情報交換をしたりするなど、大いに盛り上がった。

開催日・会場

2014(平成26)年9月3日
川崎市産業振興会館

お問い合わせ先

経済労働局 次世代産業推進室
電話:044-200-0168
ファクス:044-200-3920
メールアドレス:28sangyo1@city.kawasaki.jp
住所:〒210-0007 川崎市川崎区駅前本町11-2 川崎フロンティアビル10階