第100回 かわさきデザインフォーラム 開催内容

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2013年11月23日

講演テーマ

『手工芸Xデザインでヒットをねらう』~江戸切子「蓋ちょこ」他、具体事例より~

講師

第100回かわさきデザインフォーラム講師

有限会社 スタイルY2インターナショナル代表
有井 ゆま 氏

講演内容

プロデュースを担当する姉の有井ゆま氏とデザインを担当する妹の有井ユカ氏、姉妹2人のユニット「スタイルY2」(以降Y2)。老舗ガラスメーカー「廣田硝子」から依頼を受けて企画した「江戸切子 蓋ちょこ」は、 2万円という高額ながら、発売から2年半経つ今でも2ヶ月待ちという大ヒット商品となっている。
今回のフォーラムは「かわさきガラスアートフェスタ」との共同開催で、上記の製品の他にも多数の企画商品を大ヒットにつなげた同社から有井ゆま氏を講師に招き、63名の参加者に講演をしていただいた。

最初にまず、Y2の創業からの流れについてお話しがあった。
Y2を立ち上げる前、有井ゆま氏は営業職を4年ほど勤務、「これを一生続けるのか?」という疑問が浮かび退職。当時妹のユカ氏がイタリアに留学していたため、そこに居候させてもらい生活したとのこと。 そこで日本風の名前を付けたインドネシア製品が高い値段で販売されているのを見て、ビジネスチャンスを感じ、また同じ頃にイタリアのテレビ番組で日本の竹細工職人の様子が流れその仕事ぶりに感動し、こういう人たちの周りで仕事を手伝いたい、と感じたことがキッカケとなったという。

帰国して貿易の仕事を探し、輸出関連の業務を派遣社員として経験。1年間働きながら勉強し、その後イギリスに留学してインテリアの勉強。その間に、日本で買ってきた漆器やガラス製品をトランクに入れてショップを直接周り、行商したという。予想外に売れて手応えを感じ、学校を卒業して日本に帰国。

日本で本格的にビジネスとして輸出を開始。最初は数個程度の小ロットの注文しか入らず焦っていたが、徐々に継続的に仕事が得られるようになり、また、ホテルやレストラン用に、「〇〇というインテリアコンセプトで、こういうアイテム群がほしい」という仕事が入るようになったそうだ。そのような依頼を受けたら、そのコンセプトに合いそうなメーカー・ブランドをリストアップしカタログを片っ端から見て、皿なら皿、カップならカップで合う商品を探すというのが業務で、寝ずにカタログを見まくって、やっと見つけ出した、ということも多々あった、という。

そのうちに、「これでは小さい」「ここに取っ手が欲しい」などの要望が出始め、それらの要望に合わせた商品を企画する業務を受注。誰かに依頼しなくてはと考えたところ、妹のユカ氏がデザインを学んでいたため一緒に仕事をするようになったとのこと。企画業務は、職人さんに前金で依頼していたため、職人さんも信用して仕事をしてくれたという。
そして、それらの職人さんから「来年日本で売る製品を企画してよ」という依頼が入り、いまではそのような企画の仕事も増えて半分ぐらいがそうした業務となっているとのこと。

次に、各製品のプロデュース経緯や気を付けている点をお話しいただいた。まず、冒頭にもあった廣田硝子の江戸切子「蓋ちょこ」について。これについては、まず最初に廣田硝子の会長から「江戸切子を使った蓋物を作りたい。例えば菓子受け。贈答用で需要がある」という依頼を受けた、という。 Y2のこれまでの仕事は自分たちから何かを作りたいという企画を持ち込んだことは無く、全てがこの例のように依頼元から「お題」をいただいて、それに対して企画を考える、というスタイルとのこと。

今回の「お題」について、まず、「今までの製品の競合を作ることは避けたい」と考えたという。江戸切子の有井氏のイメージは「かっこいいオジサマがロックでお酒を飲むグラス」。だからそれに対して、
(1)雑貨っぽく、20代の女の子が「何これ、かわいー。でも高いー」と言うような商品を目指す。彼女たちがすぐに買ってくれなくても構わない。10年後でもいい。
(2)デパートの外商さんに売ってもらえる製品にしたい。
この2つのテーマで考えはじめたとのこと。

第100回かわさきデザインフォーラム江戸切子

そして最終的にはこのような形になった。会長の「お題」である「蓋物」からは離れず、蓋は新たな型を起こし、代わりに下の部分は既存の型を使用。蓋はかなり大きめで、このおちょこ部分にかぶせてもグラグラするが、そのゆるさがガラス独特の緊張感を和らげているとのこと。また、この製品は蓋がついているので1個で桐箱に納めて販売することができることがポイントで、それまでおちょこは2個1組でなければ贈答用としては売れなかったとのこと。

製品企画で重要なポイントは、どうやって売るか、の明確なビジョンがあること、という。この例でいえば、雑貨屋やインテリアショップでも販売されること、及び前述のデパートの外商さんが販売してくれること、この2点が販売のビジョンだったそうだ。

ここで、Y2が仕事をする際にクライアントにも話し、自分たち自身にも心掛けている点の紹介があった。全10項目の中からいくつかを以下にピックアップした。()内は有井氏解説。

・自分の好きなこと、好きなテイストをわかることが大事ですよね。
(こちらが面白いことを思いついても、相手が好きなことと重ならなければうまくいかない。買い付けもモノづくりも、相手の話を良く聞いて好きなことを伺う。モノづくりに関係無くても、例えば城が好きとか、野球が好きとか、何でもよい。同じものに対して同じ角度から見ることが大事。) (依頼してくださる社長さんには、「商品企画は究極の公私混同でいい」とお話している。社長が好きなものを目指し、途中でいろいろなものを削っていかなければならないので、自分が興味あることでなければ続かない、という経験から。)

・リスクはできるだけ回避。片手間から始めましょう。
(1個何かを作って、周りを見渡して良く理解してから、全体に手を付ける。いきなり全体像を追ってしまうとうまくいかない。)

・「デザインが良ければ売れるだろう。外から来た人が解決してくれるだろう」は時代遅れです。
(経験から、そして自戒も込めて。当事者であるクライアント自身がいろいろな苦労をして作ったものしか売れない。)

そしてこの後は、各商品の企画コンセプトを商品写真を交えながらお話しいただいた。

最後に、「まだ若輩者の私がお教えするなんておこがましいが、手掛けた商品全てが販売され続けている、というありがたい事実を踏まえて」商品企画のポイントを以下のようにお話しされた。

「売り場での商品を試験に例えると、1次試験は「認知される」こと。ここでは、キャッチーで説得力のあるテーマに絞ることが重要。単純、シンプル。一瞬でわかることが重要。例えば『豆まめ皿 うさぎ・ねこ』は、漆器売り場で「え、うさぎ?」と二度見してもらえる。

2次試験は「選ばれる」こと。何か気になる、というのが重要。また、1個だけ光っていてもなかなか選ばれない。群になって販売し、楽しい選択肢があると、お客様も選びたくなる。例えば色が3種類ある等。

そして最終試験は「売れる」こと。ここは品質と値段と魅力のバランスが重要であるため、物理的な努力が必要。また、パッケージもとても重要。そして晴れて、お買い上げとなる。」
これをまとめとして、講演を締めくくった。

モノを作る側からではなく、売る立場から出発された有井氏の講演は、作る側中心の来場者にとって非常に有意義な内容だった。

開催日・会場

2013(平成25)年11月23日
川崎市産業振興会館

お問い合わせ先

経済労働局 次世代産業推進室
電話:044-200-0168
ファクス:044-200-3920
メールアドレス:28sangyo1@city.kawasaki.jp
住所:〒210-0007 川崎市川崎区駅前本町11-2 川崎フロンティアビル10階