第107回 かわさきデザインフォーラム 開催内容

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2016年1月25日

講演テーマ

「社会を創るデザイン2015」 ~ 今ある技術が未来を彩る ~

講師

第107回かわさきデザインフォーラム講師須藤シンジ氏

NPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事
有限会社フジヤマストア/ネクスタイド・エヴォリューション 代表

講演内容

今回のフォーラムでは今年2月のフォーラムに続き、マイノリティが当たり前に混ざり合う社会を目指して幅広い活動をしているNPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事で有限会社フジヤマストア/ネクスタイド・エヴォリューション 代表でもある須藤 シンジ氏を講師に招いてご講演いただき、50名の来場があった。

 

講演は、須藤氏の自己紹介から始まった。3人の息子がおり、現在20歳になる次男が重度の脳性まひで生まれたため、その時から福祉サービスを受給する当事者の側になったとのこと。そして、次男を育てる中で、この分野の地味さ、暗さ、どこか閉じたイメージを感じたそうだ。海外の国々を見た時、他国との違いや、大きな違和感を感じたとのこと。

 

当時、日本では街で障害者を見かけなかったという。「ユニバーサルデザイン」や「バリアフリー」が盛んに叫ばれる中、建物や道路、駅の段差等のハード面を改良する工事が多く行われていた。しかし本当のバリアは、建物のようなハードよりも、人々の「心の中」にあると思ったという。お金をかけて段差を平らにするよりも、街中で、困った人がいたら、その場に居合わせた人々が気軽に声を掛け合う。「健常者と障害者が自然に混ざり合う」ことが当たり前な社会を目指したいと活動をスタートしたそうだ。

日本では障害者は特殊学級とか特別支援学級という名称で小学校の時からクラスがわかれているが、OECD加盟国の中でこうしたことをしている国は日本だけとのこと。これにより、「健常者と障害者が混ざり合う機会」が少ないので、お互いに慣れていないため「心のバリア(障壁)」があるのだという。

 

 

ここからピープルデザイン研究所の活動の話になる。4つの主な活動領域「モノづくり」、「コトづくり」、「ヒトづくり」、「シゴトづくり」のうち、まずは「モノづくり」の説明として、最初に作ったこのスニーカーが例に出された。
シューズ

当時、須藤氏の次男は一生歩けないと医者から言われていたが、その後、奇跡的に歩けるようになった。しかし専用の靴を装具士さんに作ってもらう必要があり、両方で保険適用後でも数万円もかかったという。さらに、成長にあわせてサイズが変わるので、年に3回ぐらいは買い変える必要があったとのこと。装具士さんには素直に感謝しているが、出来た靴は、正直に言って見栄えが大変悪地味だったそうだ。カッコいい、流行のシューズを息子にも履かせたいと思い、アシックスとのコラボーレーションでこのようなスニーカーを作ることにしたという。

 

こちらは、かかと部分がスキーブーツの様に大きく開くため、そこから足を出し入れして、シューレースを結んだりほどいたりすること無く履くことができる。製作に当たって、デザインは世界的なトップクリエーターに依頼して、ファッションに敏感な若者達が欲しいと思うようなかっこいいデザインにしてもらったそうだ。このスニーカーは国内外の限られた店舗だけでの限定販売であったが、多数の雑誌等で紹介され、わずか2週間で5000足が完売したとのこと。当時、障害の方からもほしい、という問い合わせがあったが、「人気のスニーカーだから店頭に並ばなければ買えないので、お店まで買いに行ってください」と伝えたそうだ。そうすることで、冒頭で話した街中で「混ざり合う」状態が実現する、と考えたからだという。

 

このスニーカー以外にも、ファッションフリークな若者達が欲しがる様な、多くの製品を企画、販売しているとのこと。またこれらを「媒体」とし、商品一つ一つにはメッセージカードをつけて、これから父となり、母となる若い世代の人々に、「みんな違っていいよね」、「混ざり合うことが当たり前」という新しい価値観をメッセ―ジしているそうだ。

 

次に、活動の中で「コトづくり」についての話があった。まず講師から受講者に対して以下のような質問と解説があった。「この中で、姓が鈴木さん、田中さん、高橋さん、佐藤さん、渡辺さんの方はいますか?(会場の1割程度が挙手)友達にそれらの姓の人がいる、という方はいますか?(会場全員が手を挙手)。それでは、障害者の友達がいる、という方はいますか?(数人が挙手)また、LGBTの友人がいる、という方は?(数人が挙手)。最後の2つの質問はいつもはほとんどいないんですけどね、皆様はさすがに意識が高い。実は、最初の姓の人口合計が約6%。一方で、障害者の数も約780万人で約6%、ほぼ同数なんです。LGBTの人も概ね同数と言われています。この友達がいる数を、最初の質問の数と同数にしたい、そのための活動をしています。現状ではこれほど、日本は分けられてしまっている、ということです。」

 

こうしたことを「にこやかに」伝えるために、「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展(通称 超福祉展)」を2014年から企画しており、2015年は11月10日〜16日に、その第2回目が開催されたとのこと。開催を知らせるポスターは東急電鉄のタイアップで、渋谷駅周辺に数多く貼られた。(会場では以下URLの最上部 のポスター画像が投影された。http://www.peopledesign.or.jp/fukushi/ ) ポスターには、渋谷区長や車いすの方、かっこいい義足や義手を開発している人々に交じって、右端にはベビーカーと子育て中のお母さんが載っている。子育て中の母親も、「期間限定のハンディキャッパー」と捉えているからだそうだ。

 

(そのイベントの写真をスライドショーで流しながら説明)

「世界各地からいろいろな企業が出展してくれて、例えばこれはヤマハが出展した、ホイールがパーカッションになっている車いす、これは折り畳み式のおしゃれな電動車イスで、渋谷のモンベルやSHIPS、BEAMSとコラボして、秋冬の最新ファッションと共に店頭にディスプレイしてもらいました。渋谷の街中を最新モビリティで巡る、体験ツアーもやりました。」

(以降、数々のおしゃれな出展品の説明が続いた)

 

このイベントは大変注目され、新聞、雑誌など非常に多くのメディアに掲載。媒体費用換算では約1億5千万円にもなったとのこと。会場となったヒカリエ8/(ハチ)の来場者数は述べ32,000人で、前回に引き続き、同会場の割いた入場客数を大幅に更新したそうだ。

 

また会場では、スズキの高齢者向けの「セニアカー」が展示されていたので、有名なグラフィックアーティストにペイントを描いてもらったところ、おじいさんに連れられたその孫と思われる子供が、「こっちがほしい」とペイントした方を指さして言っていたそうだ。これは小売りの視点として重要なことであり、以下の図のように説明できる、という。

スライド画像

「日本では、世界最大規模の国際福祉機器展が毎年行われているが、ここに出展している製品で強調されているのは「保険適用かどうか」という点。これは、ユーザーの視点が見えてこず、BtoBの側面ばかりが強調されてしまっている。図の左側、「OFF STAGE」に位置するハンディキャッパー達の課題やニーズを、テクノロジーやデザイン等のカルチャーの力で解決し、イノベーションまで昇華させ、健常者が位置する「ON STAGE」側にもっていく。つまりは、従来の厚生労働省の領域から、経済産業省の領域へシフトさせる。障害者や高齢者を『患者』として見るのではなく、『顧客』として見た時、そこは新たな市場となる。そして、”売れる製品”をメーカーが認識しさえすれば、多数のメーカーが参入してコストも下がり、結果としてそれをもともと必要としていた人がおしゃれで機能的なものを、社会保障費を使うことなく、身近な場所で手に入れることができるようになる。」このような説明があった。

 

次に、来年の活動の一つが紹介された。背景として、須藤氏の叔父が認知症を患い、その介護で親戚3家族が疲弊した経験があり、そこから「認知症をコアにした日蘭社会課題解決型国際交流プロジェクト」というものを計画しているとのこと。すでに特に海外では注目されており、日本でもいくつかの企業が協賛予定だという。認知症問題解決のためのアイディアを出すのは各国の学生たちで、日本からは専修大学ネットワーク情報学部の3,4年生と、慶応義塾大学大学院博士課程リーディングプログラムPLGSの院生、オランダからはTU Delft/デルフト工科大学の学生が参加する。成果として来年の超福祉展にて発表を考えているとのこと。

 

認知症は国内では2012年の時点で約460万人で、2025年には700万人なると言われていて、無知がゆえに不安視されすぎているという。不安として憂慮すべき点と、そこは大丈夫という点を切り分けて考えなければいけない、との話があった。

 

最後に、世界の学生はここまで進んでいる、という例として、須藤氏も非常勤で教えている、前述のオランダのTU Delft/デルフト工科大学の学生が作った卒業論文代わりの「動画」作品が流された。(動画は以下URL参照)

https://www.youtube.com/watch?v=y-rEI4bezWc

 

これは「救急ドローン」と名付けられた作品の説明動画で、前半では突然倒れた男性のために女子学生扮する一般女性が救急に電話し、AEDを運ぶ「ドローン」が手配されて一命を取り留める、という架空の場面が描かれている。後半ではその意義について作者である学生が説明をしている。サービス全体まで考えられており、この動画の発表から1年で視聴回数が582万アクセス、本人に集まった事業化費用のオファーは10億円以上とのこと。このレベルの高さは欧米に限らず、中国や韓国の大学生もこのレベルまで来ている、とのこと。

 

また先ほどの超福祉展に出展していた車いす「WHILL」も、もともとは有名企業の技術者が社内で提案したが、社内では事業化の承認が得られず、会社を辞めて海外のシリコンバレーにて起業し提案。現地でのプレゼンテーションを経て投資家からの資金が集まったという。そのように世界にも提案しやすくなっている状況から「皆さんも技術をお持ちなのですから、世界を相手にしていきましょう」という話で、講演は締めくくられた。

 

終了後には交流会も実施され、講師に直接質問をしたり、持参された「モノづくり」活動の中で企画製造された製品を実際に触って説明を受けたり、参加者同士で情報交換をしたりするなど、大いに盛り上がった。

開催日・会場

2015(平成27)年12月10日
新川崎・創造のもり
慶應義塾大学 新川崎(K2)タウンキャンパス

お問い合わせ先

経済労働局 次世代産業推進室
電話:044-200-0168
ファクス:044-200-3920
メールアドレス:28sangyo1@city.kawasaki.jp
住所:〒210-0007 川崎市川崎区駅前本町11-2 川崎フロンティアビル10階