概要

頚椎は7個のクッションが存在しますが、20代後半から少しずつ傷んでくるとされています。さらにその程度が進行すると、骨棘(骨のとげ)や椎間板の突出が生じ、神経が圧迫を受ける原因となります。頚部の神経組織は大きく分けて川で言えば本流の脊髄(頚髄)とそこから枝分かれする支流の8本の神経根から構成されます。頚椎によって構成される脊髄の通り道のことを脊柱管、神経根の通り道を椎間孔と呼びますが、脊柱管前後径が小さい場合、少しの頚椎症性変化が脊髄障害、神経根障害につながり、頸部痛や神経障害を来すこととなりますし、軽微な外傷で症状が悪化する可能性がありますので注意が必要です。

手術になる前に保存療法にて多くは改善します。たとえば脱出したヘルニアは異物とみなされ、リンパ球により攻撃され、縮小します。これを早期から予測できればよいのですが、腰の場合より頚の場合の方が対象も小さいこともあって判読、予後予測が難しいのが現状ですが、画像所見如何に関わらず、頸椎では症状の軽快が腰より顕著のようにも思われます。ただ少数例ですが、保存療法が無効な例、進行性の麻痺や排尿障害を伴う場合は手術の適応となります。

症状

神経に由来する症状は神経根症状と脊髄症状に分けられます。神経根が障害された場合には、片側の腕や肩甲骨の裏側に放散する痛みやしびれ、さらに力が入りにくいといった症状が生じます。特に後屈で強くなる場合(頸椎症の大部分)前屈で強くなる場合(椎間板ヘルニアの一部分)がありますが、概して頚の動きは痛みのため制限され、手を挙上した方が楽になります。

一方、脊髄が障害された場合には、手指の巧緻運動障害(指の細かな動きがしにくい、字が書きづらい、第1ボタンがはめられない)・痙性歩行(つまずきやすい・歩行がぎこちない)・膀胱直腸障害(頻尿・失禁)が生じます。神経根障害は痛みのみならず麻痺も自然経過で軽快することが多いですが、稀に頑強な疼痛、麻痺が重篤になると手術が選択肢となってきます。重度な脊髄障害は麻痺がさらに悪化すると不可逆的になり、重篤な膀胱直腸障害は一度完成すると回復が困難で、時機を逸せず外科的治療を要することがあります。

診断

一般に単純X線検査、CT検査、MRI検査で診断可能ですが、不安定性などが関与すると思われた場合には入院にて脊髄造影検査などが施行されます。最終的には自覚所見、他覚所見、画像診断を包括的に評価し、診断に至りますが、その場合も代謝性内科疾患やリウマチ性疾患、神経内科的疾患との十分な鑑別が必要です。

治療

治療は、日本整形外科学会でガイドラインが作成されており、当院もそれに従って治療方針を立てています。ただ、時間に追われる本邦の現状から治療経過は本人の社会的状況にも考慮を余儀なくされるのが現状です。したがって、正確な診断と具体的時間軸も考慮した臨床決断が必要となってきます。たとえば仕事、スポーツ、趣味の内容と復帰時期など、治療法の期待効用値は人それぞれであり、それによって手術意志決定がなされて当然と考えています。従って通常3ヵ月保存的に治療をしますが、場合によってはより早期に手術的治療に踏み切ることもあります。それはガイドライン通りの忍耐を強いられる待機、術後の慎重すぎる後療法が時間に追われる現代に於いて仕事、スポーツなどに於いてもご本人の立場を変えてしまうことがあるからです。

頚椎症性神経根症、椎間孔側のヘルニアでは症状の程度に応じてですが、安静、温熱、段階的に牽引、軽い運動療法などの理学療法をかかりつけの先生におこなって頂き、同時に消炎鎮痛剤・ビタミン剤・筋緊張弛緩剤の投与をお願いしています。また、必要に応じて傍脊椎神経ブロック、硬膜外ブロックなどペインクリニック的手法をおこなうこともありますが、多少のリスクも伴います。それでも痛みが改善しない場合、やむを得ず手術に至ります。その頻度は決して多くなく、むしろ稀といってもよいでしょう。手術法は2つあり、前方から除圧して自家骨とチタン製プレートで固定する手法と、後方から除圧するだけの手法に大別されます。それぞれ一長一短で、主にどちらが主たる病巣かによって方針を決めるわけですが、あくまで患者さんのご理解、納得を得た上で手術法を選択します。後方は①-②椎間の椎間孔解放術で、1時間ほどの低侵襲手技でおこないます。前方はヘルニアなど前方に原因がある場合、不安定性が悪影響を及ぼしている場合など合理的手術法ですが、腸骨採取部に多少の愁訴を残すことが屡々あります。いずれの手術法も原則翌日起立することができます。

頚椎椎間板ヘルニアのレントゲン(一例)

左:頚椎椎間板ヘルニアのレントゲン(一例)