川崎市衛生研究所
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アデノウイルスについて

 ウイルス検査室ではいろいろな種類のウイルスの検査を行っていますが、今回はその中のアデノウイルスについて取り上げます。アデノウイルスは直径100μmほどの大きさで、ヘキソン及びペントンというたんぱく質が正20面体をなし、その頂点にファイバーというたんぱく質が突出するという構造をとっています。ヒトのアデノウイルスは咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、出血性膀胱炎及び感染性胃腸炎など多彩な症状を惹き起こします。ウイルスは生化学的及び血清学的性状により各種血清型に分類されてきました。しかし、最近の分子生物学的技術の進歩によりDNA塩基配列の相同性に基づく分類が進んでおり、新しい知見が増えている状況にあります。

 当検査室では感染症発生動向調査の一環として川崎市内の定点病院から搬入される検体について、ウイルス分離検査を行っています。

 流行性角結膜炎を惹き起こすアデノウイルスは81937の血清型とされています。眼科定点病院において流行性角結膜炎と診断された検体から分離されたウイルスについてDNAシーケンサーで塩基配列を調べたところ、ヘキソン領域は15型、ペントン及びファイバー領域は9型と確認されました。このウイルスはリコンビナント(組み換え)ウイルスと考えられます。このようなウイルスは2007年度から3株分離されており、流行性角膜炎の新しい原因ウイルスとなっている可能性があります。当検査室では引き続き眼科検体のウイルス分離検査を行っていく予定です。
ヘキソン領域の系統樹 ペントン領域の系統樹
07-4、09-29、09-6はリコンビナントウイルスと考えられる株を示す。ヘキソン領域はアデノウイルス(Ad)15型と近く、ペントン領域はAd9と近い。

 また、小児科定点及び内科定点病院から集めた咽頭結膜熱の咽頭ぬぐい液や感染性胃腸炎の糞便検体などからウイルス分離検査を行って、どのような血清型のアデノウイルスが流行しているかを調べています。

 このような検査に加えて、大学等の研究機関との共同研究を行っています。海外における小児の感染性胃腸炎の疫学調査では、バングラディッシュ由来の検体からリコンビナントウイルスと考えられるアデノウイルスの株を2つ分離しています。現在詳しい検査を行っています。他にも研究機関等が開発するアデノウイルスの迅速診断キットの治験を行っています。反応性や検査感度などの詳しい情報を提供することで、より感度のよい検査キットの開発に役立っています。これまでにプラチナ(白金)やゴールド(金)コロイドイムノクロマトを用いた感度のよいキットの開発に携わっています。

 このようにウイルス検査室では、市内の感染症の流行状況を調査し、大学等の研究機関と共同研究を行うことでウイルス及びその感染症について知識の収集と検査技術の向上に努めています。
 
白金-金コロイド標識抗体を用いたアデノウイルスキット
付属の抽出用チューブに検体を加え、抽出液を滴下することで簡単に検査できます。上のカセットはアデノウイルス陽性(TとCにライン)で、下のカセットはアデノウイルス陰性(Cにのみライン)です。


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