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A群溶血レンサ球菌感染症について
<A群溶血レンサ球菌とは>

 A群溶血レンサ球菌感染症は、上部気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌として知られています。菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こします。本菌が原因となる「A群溶血レンサ球菌咽頭炎」および「劇症型溶血レンサ球菌感染症」は感染症法5類に分類されており、また食中毒の原因菌としても報告されています。

 溶血レンサ球菌とはグラム陽性球菌で、細胞壁の多糖体の抗原性によりLancefieldA〜Vに分類されています。このA群に属しヒツジ赤血球加血液寒天培地上でβ溶血を起こすものがA群β溶血性レンサ球菌(A群溶血レンサ球菌)と呼ばれています。ヒトの口腔粘膜常在菌で咽頭や鼻に保菌されていることが多く、保有率は15〜30%ともいわれています。A群溶血レンサ球菌のほとんどは細胞表面に蛋白抗原としてM蛋白とT蛋白を持っており、これらの抗原性によりさらに型別分類されています。
またこの菌は、溶血毒素、発熱(発赤)毒素、核酸分解酵素、ストレプトキナーゼなどの活性蛋白物質を産生し、細胞外に分泌して様々な症状を起こすと考えられています。
この発熱(発赤)毒素は猩紅熱に関連があるといわれています。


図1 血液寒天上のA群溶血レンサ球菌

 冬季および春から初夏にかけてピークがみられます。近年、全体の報告数が増加する傾向にあります。

 感染経路は、飛沫感染、接触感染、経口感染があります。
 飛沫感染は、保菌者からA群溶血レンサ球菌が混入した鼻水や唾液などが飛散し、他のヒトの鼻腔や口腔から侵入します。皮膚から接触感染し、伝染性膿痂疹を来たすことがあります。また、排出された菌が手や食品を介して口に入ることにより経口感染することがあります。ポテトサラダ、焼きそば、卵サンドイッチを介して集団感染した事例もあります。

 好発年齢は5〜15歳の幼児、学童、生徒に多くみられ、人が密集する場所である保育園・幼稚園・学校・家庭内で感染し流行します。


<A群溶血レンサ球菌の症状について>

 潜伏期は約1日〜4日、特に48〜72時間が多いとされています。

 症状としては、急性咽頭炎、猩紅熱(しょうこう熱)、これらの合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患やリウマチ熱、急性糸球体腎炎をおこすこともあります。リウマチ熱、急性糸球体腎炎は菌の直接作用ではなく、免疫機序を介して起こるといわれています。この他に、中耳炎、化膿性関節炎、骨髄炎、膿痂疹、蜂巣織炎なども起こすことがあります。近年、「劇症型溶血レンサ球菌感染症」も問題となっています。

 おもな臨床症状は急性咽頭炎では、突然の発熱と全身の倦怠感、咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐、腹痛を伴います。軟口蓋の点状出血や苺舌が特徴です。

 猩紅熱は、発熱開始後12〜24時間で点状紅斑様、日焼け様皮疹が出現します。発疹は全身の皮膚が鮮紅色となり、粟粒大の隆起した小丘疹がみられることが特徴です。回復期には手足の指の皮が膜状に剥離します。顔面では皮疹はみられず、額と頬が紅潮し、口の周りのみが蒼白にみえる口囲蒼白が特徴です。3歳未満では猩紅熱型は現れず、咽頭痛・鼻水が主症状のことが多いとされています。
治療は、抗生剤、特にペニシリン系を内服します。

 リウマチ熱や急性糸球体腎炎の予防のために、少なくとも10日間は確実に投与すること
が必要とされています。

 予防としては患者との濃厚接触は避け、うがい、手洗いなどの一般的な予防法が励行され
ています。


<劇症型溶血レンサ球菌感染症とは>

 劇症型溶血レンサ球菌感染症とは免疫不全などの重篤な基礎疾患がないにも関わらず、突然発症する例が多いといわれています。発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には、軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固(DIC)、多臓器不全(MOF)を起こし、ショック状態から死に至ることが多い病気です。メディアなどでも「人食いバクテリア」という病名でセンセーショナルな取り上げ方をされたこともあります。30歳以上の大人に多く、近年妊産婦の症例も報告されています。発生件数は、日本では1992年に報告されており現在までに200人を超える患者さんが確認されています。このうち30%が死亡しており、極めて致死率の高い感染症です。川崎市でも年間に何例か分離されています。

 A群のみならずB群、C群、G群による溶血レンサ球菌感染症が原因となっています。
発症メカニズムは、M蛋白や連鎖球菌性発熱性外毒素(SPEs)などの関与が指摘されていますが、本菌は様々な病原因子を持っており、また宿主側の因子も関与しているとも考えられ十分に解明されていません。


<食中毒事例について>

 食中毒事例の主な原因は、A群溶血レンサ球菌に汚染された卵加工品、焼きそば、仕出し弁当などです。全ての事例で咽頭痛と発熱がみられています。食品原料からの汚染の心配はないのですが、加熱調理後の食品では本菌に対する汚染、および増殖に注意が必要となります。

 食中毒の対策としては、
  • 調理の際はマスク着用し、無駄なお喋りはつつしむ。
  • 咽頭痛、咳があるときは、調理作業に従事しない。どうしても従事する際はマスクを着用し、直接食品に触れる作業はしない。
  • 調理人は手指や皮膚上皮、鼻腔に化膿巣があるときは調理から離れる。
  • 調理後の食品保存、特に温度管理を厳守し、調理から喫食までの時間を短くする。
などの対策が必要になります。

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川崎市衛生研究所 細菌検査
(平成23年4月更新)

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