川崎市健康安全研究所 岡部 信彦 所長からのメッセージ
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川崎市健康安全研究所 所長 岡部信彦
私はもともとは小児科の出身で、病棟で走り回り、一般外来をこなし、乳児健診を担当し、そして当直をやることが好きでした。大学病院、市中総合病院、肢体不自由児施設、小規模診療所、小児病院などで小児医療をやりながら、感染症の血清抗体測定、ウイルスの分離、感染メカニズムの追及、そしてワクチンの開発などの研究を行い、これを感染症の診断・治療・予防に役立てたいというようなことをやっていました。公衆衛生学は、恥ずかしながら国家試験の必須科目としてやむなく勉強したような次第で、国家試験合格後は遠い存在の分野となりました。しかし小児科医としての乳児健診・育児相談・ワクチンの実施などは、今思えば公衆衛生の一端に触れ続けていたのでしょう。
私は1990~94年、WHOの西太平洋地域事務局(WPRO)で、伝染性疾患予防対策課課長(Regional Advisor for Communicable Disease Control and Prevention)として仕事をする機会がありました。WHOに行くことを決めた本心は、日本にない感染症の経験ができるのではないか、広くワクチン効果が確認できるのではないかという、臨床マインドからでした。しかし、”Public Health, Public Health……..”という語が頻繁に行きかう環境で、何をどうやっていいかわからない状況でした。国際機関も同様、いや国際機関の方がさらに面倒な administration という壁がありましたが、慣れてくるというのは恐ろしいもので、やがていろいろなことがほぐれるようになり、公衆衛生における感染症の面白さがわかってきました。WHOを辞し、いったん母校の分院小児科の診療責任者として戻りましたが、新設された国立感染症研究所感染症情報センターに異動し、感染症の情報収集・分析・還元(サーベイランス)、実地疫学調査、リスクコミュニケーションなどを行いましたが、そしてこれらを行政と臨床の仲立ちとなって伝達をするようにすることが自分の役割ではないかと思うようになりました。
現在、私は川崎市健康安全研究所に勤務しています。この研究所の英文は、Kawasaki City Institute for Public Health としています。” for Public Health ” がミソです。公衆衛生へのかかわりは極めて希薄であった者が「公衆衛生とは」などと口にするようになっています。川崎市健康安全研究所は調査研究機関ですが、ここでは医療の現場である医療機関、公衆衛生実施の現場である保健所(支所)、行政としてこれを束ねる川崎市、そして研究所が近い距離で連携をとりながら、川崎市民(ひいては地域、国、そして地球上の「人」)の健康の向上に結びつくようなことをやりたいと思っています。保健行政にかかわる医師は、そのスタートは必ずしも公衆衛生分野のプロではありません。あなたの持つこれまでの医師としてバックグラウンドの経験を活かし、困難なことに直面することは当然あるでしょうが最終的には人々の健康と安全に貢献できる、そんな公衆衛生医師になることを川崎市というフィールドで一緒にやってみませんか?
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