第2期川崎市人権尊重のまちづくり推進協議会 効果的な人権啓発手法について」(答申)(概要) 答申日 令和6年8月21日 1 諮問事項(令和4年9月5日) 諮問事項:効果的な人権啓発手法について 諮問理由:人権尊重のまちづくりを推進していくためには、人権課題に対する正しい知識などの普及活動に努め、また、市民や事業者が人権の意義や価値についての理解を深めるための学習・研修の場を提供するとともに、市民や事業者の主体的な普及活動を支援する必要があることから、効果的な人権啓発手法についてとりまとめていただくため諮問するもの ⇒(答申期限:令和6年8月) 2 答申の構成 (1) はじめに ・行政、市民及び事業者が人権問題に積極的に関わり、人権意識をお互いに高め合うことで、人権が尊重される社会につなげていくことは、川崎市の人権に関する基本目標の一つ ・人権市民意識調査の結果から、「人権の尊重」について市民が実感を持って答えることが難しい状況 等 (2) 審議の経過   ・第1回〜第10回の協議会の開催 (3) 答申 T 基本的な考え方 第2期川崎市人権尊重のまちづくり推進協議会(以下「本協議会」という。)は、答申の方向性を定めるに当たり、とりわけ啓発を行うことの重要度が増してきている現状を踏まえ、各人権施策の課題に幅広く対応し、かつ、今後の社会情勢の変化や新たな事象に柔軟に対応できる手法を提示することが、川崎市の人権施策の展開において実用的であり、より効果的な啓発につながるものと考えた。 U 啓発手法について 各委員が積極的かつ闊達に議論し様々な角度からの忌憚のない意見を出し合い審議を積み重ねていく中で、各委員からの意見は、ある程度分類して整理することができることが分かってきた。  具体的には、啓発手法を考える上で、 「対象者(誰に)」 「テーマ(何を)」 「時期(いつ)」 「場所・場面(どこで)」 「方法(どのように)」 「市民に期待する効果」 の6つの「要素」が重要であることが分かった。 そして、それぞれの「要素」ごとに具体例を挙げ、啓発対象の人権課題に合わせて6つの「要素」を様々に組み合わせることにより、より効果的な啓発手法を見出すことができるのではないかと議論した。 V 効果的な啓発を行うための視点 効果的な啓発を行うための大切な視点について分類・整理したものを次に掲げる。これにより、啓発に対する目的や手法に対する理解度が深まるほか、事業の目的・目標がより明確になると考える。 1 情報を受け取る市民(受け手中心の)目線を持つ   常に市民の目線に立ち、どのような情報発信方法を採れば良いかを考え、啓発内容が自分に関係があるかもしれないと思うように啓発を行う。 2 ターゲットを絞る ターゲットを絞ると、啓発の対象が見えてくる。相手が見えてくれば、生活シーンや行動等を思い浮かべることができ、対象者にどのように寄り添って啓発を行えばよいかが見えてくる。 3 具体的なゴール・目指すべき姿を持って啓発を行う  市民にどのような行動をしてほしいのか、ターゲットの行動変容は何かを強く意識して啓発を行うことが大切である。 4 市民にとってのメリット(ベネフィット)を明確化する  市民が啓発内容を知ることにより得られるメリット(ベネフィット)や、知らないことによるデメリットを明確に意識して啓発すると、市民は自分のこととして積極的に情報を獲得するようになり、行動も変わってくる。 5 心理的ハードルを下げる  「お手軽」や「お気軽」に情報に接することができる啓発手法を意識しながら行うことが大切である。 W 人権啓発における「効果的な」とは 諮問事項や諮問理由にある人権啓発手法における「効果的な」とはどのような状態を指すのかについて議論を深め、本協議会が「効果的な」と位置付けたものを次に掲げる。 1 情報を受け取る市民(受け手中心の)目線を持つ ・市民が発信者になる機会を作ること ・受け手が身近に感じる様々な立場の発信者を用意すること ・受け手が行動するきっかけとなること 等 2 ターゲットを絞る ・対象者を絞ってピンポイントで伝えること ・場面、対象、置かれた人によって効果が異なることを認識すること ・これから未来を担っていく子どもたちを対象とすること 等 3 具体的なゴール・目指すべき姿を持って啓発を行う ・受け手が新たな知識を得られること ・無関心層に対する啓発により、川崎市の人権意識を全体的に底上げすること ・企業の取組ではカバーしづらい領域を市がカバーしていること ・とぎれのない広報手法を提供すること ・費用対効果の側面から考えられていること 等 4 市民にとってのメリット(ベネフィット)を明確化する ・人権以外に対する動機(企業利益等)だとしても、人権に結びつくものを提示すること ・もっと深く知りたいというニーズにつながる手立てを提供すること 5 心理的ハードルを下げる  ・人権の学びのハードルを下げること  ・誰にでも伝わること X 一般的な啓発手法の提示 今日、市民の情報取得方法は多様化しており、様々な人権課題に対して画一的な手法により啓発を行っていたのでは、効果的な啓発を実現することが難しい場面も出てきている。 そこで本協議会では、様々な啓発手法を有機的に連結し、より効果的な手法を川崎市自身が積極的に開拓し、地道にきめ細かく人権啓発を行っていくことが、最終的には最も効果的な結果を導き出すものと考え、今後、川崎市が時宜を得た啓発手法を選択実施できるようにするため、次のような人権啓発手法を提示する。 U啓発手法に挙げた6つの「要素」にそれぞれ具体例を設定し、その具体例を組み合わせる(掛け算する)。 ⇒ 各「要素」の具体例詳細は、答申別紙1 Y 具体的な啓発手法の提示 上記Xの一般的な人権啓発手法から転じて、いくつかの個別具体的な人権課題に応じた啓発手法についても議論した結果、人権啓発手法として効果的と考えられる組合せを提示する。 ⇒ 詳細は、答申別紙2 これらのうち、川崎市が取り組んでいるものについては引続き行い、その他については今後活用の可能性を探りつつ、適宜実践していくことを要請する。 Z 委員の関心が特に高かった項目の提示 本協議会の審議の中で特に委員の関心が高かった項目として、次のものが挙げられる。人権啓発を行う際には、次の項目も念頭に置いて啓発手法を検討し、実施していくよう要請する。 1 無関心層への啓発 2 市内居住歴が浅い市民への啓発 3 ナッジ(「そっと後押しする」という意味で、「軽く促す小さな工夫で人の行動をより良い方向に変えることができる」という理論)を活用した啓発 [ その他意識調査の結果について 諮問理由の中に、意識調査について次のような記述がある。 『「人権の尊重」という問いに対して、市民が実感を持って答えることが難しい状況が見られます。』 このことに対し、本協議会で次に掲げる意見が挙がった。 1 川崎市民は、むしろ人権に対する意識、関心が高いからこそ、現実を厳しく評価しているとも考えられる。 2 意識調査で、きちんと人権が守られているかという項目については、川崎は他都市に比べて厳しい結果であったが、一方で、人権課題への関心という項目については、関心があるテーマが他都市よりも多かったという結果であった。関心があるから、知識があるからこそ、現実は少し見合っていないという感覚が生まれてくると考えられる。 (4) おわりに   ・川崎市の人権啓発がより効果的かつ効率的に行われることを要請する。   ・「市民一人ひとりの人権と多様性が尊重され不当な差別のないまちかわさき」が実現できるよう、川崎市の取組に期待する。