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労働相談員として思うこと ~有給休暇について~(2020年11月号)

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2020年11月1日

コンテンツ番号121957

このページは広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

労働相談員として思うこと ~有給休暇について~

社会保険労務士 吉野 亜弥

 労働基準法39条では、業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たしたすべての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければならないとされています。

 今回は、「発生要件」「付与日数」「取得方法」「罰則」等のポイント解説に加え、最近の年次有給休暇に関する労働相談の傾向についてお伝えします。

Point1:年次有給休暇とはどのような制度?

年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活を保障するために付与される「有給」で休むことができる休暇のことです。

Point2:年次有給休暇の発生要件は?

年次有給休暇が付与される要件

  1. 雇入れの日から6か月継続して雇われている
  2. 全労働日の8割以上を出勤している

この2点を満たしていれば、年次有給休暇を取得することができます。

  • 継続勤務とは 
    事業場における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断されます。例えば、定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合等は、継続勤務として扱う必要があります。
  • 出勤率算定にあたっての留意点 
    業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間等は、出勤したものとみなして取り扱う必要があります。会社都合の休業期間等は、原則として、全労働日から除外する必要があります。

Point3:パートやアルバイトでも年次有給休暇は取得できるの?

パートタイム労働者等、所定労働日数が少ない労働者についても、「Point2、年次有給休暇の発生要件」を満たせば、年次有給休暇は付与されます。ただし、通常の労働者よりも付与日数は少なく比例的に付与されます。(付与日数はPoint4参照)

Point4:年次有給休暇の付与日数は?

年次有給休暇の付与日数は、所定労働日・所定労働時間によって以下のように定められています。

1.週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上の労働者(通常の労働者)

勤続勤務年数に伴う有給付与日数

2.週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30 時間未満の労働者 
(週以外の期間によって労働日数が定められている場合)

週所定労働日数が4日以下かつ週30時間未満の労働者

Point5:年次有給休暇はどのように取得するの?

 年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定すること(時季指定権)によって決まり、使用者は指定された日に年次有給休暇を与えなければなりません。ただし、労働者の指定した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者に休暇日を変更する権利(時季変更権)が認められています。

 (時季変更権の行使が認められる例)
同じ日に多くの労働者が同時に休暇指定した場合等が考えられます。単に「業務多忙だから」という理由では、時季変更権は認められません。

Point6:『年次有給休暇の時季指定義務』(2019年改正)って何?

 年次有給休暇は、労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的としているため、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由により、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

 このため2019 年4月から、すべての企業において年10 日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5 日については、使用者が時季指定をして取得させることが義務付けられました。

(年次有給休暇を5日以上取得済の労働者に対しては、使用者による時季指定は不要です。)

Point7:使用者による『年次有給休暇の時季指定』の方法は?

 使用者は、時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
 また、休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)であるため、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。

Point8:年次有給休暇の時効は何年?

年次有給休暇の請求権は、発生の日から2年間で時効により消滅します。

違反した場合には罰則が科せられることがあります。

違反した際の罰則

以上、年次有給休暇のポイントについて解説させていただきました。

 

労働条件に関する相談窓口には、日々、労使双方からさまざまな相談が寄せられます。

その大半は労働者からのもので『年次有給休暇』は、『いじめ・嫌がらせ』『退職・解雇』とならび多く寄せられる相談内容の一つです。

具体的には、

  • 「パートに有給はないと言われた」
  • 「有給の付与日数を確認したところ、管理していないから分からないと言われた」
  • 「退職時に有給残のすべてについて時季指定を行ったところ、一方的に拒否された」
  • 「これまで特別休暇とされていた休暇日を時季指定の5日に充当された」等

が挙げられます。相談員には、公平・中立な立場で労働法規より正確な情報提供を行うという役割が課されているため、個別の事案に対し私見を述べたり、相談者自身が行うべき判断を後押しすることはありません。

聞かれた内容については、労使双方に対し同等の情報を提供します。
また、年次有給休暇については、圧倒的に使用者側より労働者側の関心が高く、労働者は自分自身でインターネット上から多くの情報を取得しています。今回Pointで挙げた程度の内容については既に、「知っている」というケースも少なくありません。

使用者側からの労働相談が、制度に係る「質問」であるのに対し、労働者側からの労働相談は、既に取得している情報についての「確認」と位置付けられており、その確認行為を経て権利行使(年次有給休暇の時季指定)に及ぶという傾向もあります。

実際、年次有給休暇の取得が労使間トラブルとなるケースでも、使用者側に法律の理解がある場合は、双方常識的な範囲内で話し合いがなされているように思います。一方、使用者側に法律の理解不足がある場合は、労働者の権利行使に対する対応が遅れたり、または法律上認められている労働者の権利を一方的に拒否する等の事案が発生し、はじめ小さかったはずの火種が大きなトラブルに発展していくこともあります。

「うちは中小企業だから有給休暇なんて無理」使用者側からよく聞かれる声です。同様に労働者側も「小さい会社だから有給休暇は取得できなくても仕方ない」と思っていた時代であれば、それでよかったかもしれません。しかし、労働者が既に多くの情報を取得し、あとは時季指定権を行使するだけであると想像してみてください。これから先もずっと「無理無理」と言い続けていくことは、むしろ会社にとってリスクが高いと言えるのではないでしょうか。

不要なトラブルを避け年次有給休暇を適正に運用していくために、まず最初にできることは何かを考えます。それは正しい情報を「知る」ことだろうと思います。制度を正しく理解することにより、「今、会社にできることは何か」を考えることもできます。

以下に、年次有給休暇についてわかりやすく簡潔にまとめられた厚生労働省のツールを紹介させていただきます。

労働者の権利意識は確実に高まっています。この機会にぜひ「知る」ことからはじめ、年次有給休暇の適正な運用に向け自社での取り組みをご検討いただければ幸いです。

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