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「コロナ禍と労働法上の課題」 法政大学法学部教授:沼田 雅之 (2021年4月号)

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2021年4月1日

コンテンツ番号127655

このページは広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

「コロナ禍と労働法上の課題」 

法政大学法学部教授:沼田 雅之

1 コロナ禍と解雇・雇止め

1.整理解雇について

(1)整理解雇の四要件(四要素)
整理解雇とは、不況などが原因で経営難に陥っている企業が、企業側の事情により行う解雇のことです。労働者側に問題があってなされる解雇とは異なり、もっぱら経営者側の都合で行われます。

したがって、通常の解雇よりも厳しい基準でこの解雇の正当性が判断されます。この整理解雇については、整理解雇の四要件(四要素)といわれる基準によって、その正当性が判断されます。

すなわち、1.人員整理の必要性、2.解雇回避努力、3.被解雇者選定の合理性、そして、4.労働組合や労働者との誠実な協議、という四つの基準です。

(2)コロナ禍と整理解雇
コロナ禍との関係で問題になるのは、まずは、1.人員整理の必要性です。こういった時代ですから、「コロナ」と言えば何でも必要性があると納得してしまうような雰囲気があります。

しかし、整理解雇に関する判断枠組みは、コロナ禍だからといって運用が変わるわけではありません。整理解雇を実施しようとしている・した企業は、本当に人員整理を行う経営上の必要性があるのかということが精査される必要があります。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の拡大により、人員整理やむなしというような経営状況に追い込まれている企業も多いと思います。そうすると、つぎに重要な点は、2.解雇回避努力です。すなわち、解雇に至らないために企業はどういった努力を行ったかが厳しく問われることになります。

ここでポイントになってくるのが、各種助成金の活用状況です。コロナ禍の拡大に伴って、政府等は、助成金を拡大したり、新設したりしています。しかし、整理解雇を行っている企業の中には、これらの制度の利用をせずに解雇を行っているケースがあるだろうと思われます。報道もされていますが、雇用調整助成金の手続がかなり煩雑で、中小規模の事業者はその手続きに難儀している場合があるようです。確かに、手続が煩雑だということは事実なのだと思うのですが、一方で、厚生労働省もこういった声を受けて、手続を簡略化しています。一人一人の労働者の生活と天秤にかけたときに、使用者にとってのこれら手続の煩雑さというのが果たして言い訳になるのでしょうか。

2.非正規労働者に対する雇止め

コロナ禍は、非正規で働いている労働者に深刻な影響を与えています。そして、非正規労働者の多くは有期労働契約を締結しています。これは、使用者にとっては雇用の調節弁としての機能を期待したものです。コロナ禍においては、この雇用の不安定さが非正規労働者を直撃しているといっていいでしょう。

雇止めというのは、法形式的に言えば有期労働契約の期間の満了です。しかし、実際に有期労働契約を締結している労働者の多くは、企業内に恒常的にある業務にもかかわらず有期労働契約を締結し、特に問題がなければそれを何度も反復継続して更新をしているわけです。

このように何度も更新して継続して雇用されてきた後の雇止めは、正規労働者に対する解雇と同様の効果を持っています。そこで、一部の雇止めについては解雇に関するルールが適用されて救済されてきました。このルールは、現在、労働契約法19 条で立法化されています。

したがって、1.実質的に期間の定めのない状態と同じ状態になっているという場合(労働契約法19条一号)、及び、2.有期労働契約の更新に合理的な期待が生じている場合(労働契約法19条二号)に対する雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には「無効」とされます。

2 コロナ禍と休業手当

1.休業手当における「使用者の責に帰すべき事由」

休業手当は、雇用調整助成金と相まって、雇用の維持と労働者の生活の保障に重要な役割を果たしています。休業手当というのは、本来、就労日であったにもかかわらず、使用者側の事情で労働者が就労できなかった(休業)場合に、少なくとも平均賃金の6割以上の支払いを強制して労働者の生活の安定を図ることを目的としています。この「使用者側の事情」は、かなり広いと考えられており、およそ企業側の事情で生じた休業のすべてを指します。ただし、不可抗力による場合は除かれます。

2.緊急事態宣言による休業要請と休業手当

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発せられたことを契機になされた休業の要請に使用者が応えて休業した場合に、使用者がその雇用する労働者に対して休業手当を支払うべきなのでしょうか。この点、厚生労働省は、「不可抗力による休業と言えるためには、1.その原因が事業の外部より発生した事故であること、2.事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること、という要素をいずれも満たす必要があります。」としています。

そして、「事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること」について、「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか」「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか」といった事情から判断されるとしています。

なお、こういった実務に反して休業手当が支払われない場合があります。また、シフトに入れない場合も同様です。その場合には、休業支援金・給付金の申請をしてください。

3 コロナ禍とリモートワーク

1.リモートワークの請求権

新型コロナウイルス感染症が拡大している中、会社に出社することは、労働者には一定の感染リスクが生じます。このような状況のもと、労働者がリモートワークに切りかえるよう使用者に請求することは可能でしょうか。

この点、使用者には、労働者の生命・健康を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)がありますから、リモートワークの請求権は一定程度認められると考えるべきです。

たとえば、労働者やその同居家族が、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患を有する者である場合などがこれに該当するでしょう。もちろん、在宅勤務に切りかえられないという使用者側の事情も考慮されます。

しかし、リモートワークで対応可能な場合に正当な理由もなく労働者の請求を拒否することは許されないといえましょう。

2 リモートワークと労働時間管理

リモートワークの場合でも、労働時間規制は適用されます。使用者は在宅勤務中の労働者の労働時間を適切に把握しなければなりません。したがって、リモートワークに移行する際には、労働時間の管理方法を、就業規則等で予め定めておく必要があります。

また、使用者(管理者)と労働者との連絡方法のルール化も検討されるべきです。たとえば、リモートワークになると、管理職からは労働者の業務の進捗状況が必ずしも可視化されません。不安に感じる管理職から部下の労働者に対して、深夜時間帯や休日にもかかわらず度々連絡がなされることが想定されます。

しかし、部下の労働者にとっては迷惑な話です。フランスでは、業務時間外の会社からの連絡を拒否できる権利=「つながらない権利」が認められています。日本のリモートワークにおいても、この点のルールを明確化しておくことも必要でしょう。

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