現在位置:

  • トップページ
  • 共通分類
  • 川崎市立井田病院 令和3年度 市民公開講座動画「心不全 最新の診断と治療」(目が不自由な方へのテキスト情報)

川崎市立井田病院 令和3年度 市民公開講座動画「心不全 最新の診断と治療」(目が不自由な方へのテキスト情報)

ツイッターへのリンクは別ウィンドウで開きます

twitterでツイートする

2021年7月27日

コンテンツ番号130723

川崎市立井田病院 令和3年度 市民公開講座動画「心不全 最新の診断と治療」(目が不自由な方へのテキスト情報)

皆さんこんにちは。川崎市立井田病院循環器科の好本です。

日本では高齢化に伴いまして心不全の患者は増加しておりまして心不全パンデミックと言われております。

そこで今回心不全の最新の診断と治療をご紹介していこうと思います。

 

心不全はガイドラインではなんらかの心臓の機能障害、心臓に器質的及び、あるいは機能的異常が生じて心臓のポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群であります。

一般向けには心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気とされております。

 

心不全の基礎疾患は心筋梗塞、高血圧、心筋症、弁膜症、不整脈、先天性心疾患等がございます。

高度化に伴いましてこういった基礎心疾患を複数有する患者様が増加しております。

そして心不全の原因となり増悪する因子としましては貧血、腎臓の機能、甲状腺機能、認知症等があります。

 

日本の総人口は年々減少しておりまして高齢者社会が進行しております。

2020年度は日本の人口は1億2千万人なのが2055年には9千万人まで減少するとされております。

そして65歳以上の高齢者が2020年度は29%なのに対しまして2055年には約40%に増加するとされております。

しかし心不全患者数は2030年度まで増加いたしまして2030年度に約130万人に達するとされております。

 

こちらはJROADによります心不全入院患者数の推移を示しております。

心不全入院患者数は毎年1万人ずつ増加しておりまして2016年度には約26万人の心不全の入院患者数となっておりまして医療経済を逼迫しております。

そして心不全の死亡率は約8%でほぼ変わりなく推移しております。

 

こちらは疫学で有名なFramingham研究でございます。

こちらでお示ししておりますのはNYHAの分類別の慢性心不全患者の予後です。

こちらは数字が上がりますと重症度が高くなるわけでしてNYHA4になりますと安静にしておりましても心不全の症状が出る患者であります。こちらでお示しておりますようにNYHA4の患者はNYHA2に比しまして累積死亡率は非常に高くなっております。

そして死亡率比較をいたしますとNYHA4はNYHA2に比しまして約2.2倍と高率になっております。

そして注目していただきたいのは1年の死亡率がNYHA4ですと30%にも達するということです。

これは癌患者にも劣らないぐらいの非常に高い死亡率であるということが分かります。

 

では心不全になった場合にはどういった症状が出るのでしょうか。

まずは低心拍。

心拍出量が低いために起こる症状といたしましてはすぐに疲れやすいとか手足の冷感等がございます。

あと体液貯留。

うっ血の症状といたしましては息切れ・呼吸困難、手足のむくみ等がございます。

あと心臓の心負荷の症状で動悸がする等の症状が起こります。

 

心不全の場合の検査といたしましてはまず血液尿検査としては血漿BNP・NT-proBNPがあります。

これはバイオマーカーですけどBNPは脳性ナトリウム利尿ペプチド、NT-proBNPはN端末プロB型ナトリウム利尿ペプチド等をルーチンで測定いたします。

あと付随いたしまして貧血、肝臓の機能、腎臓機能等を測定いたします。

あと心電図を診まして心筋虚血、左室肥大、不整脈等を評価いたします。

あと胸部X線で心拡大、肺うっ血等を評価いたします。

心臓の超音波検査で心収縮拡張能、弁膜症等を評価いたします。

そして侵襲的な検査ではありますけど心臓カテーテル検査で血行動態そして左心機能あと弁膜症、冠動脈硬化の有無を評価いたします。

 

こちらは心不全におけるBNP値と予後比較をお示しいたしました。

こちらの表で分かりますようにBNPを73以上73以下で分けた場合にBNPが73pg/ml以上であった場合には生存率が非常に悪くなるということが分かると思います。

そこで外来ではBNPが100以上であった場合には治療を開始する必要があると判断いたします。

 

こちらは心不全の増悪時そして改善時の胸部X線の比較をした胸部X線であります。

この真ん中の白い影が心臓の陰影。

そして両方の黒い影が肺の陰影なわけですけど、ご覧になって分かりますように慢性心不全増悪時には心陰影が拡大しておりまして、肺うっ血が増悪してることが分かると思います。

それに比べ心不全改善時には心陰影は縮小いたしまして肺うっ血は消失しております。

このように心不全の治療の前後で治療効果を判定する際には胸部X線は必須の検査であるというふうにご理解していただければと思います。

 

次に心臓の超音波検査の1例をお示ししていきたいと思います。

こちらは正常な方の心臓の超音波検査所見でありましてこちらが左室、そしてこちらが左房、こちらが僧帽弁であります。

ご覧のように非常に良好に心臓の収縮機能は保たれているわけですけど。

 

こちらは拡張型心筋症の患者様の心臓の超音波検査所見であります。

先ほどの超音波検査所見の所見と比べまして左室が拡張しておりまして左室がびまん性に壁運動が低下しており、そして左室壁厚が菲薄化しているということが分かると思います。

エジェクションフラクション(EF)は20%以下ということで非常に心機能が低下しているということがこちらの心エコー所見からは分かります。

 

こちらはドップラー法で弁膜症を評価した1例でございます。

こちらの僧帽弁から逆流が生じておりまして乱流が生じているというのが分かると思います。

これによりまして弁膜症の手術適用等も評価できるということになります。

 

次に大動脈弁狭窄症の心エコー所見をお示ししたいと思います。

こちらの患者様は失神発作で入院いたしまして心不全を生じていたわけなんですけど、こちらで見て分かりますように大動脈弁が肥厚して石灰化が生じておりまして可動性が低下しているということが分かります。

 

そしてドップラー法で弁の狭窄の重症度を評価いたしましたところ流速が414cm/s、そして弁の最大厚格差が68mmHgということで重症の大動脈弁狭窄ということが診断されました。

これは手術適用ということが分かります。

ドップラー法は弁膜症の手術適用を評価する際に非常に重要な情報をもたらしていただけます。

 

次に心臓カテーテル検査の際にSwan-Ganzカテーテルを使用いたします。

その1例をお示ししていきたいと思います。

このようにSwan-Ganzカテーテルを心カテーテルで静脈から挿入することによりまして心拍出量と肺動脈楔入圧を測定することができます。

 

それによりまして、治療方針も決定することができます。こちらはForrestar分類をお示ししております。このForrestar 分類のI類というのは、心拍出量、カルデアックインデックスが2.2以上、そして肺動脈楔入圧が18以下ということで、肺うっ血がなく、末梢循環不全もない症例であります。こういった症例の場合には安静、鎮静剤の使用で経過観察可能ということになるわけなんですけど、Forrestar 分類の4類ということになりますと肺動脈楔入圧が18以上、カルデアックインデックスが2.2以下ということで最重症の心不全となる訳です。これは肺うっ血もありまして、末梢循環不全の状態であります。この場合には補助循環、強心薬、そして利尿薬、血管拡張薬等を使用するとなる訳です。それに比しましてForrestar 分類の2類は肺うっ血がある、そして末梢循環不全がないという状況でありますので利尿薬、血管拡張薬の使用によって治療を開始いたします。そしてForrestar 分類の3類は肺うっ血がなく、末梢循環不全ありという状態ですので輸液と強心薬の使用によりまして治療を開始するとなるわけです。このようにスワンガンツカテーテルによりまして血行状態を評価することによって治療方針の決定が可能となる訳です。

 

こちらに、心不全とそのリスクの進展ステージをお示しいたしました。こちらでお示しいたしますように、心不全というのは連続した病態でありまして、そしてこのように慢性心不全の増悪ないしは急性心不全で状態が悪化いたしまして最終的には死に至る連続的な疾患であるということをご理解していただきたいと思います。そしてステージA、ステージBというのは症状がない心不全であるけど、ステージAというのは器質的心疾患がないけど、危険因子、具体的には高血圧とか、糖尿病とか、動脈硬化性疾患がある状況であります。それに対してステージBというのは器質的心疾患がある、そして症状がない心不全ということになるわけです。そしてステージAの場合には危険因子のコントロールで経過観察可能となる訳なんですけど、ステージBの場合には器質的心疾患の進展の予防そして心不全の発症予防が重要課題ということになる訳です。それに対しましてステージC、ステージDは、症状があってそしてステージCは心不全ステージでありますので症状のコントロールないしはQOL(クオリティーオブライフ)改善あるいは入院予防・死亡回避に努めるということになる訳です。それに比しましてステージDは治療抵抗性の心不全のステージということになりますのでこの場合には再入院予防、ないしは緩和ケアとか終末期ケアが重要ということになる訳です。

 

治療をもう一度総括させていただきますと、まず最初に、ライフスタイルを改善いたしまして、そして生活習慣病、高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満の治療ということになる訳です。そして薬物療法といたしましては、利尿剤、強心剤、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬等を使用いたします。そして侵襲的治療といたしまして最近盛んになされておりますのは、経皮的冠動脈形成術、そして弁形成置換術、心臓再同期療法、植込み型除細動器、TAVI、MitraClip、補助人工心臓、心臓移植等がございます。

 

最近の薬物療法で重要視されておりますのは、神経・体液性因子そしてリモデリングそして悪循環のサイクルというのがあります。これはどういったことなのかと申しますと、心不全が起きて心筋の機能不全が起きた場合にですね、神経・体液性因子が活性化されます。具体的には、レニンアンジオテンシン系、交感神経系、エンドセリン、炎症性サイトカイン、酸化ストレス等がございます。こういった神経・体液性因子が活性化されることによりまして心不全が改善されるように努める訳なんですけど、それがより疲弊した心筋に鞭を打つような状況になりまして、リモデリングが生じる、そしてそれによりましてさらに心肥大、間質の線維化、心臓の構築変化が生じることによりまして、より心不全が悪化する状態になるとされております。そこでこういった神経・体液性因子をブロックする薬物、先ほど申しましたACE阻害薬、ARB、β受容体等がこういった神経・体液性因子の活性化をブロックすることによって症状を取る、ひいては生命予後を改善することが最近分かってきております。

 

次に侵襲的治療の一例をお示しいたします。

 

これは代表的な心筋梗塞の症例であります。

心不全を起こして緊急入院になりまして、そこで緊急の心臓のカテーテル検査をやりましたところ、左の前下後枝が根元のほうで完全に閉塞していることが分かりました。

 

そこでこういった形で経皮的冠動脈形成術を施行いたしまして、ステントを埋込みました。

 

その後、ご覧の通り血流が再開いたしまして症状もとれて、心不全は改善いたしました。こちらの患者様は今元気に外来で通院してらっしゃいます。

 

次に、心臓再同期療法という侵襲的治療がございます。こちらは左脚ブロックの患者様で慢性心不全の患者様の場合に右室と左室に心臓のペースメーカーを入れまして、同時にペーシングすることによって同期させて収縮させることによって心機能を改善することができるという侵襲的治療であります。

 

植込み型除細動機、ICDという治療がございます。こちらは、その一例なんですけど、ここに一つ期外収縮が起きまして、ブルガダ症候群の患者様でして、このように心室細動が起きた訳です。これが続きますともちろん死に至る訳なんですけど、植込み型除細動機が入っておりましたので、ここでチャージいたしまして、ここで電気ショックを発しまして、心臓の再拍動を得られたという状況であります。重症な致死性不整脈の患者様の場合に植込み型除細動機というのは生命予後を改善するのに威力を発揮しております。

 

さらに高齢者の方の大動脈弁狭窄症に対しまして、最近低侵襲カテーテル治療でTAVIが盛んになされております。これは経動脈的にカテーテルを挿入いたしまして大動脈弁に人工弁を埋込むことによって弁の狭窄を改善せしめるという治療であります。

 

さらにMitraClip、以前は弁置換術しか治療法がなかった訳なんですけど、僧帽弁逆流症に対しまして、このようにカテーテルを挿入いたしまして、僧帽弁の前尖(ぜんせん)と後尖(こうせん)を引き合わせ、それを繋ぎとめるという治療であります。これによりまして低侵襲ではありますけど弁置換術をせずに僧帽弁逆流症を改善せしめることを可能になった訳です。

 

最近、地域包括ケア構想~在宅診療に向けてが盛んに言われております。

これは日本脳卒中学会・日本循環器学会他が、脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画で提唱したものなんですけど、これは具体的にはチーム医療で心不全を治療しようということですね。

例えば心不全が悪化した場合に、私たちの病院とかは高度急性期・急性期病院でありますのでこちらで治療は担当しますけど改善後に地域包括支援センターないしはケアマネージャーを通して連携することによって自宅に帰れるように努めます。

さらに他にも回復期リハビリテーション病院ないしは療養病床を持つ病院を使用する。そしてないしは介護が必要な場合は介護福祉施設、老健施設なども通してそして最終的には自宅へ戻れるように。

ないしは訪問介護、訪問看護、通所介護等を使用して最終的には自宅へ戻れるように努めようというものであります。

 

最後になりましたけど、メッセージといたしましては、

心不全はあらゆる心疾患の終末像でありまして、その予後はきわめて不良であります。

ACE阻害薬、ARB、β遮断薬の導入、非薬物療法の進歩によりまして予後は改善いたしました。

地域連携包括ケア構想によるチーム医療の充実が望まれます。

ただ、早期診断・治療が重要でありますので、健康診断の異常、自覚症状を認めれば、医療機関受診が望まれます。

 

ご清聴どうもありがとうございました。

 

このページに対してご意見をお聞かせください

このページは役に立ちましたか?
このページは見つけやすかったですか?

いただいたご意見は、今後の当ホームページ運営の参考といたします。

お問い合わせ先

市立井田病院 地域医療部
〒211-0035 川崎市中原区井田2-27-1
電話:044-766-2188(代表)
ファクス:044-788-0231
メールアドレス:83idachi@city.kawasaki.jp