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川崎市立井田病院 令和3年度 市民公開講座動画「アルコールと血糖値‐お酒との正しい付き合い方‐」(目が不自由な方へのテキスト情報)

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2021年11月22日

コンテンツ番号134218

川崎市立井田病院 令和3年度 市民公開講座動画「アルコールと血糖値‐お酒との正しい付き合い方‐」((目が不自由な方へのテキスト情報)

こんにちは。

川崎市立井田病院 糖尿病内科の丹保と申します。

今回私からはアルコールと血糖値をテーマにお話しさせていただきます。

 

皆さんは最近コロナ禍での外出自粛が続き、ついつい家での飲酒量が増えてしまったという経験はないでしょうか?

一般的に飲み過ぎは良くないと言われていますが、実際に体にどんな影響があるのか、適正なお酒の量はどれくらいなのか知っている方は少ないのではないでしょうか。

 

 糖尿病外来をしていると、患者さんから度々このような質問を頂きます。

❶飲酒が血糖値にどう影響するのでしょうか

❷お酒の種類によって血糖値への影響に差はあるのでしょうか

❸適量の飲酒ならむしろ体にいいと聞いたことがあるのですが本当でしょうか

❹どれくらいの量なら飲んで良いでしょうか

❺また、飲む分だけ食事制限すれば良いのでしょうか など特に日常的に飲酒をされている方にとってはお酒に関わる問題について関心が高いように思われます。

これからアルコールが血糖値に与える影響や適正なアルコール摂取量、また糖尿病患者さんの飲酒に関わる注意点についてこれまでの臨床研究結果を交えながらお話ししていきたいと思います。

 

まずアルコールが血糖値に与える影響を理解するために、糖代謝の仕組みについて簡単に説明致します。

血糖値は血液中のグルコース濃度によって決まりますが、食事により吸収され血液中へ放出されたグルコースは、膵臓から分泌されるインスリンの作用により肝臓、筋肉、脂肪組織これらの細胞内へ取り込まれ、それをエネルギーとして利用したり貯蓄したりします。その結果、血液中のグルコース濃度は上がらずに常に血糖値は一定にコントロールされます。

 

そして次にアルコール代謝の仕組みについてです。

まずアルコールは胃と小腸から吸収され、吸収されたアルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素やミクロソームエタノール酸化酵素系によって悪酔いの原因となるアセトアルデヒドに代謝されます。アセトアルデヒドはさらにアルデヒド脱水素酵素により酢酸へ代謝され、酢酸はアセチルCoAに変換された後、脂肪酸あるいはケトン体となるか、クエン酸回路に入り最終的に二酸化炭素と水になり体外へ排出されます。

 

このアルコールから酢酸までの代謝の過程で、補酵素のNADという物質がNADHという物質に多量に変換されていきます。この変化がクエン酸回路の活性を低下させ、その結果、脂肪酸の合成が進みます。これらの変化が糖代謝に大きな影響を及ぼすこととなります。

 

アルコール代謝で生じた補酵素NADの減少、NADHの増加、脂肪酸合成の亢進により肥満が生じ、また肝細胞内脂質の蓄積を引き起こします。それにより、それぞれの臓器でのグルコースの取り込みに障害が生じてしまいます。またさらにアルコール自体が膵臓からのインスリン分泌を抑制することも報告されています。その結果、血液中のグルコース濃度が低下せず血糖値は高いままとなってしまうのです。

 

そしてアルコール摂取は食欲を増進させ、自己制御ができなくなるため、つい食べ過ぎを起こしてしまいます。

また長期間のアルコール摂取は膵疾患や肝疾患を引き起こし、二次性糖尿病の原因となります。

以上のことから、アルコール摂取は血糖値上昇に大きく関与するということが言えます。

 

では、アルコール飲料の種類によって血糖に及ぼす影響に差はあるのでしょうか?

こちらはアルコール飲料に含まれるエネルギー量と栄養素について種類別に示したものです。

アルコールそのものは1gあたり7.1kcalのエネルギーがあり、それぞれのアルコール量、含まれる糖質やタンパク質の量によってエネルギーに多少差があります。確かにビールや日本酒などのように比較的糖質の高いアルコールは、糖質を含まない焼酎やウイスキーに比べるとそのまま血糖上昇につながりやすいと言えます。しかし、先ほどお話しした通りアルコール自体が血糖上昇に関与するため、お酒の種類を変えたとしてもアルコールである以上糖代謝に影響します。よって、糖質の低いお酒なら血糖値は安心とは言いきれないのです。

また、注意が必要なのはここにお示ししたようにアルコール飲料には栄養素が殆ど含まれていないということです。アルコールはエンプティカロリーであると聞いたことがあるかもしれません。直訳すると空っぽのカロリーという意味になりますが、それはアルコールがカロリーゼロであるという意味ではなく、栄養素がないという意味から派生した言葉であると考えられます。

よってカロリー制限のために飲酒した分だけ食事を抜く方がたまにいらっしゃいますが、これは栄養不足の原因となるため避けなければなりません。

 

アルコール飲料の表示にも注意が必要です。

市販されているビールの中には低カロリーやカロリーオフといった表示のされているものがあります。

しかし、厚生労働省の栄養表示基準では100ml 中糖質が0.5g以下のものは、「無し」「ゼロ」「ノン」「レス」と表示し、

100ml 中糖質が2.5g以下のものは、「低」「控えめ」「オフ」「ライト」「ダイエット」などと表示することが許可されています。

つまり、糖質ゼロと表示されていても実際ゼロではなく、糖質が少ないからといって多量に飲むとエネルギー過剰となりうるため注意が必要なのです。

 

これまでアルコールは血糖値を上げる影響があるとお話ししてきましたが、一方で適量の飲酒ならむしろ糖尿病予防になるという話をどこかで聞いたことがあるかもしれません。

実際に、海外の臨床研究では、まったく飲酒をしない人と比べて中等量の飲酒をする人の方が2型糖尿病を発症するリスクが低かったとするデータが示されています。ただ中等量を超えて多量に飲酒すると再びリスクは上昇傾向となり、いわゆるU字カーブの関係が飲酒量と糖尿病発症リスクとの間にあることが知られています。

 

しかしこの飲酒量と糖尿病発症リスクのU字カーブの関係はアジア人、特に男性では確認できないと報告されています。つまりある程度飲酒している方が糖尿病発症リスクが低いという疫学的知見は、日本人、特に男性では当てはまらないということです。

ただし、他の臨床研究結果によると、このU字カーブの関係が当てはまらないのは痩せ型の男性の場合のみであるという報告や、日本人女性の場合はそもそも飲酒量と糖尿病の関係は明らかでないとする報告もあり結果が一致していないのが現状です。

 

そして、アルコール過剰摂取による身体疾患は糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常、肝硬変や悪性腫瘍など多岐にわたり、それぞれの疾患によって飲酒量とリスクの関係にはさまざまなパターンがあります。特に高血圧や脂質異常症などは飲酒量と比例関係にあると報告されています。これらの結果も踏まえると、現時点での見解としては少なくとも多量の飲酒は控えた方が良く、全く飲酒の習慣がない人に飲酒を勧める程のメリットは現時点ではないということが言えます。

 

飲酒習慣が無ければ無理して飲む必要はなく、飲むなら少量に留めた方が良いということは分かりましたが、実際どれくらいの量なら適正と言えるのでしょうか?これまでの臨床研究結果を踏まえ、現在日本で推奨されている1日のアルコール摂取量の目安は20〜25gを上限としています。このアルコール20〜25gという量を実際のアルコール飲料に置き換えると、ビールなら中瓶一本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度、焼酎ならグラス半分程度、ウイスキーならダブル1杯が目安とされています。ただし女性や高齢者など一般的にアルコール代謝能力の低いと考えられる人ではアルコール関連の臓器障害を起こしやすいため、この目安よりもさらに少量が適当とされています。

 

アルコールは血糖上昇に影響するため、特に糖尿病患者さんの場合には日常的な飲酒が可能かどうか判断するための条件があります。

❶血糖コントロールが良好で糖尿病合併症がない

❷膵臓や肝臓の病気がない

❸狭心症・心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化による病気がない

❹肥満、高血圧、脂質異常症や痛風などがない

❺そして、アルコールを飲み始めても必ず決められた量でとどめることができる

これらの条件を参考にかかりつけの先生と適正な飲酒量や飲酒の際の食事の注意点などについてよく相談しましょう。

 

そして飲酒する場合には糖尿病治療においていくつか注意点があります。先にお話ししたようにアルコールはほぼ栄養素を含まないため、他の食品と交換することができません。飲酒する代わりに食事を抜くことはやめましょう。

またアルコールは食欲を増進させます。お酒のつまみのカロリー量にも注意し食べすぎないよう気をつけましょう。

そしてインスリンや経口血糖降下薬のSU薬を使用している場合や食事せずに飲酒を続けている場合は低血糖を起こすことがあります。

またビグアナイド薬を使用している場合、多量飲酒で乳酸アシドーシスという合併症を起こすリスクがあるためかかりつけの先生によく確認しましょう。

 

アルコールと血糖値について以上のことをお話しさせていただきました。

日常的なアルコール摂取は血糖上昇につながるため積極的には勧められないものです。

しかし社会生活を送るなかで度々飲酒の機会があるものも事実です。

適正なアルコール摂取量を知り、注意点をよく理解した上で上手にお酒と付き合っていきましょう。

 

以上です。ありがとうございました。

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