テキスト版を御利用の皆様へ  このテキスト版は、同じホームページに掲載されているPDF版をもとに作成していますが、テキストでは表現できない事項について、主に次のような補足をしています。 ・下線や四角囲み等、何らかの強調が行われているか所を<>で囲みます。 ・表の存在や図の説明等、必要な注釈を[]で記載します。 ・表については適宜文章に置き換えているほか、読み上げソフトによる聴きやすさなどを考慮して、表項目の縦横を入れ替えるなどの工夫をしているものがあります。 ------------------------------ 第3部 障害福祉施策を取り巻く状況 [51ページ] 1 障害者制度改革の進展 障害福祉施策の動向 (表) 平成18(2006)年4月 ・障害者自立支援法の施行(就労支援の強化、障害者程度区分によるサービス基準の明確化、サービス提供主体の市町村への一元化など) 平成18(2006)年12月 ・バリアフリー新法の施行(高齢者や身体障害者等の移動の円滑化など) 平成19(2007)年9月 ・障害者権利条約に署名 平成22(2010)年12月 ・障害者自立支援法の改正(利用者負担の見直し、発達障害が対象として明確化など) 平成23(2011)年8月 ・改正障害者基本法の施行(障害者の定義の見直し、差別の禁止) 平成24(2012)年10月 ・障害者虐待防止法の施行(虐待の分類、虐待を発見した国民の通報義務、市町村虐待防止センター・都道府県権利擁護センターの設置など) 平成25(2013)年4月 ・障害者総合支援法の施行(難病患者を対象として追加、地域生活支援事業の追加等) ・障害者優先調達推進法の施行(国や地方公共団体による障害者就労施設等からの物品の調達の推進など) 平成26(2014)年1月 ・障害者権利条約の批准 平成26(2014)年4月 ・改正精神保健福祉法の施行(保護者制度の見直し、医療保護入院の手続きの見直しなど) 平成27(2015)年1月 ・難病法の施行(医療費助成の対象疾病の拡大など) 平成28(2016)年4月 ・障害者差別解消法の施行(障害者に対する差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供義務など) ・改正障害者雇用促進法の施行(雇用分野での障害者差別禁止、合理的配慮の提供義務、法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加える(平成30(2018)年4月施行)) 平成28(2016)年5月 ・成年後見制度利用促進法の施行(成年後見制度の利用促進のための基本計画の策定など) 平成28(2016)年8月 ・改正発達障害者支援法の施行(ライフステージを通じた切れ目のない支援、家族なども含めた、きめ細やかな支援を推進、発達障害者支援地域協議会の設置など) [52ページ] (表続き) 平成29(2017)年2月 ・ユニバーサルデザイン2020行動計画の策定(心のバリアフリー及びユニバーサルデザインの街づくりに向けた取組の推進など) 平成30(2018)年4月 ・障害者総合支援法及び児童福祉法の一部改正法の施行(「自立生活援助」、「就労定着支援」の創設など) ・地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の改正(地域共生社会の実現に向けた取組の推進など) 平成30(2018)年6月 ・障害者による文化芸術活動の推進に関する法律の施行(文化芸術活動を通じた個性・能力の発揮、社会参加の促進など) 平成30(2018)年10月 ・ギャンブル等依存症対策基本法の施行(各段階に応じた防止・回復のための対策、日常生活・社会生活の支援など) 平成30(2018)年12月 ・ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律(ユニバーサル社会実現推進法)の施行 令和元(2019)年6月 ・障害者雇用促進法の一部改正法の施行(短時間労働以外の労働が困難な状況にある障害者の雇入れ及び継続雇用の支援など) ・視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)の施行(アクセシブルな書籍(点字図書・拡大図書等)や電子書籍等の量的拡充、質の向上など) 令和2(2020)年6月 ・高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の一部改正法の施行(移動円滑化に関するソフト面の対策強化、バリアフリー基準適合対象の拡大など) [53ページ] 2 川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョンに基づく取組の推進 (1)川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョンに基づく取組の推進 1 社会環境の変化  社会環境の変化として、本市は比較的若い都市ですが、今後、高齢化率が21%を超え、超高齢社会が到来します。また、急速な高齢化の進行とともに、少子化が同時に進むことが予測されています。少子高齢化の進行は、同時に、生産年齢人口の減少を伴い、社会・産業構造の変化、ケア人材の不足などが進んでいくことにつながります。特に、今後、後期高齢者が増加することで、慢性疾患、さらには複数の疾患を抱えながら生活を送る高齢者が増加していき、疾病構造の変化が想定され、「治す医療」から「治し支える医療・介護」への転換が必要となっています。 2 地域包括ケアシステム推進ビジョン策定の背景  超高齢社会に突入し疾病構造などの社会環境の変化に対応していくため、国においては、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」に、高齢者を対象として、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保された体制づくりを目指す地域包括ケアシステムの構築について規定されています。  本市では、高齢者施策が、住宅施策等の関連施策との連携を図ることや、認知症の人を支える生活支援等、他の様々な施策と仕組みを共有できる部分が多いと考えられることから、そのようなシステムの汎用性に着目し、昨今の家族・地域社会の変容などによるニーズの多様化・複雑化による地域における生活課題の多様性の高まりを踏まえて、高齢者に限らず、障害のある方や子ども、子育て中の親などを加え、現時点で他者からのケアを必要としない方々を含め、全ての地域住民を対象として、平成27(2015)年3月に、関連個別計画の上位概念として、「川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョン(以下、「推進ビジョン」という。)」を策定しました。  また、地域包括ケアシステムの基幹的な取組としては、様々な医療・介護等の専門職による協働からはじめられましたが、まちづくりの側面も重要と考えられ、地域包括ケアシステムの構築に向けては、保健・医療・福祉分野に限らず、幅広い行政分野が総合的に取り組んでいくことを目指しています。  さらに今日では、国においても、高齢者に限らず多様な対象者が想定され、地域包括ケアシステムの普遍化に向け、「地域共生社会の実現」を目指し、まちづくりや地方創生などの取組との連携とともに、①本人・世帯の属性に関わらず受け止める「断らない相談」、②狭間のニーズに対応できるよう、地域資源を活かしながら、就労支援、居住支援などを提供することで社会とのつながりを回復する「参加支援」、③地域社会からの孤立を防ぎ、地域における多世代の交流や多様な活躍の機会と役割を生み出す「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に行うことが求められています。 [54ページ] 3 推進ビジョンの概要  推進ビジョンは、「川崎らしい都市型の地域包括ケアシステムの構築による誰もが住み慣れた地域や自らが望む場で安心して暮らし続けることができる地域の実現」を基本理念とし、「①意識の醸成と参加・活動の促進」「②住まいと住まい方(地域コミュニティ等との関わり方)」「③多様な主体の活躍」「④一体的なケアの提供」「⑤地域マネジメント」の基本的な5つの視点で取り組むものです。  これらの取組を通じて、住み慣れた地域で自分らしさを発揮し、自立した日常生活を営むことができるように、生活に必要な要素が包括的に確保された体制づくりとして、地域包括ケアシステムの構築を目指しています。 (図) 地域包括ケアシステムのイメージ図 一生住み続けたい最幸のまち・川崎をめざして <基本理念>  川崎らしい都市型の地域包括ケアシステムの構築による、誰もが住み慣れた地域や自らが望む場で安心して暮らし続けることができる地域の実現 <基本的な5つの視点> 1意識の醸成と参加・活動の促進  地域における「ケア」への理解の共有とセルフケア意識の醸成 2住まいと住まい方  安心して暮らせる「住まいと住まい方」の実現 3多様な主体の活躍  多様な主体の活躍による、よりよい支援(※)の実現 ※「川崎市地域包括ケアシステム連絡協議会運営委員会」での議論を踏まえて、民間企業なども含めたより多様な主体の参画が進んでいることから、「3多様な主体の活躍による、よりよいケアの実現」の「ケア」を「支援」と読み替えて表記しています。 4一体的なケアの提供  多職種が連携した一体的なケアの提供による、自立した生活と尊厳の保持の実現 5地域マネジメント  地域全体における目標の共有と地域包括ケアをマネジメントするための仕組みの構築 出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」(地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業)、平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業、2016年をもとに作成 [図の説明終わり] [55ページ] (2)本市における地域包括ケアシステム構築に向けたロードマップ  ロードマップとしては、推進ビジョンを策定して以降の平成27(2015)年度から平成29(2017)年度までを第1段階の「土台づくり」の期間として、平成30(2018)年度から令和7(2025)年度までを第2段階の「システム構築期」、令和8(2026)年度以降を第3段階の「システム進化期」として、地域包括ケアシステムの構築を目指しています。  団塊ジュニア世代が65歳以上となる令和22(2040)年以降には、高齢者ひとり暮らし世帯や夫婦のみの世帯の増加、認知症の人の増加も見込まれるなど、医療・介護サービスの需要が更に増加・多様化することが想定されています。  こうした中、令和7(2025)年度までのシステム構築に向けた取組を着実に進めるとともに、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた「新しい生活様式」や、デジタル化・スマート化など新たな技術を取り入れた社会(Society 5.0)を意識しながら、安心できる社会保障の構築と包摂的な社会の実現に向けて、いわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上となる令和22(2040)年度を見据えた中長期的な視点で取組を推進します。 (図) <第1段階(土台づくり)>(平成29(2017)年度まで)  推進ビジョンの考え方の共有を進め、行政及び事業者、関係団体・機関などの専門組織は、システム構築に向け、必要な資源・体制・手法等を検討し、具体的な事業展開が図られるような土台づくりを行う。 <第2段階(システム構築期)>(令和7(2025)年度まで)  将来のあるべき姿についての合意形成を図り、行政をはじめ、事業者や町内会・自治会などの地縁組織、地域・ボランティア団体、住民などの多様な主体が、それぞれの役割に応じた具体的な行動を行い、システム構築につなげる。 <第3段階(システム進化期)>  人口動態や社会状況に応じたシステムとして、行政も、新しい公共私相互間の協力関係を構築するデザイン機能を発揮し、システムの進化を図る。 [図の説明終わり] [56ページ] (3)推進ビジョンの推進体制 1 地域みまもり支援センターによる取組  推進ビジョンの策定に伴い、平成28(2016)年4月には、推進ビジョンの具体的な推進に向けて、住民に身近な区役所で「個別支援の強化」と「地域力の向上」を図るとともに、専門職種のアウトリーチ機能を充実して連携を強化し、地域包括支援センターや障害者相談支援センター、児童家庭支援センターなどの専門相談支援機関をはじめとして、連携を推進するため、各区保健福祉センター内に「地域みまもり支援センター」を設置しました。なお、地域みまもり支援センターについては、センター内での個々人へのケアを中心とした専門支援機能との連携の強化を図るため、平成31(2019)年4月に、保健福祉センター全体を「地域みまもり支援センター(福祉事務所・保健所支所)」と改称しました。 2 取組の推進イメージ  本市においては、住民に身近な区役所と市役所(本庁)が全市的な調整を図り調和のとれた施策を展開していることから、それぞれの適切な役割分担によって、一体的に取組を推進します。 その際に、基本的な視点として、①地域福祉に関する市民啓発を図るための「意識づくり」、②地域における人材養成や居場所づくりをはじめとした取組を推進する「地域づくり」、③「意識づくり」や「地域づくり」を専門多職種と共に、地域においてシステム化していくための「仕組みづくり」を3つの視点として、「自助」「互助」「共助」「公助」の組み合わせによるシステム構築を目指します。 (図) [基本的な5つの視点との関係性は次のとおりです] [①「意識づくり」は「1 意識の醸成と参加・活動の促進」、②「地域づくり」は「2 住まいと住まい方」「3 多様な主体の活躍」、③「仕組みづくり」は「4 一体的なケアの提供」「5 地域マネジメント」] [「意識づくり」「地域づくり」「仕組みづくり」の3つが相互に双方向の関係にあり、「自助」「互助」「共助」「公助」の組み合わせによるシステム構築を目指します] [図の説明終わり] [57ページ] 3 推進ビジョンと関連個別計画の関係性  地域包括ケアシステム構築に向けて、総合計画のもと、推進ビジョンを上位概念として、「かわさきいきいき長寿プラン」「かわさきノーマライゼーションプラン」「川崎市子ども・若者の未来応援プラン」等の関連計画と連携を図りながら取組を推進してきました。  令和2(2020)年度における「第5次かわさきノーマライゼーションプラン」の策定にあたっては、本市の障害福祉施策に関する行政計画として、住民の視点から地域福祉を推進していくための地域福祉計画(社会福祉法に基づく福祉に関する上位計画)と連携を図りながら、地域包括ケアシステムの構築につなげていきます。 (図) 川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョン 「川崎らしい都市型の地域包括ケアシステムの構築による誰もが住み慣れた地域や自らの望む場で安心して暮らし続けることができる地域の実現」 [推進ビジョンの上位計画]  川崎市総合計画(第2期実施計画(平成30年度~令和3年度))  「成長と成熟の調和による持続可能な最幸のまち・かわさき」 [推進ビジョンを上位概念とする関連計画]  第6期川崎市・各区地域福祉計画(令和3年度~令和5年度)  第8期かわさきいきいき長寿プラン(令和3年度~令和5年度)(川崎市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画)  第5次かわさきノーマライゼーションプラン(令和3年度~令和8年度)(川崎市障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画)  子ども・若者の未来応援プラン(平成30年度~令和3年度)  第2期かわさき健康づくり21(平成25年度~令和4年度)(川崎市健康増進計画)  かわさき保健医療プラン(平成30年度~令和5年度)  川崎市成年後見制度利用促進計画  その他関連計画 [これらの計画は、「これからのコミュニティ施策の基本的考え方」と相互に連携し、一体的に施策を展開します。また、川崎市及び各区社会福祉協議会地域福祉活動計画とも連携します] [図の説明終わり]  なお、地域包括ケアシステムの構築に向けては、令和元(2019)年度に、本市において開催した外部有識者による「超高齢社会の到来に向けた地域包括ケアシステムのあり方検討会議」での検討を踏まえ、市民一人ひとりを支える上での「個別支援の充実」と「地域力の向上」を不可分一体で進めていくこととし、個人へのアプローチにあたっては、一人ひとりが生活の中で築いている本人に由来する地域資源(本人資源)に着目した対応を図ることが重要であるとともに、家族機能をどのように捉えていくかに留意していく必要があります。  こうした視点について、施策を推進する中で着実に活かしていくために、①小地域ごとの特性に配慮した施策展開、②分野横断的な施策連携の実現、③民間企業なども含めた多様な主体の連携の手法開発などを取組の視座として、地域包括ケアシステムの構築を推進します。  [58ページ] 4 推進ビジョンの基本的な5つの視点に沿った取組  5つの視点は、①セルフケア(民間サービス等を購入することを含む。)を自発的に行うなど、「自分でできることは自分でする」という意識を前提に、生活の基盤となる②「住まい」や「住まい方(地域コミュニティ等との関わり方)」と、③多様な主体による互助的な支え合いを含めた「生活支援」に加え、疾患を抱えながらでも地域で暮らし続けられるための④医療や介護等の「専門的なサービス」が一体的に提供されるようなまちづくりに向けて、⑤行政が「包括的な地域マネジメント」を推進する、という一連の流れとして相互に関連しています。  5つの視点に基づく具体的な取組に向けた考え方と、かわさきノーマライゼーションプランに関連する主な取組は下記のとおりです。 (表) 基本的な視点1 意識の醸成と参加・活動の促進 <視点に基づく具体的な方策の考え方>  全ての住民が社会環境の変化に対応する意識を持ち、自発的に努力するとともに、「共生の意識」を育み、「自立した生活」と「尊厳の保持」を実現できる地域を目指す。 <関連する主な取組>  ①「かわさきパラムーブメント」の推進  ②地域や教育の場で障害の理解促進を図るなど、「心のバリアフリー」の推進  ③スポーツや文化芸術活動等の社会参加の促進  ④障害者差別解消法や障害者虐待防止法など、障害のある方の権利を守る取組の推進 基本的な視点2 住まいと住まい方 <視点に基づく具体的な方策の考え方>  生活の基盤として、本人の尊厳が十分に守られた住環境が整備され、本人の希望にかなった住まい方が確保された環境を目指す。 <関連する主な取組>  ①グループホームの整備や、特別養護老人ホームにおける高齢障害者の受入体制の整備  ②居住環境に関する専門相談や住宅改造への支援など、多角的な居住支援  ③短期入所による在宅支援や日中活動の場の確保など、多様な地域生活支援 基本的な視点3 多様な主体の活躍 <視点に基づく具体的な方策の考え方>  自立した生活の維持に向けて、インフォーマル・サポートが地域の中で提供されるよう、多様な主体の役割分担による「互助」を支える仕組みづくりを進める。 <関連する主な取組>  ①ピアサポートなどによる当事者支援  ②当事者団体、地域団体などによる多様な支え合いの推進  ③各種研修等による障害福祉サービスを担う人材の確保・育成 基本的な視点4 一体的なケアの提供 <視点に基づく具体的な方策の考え方>  本人の身体状況に応じた、専門職によるケアを多職種の連携により、切れ目なく提供できる体制づくりを進める。特に、医療と介護の円滑な連携を推進する。 <関連する主な取組>  ①地域リハビリテーションの構築  ②地域療育センターを中心とした関係機関との連携による子どもの育ちに応じた切れ目のない支援  ③医療的ケアが必要な障害児・者への支援  ④退院可能な精神障害者の地域移行・地域定着に向けた支援 基本的な視点5 地域マネジメント <視点に基づく具体的な方策の考え方>  地域の目標を地域全体で共有しながら、個々の活動が一つの目標に向かってより効果的に機能できるような仕組みづくりを進める。 <関連する主な取組>  ①障害者施策審議会における地域課題の検討  ②地域自立支援協議会における地域課題の検討  ③障害のある方の生活ニーズ調査や発達障害児(者)及び医療的ケア児実態調査の実施  こうした個々の取組について関連性を意識しながら着実に推進し、地域包括ケアシステムの構築を目指します。 [59ページ] 5 地域包括ケアシステム構築に向けた圏域の考え方  人口150万人を超える本市においては、これまでの歴史や文化に根差した多様性があり、地域によって生活上の課題も異なることから、地域包括ケアシステムの構築に向けては、小地域ごとの特性に配慮した施策展開が重要です。  また、生活に身近な課題や問題を発見し、住民を中心とした地域福祉活動を展開するには、区、さらに地域の実情に応じたより小さな圏域を単位とすることが望ましいことから、「第5期川崎市地域福祉計画」においては、「区域」を第1層とし、相談や居場所など、地域の課題に公的に対応し地域づくりを進めてきた概ね中学校区を基本とする圏域を第2層として、「地域ケア圏域」としてきました。  今般、これまで行政が取組を推進してきた状況を踏まえ、「地域ケア圏域」を44圏域に分け、地区カルテ等を活用して、より多くの方々と共に地域の状況を共有していきます。なお、この圏域は、介護保険制度上の日常生活圏域としても位置付けます。  今後は、さらに地域の実情に応じて、より小規模な地域の状況把握や課題解決が重要となっていくことから、小地域を第3層としながら、「地域ケア圏域」については、より市民に身近な地域での様々な活動の展開を目指して、圏域の設定のあり方を検討していきます。 (表) 市域(人口約154万人)においては、市全体の調和を保ちながら地域福祉の向上を図るための取組を推進する。 第1層 <圏域>  区域(7区)(人口 約17万人~26万人) <圏域の考え方> ・効果的なサービス提供を実現するために区社協、地域みまもり支援センターなどの公的機関があり、区役所が中心となって、地域課題を把握し、住民と共有しながら、各地域を支援する地域福祉を推進する。 第2層 <圏域>  地域ケア圏域(44圏域)(人口平均約35,000人 中学校区(51区)) <圏域の考え方> ・身近な地域において、相談や居場所など、地域の課題に公的に対応し、地域づくりを進める。 ・地区社協や地区民児協を組織し、活動を推進する。 第3層 <圏域>  町内会・自治会(650組織)、小学校区(114校区)など <圏域の考え方> ・町内会、自治会の班(組)程度の日常的な支え合いを基本としながら、民生委員、児童委員などが、地域の状況を把握し、見守りや日常の生活支援などを行う。 ・地域住民の生活課題の解決に向けて、見守りなど具体的に日常的な活動を行っていくことが求められる。 ・PTAを中心に、子どもが健やかに成長できる教育環境づくりを各学校と共に推進していく。 ※令和2(2020)年5月1日現在  [60ページ]  また、「第6期川崎市地域福祉計画」においては、地域包括ケアシステム構築に向けた基幹的な計画としての位置付けを高め、小地域において、住民同士の「地域づくり」が進んでいくように、各区地域福祉計画に「地域ケア圏域」ごとの地域の概況を掲載するとともに、地区カルテを活用した地域マネジメントを推進します。さらに、「個別支援の充実」と「地域力の向上」を不可分一体で進め、包括的な支援体制づくりにつなげます。 各区の地域ケア圏域について (表) [以下、番号 圏域名 町名の順。以降同様] No.1 中央第一地区 旭町、砂子、駅前本町、榎町、境町、新川通、鈴木町、東田町、富士見1丁目、堀之内町、本町、港町、宮前町、宮本町 No.2 中央第二地区 池田、小川町、貝塚、京町1・2丁目、下並木、堤根、日進町、南町、元木 No.3 渡田地区 小田1丁目、渡田、渡田山王町、渡田新町、渡田東町、渡田向町 No.4 大島地区 大島、大島上町、中島、富士見2丁目 No.5 大師第一地区 伊勢町、川中島、大師駅前、藤崎 No.6 大師第二地区 池上新町、観音、台町、四谷上町、四谷下町 No.7 大師第三地区 浮島町、江川、小島町、塩浜、田町、大師河原、千鳥町、出来野、殿町、東扇島、日ノ出、水江町、夜光 No.8 大師第四地区 昭和、大師公園、大師町、大師本町、中瀬、東門前 No.9 田島地区 浅野町、池上町、追分町、扇島、扇町、鋼管通、桜本、田島町、浜町、南渡田町 No.10 小田地区 京町3丁目、浅田、大川町、小田2~7丁目、小田栄、白石町、田辺新田 [以上、No.1~10は川崎区] No.11 南河原地区 大宮町、幸町、中幸町、堀川町、南幸町、都町、柳町 No.12 御幸東地区 遠藤町、小向、小向町、小向東芝町、小向仲野町、小向西町、紺屋町、神明町、戸手、戸手本町 No.13 河原町地区 河原町 No.14 御幸西地区 下平間、塚越、東古市場、古市場、古川町、新塚越 No.15 日吉第一地区 北加瀬、矢上、新川崎、鹿島田 No.16 日吉第二地区 南加瀬 No.17 日吉第三地区 小倉、新小倉、東小倉 [以上、No.11~17は幸区] [61ページ] (表続き) No.18 大戸地区 上新城、下小田中、下新城、新城、新城中町、宮内、上小田中 No.19 小杉地区 市ノ坪、小杉、小杉御殿町、小杉陣屋町、小杉町、等々力、今井上町、今井仲町、今井西町、今井南町 No.20 丸子地区 上丸子山王町、上丸子天神町、上丸子八幡町、新丸子東、新丸子町、丸子通 No.21 玉川地区 上平間、上丸子、北谷町、下沼部、田尻町、中丸子 No.22 住吉地区 大倉町、井田、井田三舞町、井田杉山町、井田中ノ町、木月伊勢町、木月大町、木月祗園町、木月住吉町、木月、苅宿、西加瀬 [以上、No.18~22は中原区] No.23 高津第一地区 宇奈根、久地、溝口 No.24 高津第二地区 梶ケ谷、上作延、坂戸、下作延、久本、向ケ丘 No.25 高津第三地区 下野毛、北見方、諏訪、瀬田、二子 No.26 橘地区 明津、蟹ケ谷、子母口・子母口富士見台、新作、千年、千年新町、久末、末長、北野川、東野川 [以上、No.23~26は高津区] No.27 宮前第一地区 梶ケ谷、野川本町、西野川、野川台、南野川 No.28 宮前第二地区 けやき平、神木、土橋 No.29 有馬・鷺沼地区 有馬、鷺沼 No.30 東有馬地区 東有馬 No.31 宮前第三地区 小台、宮崎、馬絹 No.32 宮前中央地区 宮崎1~6丁目、宮前平 No.33 向丘地区 犬蔵、五所塚、潮見台、神木本町、白幡台、菅生、菅生ケ丘、平、南平台、初山、水沢 [以上、No.27~33は宮前区] No.34 登戸地区 和泉、登戸、登戸新町 No.35 菅地区 菅、菅稲田堤、菅北浦、菅城下、菅仙谷、菅野戸呂、菅馬場 No.36 中野島地区 中野島、布田 No.37 稲田地区 宿河原、堰、長尾 No.38 生田地区 生田、東生田、東三田、枡形、栗谷、寺尾台、長沢、西生田、三田、南生田 [以上、No.34~38は多摩区] No.39 麻生東第一地区 高石、多摩美 No.40 麻生東第二地区 金程、千代ケ丘、細山、向原 No.41 麻生東第三地区 東百合丘、百合丘 No.42 柿生第一地区 王禅寺、虹ケ丘、白山、王禅寺西、王禅寺東 No.43 柿生第二地区 岡上、上麻生、下麻生、早野 No.44 柿生第三地区 片平、栗木、栗木台、栗平、黒川、五力田、白鳥、古沢、万福寺、南黒川、はるひ野 [以上、No.39~44は麻生区] (町丁コード順) ※各種統計データの捕捉などの観点から、一部、エリアを調整している場合があります。  [62ページ] 3 災害福祉の充実に向けた取組の推進  災害時には人命救助が最優先課題であり、緊急災害医療の分野では、直接的な被災から命を守る活動として、専門性の高い救命等の体制が整備されています。  一方、東日本大震災(平成23(2011)年)では、避難生活の長期化により生活機能の低下や要介護度の重度化等の二次被害が生じ、熊本地震(平成28(2016)年)ではそうした二次被害の延長で発生する災害関連死の問題が顕在化しました。このような避難生活の長期化による二次被害を防止し、生活機能確保の支援を緊急的に行うのが災害時に提供される「災害福祉」の取組です。  災害福祉の具体的な取組としては、発災時の福祉ニーズ把握、避難者のスクリーニングや支援に加え、発災前段階における災害時要援護者(自力で避難することが困難な、在宅で生活する障害のある方や高齢者)自身が行う備えや、福祉施設・支援者等における備えなども重要となります。 (1)近年の災害の概要と課題 ●東日本大震災では、障害のある方の死亡率(1.43%)は、住民全体の死亡率(0.78%)の約2倍で、死者数のうち約6割が65歳以上の高齢者となっています。 ●熊本地震では、直接死が50人であるのに対し、災害関連死が218人で、そのうち約9割が60歳以上の高齢者となっており、長期化した避難生活が大きく影響しているものと考えられます。 (2)災害福祉が目指す方向 ●避難生活の長期化による生活機能の低下や要介護度の重度化などの災害関連被害の拡大を抑制することで、防ぎ得る災害関連死を減らすことが必要です。 ●そのためには、平時の生活において福祉サービスや医療的ケアを必要としている人に、災害時においてもできる限りの支援を確保する必要があります。 ●また、医療、保健、福祉の一体的なアプローチ体制を整備し、時間とともに変化する被災者・避難者のニーズに的確に対応する必要があります。 ●「備える」「避難する」「避難生活」の全ての場面で、家族、支援者、事業者、行政等の連携による支援体制の構築を進めていきます。 [63ページ] 4 かわさきパラムーブメントの推進  東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機として、本市では多様性(ダイバーシティ)と社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)の象徴としてパラリンピックに重点を置く「かわさきパラムーブメント推進ビジョン」を平成28(2016)年度に策定し、さらに平成30(2018)年度からの第2期推進ビジョンでは、こうした大会の持つ価値を最大限に活用することを前提に、「誰もが自分らしく暮らし、自己実現を目指せる地域づくり」を目指し、「人々の意識や社会環境のバリアを取り除き、誰もが社会参加できる環境を創出すること」を理念として、未来へ遺していくものとしてのレガシーの形成に向けて全庁的な取組を推進しています。  大会終了後も引き続き、多様な主体による取組が、それぞれ自律的・持続的な活動へと発展し、レガシーが形成されるよう取組を推進していきます。 5 SDGs(持続可能な開発目標)の推進  本市では、平成31(2019)年2月に「川崎市持続可能な開発目標(SDGs)推進方針」を策定し、全庁が一丸となって、SDGsのゴールの達成に向けた取組を進めてきました。また、令和元(2019)年7月には「SDGs未来都市」に選定され、SDGsの達成に向けて、市民、企業、団体等の多様なステークホルダーと連携・協働し、「成長と成熟の調和による持続可能な最幸のまちかわさき」をめざした取組を推進しています。  このような本市のSDGsに関する取組状況を踏まえ、本計画に位置付けられた施策を推進するにあたっては、以下のSDGsのゴールの達成に寄与することを念頭に置きながら、必要な取組を進めます。 (図) [SDGsの計17つのゴールのうち、以下のゴールの達成に寄与します] 3すべての人に健康と福祉を 4質の高い教育をみんなに 8働きがいも経済成長も 10人や国の不平等をなくそう 11住み続けられるまちづくりを 17パートナーシップて目標を達成しよう [図の説明終わり] ※SDGs(エスディージーズ)は「Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」の略で、平成27(2015)年9月の国連サミットにて全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓っています。 第4部 地域リハビリテーションの推進 [67ページ] 1 地域リハビリテーションの位置付けと考え方  地域リハビリテーションの考え方は、平成12(2000)年に策定した「川崎市における総合的な地域リハビリテーションシステム構想について」など、これまでの障害関連計画においても位置付けられてきましたが、今後はその対象を拡大し、高齢者施策等とも綿密に連携しながら、全世代・全対象型の包括的な支援体制として推進する必要があります。  また、今後の更なる高齢化の進展を見据え、急速に増加する医療・介護ニーズに対応できるよう、地域包括ケアシステムを構築していくことが求められています。本市では、こうした取組を全ての地域住民を対象として進めることとしており、高齢者、障害児・者等が、可能な限り、住み慣れた場所で暮らし続けることができるようにしていくことを目指しています。  本計画においては、このような「川崎市地域包括ケアシステム推進ビジョン」に掲げる考え方に基づき、障害福祉施策を推進することとしていますが、こうした考え方を実現する具体的な取組として「地域リハビリテーション」を位置付け、次の2つの方向性により進めていきます。  まず1つ目は、対象者を年齢や疾病、障害の種別等で限定しない、全世代・全対象型の地域リハビリテーション体制を構築することです。  近年、福祉ニーズが複雑化・複合化していることが指摘されていますが、福祉制度や相談機関は、専門性を確保するために分野別の支援体制となっています。より困難な課題を抱える制度の狭間にある方や複合的なニーズを有する方が、適切な支援を受けながら地域で生活していくことができるよう、専門的な相談支援を包括的に提供できる支援体制を整備していきます。  そして2つ目は、生活全体を見渡したリハビリテーションを、地域の中で提供していくことです。  「リハビリテーション」という用語は、単に体を起こしたり、歩いたりできるようにする身体的な機能回復訓練として捉えられがちですが、本市が目指すリハビリテーションは、これにとどまらず、食事や入浴といった日常生活、掃除や料理などの生活活動、さらには地域活動や就労などの社会参加まで、生活全体を回復させるためのあらゆる活動を、リハビリテーションの対象とします。こうしたリハビリテーションを、病院や施設ではなく、生活の場である地域の中で提供するため、リハビリ専門職はもちろんのこと、ホームヘルパーや相談支援員、家族、ボランティアなど、ケアを必要とする方の生活に関わるあらゆる方が担い手となってリハビリテーションを展開することにより、住み慣れた場所で、質の高い生活を送り続けることができるようにしていきます。 [68ページ] 地域リハビリテーションのイメージ ●身体を動かせるようにするだけでなく、食事ができるようにする、洗濯をできるようにする、働けるようにするといった生活全体を支える取組を推進します。 ●病院や施設ではなく生活の場である地域の中で、リハビリ専門職だけではなく、生活に関わるあらゆる方が担い手となってリハビリテーションを展開することにより、住み慣れた場所で、質の高い生活を送り続けることができるようにしていきます。 (図) [医師・看護師、介護福祉士、ホームヘルパー、ケアマネジャー・相談支援専門員、家族・ボランティア、リハビリ専門職など、生活に関わる様々な人が支援の担い手となり、生活の場において、生活全体の質を向上させるためのリハビリを行います] <機能回復訓練> 座る・立つ・歩く等ができるように訓練する <日常生活支援> 食事・排せつ・着替え・入浴等ができるように、本人への働きかけと環境調整をする <生活活動支援> 掃除・洗濯・料理・外出等ができるように、働きかけと環境調整をする <社会参加支援> 地域の中に生きがい・役割をもって生活できるような居場所と出番づくりを支援する [図の説明終わり] [69ページ] 2 地域リハビリテーションの推進体制  本市では、これまで、「川崎市における総合的な地域リハビリテーションシステム構想について(平成12(2000)年)」や「川崎市リハビリテーション福祉・医療センター再編整備基本計画(平成20(2008)年)」、「川崎市地域リハビリテーションセンター整備基本計画(平成24(2012)年)」等に基づき、地域リハビリテーションの支援拠点を段階的に整備してきました。こうした経過を踏まえながら、今後は、次の3つを柱とした体制により、地域リハビリテーションを推進していきます。  (1)地域リハビリテーションセンターによる専門的な支援の提供  (2)総合リハビリテーション推進センターによるサービスの質の向上  (3)重層的な支援体制による効率的で包括的な相談支援の提供 (1)地域リハビリテーションセンターによる専門的な支援の提供  北部(平成20(2008)年開設)、中部(平成28(2016)年開設)、南部(令和3(2021)年4月開設予定)の3か所の地域リハビリテーションセンターでは、ケアマネジャーや障害者相談支援専門員等が実施する相談支援において必要となる専門的な評価・判定や、サービスを利用する際に必要となる専門的な調整・助言を提供します。  こうした取組を通して、本人や家族の意向や生活状況を的確に把握した上で、ニーズに即した支援を効果的に提供できるようにすることで、地域における生活の質の向上を目指します。 多職種・多機関連携による地域リハビリテーション (図) [地域リハビリテーションセンターでは、医師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理職、社会福祉職などが、区役所や地域包括支援センター、基幹相談支援センターが行う相談支援において必要となる専門的な評価・判定を行うとともに、ケアマネジャーや障害者相談支援専門員等に対する調整・助言などを行います] [図の説明終わり] [70ページ] (2)総合リハビリテーション推進センターによるサービスの質の向上  令和3(2021)年4月に開設予定の総合リハビリテーション推進センターは、障害者更生相談所と精神保健福祉センターの機能を中核としつつ、高齢者や障害児も含めたサービスの質の向上やネットワーク化を推進する機関として位置付け、保健医療福祉に関する地域資源の全市的な連携拠点としていきます。  その具体的な役割として、地域リハビリテーションセンターの統括を行うとともに、民間の施設・事業者も含めた全市的なサービスの質の向上を図るため、以下のような保健医療福祉サービスに関する調査研究・連携調整・人材育成を推進します。なお、人材育成については、併設する総合研修センターと共同で取組を展開します。 (図) <高齢者支援の課題> ・医療・介護連携体制の整備 ・リハビリ機能の強化 ・看取り支援 ・認知症対策など <障害者支援の課題> ・難病や高次脳機能障害の支援 ・発達障害者支援 ・ひきこもり支援・自殺対策 ・依存症対策など <障害児支援の課題> ・学校や保育所等との連携 ・障害児の放課後対策 ・医療的ケア児支援など [現行の障害者に対する支援に加え、高齢者や障害児も含めたサービスの質の向上やネットワーク化を推進するため、総合リハビリテーション推進センターでは、調査研究・連携調整・人材育成の役割を担います] <調査研究機能> ・関連施策や先進事例の情報を収集するとともに、本市における支援のあり方を検討(外部研究機関との共同研究体制を検討) <連携調整機能> ・調査研究の成果を踏まえ、市内の施設・事業所間の連携強化に向けた助言・支援を実施(法人や事業所をまたいだ連携体制の構築) <人材育成機能> ・相談支援従事者等(ケアマネジャー等)に対して、専門的な研修を実施(併設の総合研修センターと共同で実施) [図の説明終わり] [71ページ] (3)重層的な支援体制による効率的で包括的な相談支援の提供  少子高齢化が進展する中で、家族形態の変容とともに、支援が必要な方を地域で支え、課題を解決していくという地域力が低下傾向にあります。  こうした中、障害のある方の親など支え手となる家族の高齢化や、障害のある方自身の加齢に伴う障害の重度化・重複化、医療技術の進歩等による医療的ケア児の増加など、支援ニーズはますます増加・多様化しています。  このような状況においても、誰もが可能な限り、住み慣れた場所で暮らし続けることができるようにするためには、これまでの分野別、年齢別の支援にとどまらず、対象者を限定しない、全世代・全対象型の地域リハビリテーションを展開し、個々のニーズに対して迅速かつきめ細かな支援を提供しつつ、高度で専門的なニーズや多様なニーズにも対応できるようにしていくことが必要となります。  このため本市では、相談支援体制を3次体制に再編した上で、1次相談では、ニーズのある全ての方を対象として、ケアマネジャーや相談支援専門員等が相談に応じるとともに、2次相談では、権利擁護や虐待等による専門的な支援が必要な方を対象として、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャー等により1次相談機関をバックアップする体制とします。その上で、3次相談では、2次相談だけでは対応が難しい医療、リハビリ、心理、福祉用具、住環境等に関する高度な調整が必要な方を対象として、医師やリハビリ専門職、心理職等による専門的な評価・判定・調整によって、2次相談機関をバックアップしていきます。  このような重層的な相談支援体制を整備するとともに、1次・2次相談は分野別支援、3次相談は全世代・全対象型支援とすることによって、専門職を効率的に配置しながら、より多くの方の相談に応じられるよう個別性や機動性を確保しつつ、高度な相談にも包括的に応じることができるよう総合性や専門性を確保していくことを目指します。  また、ニーズの増加等によって地域リハビリテーションセンター(及び地域療育センター)だけでは対応することが難しくなっている状況もあることから、各分野の実情を踏まえた新たな相談支援機関を創設するなどにより、3次相談機能の更なる充実に向けた取組について検討していきます。 [72ページ] 相談支援体制の階層別機能 (図) ○個別性・機動性が求められる相談は、1次相談で対応 ○権利擁護や虐待等の支援が必要な相談は、2次相談でバックアップ ○専門的な評価・判定が必要な相談は、3次相談でバックアップ →専門職を効率的に配置し、高度な相談にも包括的に応じることができる体制を整備 <1次相談>(ケアマネジャー、相談支援専門員等) ○対象者は、支援ニーズのある全ての方 ○支援内容は、日常生活に関する相談全般(サービスの利用調整等) <2次相談>(保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャー等) ○対象者は、専門的な支援が必要な方 ○支援内容は、専門的な相談支援(権利擁護や虐待対応等) <3次相談>(医師・保健師、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、心理職・社会福祉職) ○対象者は、高度な調整が必要な方 ○支援内容は、専門的な評価・判定・調整(医療、リハビリ、心理、福祉用具、住環境等) [図の説明終わり]  なお、上記の「相談支援体制の階層別機能」に、本市の相談支援機関を具体的に当てはめると、下記の図のとおりとなります。 川崎市が目指す重層的な相談支援体制 (図) [1次相談については、高齢者支援は居宅介護支援事業所、障害者支援は指定特定相談支援事業所、障害児支援・子ども家庭支援は、児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所、幼稚園、学校などが担います] [2次相談については、高齢者支援は地域包括支援センター、障害者支援は障害者相談支援センターが担うとともに、各区地域みまもり支援センターが年齢や障害の有無を問わず、相談窓口機能を担います] [3次相談については、地域リハビリテーションセンターが高齢者や障害児などを含めた包括的な相談機能を担うとともに、令和3(2021)年度以降、高齢者支援については地域リハビリテーション支援拠点、障害児支援については子ども発達・相談センターを新たに整備します] [図の説明終わり] [73ページ] 3 地域リハビリテーションに関する各施策の方向性 (1) 高齢者施策  本市の地域リハビリテーションは、要介護状態又は要支援状態となった高齢者にも対応するものとしていきますが、対象となる方が非常に多いことから、市が設置する3か所の地域リハビリテーションセンターだけで、全ての高齢者のニーズに対応することは困難です。このため、高齢者を対象とした地域リハビリテーションについては、民間の病院や老人保健施設等に地域リハビリテーション支援拠点を整備し、両者が連携して推進していく体制を検討します。  また、生活全体にわたってリハビリテーションを展開するためには、ケアマネジャー・地域包括支援センターによる相談支援・ケアマネジメントとの連携や、サービスを提供する事業者等による協力が不可欠であることから、介護保険制度による加算の活用や総合事業による報酬設定等により、地域リハビリテーションとの連携を強化する仕組みを検討します。 高齢者施策における今後の仕組み (図) <地域リハビリテーションセンター>(市設置・市内3か所) ○障害者制度との一体的な調整が必要なケース ○権利擁護や虐待対応が必要な困難ケース ○施設や事業所との間でトラブルが生じているケース <地域リハビリテーション支援拠点>(病院・老人保健施設に設置) ○リハビリや福祉用具、住宅改修等に関する専門的な助言が必要なケース ○課題が複合化していないケース [地域リハビリテーションセンター及び新たに整備する地域リハビリテーション支援拠点が、ケアマネジャーや地域包括支援センター、ホームヘルプ、デイサービス、生活訓練、社会参加支援、福祉用具、住宅改修などのサービス提供事業者等との調整・助言・評価を行う仕組みを検討します] [図の説明終わり] [74ページ] (2) 障害者施策  本市では、障害のある方の増加に伴い、障害福祉サービス利用者が年々増加しており、障害福祉サービスを利用する際に必要となる「サービス等利用計画」を作成する計画相談支援のニーズも増加しています。また、障害福祉サービス利用以外の課題を持つ方や、複合的な課題を持つ方の相談支援ニーズも増加しています。  このため、障害福祉サービス利用者については、希望する全ての方に計画相談支援を提供できるよう、指定特定相談支援事業所(計画相談支援を提供する事業所)の拡充や施設等によるサービス等利用計画作成支援(本人希望時)の仕組みの導入等を図っていきます。  また、各区地域みまもり支援センター・地区健康福祉ステーションや地域相談支援センター(身近な地域で障害のある方やその家族等からの相談に応じ、継続的な相談支援や情報提供等を行う相談機関)、基幹相談支援センター(指定特定相談支援事業所や地域相談支援センター等に対する後方支援、広域的な調整等を行う相談機関)において、障害福祉サービス利用の有無に関わらない総合的な相談支援や、権利擁護・虐待対応等の専門的な相談支援を行う体制を整備します。  さらに、地域リハビリテーションセンターにおいて専門的な評価・判定・調整が必要な相談に対応するとともに、各相談機関をバックアップすることにより、必要とする全ての方に相談支援を提供できる体制を整備していきます。 障害者施策における今後の相談支援体制 (図) [障害福祉サービスの利用支援については、指定特定相談支援事業所において計画相談支援や基本相談支援を行うとともに、通所施設、入所施設、グループホームにおいて、本人希望時における、代替的なサービス等利用計画作成支援を行います。また、地域相談支援センターにおいて、継続的な相談支援や情報提供などを行うとともに、区・地域みまもり支援センターや地区健康福祉ステーションにおいて、支給決定を伴う相談支援や専門的な相談支援などを行います] [基幹相談支援センターにおいて、地域の相談支援機関などに対する後方支援や広域的な調整などを行うとともに、地域リハビリテーションセンターにおいて、専門的な評価・判定・調整を行い、相談支援体制全体をバックアップします] [図の説明終わり] [75ページ] (3) 障害児施策  本市では、軽度の障害やそのおそれのある子どもに関する相談や、保育所・幼稚園・学校等における対応件数が急増しており、専門的な支援を提供する地域療育センターにおいて、新規相談の待機期間の長期化や、関係機関に対する助言・支援機能が低下するなどの課題が生じています。  このため、本市における新たな障害児支援体制として、市内4か所に設置している地域療育センターの支援機能を中重度の障害に重点化するとともに、軽度の障害や要観察のニーズに対応する「子ども発達・相談センター」を整備します。  この体制により、障害特性に応じた相談支援を適時適切なかたちで提供しながら、保育所・幼稚園・学校等に対する助言・支援を一体的に提供できるようにすることで、障害児(疑いを含む)を支援する関係機関が一体となって、未就学児から就学児まで一貫した支援を展開していくことを目指します。 障害児施策における今後の仕組み (図) [軽度の障害や要観察のニーズに対応する子ども発達・相談センターを新たに設置し、専門相談支援と児童発達支援を一体的に実施します] [地域療育センターおいては、医師やリハビリ専門職等による専門的な相談・評価・判定を行うとともに、児童指導員や保育士などによる療育・発達支援など、中重度の障害ニーズに対応します] [そのような体制を整備することで、保育所、幼稚園、学校等に対して効果的に助言・支援を行う体制の構築を目指します] [図の説明終わり] [76ページ] (4) 包括的な相談支援  近年、福祉ニーズの複雑化・複合化に対応するため、分野を超えて総合的に相談に応じ、関係機関と連絡調整等を行う体制を整備することが求められています。  本市では、平成30(2018)年度に包括的相談支援に関する実態調査を実施したところ、全体の7割が分野ごとの相談で、課題が複合化しており包括的な相談支援が必要なケースでも、2割は現行体制で調整可能なものであることが明らかになりました。このため、当面の間は、現行の分野別支援体制を維持するとともに、全世代・全対象に対応する地域リハビリテーションセンターが相談支援機関をバックアップすることにより、様々なニーズのある相談にも包括的に対応できるようにしていきます。  また、課題が複合化して調整が難しいケースは、専門分野ごとの特性に配慮した全体的な調整が必要であることから、総合リハビリテーション推進センターにおいて、組織ごとの役割分担や連携方法等を整理した連携モデルを作成するとともに、分野横断的な人材育成も推進します。 川崎市における包括的相談支援の取組 (図) [区役所や民間相談機関における、高齢者、障害者、児童家庭、生活困窮等の分野別支援体制を当面維持しながら、これらの相談支援機関を地域リハビリテーションセンターがバックアップすることで、様々なニーズに対応していきます] [課題が複合化し対応が難しいケースについては、総合リハビリテーション推進センターが連携モデルを作成するとともに、総合研修センターにおいては人材育成等を行うなど、複合的な課題に対応する包括的な相談支援の取組を推進します] [図の説明終わり]