資料編2 川崎市の状況 1 大都市比較からみた特徴 市全体の人口密度は、1平方キロメートルあたり9,970人と、東京都区部及び大阪市に次ぐ過密都市である。さらに、中・北部期域における宅地開発等により、人口増加比率は0.61%と、大都市間では上位に位置している。 昼夜間人口比率は89.5と、夜間人口が昼間人口よりも多く、市外へ流出する就業者・就学者の割合は、相模原市に次いで高い状況である。 さらに、大都市間比較では、出生率と自然増加率が最も高く、死亡率が最も低い状況にある。また、平均年齢は41.5歳と最も低く、生産年齢人口(15〜64歳)の割合は70.0%と最も高く、老年人口(65歳以上)の割合は16.8%と最も低いことから、本市は若い世代の多い都市であるといえる。 2 人口・世帯 2の1 人口構造の変化 本市の総人口は、2030年(平成42年)をピークに減少。平成22年から2030年(平成42年)にかけて、生産年齢人口は横ばいも、後期高齢者人口は2.0倍に増加する見込み。 本市の総人口は、平成22年時点で約142.6万人である。今後は、2030年(平成42年)に約152.2万人まで増加した後に減少に転じ、2055年(平成67年)には約137.6万人となる見込みである。 年齢階級別にみると、後期高齢者人口は、平成22年の約10.6万人から(総人口がピークとなる) 2030年(平成42年)には約21.0万人となり、約2.0倍となる一方、生産年齢人口はほぼ横ばいの見込みである。 また、前期高齢者人口割合は平成22年の9.4%から2030年(平成42年)の10.4%と1.0ポイントの上昇にとどまるものの、後期高齢者人口割合は同期間で7.4%から13.8%と6.4ポイント上昇する見込みである。また、生産年齢人口は同期間で4.6ポイント減少する見込みである。 このような人口構造の変化は、2030年(平成42年)以降も徐々に拡大していくことが予測されている。 2の2 地域別の人口・高齢者世帯の状況 2の2のア 人口分布 中原区では武蔵小杉駅周辺を中心とした人口の大幅な社会増がみられる。 市内の人口分布をみると、南部の川崎区・幸区から中部の中原区・高津区・宮前区にかけて人口密度の高い地域が集中しており、北部の多摩区・麻生区は比較的人口密度が低い。 過去5年間の人口の増減をみると、いずれの地域においても増加傾向ではあるものの、川崎区では人口の自然減がはじまっているとともに、多摩区では人口の社会減が続いているなど、地域ごとに特徴がみられる。 また、中原区では武蔵小杉駅周辺の再開発が進み、平成25年には大幅な社会増がみられる。 75歳以上の人口の分布をみると、総人口と同様に南部の川崎区・幸区で密度の高い地域がある。特に、幸区では市営住宅の河原町団地付近を中心に、75歳以上人口が集中する地域がみられる。 2の2のイ 高齢者世帯の分布 高齢単身世帯は、「川崎区」と「幸区」に高い密度で集中。「麻生区」では、高齢単身・高齢夫婦のみ世帯率が高い。 65歳以上世帯員のいる世帯については、川崎区が約3.1万世帯と最も多く、ついで宮前区の2.3万世帯である。 世帯構成の内訳をみると、最も多いのは「その他世帯」であり、全体の約4割を占める。 なお、ここでいう「その他世帯」とは、単身世帯・夫婦のみ世帯以外の世帯を指す。 なお、高齢単身世帯については、川崎区の約1.1万世帯が最も多く、ついで中原区の6.7千世帯である。 高齢単身世帯の分布をみると、幸区の河原町団地付近を中心に、高齢単身世帯が集中する地域がみられる。 一方で、高齢単身世帯・高齢夫婦のみ世帯の占める割合の高い地域の分布をみると、麻生区で比較的高い状況である。 2の2のウ 地域別の人口構造の変化 平成22年から2030年(平成42年)にかけて、宮前区の後期高齢者人口は約2.5倍、生産年齢人口は5%減少の見込み。 市の総人口がピークとなる2030年(平成42年)よりも早い段階で人口減少がはじまると見込まれる地域は、川崎区と多摩区である。それぞれ、川崎区は2025年(平成37年)から2030年(平成42年)、多摩区は2015年(平成27年)から2020年(平成32年)にかけて減少する見込みである。 2030年(平成42年)以降も人口の増加が見込まれる地域は、中原区と高津区である。 2030年(平成42年)には市内の後期高齢者数が平成22年比で約2倍となるが、より増加率の高い地域としては、宮前区の約2.5倍、高津区の約2.2倍、麻生区の約2.1倍などが挙げられる。 一方、生産年齢人口は2030年(平成42年)には宮前区、多摩区、麻生区の3地域で減少が見込まれる(平成22年比)。特に、宮前区については、後期高齢者人口の増加と生産年齢人口の減少が他の地域と比較してより顕著である。 なお、2055年(平成67年)を見据えた場合は、現状で大幅な人口増加がみられる中原区において、後期高齢者人口が約3.7倍、生産年齢人口が2割減(いずれも平成22年比)という人口構造の大幅な変化が見込まれる。 3 要介護認定者数・障害者数 3の1 要介護認定者数 平成26年の要介護認定者数は約4.7万人。平成21年から平成26年までの5年間で約3割の増加。要支援1など軽度の増加率が比較的高い。 要介護認定者数は増加傾向にあり、平成21年から平成26年までの5年間で約3割増加しており、これは同期間における高齢者の増加率(約18%)よりも高い。 増加率は要支援1が最も高く、約1.6倍である。 3の2 障害者・児数 平成20年度から平成25年度までの5年間での増加率は、身体障害者・児数は約15.0%増、知的障害者・児数は約27.6%増、精神障害者数は約57.9%増。 平成25年度時点で、身体障害者・児数は約3.6万人、知的障害者・児数は約8.2千人、精神障害者数は約8.8千人である(各障害者手帳所持者数)。 なお、平成20年度から平成25年度までの5年間での増加率は、身体障害者・児数は約15.0%増、知的障害者・児数は約27.6%増、精神障害者数は約57.9%増である。 なお、身体障害者・児の中については、内部障害の増加率が最も高く約21.3%増である。 年齢別の内訳では、身体障害では75歳以上の占める割合が最も高く、知的障害では18〜39歳の占める割合が最も高い。精神障害では、40〜64歳及び75歳以上の占める割合が高い。 4 介護保険給付費・医療給付費(後期高齢者医療制度) 平成25年度の介護保険給付費は約673億円、後期高齢者医療制度の医療給付費は約958億円。いずれも同期間の高齢者及び後期高齢者人口よりも増加率は高い。 平成25年度の介護保険給付費は、約673億円である。平成19年の約450億円と比較すると約1.5倍であり、同期間の高齢者人口の伸び(約1.2倍)よりも高い。 医療給付費(後期高齢者医療制度)は、平成25年度時点で約958億円である。平成21年の742億円と比較すると約1.29倍の伸びとなっている。これも、同期間の後期高齢者人口の伸び(約1.21倍)よりも高い。 5 介護予防 要介護認定率は全国平均と比して高い水準にあり、効果的な予防の取組を推進することが求められている。 本市の年齢階級別性別の要介護認定率は、男性・女性のいずれについても、全ての年齢階級において全国平均よりも高い。 本市は2014年3月末時点、全国の年齢階級別性別の認定者数は「介護給付費実態調査(2014年2月審査分)」(厚生労働省)、全国の年齢階級別性別の人口は「推計人口(2014年1月1日時点)」(総務省)より算出 そのような中、本市において、平成25年度に把握された二次予防事業対象者は9,689人であったが、そのうち二次予防事業への参加承諾のあった人数は1,292人であり、承諾率は13.3%にとどまっている。 不承諾の理由として多いものは、「既に自分で何らかの活動をしている」、「本人が介護予防事業参加の必要性を感じていない」などである。 また、介護予防の認知度は、全体で5割弱程度となっているとともに、4人に1人は、介護予防の取組をしていないと回答している。そして、介護予防の取組をしていない理由としては、「情報がない」、「自分には必要ない」といった回答がそれぞれ約3割を占めている。 さらに、本市国民健康保険特定健診の実施率は市の目標値に達しておらず、特に、40歳から59歳までの実施率が低い状況となっている。 6 生活 6の1 住民ニーズ 地域住民の多くが「介護が必要になった場合でも、家族に負担をかけずに自宅で暮らしたい」と希望も、現状では「介護者の負担がある」との回答は7割以上と高い。 介護が必要になった場合の暮らし方(認定者については今後の暮らし方)は、「主に介護サービスを利用して、自宅で暮らしたい」との回答が最も多く、ついで多い「主に家族の介護を受けながら、自宅で暮らしたい」と合わせると、「自宅で暮らしたい」との回答が一般高齢者で50.2%、要介護認定者で63.5%を占める。 また、「自宅以外」を選択した一般高齢者についても、その理由は「家族に迷惑をかけたくないから(64.0%)」が最も多く、要介護認定者の特別養護老人ホームの入所申込理由も「介護をしている家族の負担が大きいため(39.2%)」との回答が多いことなどから、実際には「介護が必要になった場合でも、家族に負担をかけずに自宅で暮らしたい」とのニーズが圧倒的に高いことがわかる。 上述の通り、「介護が必要になった場合でも自宅で暮らし続ける」ためには、「家族の負担感」をいかに軽減するかが1つの大きな課題となるが、現状においては、主な介護者の負担感について「いつも感じている(36.4%)」、「時々感じることがある(39.3%)」との回答が多く、合わせると「介護者の負担感がある」との回答は75.7%と高い。 6の2 特別養護老人ホームの申込状況 特別養護老人ホームの申込者数は3,925人(平成26年10月1日時点)。その内、要介護2以下の占める割合は34.4%で、特に宮前区では38.8%と高い水準。 「介護が必要になった場合でも、自宅で暮らしたい」との希望が圧倒的に高い中、平成26年10月1日時点の特別養護老人ホームの申込者数は3,925人となっており、地域別では川崎区が814人と最も多い。 要介護度別の内訳をみると、(国が、特別養護老人ホームヘの入所を原則要介護3以上とする方針を示す中)要介護2以下の割合は34.4%であり、特に宮前区では38.8%と高く、南部から北部にかけて徐々に高くなる傾向がみられる。 6の3 人的資源 介護サービス職業従事者について、「60歳以上が約2割を占める」、「パート・アルバイト・その他の占める割合が約5割」なと、いずれも全国と比して高い水準にある 介護サービス職業従事者の年齢階級別の内訳は、60歳以上の占める割合が約2割であるなど、全体的に全国よりも年齢構成が高い水準にある。 また、雇用形態別の内訳は、「正規の職員・従業員」の占める割合が全国平均で55.0%であるのに対し、本市では44.6% と低く、「パート・アルバイト?その他」の割合が51.0%と高い。 介護を担う人材の高齢化への対応についても、大きな課題の1つであるといえる。 6の4 生活保護の状況 本市の生活保護率は、22.6%。(約3.3万人)と全国水準と比較して高い。地域別では川崎区が最も高く、世帯類型別では高齢世帯が全体の4割以上を占める 平成25年度の生活保護人員は約3.3万人であり、生活保護率は22.6%である。これは、全国平均の16.7%。(ただし、平成24年度)と比較して高い水準にあり、特に地域別では川崎区が最も高い。 世帯類型別の内訳では、高齢世帯の占める割合が最も高く44.1%(約1万世帯)である。なお、保護対象である高齢世帯の約4割が川崎区に集中している。 7 居住環境 7の1 住宅 多様な住まいの供給が求められている 高齢世帯の持ち家率は、本市全体では65歳以上の単身世帯で52.7%、高齢夫婦のみ世帯で78.3%である。一方、夫婦と18歳未満の子どもが同居する「子育て世帯」では、持ち家率は子ともの成長とともに上昇する傾向にあるが、本市全体では高齢夫婦のみ世帯の持ち家率を下回っている。 また、持ち家の高齢世帯(単身世帯・夫婦のみ世帯)と借家の子育て世帯の居住室の広さを比較すると、30畳以上の比較的広い住宅に居住する世帯は高齢世帯に多く、子育てをする3人世帯・4人世帯が居住する借家では、30畳未満の住宅が占める割合が高い。 一戸建ての空き家率をみると、本市全体では3.9%(一戸建て空家数 約7.8千戸)となっている。 「高齢単身・高齢夫婦のみ世帯」が居住する住宅の建て方別の内訳は、一戸建てが37.4%と最も高く、ついで共同住宅(中層)が26.1%と高い。また、宮前区では共同住宅(中層)が49.9%と突出して高い。一般的に中層住宅はエレベーターの設置率が低く、居住者が高齢の場合には居住環境に問題があるといえる。 高齢者等のための何らかの「設備がある」とするものは45.4%、「一定のバリアフリー化率」は39.6%となっている。今後は、居住者の身体の状況に応じた適切なバリアフリー化や住宅の供給が求められる。 さらに、高齢主世帯の住み替え状況をみると、2013年現在、この5年間で持家に住み替えた世帯は4.1%、借家に住み替えた世帯は15.1%であり、借家への単身世帯の住み替え率が高い。 7の2 地域コミュニティ 人口の増加等に伴う、地域のつながりの希薄化等が懸念される 平成25年度においては、中原区における人口の社会増が突出して高いが、年齢階級別にみると、その増分の大半が20〜34歳の若い世代であることがわかる。 地域別の人口を居住期間別にみると、「20年以上(もしくは出生時から)」の割合が最も高いのは川崎区と幸区であり、ともに36.9%である。また、「5年未満」の割合が最も高いのは中原区で37.0%である。川崎区と幸区以外の地域では、居住期間が「5年未満」の割合の方が高い。 そのような中、近所付き合いの程度については、「あいさつをする程度」が46.4%と最も高い。また、「ほとんどつきあいがない」との回答は12.1%である。中原区は「ほとんとつきあいがない」との回答が17.8%であり、他の地域と比較して高い。 しかしながら、その一方で、「近所付き合いや住民同士の交流について」は、「地域で助け合うことは大切であり、そのためにもふだんからの交流は必要だ」との回答が35.4%と最も高い。 川崎区では、一部で外国人人口が多い地域がある。 8 疾病構造 人口構造の変化に伴い「肺炎」や「脳血管疾患」の入院患者数などが急増する見込み。生活習慣病予防や介護予防、病院の機能分化や在宅療養支援の充実が課題に 年齢階級別・傷病分類別の受療率(人口10万人対)をみると、75歳以上の後期高齢者については、外来では悪性新生物(がん)が最も高く、ついで脳血管疾患、虚血性心疾患が高い。また、入院では脳血管疾患が突出して高く、ついで悪性新生物(がん)、肺炎と続いている。 また、65〜74歳の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者の外来と入院の受療率(総数)を比較すると、外来の受療率では後期高齢者は前期高齢者と比較して28.0%高い(1.28倍)のに対し、入院の受療率は159.0%高く(2.59倍)、外来の受療率と比較して非常に高くなっている。 さらに、入院の受療率の増加率を、年齢階級別・傷病分類別にみると、後期高齢者は前期高齢者と比較して、特に肺炎が585.7%と非常に高く、ついで脳血管疾患が291.7%と高くなっている。 今後の高齢化は、中長期的には前期高齢者の増加幅と比較して後期高齢者の増加幅がより大きいことから、外来患者数の伸びと比較して、入院患者数の伸びが大きくなると見込まれる。また、特に脳血管疾患や肺炎の患者数の増加率が高いことから、在院日数の長い亜急性期・慢性期の医療の伸びが比較的大きくなると考えられる。 しかしながら、今後は大幅な病床数の増加が見込まれないことから、入院患者数の増加に対しては、病院の機能分化や在宅療養支援の充実などが1つの大きな課題となる。 また、こうした受療率を低下させるため、中高年はもとより、若年からの健康づくりや生活習慣病予防、介護予防の取組の重要性も高いといえる。 9 終末期の療養場所 本人が望めば、自宅で最後を迎えることができるような体制整備が重要な課題に 終末期に「自宅で療養したい」と希望する割合は、平成20年には63.3%を占めているが、実際の自宅での死亡割合は、若干は増加傾向にあるものの、平成24年時点で16.0%となっている。今後は、本人が望めば、自宅で最期を迎えることができるような体制づくりを進めることが必要と考えられる。