川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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281アオコフェンス この原因は、貯水池周辺及び上流の桂川から流入する汚濁物質により窒素、リン等の栄養塩濃度が高まり、藍藻類が発生、増殖したことによるものであった。当時、桂川上流には15万人の定住人口があり、発生源別にみると生活系の汚濁負荷が大きかった。⑵ 富栄養化防止対策 この富栄養化防止対策として、昭和45年(1970)8月に同一水系から取水している神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市の4水道事業体は、共通する水質問題を検討するため「相模川水系水道事業者水質連絡協議会」(相水協)を設立して、水源水質の保全・対策に関する諸活動及び水源の共同監視等の事業とともに、国等への陳情を繰り返した。県の行政サイドでも富栄養化防止対策検討委員会を創設して調査を開始し、昭和56年(1981)、取水口前面にナイロン製の「アオコフェンス」を設置して、アオコの取水口への流入を約70%抑制した。その後、平成26年(2014)に架け替えを行っている。 アオコフェンスによる流入抑止効果はあるものの、異常発生したものに対する後追い対策では限界があるので、並行してその発生を抑制する検討に入った。まず、昭和57年(1982)からエアレーション装置による植物性プランクトン発生抑制調査を開始し、昭和63年(1988)に実用タイプのエアレーション装置を1基設置して、平成2年(1990)まで実用化に向けての調査を実施した。続いて平成3年(1991)に3基、翌年に4基を増設し、既存の1基と合わせ8基を稼働させ、相模湖の停滞期である4月上旬から10月上旬まで水質改善を行い、ミクロキスチスの増殖抑制効果を確認した。更に、エアレーション装置による混合水深を増加させるため、平成9年(1997)に下流側の4基、翌年度に上流側の4基の筒長を短縮した。⑶ かび臭対策 昭和48年(1973)に相模湖で初めてアナベナが原因と思われるかび臭が発生した。その後、毎年発生したものの浄水処理に影響を及ぼす規模ではなかったが、昭和52年(1977)に長沢浄水場で初めてかび臭処理のため3日間活性炭注入を行った。翌年から昭和63年(1988)まではほとんど発生がなく推移した。 平成元年(1989)に入梅後、好天が続いた相模湖では藍藻類のアナベナが急速に増殖し、アナベナが産生するジェオスミンで相模湖の湖水が着臭した。7月の台風11号の集中豪雨により湖水表面のかび臭の強い水がゲート放流され、長沢及び潮見台浄水場では、粉末活性炭処理を実施したがかび臭を除去しきれず、水道水にかび臭をつけた。その結果、7月28日から8月1日の間に、300件アナベナ第2節水質問題

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