川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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282にも及ぶ臭気の問い合わせが寄せられた。 その後もかび臭障害は現在に至るまで冷夏の数年を除いて規模や期間は異なるが毎年発生している。この間、平成2年(1990)に潮見台浄水場、平成5年(1993)に長沢浄水場に粉末活性炭注入設備が完成し、平成8年(1996)からは相模川・酒匂川水質協議会(相水協)の「相模湖のかび臭共同調査要領」に基づき共同監視を実施している。また、平成15年(2003)の水質基準省令の改正により、かび臭原因物質のジェオスミン及び2−メチルイソボルネオールが水質基準項目となり、それぞれ0.00001mg/L以下という厳しい基準値が設定されたが、活性炭注入施設や相水協の共同調査等の取組により水質基準を超過する水道水を供給することは一度もなく、市民からの問い合わせもほとんどなくなった。⑷ 環境基準と湖沼法 昭和45年(1970)に水質汚濁防止法が制定されたが、閉鎖性の高い湖沼の水質は河川等に比較し、改善が見られなかった。昭和54年(1979)にはアオコの大発生があり、取水量の3割制限を行わざるを得ない状況であった。相模湖のような富栄養化が他の多くの湖沼でも起こり、浄水障害が発生していた。相水協でも国等に陳情を行い富栄養化対策として窒素、リンの縮減を求めていた。 環境庁長官が、昭和55年(1980)10月に中央公害対策審議会で「湖沼環境保全のための制度のあり方」について諮問し、昭和59年(1984)7月に「湖沼水質保全特別措置法」(湖沼法)が制定され、翌年3月に施行された。 この法律の内容は①国による「指定湖沼」の指定、②「湖沼水質保全基本方針」の制定、③知事による「水質保全計画」の制定と推進である。 相模湖、津久井湖については、国会での議論の過程では、この法律でいう「指定湖沼」とされるといわれながら、最終的に、環境省告示第59号の環境基準の類型指定は河川A類型として維持されたため、化学的酸素要求量(COD)、窒素、リンの環境基準は制定されなかった。 富栄養化によるアオコやかび臭に悩む相水協は、環境基準における水域類型の河川から湖沼への指定替えと、湖沼水質保全特別措置法による湖沼指定を毎年要請し、神奈川県、山梨県は共同で環境対策事業を始めた。環境省は平成22年(2010)9月24日に中央環境審議会の答申を経て、相模湖、津久井湖を河川A類型から湖沼A類型、湖沼Ⅱ類型に変更するとともに、環境基準の達成期間をCODについては直ちに達成とした。一方、全窒素、全リンについては直ちに達成することはできないことから、平成26年(2014)までの暫定目標を定め、更に改定期限を迎えたことから平成28年(2016)3月31日に暫定目標を改定した。4 六価クロムによる汚染 六価クロムは自然界にはほとんど存在せず、主に工業的な要因で発生し飲用水等に混入することが知られている。六価クロムは暴露により人に対して肺がんを引き起こし、鼻及び副鼻腔のがんとの関連も認められている。 昭和47年(1972)10月15日に生田浄水場第2取水系で六価クロムを検出し、直ちに取水を停止した。翌年3月上旬には六価クロムは検出されなくなり、取水を再開した。第1編上水道第6章安全で良質な水道へ水質の探求

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