川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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283 ところが、昭和52年(1977)10月15日に再び検出された。第2取水系1号井0.013ppm、2号井0.005ppmの六価クロムを検出し、19日には最高0.020ppmに達した。その後、第2取水系3号、7号井及び第3取水系2号、3号井でも0.006ppmから痕跡程度の六価クロムを検出するようになった。いずれも水質基準値以下の濃度だったが、一時取水停止の措置を取り未汚染の井戸に切り替えた。 昭和53年(1978)末に東京都多摩公害事務所の調査により汚染源工場が判明したものの、六価クロムは継続して検出された。その後、六価クロム汚染は範囲が縮小し、濃度も低下し、昭和56年(1981)以降は全さく井で不検出となった。5 有機化合物による汚染⑴ トリクロロエチレン等 生田浄水場では、さく井の六価クロム汚染はほとんど解消したが、昭和55年(1980)に一部のさく井でアンモニア性窒素の増加等、汚染の進行がみられた。更に翌年11月11日、生田浄水場第4取水系の2号井で卜リクロロエチレン、2・3号井でテトラクロロエチレンの有機塩素系化合物が世界保健機関(WHO)のガイドラインを超え、5号井においても卜リクロロエチレンが高いことが判明したため、16日からこれらさく井の取水を停止した。 昭和57年(1982)4月27日から5月22日にかけて、公害局と合同で、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンを大量に使用している製作所の立入調査を実施したが、外部汚染の有無については不明であった。昭和59年(1984)1月17日に前記の製作所が特定施設の廃止届を公害局へ提出した。この後4月12・13日に全さく井、原水、配水池水の定量検査を実施したところ、厚生省の設定したトリクロロエチレン等の暫定水質基準を下回る結果となったが、川崎市としては極力濃度を下げる手段として、生田さく井については、汚染度の少ない井戸から取水したり、更に相模川水系の浄水を混合し給水した。 平成9年(1997)に地下水の汚染防止を図るため、水質汚濁防止法に「地下水の水質汚濁に係る環境基準」が制定され、カドミウム、トリクロロエチレン等26項目について基準値が設定された。 平成11年(1999)12月24日には「川崎市公害防止等生活環境の保全に関する条例」が改正・公布され、第47条「水道水源地域における特定有害物質の排出抑制等」で、飲料水として地下水の水質の保全を必要とする地域が指定されることになり、同「規則」で生田さく井周辺の多摩区菅等23地域が指定された。 平成13年(2001)以降、平成28年(2016)に生田浄水場が上水の浄水機能を停止するまでのさく井の有機塩素系化合物の状況は、地下水の水質保全強化が図られたこともあり、トリクロロエチレン等がいくつかのさく井から極微量検出されているが、水質管理上問題となるレベルではない。⑵ 環境ホルモン 環境ホルモンとは、動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質であると定義される。環境ホルモンが及ぼす第2節水質問題

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