川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
322/810

284影響の事例としては、一部の野生生物にオスのメス化や、その逆の現象が発生しているとの指摘や人の精子数が減少しているとの報告がなされている。 水道水における環境ホルモンの存在状況の調査としては、平成10年(1998)度に厚生省が「内分泌かく乱化学物質の水道水からの暴露等に関する調査研究」を行った。全国25か所の代表的な浄水場においてフタル酸類、アルキルフェノール類等33物質について調査した結果、フタル酸ジエチルへキシル等が水道原水から7物質、浄水から5物質、給水栓から2物質が検出された。また、水道用資機材については39品目を対象に、32物質について溶出試験を行った結果、フタル酸類、アルキルフェノール類等17物質の溶出が認められた。 厚生労働省では国際的な動向も踏まえて安全性の評価や実態把握のための調査研究を実施しており、川崎市では、毎年、長沢浄水場においてノニルフェノールやフタル酸類の検査を行っている。⑶ 農薬類 農薬類については「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等について」(平15健発第1010004号)第4により、検出指標値が1を超えないこととされ、「総農薬方式」により水質管理目標設定項目に位置づけられた。 測定を行う農薬については、浄水で検出される可能性の高い農薬を検出状況や使用量等を勘案し、測定対象農薬としてリストアップされた。 その後、使用実態や許容1日摂取量の見直しを背景に対象リストを更新し、農薬類の分類見直しが行われ四つのカテゴリーが設定された。 「対象農薬リスト掲載農薬類」は検出される可能性の高い農薬を示したもので、該当する114物質すべての検査は義務づけられていない。また他のカテゴリーの農薬であっても、地域によって必要に応じて検査を行う。 なお、川崎市では、昭和60年代から、クロロニトロフェン(CNP)及びその関連農薬の測定を開始した。平成5年(1993)に水質基準省令の改正に伴い、測定農薬項目数は37項目に増えた。その後、平成8年(1996)には50項目を超え、平成10年(1998)には60項目を超えた。平成15年(2003)の水質基準省令の改正により87項目に増え、平成18年(2006)に100項目を超えた。その後も測定項目数は増え、平成31年(2019)以降は精度管理された項目として157項目の農薬を測定している。⑷ 浄水処理対応困難物質 平成24年(2012)5月に、利根川水系においてホルムアルデヒドの水質基準超過による水質事故が発生した。その原因物質はホルムアルデヒドそのものではなく、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成するヘキサメチレンテトラミンであった。 厚生労働省では、同年7月に「水道水源における消毒副生成物前駆物質汚染対応方策検討会」を設置し、「水道水源における水質事故への対応の強化について」(平25健水発0328第2号)を通知した。その後、通常の処理では対応が困難な物質への対応について更なる検討を進め、通常の浄水処理により水質基準項目等を高い比率で生成する物質を「浄水処理対応困難物質」として新たに位置づけた。第1編上水道第6章安全で良質な水道へ水質の探求

元のページ  ../index.html#322

このブックを見る