川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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372第8節 下水処理水利用施設工事1 背景⑴ 下水利用の検討  川崎市の工業は、京浜工業地帯における優位的な立地条件から、目覚ましい伸展を続けてきた。これと並行して常に大量の工業用水が求められ、第2期拡張事業の完了後も、応急的措置として主に地下水を水源とした施設の拡張、改良を実施してきた。しかし、将来は淡水を水源とする工業用水の獲得がますます困難となることが予想され、川崎市は、これを緩和する手段の一つとして下水の利用に着目した。そこで建設技術研究補助の対象として下水利用に関する研究を実施する機会を得て、昭和29年(1954)9月から建設省(現:国土交通省)、東京大学、公衆衛生院及び市内会社等の協力のもとに研究を行うこととなった。 当時、川崎市には下水処理場がなかったことから、下水処理水ではなく、生下水(未処理の下水)を薬品処理して直接利用することが出来るかについて検討するため、市内5か所の下水ポンプ場での水質調査を実施した。その結果、生下水は工場地帯と住宅地帯で異なるが、川崎市の場合は一般的に工場廃水の影響を受けるため、生下水を直接利用することは困難であるとの結論に達した。⑵ 入江崎下水処理場からの処理水利用 一方、東京都では、すでに昭和30年(1955)2月から東京都水道局三河島下水処理場において、下水処理水の工業用水への転用が実施されていた。東京都は、水質を最も尊重する製紙会社に対し、下水処理水を急速ろ過によって浄化し供給していたのである。 こうした中、川崎市においても、昭和32年(1957)度から着手した入江崎下水処理場建設の第1期事業が、昭和36年(1961)度中に完了する見通しとなり、昭和35年(1960)6月に日本鋼管水江製鉄所、新東洋硝子及び東亜石油の3社から下水処理水の供給の申し込みがあった。そこで川崎市は、前述のとおり昭和29年(1954)9月から始めていた研究を基礎に、新たに下水処理水の利用について検討した結果、主に冷却用水として実用化への見通しがついた。こうして入江崎下水処理場の完成を待って下水処理水(1日3万㎥)を工業用水として転用し、3社に給水する計画を立てた。2 計画の概要⑴ 規模給水対象  3社 1日給水量 3万㎥⑵ 工事計画①導水工事 川崎市内大師河原夜光町に建設された入江崎下水処理場から、本工事によって築造する入江崎ポンプ場まで、口径1,000㎜ヒューム管を布設することとした。②貯水池工事第2編工業用水道第2章高度成長期を支える工業用水道の拡張

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