川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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4143 今後の緊急対策 本漏水事故は、監視制御装置の保守点検中に弁が急閉止し、ウォーターハンマーによる圧力上昇が発生して、人孔蓋を破損させたものである。このことから事故調査委員会は、弁の急閉止を防止することと、万が一ヒューマンエラー等によって弁の急閉止を引き起こしても、ウォーターハンマーによる圧力上昇を発生させない施設とすることが重要であると指摘した。 そこで緊急対策として、監視制御装置の保守点検業務におけるリスク管理の充実と、ウォーターハンマーを抑制するための施設改良を提言した。⑴ 保守点検業務におけるリスク管理の充実 上下水道局職員と受託者の双方で、情報の共有化とリスク管理が十分に図られていなかったことにより弁の急閉止が引き起こされたことから、次の対策を実施するものとした。①リスク管理マニュアルの策定 発注者は受託者に対し、リスク管理マニュアルの策定を義務づけるものとする。このマニュアルは、受・発注者間で十分な協議・調整を行い、監視制御装置の保守点検業務時に想定される危機事象を抽出し、点検業務内容及び重要度に応じて分類を行い、その対処方法を定めるものとする。 また、保守点検作業前には、このマニュアルに基づき、点検業務内容に応じた作業手順や危機事象への対処方法について発注者側と確認を行い、受・発注者間の情報の共有化とリスク管理の充実を図るものとする。②監視制御装置保守点検非常時対応マニュアルの策定 発注者は、監視制御装置の保守点検業務時に想定される危機事象に対応するため、監視制御装置保守点検非常時対応マニュアルを策定する。このマニュアルは、保守点検業務に際し、危機事象が発生した場合に各設備への影響を与えないようにするため、発注者側の対処方法や連絡体制を定めたものである。 また、保守点検作業前には、このマニュアルに基づき点検業務内容に応じた危機事象への対処方法について受託者側と確認を行い、受・発注者間の情報の共有化とリスク管理の充実を図るものとする。⑵ ウォーターハンマーを抑制するための施設改良 弁の急閉止によるウォーターハンマーを抑制するためには、流量や流速の変化を小さくすることが重要である。それには弁の制御や監視制御装置の機械的性能を変更することが効果的であるため、次の対策を実施するものとした。①工水2号送水管着水下弁の改良 ウォーターハンマーの圧力上昇をRC鋼管の設計許容圧力である1.2MPa以下に抑えるよう、工水2号送水管着水下弁の改良を次のとおり行うものとした。 (ア)弁開閉速度の低速化による最高圧力の抑制 工水2号送水管着水下弁は、仕様上開閉速度を4.8分まで改良できることから、バルブギアの改造を行って、開度値100%から0%までの弁開閉速度を、現行の1.06分から4.8分に変更するものとした。第2編工業用水道第3章工業用水道の拡張から維持管理への転換

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