川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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460第3節 水質問題1 水質問題 川崎市における工業用水道の水質問題は、工場の使用目的から、冷却用水としての水温及び濁度、鉄、藻類によるろ過・イオン交換閉塞等により発生した。また、平間系の工業用水は、一部二ヶ領用水から原水を取水していたため、工場排水による塩素イオン、色、シアンの水質汚染事故等が発生した。以下、そうした水質問題について記載する。⑴ 夏期水温の上昇 当初の工業用水の使用目的は、90%が冷却用であったことから、低水温を要望する需要者が多く、夏期に21.5℃以下の水温を厳しく要求する需要工場もあった。そのため、低水温(16℃)の地下水を増量し、水温の上昇を防ぐため沈でん池や貯水池で除濁除鉄処理を行わずに直接配水することで対応していた。しかし、相模川水系や二ヶ領用水等の表流水の水温が高く、昭和30年(1955)には配水最高水温が23.2℃を記録していた。そのため、昭和31年(1956)から昭和34年(1959)にかけてさく井を増設し、地下水を増量することで低水温(目標20℃、実質22℃以下)の配水維持に努めた。それでも夏期の水温は22℃までが限界であったため、夏期は独自の地下水あるいは冷凍機を使用する需要工場もあった。昭和41年(1966)以降、水温の目標値を25℃以下に設定しているが、近年は気候変動の影響で、夏期には稀に目標値を超過する。⑵ 気泡が発生 昭和31年(1956)4月から6月にかけて、長沢浄水場の取水地点が水量の計量堰直後にあったため、水の落下により気泡を含み、原水を直接配水する場合には送水・配水管内の圧力によって空気が過飽和に溶解して配水された。このため水が工場で大気圧下に解放されたとき、過飽和の空気が放出されて微細な気泡が生じた。この問題は長沢浄水場の取水地点を変更することで解決した。⑶ 塩酸酸性排水が流入 昭和32年(1957)12月から昭和33年(1958)2月にかけて、二ヶ領用水に塩酸酸性の工場排水が流入した。それにより塩素イオン濃度が原水で最高214ppm、工業用水配水で最高40ppmを記録し、需要工場から苦情が寄せられた。二ヶ領用水の水質監視を継続しながら他の水源原水の応援増量により配水中の塩素イオンの低下に努め、原因となった工場については排出先を変更させることで解決した。⑷ 不十分な除濁・除鉄処理 昭和34年(1959)から昭和40年(1965)にかけて、工業用水の原水である河川水(長沢系、平間系)の除濁処理及び地下水(平間系)の除鉄処理が不十分であったため、工業用水にろ過やイオン交換等の処理を行ってボイラー用水等に使用する工場から濁度・鉄に対する苦情が寄せられた。鉄分を含む褐色濁質が熱交換器や配管等に付着してバクテリアの繁殖を促し、管の閉塞を起こして熱交換器の効率低下や急速ろ過装置のろ過効率が悪化するという訴えである。これについては、第4期拡張事業によって長沢浄水場及び平間浄水場に凝集沈でん処理施設が第2編工業用水道第5章工業用水道における水質の取組

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