川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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524第3編経営第3章料金の変遷とお客さまサービスの拡充同一の供給条件、同量の供給であっても、その用途や供給地域の相違によって、異なる価格設定が可能となっている。⑴ 用途別による基本料金制(創設当初) 我が国の近代水道は明治年代に始まったが、当初の水道料金は経済上の観点からではなく、水道の生活必需性から地方公共団体の営造物使用という概念によって設定された。すなわち、料金の決定には、社会的政治的な考慮が払われ、用途別料金制が採用されるとともに、負担能力、保健衛生の面から、あるいは社会構成の実情等を勘案した政策的な面を背景に決定された。ことに一般家事用水の料金は、負担能力という課税上の原理に基づき設定されたため、共用栓とともにおおむね放任給水による定額制によって徴収された。しかし、この放任給水制度は、大正後期から水道の普及とともに、濫用の弊害を生じ、一人当たりの消費水量増加と相まって各都市で水不足を招く結果となり、やがて、水道浪費の防止と料金の公平な負担を期する二つの面から、計量給水制度を採用するようになった。 この計量給水制と同時に、水道料金は一定限度の水量に達するまでは実際の使用水量の多少にかかわらず、一定額を徴収する基本料金制が設定された。これは、多額の施設費を要する水道財政の必然的要求として、固定費の回収を円滑にし、経営の安定性を確保するためであった。 川崎市では、創設当初から計量給水により、料金も用途別による基本料金制を採用した。その理由は、通水開始時すでに各都市で放任給水制による弊害が顕著になり、計量給水制の転換期に達していたためである。この創設時における用途別料金体系は、昭和40年(1965)4月の改正で料金を一本化するまで44年間続けられた。 大正10年(1921)制定の川崎町水道使用条例には次のように定められている。第一条 上水ノ供給ハ総テ計量法ニ依ル但消火栓ハ此限リニアラズ第四十条 水道使用料ハ消費水量ニ従ヒ左ノ給水種別ニ依リ徴収ス第一種専用栓ニヨリ使用スルモノ消費水量四十石迄一戸一ヶ月ニ付金壱圓参拾銭第二種共用栓ニヨリ家事用二使用スルモノ消費水量二十石迄一戸一ヶ月ニ付金四拾銭第三種湯屋営業ニ使用スルモノ消費水量千四百石迄一ヶ月ニ付金拾八圓二銭第四種以上各種ニ属セサルモノ五石迄金弐拾参銭第五種水道事業ノ創設ニ関シ特種ノ関係アル会社ハ当分ノ内石数ニ係ハラス一石ニ付八厘トス 但水量軽減ノ期間ハ無利子市債償還完了マテトス第一種乃至第四種ノ消費水量ハ之ヲ最低限度トシ月ノ中途ニ於テ開始又ハ廃止シタルトキト雖モ最低限度ニ相当スル使用料ヲ徴収ス亦其種別ヲ変更シタルトキハ重キニ従ヒ使用料ヲ徴収ス

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