川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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581第1節 上水道9 学校直結給水化事業⑴ 背景 市立小中学校の多くは、受水槽で水道水を一旦貯水し、各階へ給水する受水槽式を採用していた。受水槽式は貯水機能があるため、災害や水道工事等で一時的に断水した場合でも受水槽にある水を給水することが出来るというメリットがある。その一方で、使用水量が少ない時期には、貯水槽の中で水が滞留し、残留塩素が減少するといった衛生面での問題や外気温の上昇により、水温が上昇することから、水がおいしくないと感じるといったデメリットがあった。 また、ペットボトル等によるミネラルウォーターの飲料水が広く普及し、市販の水は「水道水よりおいしい、健康に良い」、水道水は「塩素臭い」等のイメ-ジが先行していた。そのため、家から水筒を持参する子供たちが増えており、蛇口から出る水道水を直接飲む機会が失われつつあった。⑵ モデル事業の概要 市立小中学校の給水方式を受水槽式から直結式に転換することにより、新鮮で冷たくおいしい水をいつでも飲めることで、蛇口から直接水道水を飲む文化の継承を図るとともに、配水管の水圧を有効利用することができ、ポンプ設備等の消費電力を削減し、環境負荷の低減を図ることも期待できる。 上下水道局と教育委員会は、市立小中学校の6校を選定し、直結給水化モデル事業を平成23年(2011)度から27年(2015)度までの期間で実施した。まちづくり局が設計・施工を担当し、上下水道局で直結給水工事の費用の一部を負担する方式とした。ただし、校舎の大規模改修に伴い直結給水化を実施する2校については、教育委員会の全額負担とした。工事は、児童及び生徒たちの学習環境に配慮して夏休み期間に行った。⑶ モデル事業の結果 モデル事業の実施に当たり、「直結給水の範囲拡大に関する取扱要領」の規定を特例措置として、一部緩和した。また、給水方式が直結式に変更となったため、学校の使用水量が周辺配水管へ及ぼす影響を確認したが、周辺配水管の圧力へ影響していないことを確認した。 児童及び生徒を対象に、工事前と工事後の水道水に対する意識等の変化を把握するためにアンケート調査を行った。対象者は、中学校では全生徒、小学校では4年生から6年生の全児童とした。6校全体で1,799名から回答を得た。アンケート調査の結果から、児童及び生徒たちは、工事前よりも約56%が「おいしくなった」と感じ、約69%が「冷たくなった」と感じている等、おおむね良好な回答を得たが、蛇口から水を飲む回数に大きな変化がみられないという結果も得た。学校給水直結化のイメージ

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