川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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610第3編経営第4章健全な財政基盤の確保企業の特性等を適切に勘案することが基本的な考え方になった。 会計基準の主な見直し項目としては、①借入資本金の負債計上、②補助金等により取得した固定資産の償却制度等、③退職給付引当金等の各種引当金の計上、④繰延資産、⑤棚卸資産の価額、⑥減損会計の導入、⑦リース会計の導入、⑧セグメント情報の開示、⑨キャッシュ・フロー計算書の導入である。 上下水道局は、平成24年(2012)2月1日に施行された関係政省令の改正に基づき平成26年(2014)度から新地方公営企業会計基準を適用し、退職給付引当金を一括計上したこと等に伴い、当年度41億3,132万6,541円の純損失を計上した。また、再構築事業に関する事業進捗の影響等により、単年度資金不足額が生じたため、累積資金を活用することで対応した。第2節 工業用水道1 健全経営(創設から終戦まで) 創設工業用水道事業については、昭和11年(1936)10月30日市会の議決を得て特別会計工業用水道事業費を設置し、総事業費は125万円余であった。本事業の財源は、3社からの寄付金のほかに起債と自己資金を充てた。建設資金の約75%を寄付で賄ったため、3社に対する使用料金は普通料金の半額とした。 実際の使用水量とかかわりなく契約水量に応じて料金を徴収する責任消費水量制としたため、収入面では安定性があり、戦時下の諸物価の高騰にもかかわらず健全な経営を続けた。しかし、1日給水能力8万1,000㎥を限度とした契約会社に対する給水のみで、上水道のような自然増収は期待できず、料金収入は市勢の飛躍的発展にもかかわらず増収とはならなかった。これは給水能力増強の第1期拡張事業が、終戦で中止になったことが大きく影響した。2 インフレによる財政規模の膨張(戦後) 昭和20年(1945)度における経常費は29万円余であったが、年ごとに急激に上昇し、6年後の昭和26年(1951)度には2,198万円余と実に75倍に膨張した。これは戦後の経済混乱と諸物資の不足が、インフレーションを助長したためである。事業経費も、物件費の増大と相次ぐ給与ベースの改定で年ごとに急上昇した。 このような状況下で事業収支の均衡を保つため、昭和21年(1946)4月から27年(1952)9月までの間に、9回の料金改定を行った。 なお、昭和27年(1952)度は、第2期拡張事業の起債許可が遅れたため資金不足が生じ、7,000万円の一時借入金をもって措置した。3 企業会計制度に移行 昭和27年(1952)8月1日に地方公営企業法(法律第292号)が制定されたことから、川崎市工業用水道事業は、上水道事業とともに、昭和28年(1953)1月1日から同法の適用を受けた。従来の官庁会計方式は、企業会計方式に改められ、同日現在における資産の再評価が

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