川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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611第2節 工業用水道行われ、経理において収益的収支と資本的収支が明確に区分されることになった。 昭和28年(1953)度以降、昭和39年(1964)度までの財政状態は、おおむね次のとおりである。 収益的収支では、収益的収入のうち、水道料金は昭和28年(1953)度の8,723万2,355円が、昭和38年(1963)度には6億8,738万9,993円と10年間に約8倍になった。これは昭和29年(1954)7月の第2期拡張事業によって、1日10万㎥の通水が開始され水道料金収入に寄与したこと、また昭和30年(1955)度以降、高度成経済長期の水需要を満たすため、数次にわたる拡張事業を実施したことにより契約水量が飛躍的に伸びたためである。更に料金改定も数次にわたり行い、収入増に寄与した。一方、収益的支出では、相次ぐ拡張事業の完成とともに経営規模が大きくなり、人件費、動力費、減価償却費、起債利子等が年々著しく増加し、収益的収入の増加率を上回ったため、毎年度の純利益は減少の傾向となった。 資本的収支では、資本的収入として国庫補助金が昭和31年(1956)度から計上された。これは、工業用水法の施行で第1次暫定拡張事業に適用され、拡張事業費の25%となる4,500万円の補助を受けたことによるものである。その後、第3期拡張事業で25%、第4期拡張事業では19%の補助を受けた。一方、資本的支出の大部分を占める拡張事業には莫大な資金を要するため、財源を起債に求めたことにより、昭和38年(1963)度からは企業債償還金が急増していった。4 料金改定で順調な経営 拡張事業に要する資金は大部分が起債による借入金のため、昭和40年(1965)度の元利償還額は、料金収入の約47%にも達した。更に経営規模の拡大等による諸経費の増加が予想されたため、昭和40年(1965)3月に料金を改定した。 昭和40年(1965)度に完成した第4期拡張事業により給水能力が増強され、工場の生産規模拡大も相まって契約水量が増加、水道料金の増収が図られ、順調な経営状態を保っていた。しかし、第2導水ずい道完成による水道事業への負担金の増加等、設備投資の増大や経費の増加等により累積資金不足額が見込まれたため、昭和43年(1968)度に、料金改定案を議会に上程したが審議は翌年度にずれ込み、昭和44年(1969)度に修正議決された。5 設備投資による資本的支出の増大 新料金は昭和44年(1969)6月1日から適用され、同年度と翌年度の収益的収入では、経常利益を計上したが、昭和46年(1971)度には諸経費の増加で経常損失2,589万4,102円を計上した。しかし、土地の売却による期間外収入2億2,927万5,761円が計上された結果、純利益2億338万1,659円となった。昭和47年(1972)度では経常損失1億6,075万857円、翌年度では経常損失は2億1,934万5,518円、累積欠損金は8,579万2,025円となった。 資本的収支をみると、資本的収入のうち企業債は、昭和44年(1969)度5億8,200万円、45年(1970)度4億5,500万円、46年(1971)度6億5,300万円と徐々に増加し、48年(1973)度には9億9,200万円となった。一方、資本的支出は、配水本管改良工事、中野島取水堰堤改良工事、工業用水道整備事業、企業債償還金等のために、昭和44年(1969)度に9億8,226万2,199

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