川崎市水道百年史 川崎市上下水道局
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634第3編経営第6章社会貢献活動第1節 国際事業1 国際事業の背景⑴ 世界水環境の現状 1990年代、世界では水資源の不足や水質汚濁等の問題を解決できず、水道や井戸等の安全な飲料水を利用できない人が世界人口の2割を超えていた。これに対し国際連合は、平成12年(2000)9月にミレニアム宣言を採択し、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を削減する目標を設定した。その結果、平成22年(2010)までに安全な飲み水が利用できない人口の割合は半減した。しかし、一部の地域では、水不足や劣悪な水質から安全な水を利用できない状況のままであった。 世界の水環境改善に向け、我が国は水道分野においてもODA(政府開発援助)による無償・有償の資金協力やJICA(国際協力機構)を通じた技術協力を実施してきた。更に、水の安全保障や水関連産業の海外進出という観点から、水関連分野の国際展開について、様々な方針を打ち出してきた。 平成20年(2008)に厚生労働省が公表した「水道ビジョン」では、我が国が有する水道技術をODAによる協力だけでなく世界市場に提供することは、世界の衛生的な水供給の確保に貢献するとともに、我が国水道界の発展にも資するものであり、水道産業の国際展開が推進されることを期待した。また、平成21年(2009)の「新成長戦略(基本方針)」に引き続いて、平成22年(2010)に閣議決定された「新成長戦略」では、水分野における国際展開の具体策として、地方自治体の上下水道所管部署等の海外展開策を策定・推進することを定めた。 我が国では、水道法に基づき、原則として地方自治体が水道事業を経営しているため、事業運営の技術・ノウハウは地方自治体に蓄積されている。一方、民間企業には世界トップレベルの水関連技術を有する企業も存在するものの、部品・設備の製造から事業運営・保守管理に至るまでの水分野全体を横断的に事業展開する企業が少ない。このため、我が国が環境技術を活かして世界の水環境の改善に寄与するためには、官民が連携して水ビジネスを進めることが重要である。⑵ 国際事業推進担当の設置 川崎市には、長年の事業運営で培われた技術・ノウハウとともに国際競争力のある技術を有する民間企業が存在し、更に国際化された羽田空港に近いという地理的優位性もあるため、本市は国際展開を推進する上での高い可能性を秘めている。 水道分野においては、官民の連携として平成21年(2009)度から開始されたオーストラリア/クィーンズランド州での省水型・環境調和型水循環プロジェクトへの協力をはじめとして、様々な取組を行ってきた。また、政府間協力としては、平成23年(2011)7月にクィーンズランド州と経済交流協定を締結したことや、平成24年(2012)5月には川崎市と30年以上の姉妹都市関係がある中国/瀋陽市の水道事業体である瀋陽水務集団有限公司と友好協力協定を締結したこと等があげられる。 その他、省庁、JICAや国際機関等への協力や、海外からの研修生・視察者に対し水道施設

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