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幸区こども・子育て講演会動画「コロナと共に生きる子どものこころ ―輪(わ)とレジリエンスの視点から―(1)」テキスト情報

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2023年3月16日

コンテンツ番号149032

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 今から80分間でどんなことを吸収したいか。1分ほど時間を取りますので、もし配付された資料をお持ちであれば、そこの空欄のところ、なければ、手持ちの紙であったり、スマホであったり、パソコンのメモ機能であったり使っていただいて、今日の皆さんの目標を1分で書いてみてください。では、1分測ります。用意、始め。これ、頭で考えるだけではだめです。絶対書いてくださいね。よろしくお願いします。

 大体1分経ちましたかね。皆さん、書けたでしょうか。今日は、皆さんのこの目標に少しでも応えられるような時間になるといいなと思います。

 こちらが私の目標です。私は、皆さんに80分後にこんなふうになっていていただいているといいなと思っています。80分後、皆さんは、子どもの健康を取り巻く多様な要因を挙げられるようになる。子どものメンタルヘルスの不調の特徴が分かる。コロナ禍が子どもの心に与える影響について、自分が関わる子どもと照らして考えることができる。子どもの話を聞こうとする時間と方法がちょっと増える。自分の傷つきにちょっと気がつくということが、皆さんができるようになっているといいなと思います。たくさんなんですけど1個1個いくので安心してください。

 今日のお話です。今日は、まず子どもの健康をつくるものは何かというお話をして、それから子どものメンタルヘルスを概観します。それから、コロナ禍と子どもの心というところを見てから、こんなときの対応のポイントということで、少し子どもの傷つきに焦点を当てたお話をしようと思っています。そこからリスクからレジリエンスへと視点を転換して、最後、ケアする人のケア、皆さんのケアのお話です。そこをしてからお役立ち資料をささっと共有しておしまいにしたいと思っています。

 今日お話を聞いていく中で、皆さん、それぞれの現場ですごく頑張っていらっしゃった方たちばかりかなと思います。お話を聞きながら、少し気持ちがしんどくなったりする方もいらっしゃるかもしれません。そういうときには、ぜひ自由に休憩を取っていただいて構わないですし、もし気持ちがしんどくならなくても、お手洗いだったりとか水分補給だったりとか、寒いですので、何か暖を取ったりとか、そのあたりは本当に皆さんが心地のよいように参加をしていただけたら私もとてもうれしいです。

 では、早速中身に入っていきましょう。

 一番初め、子どもの健康をつくるもの。すごいそもそもの話なんですけれども、子どもの健康はどうしてつくられるのかなということを見ていきましょう。

 「子どもの脳にはすごいことが起きている」と書きました。皆さん、この下のところにあるもじゃもじゃとしたのがありますね。これ、何の絵か分かりますか。リアル(対面)であると皆さんに答えてもらったりもするんですけれども、これは、実は子どもの脳をスライスして顕微鏡で見ると、こんな感じというのが出ているんです。脳細胞って幾つあるか分かりますか。100万個、1億、たくさんありそうですね。実は1000億個の細胞が皆さんの脳の中に入っているんです。

 驚いたことに、赤ちゃんの脳の細胞も、実は1000億個くらいあるんです。大人も子どもも脳の細胞の数は変わらないんです。でも、何が変わるかというと、脳の細胞と細胞をつなぐシナプスといって、つなぐ道、線路みたいなものがどんどんできていくことで、人間は学習して成長していくんです。ですので、出生したときに、見ていただくと分かるように、細胞はあるけれども、ここ、すかすかですね。それが生後、最初の1年ぐらいでばあっといっぱいいっぱいつながるんです。1秒間に200万個シナプスがつながるとも言われているんです。その後、だんだん必要なものが残されていって、見ていただくと分かるように、6歳よりも14歳のほうがより整った形になってきている。そういうようなことが起こってくるんです。

 なので、子ども時代の脳は非常にダイナミックなことが起こっていて、皆さんが目の前で接している子どもは、まさに脳の発達のゴールデンタイムにあるわけです。感覚も言語も高次脳機能といって、もう少し高度なことをいろいろ考える力も、今しか成長発達ができないことが本当にダイナミックに起こっている。そこの非常に貴重なところに皆さんは子どもたちと関わっている。そのことをまず注意しておきたいと思います。

 その上で、子どもたちの健康をつくるものは、子どもが持っている個人の要因だけではないんです。子どもたちが健康と言われているもの、最近ウェルビーイングという言い方もしたりしますけれども、それは、心の健康だったりとか、体の健康だったりとか、対人関係とか、認知のスキルだったり、いろいろなものを総合して子どもたちのウェルビーイングというものができるんですけれども、それは子どもだけで完結しているわけではもちろんなくて、子どもを取り巻く人間関係、学校だったり仕事だったり家庭だったり、そして学校がどういう場所なのか、家庭がどういう場所なのか、地域に居場所があるかとか、あとは教育の政策がどうかとか、保健の福祉の政策がどうかとか、そしてまさに今回、コロナ禍、パンデミックで起こったように、世界の状況が何か大きいことが起こっているか。そういったようなことの全部の相互作用によって子どもたちの健康はできていきます。

 そう考えたときに、子どもたちの人生で何が起こるかということはすごく大事なんですが、起こることって、必ずしもすごくハッピーなことばかりではないですね。子ども時代の体験、その中でも子ども時代のAdverse Childhood Experiences、子ども時代の逆境体験とも言ったりしますが、そもそも聞いたことがある方はいらっしゃるでしょうか。略してACEsといったりもします。子ども時代の逆境体験、ACEsというのは、虐待とかネグレクト、家庭機能の困難、例えば、離別とか家族の精神疾患、家庭内暴力などを含むんですけれども、こういったようなものが含まれます。こういうこと、実はまれではなくて、皆さんの中にも、ああ、私、育っていく中でこういう体験があったなという方はたくさんいらっしゃると思うんですが、世界的にはおよそ7割の人がこういう体験があると言われていますし、日本でも30%以上の人には少なくとも1つ以上の逆境体験があると言われています。

 こういった逆境体験があると、そのときはもちろんしんどいんですけれども、そのときだけではなくて、30年後、40年後、50年後にも影響を及ぼすということが分かってきました。例えば、この逆境体験というものが4つ以上あった人は、心疾患、呼吸器疾患、喫煙、がんは2~3倍、アルコール、性行為の問題、精神疾患は3~6倍、他者への暴力、自傷行為、自殺企図に至っては7倍以上のオッズ比で起こると言われていて、そのほかにもここに書いたように、アルコールの問題、自殺未遂とか、いろいろなことがうなぎ登りにというか、そういった逆境体験によってなっていくことが分かっています。つまり、子ども時代に何が起こるかということが将来にとってとても大事。

 同じ文脈で、子ども時代はつらい体験だけではなくて、いいことも起こりますね。これが先ほどのACEsの逆でPositive Childhood Experiences、PCEsという言い方をしたりします。これは、例えば家族と自分の気持ちについて話すことができたり、つらいとき、家族がそばにいてくれたり守ってくれるなと思ったり、学校に居場所があったり、友人に支えられていたり、地域に居場所があったり、家族以外に少なくとも2人ぐらい自分のことを真剣に考えてくれる大人がいることを思い出せるみたいな、そういったような体験があると、さっきと逆ですね。成人期の心理社会的なサポートはあればあるほど増えるし、成人期のうつはPCEsがあればあるほど減ることが分かっています。つまり、子どもたちの健康ということに関わる皆さんのような職種の人たちは、子ども時代のつらい体験を減らし、ポジティブな体験を増やすことを、この脳みそがめちゃくちゃアクティブな時期にやることがすごくすごく大事ということです。

 ということで、子どもを取り巻く世界の重要性。さっき子どもたちを取り巻くいろいろな輪があるよと申し上げましたけれども、子どもの世界の少し外側にある皆さんのような立場の人は、今回のようなパンデミックのような大きなことがあったときに、そういった社会の変化の影響を緩和することもできるし、深刻化させることもできるという意味での大事さと、また、直接子どもに関わることで、直接子どもの心身の健康に影響を与える。そういったようなことができる立ち位置にあるということなんです。

 最初の10分間ぐらいで、こういった皆さんがどうして子どもに関わっているのか、どうして今がそんなに大事なのかということをもう一度共有したいと思って、ここの前提のお話をさせていただきました。

 では、次に行きましょう。今日は主に子どもの心の話をしますけれども、そもそも子ども時代のメンタルヘルスの特徴について、ごくごく簡単ではあるんですが、皆さんと共有しておこうかなと思います。

 皆さん、精神疾患というのは珍しいことだと思われる方もいらっしゃるでしょうか。ああ、心の病気なんかになってしまって、本当に珍しいことで、かわいそうということ。実はそうではないんです。世界的な統計によると、5人に1人は一生涯のうちで何らかの、少なくとも診断がつくような精神疾患にかかると言われています。しかも、50%は10代半ばまでに発症し、75%は20代前半までに発症すると言われているので、子ども時代にとってメンタルヘルスの問題はものすごく大切ということです。一方で、多くの子どもたちは診断・治療を受けていません。皆さんが関わっていらっしゃるような家庭、あるいは学校、そして皆さん自身の地域での関わりが、こういった子どもたちのメンタルヘルスの不調の早期発見と介入のきっかけになるかもしれません。

 同じことなんですけれども、目で見ると分かりやすくて、これはいろいろな病気たちがどういうふうに人生に影響を与えられているか。その負荷がどのぐらいあるかということを書いてあるんですけれども、それぞれの病気、がんだったりとか呼吸器の病気だったり、けがとかいろいろなものがあるうちの赤いところが精神疾患なんですが、これが10代になるとバーンと増えていって、10代からここ、40歳ぐらいまで書かれている。つまり、子ども時代から子育て時期みたいなところは、まさに精神疾患というところが健康の負荷の一番大きなところを占めるわけです。なので、子ども時代の心の問題はとても重要。

 でも、子どもの心の不調は、大人と少し違う特徴があることを知っている必要があります。大人は言語化していろいろつらいなということを表したり、自分でそれを小さくしたりということができるんですけれども、子どもの場合には、精神症状の出方がより行動とか問題として現れやすい特徴があるんです。すごくイライラしていたり、何か不登校になったり、非行と言われるものを行ったり、家出だったり喫煙だったり、問題行動みたいなものとして見えるものが、実は精神的な不調であることが子どもたちではあることが本当に多いんです。

 また、子どもは大人以上に環境の影響を受けやすい特徴があります。年少時代であれば家族の方、青少年になってきますと、学校とか友達関係の影響を物すごく受けやすくなってくるという特徴があります。また、子どもたちの中には、症状の認知とか言語機能がまだ不十分であって、言葉でうまく表せない場合もあります。ということで、子どもたちが直接何と言っているか、もう大丈夫ですと言っていること以外に、直接子どもを観察してどうなのかとか、保護者の方とか学校の先生とかの直接第三者の観察によって、どんなことが分かるかということに配慮する必要があります。また、子どもたちのメンタルヘルスは、まだ心が柔らかいので、適切な対処や治療により回復が可能な場合も多いのが大きな特徴になっています。

 子どもの心の健康をアセスメントするときに、子どもたちの症状だけに注目するんではなくて、環境も含めてアセスメントすることがとても大切です。例えば、抑うつみたいなことだったりとか、落ち着かないとか不安とかいう症状、死にたいという言葉だけではなくて、そこに個人の因子としてどういうことが要因としてあるのか、そして家庭ではどんなことが起こっているのか、学校や保育の環境はどうなのか、さらに地域で孤立をしていないかとかどういうアクセスがちゃんとあるか、そういったようなことを含めて、子どもたちをアセスメントすることが大切。繰り返しますが、子どもたちのウェルビーイングや健康は、個人の問題ではないことを私たちがよく知っている必要があります。

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