こんにちは。明治大学農学部本所ゼミです。これから大学地域連携事業 つくる人と食べる人がつながる 「農ある暮らし」の創出事業についての成果報告をさせていただきます。 今回、発表を務めます。松井英人です。横田梨香子です。高桑里緒です。 よろしくお願いいたします。 成果報告の全体像です。このような流れで発表いたします。 まず、この事業を行うにあたり拠点として選んだ、トカイナカヴィレッジについて紹介します。トカイナカヴィレッジは川崎市北部に位置し、生田緑地などの多摩丘陵らしい自然が多く残っている場所にあります。 「トカイナカ」という言葉は都会にいながら田舎を体験できるということからきています。つまり都会×田舎でトカイナカというわけです。 村長は明治大学名誉教授の松本ゆたか氏です。村長はトカイナカヴィレッジを大きな仮想集落に見立て、多様な世代の人々が協働できる「場」と「キッカケ」の提供を目指しています。 また、トカイナカヴィレッジには3つの窓口があります。私たち本所ゼミは3つ目の「田舎の窓口」に注目しました。 「田舎の窓口」はトカイナカヴィレッジが都会と田舎をつなぐ橋渡し役になる事です。すでにトカイナカヴィレッジは宮崎県諸塚村、福島県飯舘村、千葉県館山市と提携を結んでいます。この提携によって都会にいながら、田舎での暮らしを体験できるようになっています。 トカイナカヴィレッジに これら3つの窓口 があることが、今回の事業の拠点に選んだ理由でもあります。 ここからは私たちが実際に行った「田舎の窓口」をご紹介いたします。発表の流れはこのようになっています。 まず初めに館山・トウモロコシ編についてご紹介していきます。 館山・トウモロコシ編では全4回に渡り、都会に住む消費者と地方に住む生産者をつなげることを目的に、小学生のいるご家族を主な対象としてトウモロコシを育て・収穫し実食するというイベントを行いました。 これらは千葉県館山市の安西農園さんと川崎市のトカイナカヴィレッジさんのコラボ企画で、トウモロコシの定植から収穫までを体験することで、普段は「食べる側」の参加者の方々に農業や食の楽しさを知ってもらい、食べる人と作る人をつなぐ「田舎の窓口」がコンセプトとなっています。 このトウモロコシの企画は、千葉県館山市にある安西農園の安西淳さんのご協力のもと実現することができました。安西さんは地元である館山市で神戸(かんべ)レタスやイタリア野菜、そら豆やトウモロコシを生産する傍ら、私たち大学生に農業や食の楽しさを伝える活動をなさっています。 安西さんとのかかわりは、2019年9月に発生した台風15号により千葉県に甚大な被害が生じた際、以前から本所ゼミと関わりのある 川崎市のトカイナカヴィレッジさんが安西農園さんへ物資支援をしたことをきっかけに、私たち本所ゼミも援農支援に関わらせていただいたことから始まりました。その後、安西農園さんがトウモロコシの農業指導という形でお返しをして下さってからというもの、私たち本所ゼミはこのご縁を大切に安西さんと継続的な関係を築いています。 ここからは館山・トウモロコシイベントの流れを 「準備」・「イベント当日」・「次回に向けて」の順に説明します。 記念すべき第1回イベントは2021年6月26日に実施しました。 イベントに向けた事前準備として、ご協力いただいた安西さんとの打ち合わせや、参加者募集のためのポスター作成、当日参加していただいた方に食べていただく農家めし弁当の献立作り・実食、そして野菜絵の具づくりを行いました。より多くの方にイベント4回すべてに参加していただけるように、ポスター作成では全4回の日程・行程を分かりやすくまとめることに注力しました。 農家めし弁当の献立は全4回、すべて異なった献立を楽しんでいただくために、ご協力いただいたトカイナカヴィレッジのシェフと何度も協議して作り上げたこだわりのお弁当です。 1回イベント当日は、トウモロコシの種を植える定植体験、野菜絵の具でハガキに絵を描くワークショップ、お昼ご飯としてトカイナカヴィレッジ特製農家めし弁当の試食会、そして安西さんとのZoomの順に行いました。 定植体験では事前に収録した安西さんの解説動画を見た後、丁寧に種を植えました。親子揃っての農作業体験は貴重だったようで、お母様やお父様と参加できてうれしそうな子供たちの顔がとても印象に残っています。 ワークショップでは、玉ねぎの皮やピーマン、シソの葉、イチゴなどを利用して作った絵具でそれぞれ思い思いの絵を描いていただきました。自然の植物が持つ色を楽しみながら、真剣に描いてくださいました。 安西農園でとれたトウモロコシを使った農家めし弁当はとても好評で、安西さんとのZoomでは「美味しかったです」という声がたくさん聞けて、とてもうれしい気持ちになりました。 第2回イベントは2021年7月11日に実施しました。 イベントに向けた事前準備としては、第1回に引き続きご協力いただいた安西さんとの打ち合わせや、当日参加していただいた方に食べていただく農家めし弁当の献立作り・実食のほかに、第1回イベントで植えたトウモロコシの手入れ、ピザづくりのための材料準備などを行いました。 第2回イベント当日は、トウモロコシの手入れ、ピザづくり、トウモロコシの食べ比べ体験、安西さん農育教室、そして農家めしランチの順に行いました。 安西さんをトカイナカヴィレッジにお招きし、トウモロコシの手入れの方法を実際に教えていただきました。安西さんの農育教室では、安西さんから出題されたクイズに熱心に回答する子供たちの姿が微笑ましかったです。 ピザづくりでは参加者の方に具材の盛りつけをしていただきました。安西さんが育てたトウモロコシをはじめ、トマトやパプリカ、トカイナカでとれた玉ねぎ、トマトソースやチーズを使って、皆さんオリジナルのピザづくりを楽しまれていました。 トウモロコシの食べ比べでは、安西農園さんでとれた「ピュアホワイト」という生で食べられる白いトウモロコシと「味来」という黄色いトウモロコシを食べ比べていただきました。新鮮なトウモロコシの甘さを参加者の方に味わっていただけて嬉しかったです。 第3回イベントは2021年7月31日に実施しました。 イベントに向けた事前準備としては、第1、2回に引き続きご協力いただいた安西さんとの打ち合わせや、当日参加していただいた方に食べていただく「農家めし弁当」の献立作り・実食のほかに、ワークショップで作る「竹の水鉄砲」づくりを行いました。 第3回イベント当日は、竹の水鉄砲づくりのワークショップ、第1回イベントで植えたトウモロコシの収穫、実食体験、そしてトカイナカヴィレッジ特製農家めし弁当の試食会の順に行いました。 第1回、2回のイベントを通じて育ててきたトウモロコシを収穫する喜びを 皆さんに味わっていただけたと思います。自分たちで育てたトウモロコシの味は格別だったのではないでしょうか。 ワークショップでは、参加者の皆さんに「竹の水鉄砲」の 水を押し出す棒の部分を作っていただきました。 第3回イベントの農家めし弁当は、トカイナカでとれたトウモロコシ、枝豆と安西農園のお米を使った中華丼でした!農家めしは味が美味しいのは勿論ですが、彩りもとても豊かで目でも楽しめるお弁当です。 最終回の第4回イベントは2021年8月7日に実施しました。 最終回は第1〜3回のイベントで繋がってきた安西農園の安西さんのもとへ訪れるために、 安西さんとの打ち合わせを行い、実際に安西農園へ出向いて下見をするなどの事前準備を行いました。 最終回イベントでは千葉県館山市の安西農園に行き、トウモロコシを育てている安西さんと参加者の方に交流していただきました。トウモロコシの収穫・実食はもちろん、安西さんが育てているイタリア野菜の実食や水稲のお話まで聞かせていただき、イベントの集大成としてふさわしい欲張りなイベントとなりました。 ここからは「次回以降に向けて」 参加者の感想やイベントの振り返りをしていきます。 イベント終了後のアンケートで参加者の方からは ・子供も大人も楽しめる素晴らしいイベントでした など、たくさんの嬉しいお言葉をいただきました。 全4回を通しての気づき と 振り返りです。 まず、気づき です。 全4回をトウモロコシに着目することによって、トウモロコシの種類や栽培方法についての詳しい情報を参加者に提供できました。 また、連続企画にすることで農家さんとのつながりを深めることができ、最終ステップの第4回企画では安西農園が位置する千葉県館山市を訪問することができました。 次に振り返りです。 イベント全体を通じて、都会に住む消費者と 地方に住む生産者をつなげることができました。 このつながりを大切にし、今後もより多くのつながりを作っていきたいです。 館山・トウモロコシ編は以上となります。 続いて、飯舘村編について紹介していきます。 第2弾では飯舘村の企画を行いました。 飯舘村は福島県にある村で、原発事故以降避難を余儀なくされていました。2017年に一部が解除されて以降、復興が進められています。飯舘村の復興の歩みとこれからの未来を、農業を通じて知ることを目的にイベントを開催しました。 子どもがいる家族はもちろん、福島県や飯舘村、復興に関心のある大人も多くの方にご参加いただきました。 本イベントは菅野宗夫さん・千恵子さんご夫妻のご協力の元行われ、当日もご参加いただきました。 お二人は福島県飯舘村在住の、主にパプリカやきゅうり、お米などを栽培されている農家さんです。宗夫さんは「ふくしま再生の会」の副理事長や「飯舘電力株式会社」の代表取締役も務めており、多方面で復興に尽力されています。 私達本所ゼミと菅野ご夫妻は、明治大学農学部・農場と飯舘村の間には震災復興協定があり、学長ファンド「飯舘村農業再興プロジェクト」の共同研究者だったというご縁から共同作業を行ってまいりました。 そして、開催にあたりご協力いただいたトカイナカヴィレッジ松本伝左衛門農園さんと、菅野宗夫さんの経営されるやまのこだわりやも、友好交流協定を結んでおります。 飯舘村イベントの流れを準備、イベント当日、次回に向けての順に説明します。 はじめに、事前準備についてです。 まずは、集客をするにあたって使用するポスターを作成しました。ポスターは視覚的に飯舘村や菅野夫妻の魅力が伝わるように工夫しました。 イベントの流れや農家めし弁当の献立、試作・試食、物販などについて宗夫さん夫妻やトカイナカヴィレッジの職員と何度も打ち合わせをしました。ゼミ生とは、当日のワークショップやリハーサルや室内掲示物の作成を行いました。 当日のイベントの流れです。 まずはお米を使ったワークショップを行いました。宗夫さん夫妻に教えていただきながら、臼と杵を使って餅つき体験を行いました。手隙の参加者が出ないように2部制にしてパプリカの収穫体験も同時進行で行いました。 その後は、宗夫さんが栽培したお米やパプリカ、飯舘村由来のかぼちゃである「いいたて雪っ娘かぼちゃ」を使用した農家めし弁当を食べました。 食事後は、宗夫さん夫妻のおはなしと交流会を行いました。「きぼうのとり」という震災と復興をテーマにした絵本の朗読を導入に行い、より復興のイメージを明確にしたことで、参加者の方も引き込まれてお話を聞かれていました。 こちらがイベントに参加した方からいただいた感想です。 ・大変な10年だったと思いますが、宗夫さん千恵子さんご夫妻の明るく前向きな人柄に元気をもらいました。自分にできることがあるか考えて、力になれるように考えたいと思いました。 などの感想をいただき、有意義な時間になったのではないかと思います。 今回のイベントで、食と農というコンテンツを通じて、都市で生活するたべる人と地方に暮らすつくる人、震災を体験した人としていない人といった様々な背景を持つ人がお互いを知る場を提供できました。 今後の展望としては、コロナの感染状況が落ち着いたら、飯舘村を実際に訪問できるようなイベントを企画して、双方向の交流を図ることのできる場を提供したいです。 福島県飯舘村編は以上になります。 次に弁当の日編についてご紹介していきます。 「弁当の日」です。クラウドファンディングなどで本ゼミナールと関わりのあるドキュメンタリー映画「弁当の日」を知り、「めんどくさい」への挑戦は成長につながると考えました。そこで、「めんどくさい」に挑戦し、食環境を学ぶ食育イベントを開催しようと決意しました。「食」に関しては映画「弁当の日」で、「環境」についてはお箸づくりで、食環境に触れていきました。 次に、映画「弁当の日」についてです。 弁当の日は2001年、香川県の小学校から始まった「子どもがお弁当をつくる」取り組みです。 献立から片付けまですべてを子ども自身で取り組みます。 「してもらう側」から「する側」へ成長するチャンスを得た子どもたちの笑顔と涙、そして「してやるだけが子育てじゃない」と気づく大人たち。「弁当の日」を通じて生まれた物語をドキュメンタリー映画として追いかけています。 次に、お箸づくりについてです。 お箸づくりを通じて、もったいないやモノを大切にする心を学ぶことを目標をしました。 お箸の材料は、FSC認証取得の諸塚村の木材を使用しました。 お箸づくりでは、宮彫り師の小野さんにご協力いただきました。都内の資料館に勤務しながら、個人でも彫刻の仕事を行っている方です ? イベント流れを準備、イベント当日、次回に向けての順に説明します。 事前準備として、お箸づくりを指導してくださる宮彫り師の小野さん打ち合わせ、リハーサル、資料作成を行いました。 資料作成ではお箸の作り方を載せたマニュアルを作成しました。お子様でもわかりやすいように、作業のポイントも記載しました。 イベント当日は、映画「弁当の日」の上映会、トカイナカヴィレッジ特製農家飯弁当、お箸づくり体験の順に行いました。 こちらはイベント当日の様子です。 参加者の皆さん真剣に映画を観ていました。また、観終わった後には感想を持ってもらう時間も設け、ただ見て終わりにならないようにしました。 お箸づくりではお子様は初めて触るカンナに興味津々で、大人の手を借りたくないと言わんばかりに一生懸命に挑戦していました。 最後には、使うのがもったいないぐらいに素敵なお箸が出来上がりました。 イベントの最後、参加者の方からは ・「どのように作られたのか」「どのように食べるか」も同じぐらい大切だと思った ・つくる苦労と楽しさを学んだ となど、とても前向きなお声を頂くことが出来ました。 私たち自身も、「めんどくさい」を乗り越えて食環境を考えるきっかけづくりをしたいという目標に近い感想頂けたことが良かったと思いました。 また、より喜んでもらえるような工夫をしたこともイベントの成功につながったのだと思います。 また、振り返りとしては、今回は新型コロナウイルスの影響で、小さな会場での開催となりましたが、今後はもっと大きな会場での開催に挑戦してみたいです。 続いて全体の反省とまとめです。 こちらが開催したイベントの集合写真です。たくさんの方に農と食について考える場を提供できました。 に成果と課題についてです。 成果としましては、昨年度の今後の展望として挙げていた、は種をまくところから食べるところまで、そして農家さんと実際に交流することを盛りこんだ「一連の流れを提供する」という目標を達成できたことです。 また、つくる人と食べる人がつながる場づくり・関係づくり、食育への意識向上なども達成できました。 課題は、4点あります。特に今年は、新型コロナウイルスの影響でイベントの延期が複数回起きるなど、日程調整に苦労しました。そして、変更した日程とイベントで使用する農作物の生育状況を合わせることにも苦労しました。急な変更にも柔軟に対応できるようにしていきたいです。 また、広報活動、現地へ更なる関心を持ってもらうこと、イベントの内容の充実なども課題にあげられました。 以上の反省を活かして、次の提案をさせていただきます。 それは「飯館の企画と同様に川崎にいながら、農家さんの野菜が買えるような仕組みを作りたい」というものです。 ・飯館の企画では、都市に居ながら田舎とつながる仕組みとして、eコマースを開設しました。飯舘村に行かずとも、生産者さんや農作物とつながることができるようになりました。 この仕組みを館山や諸塚村にも応用し、つくる人と食べる人の架け橋になりたいと思います。 そして、私たちのイベントで紡いだつながりを確かなものにしていってほしいと思います。 田舎の窓口を気軽に参加できる仕組みづくりを目指して、後輩に託します。 行きたいなあ、会いたいなあ、食べたいなあ、そう感じていただけたら嬉しいです 以上で発表は終了となります。 ご清聴ありがとうございました。