ただいまより、令和3年度多摩区3大学連携事業報告・日本女子大編を始めたいと思います。担当いたしましたのは、人間社会学部文化学科教授・中西裕二、家政学部住居学科教授・薬袋奈美子の2人です。 令和3年度テーマは、 昨年に引き続き「生田でインバウンド〜生田緑地の魅力発信」といたしました。本年度は英語圏の人々、ベトナム人に生田緑地を紹介しようというコンセプトで始まりました。 とくに在日ベトナム人に関しては増加の一途をたどっている、その人たちにもこのような情報は有益だろうということで、ICT を活用しての生田緑地の魅力発信をおこなうとなりました。 しかし昨年同様、新型コロナ禍で活動が制限され、非常に苦労しました。そこで、SNS 上でベトナム語で生田緑地の魅力を発信する、それを中西が、HP上で生田緑地とその周辺地域の魅力を発信、を薬袋が担当いたしました。 私の方は、この後、発表へと続きます。薬袋先生の方は、薬袋研究室の3年生の学生が発表を担当しました。私の方は、昨年同様インスタグラムを使うという形です。 薬袋研究室の方は、日本の伝統の知恵を感じる、をテーマとして、ワークシートを作成いたしました。 それでは、中西の担当分から始めたいと思います。 今回は、昨年同様なんですが、インスタグラムのページを作成して、ベトナム語訳をコメント欄につけていく、という作業をいたしました。 これは、私がベトナムの研究に若干携わっているということで、それほどできないのですが、ベトナム語がある程度わかる、ということでベトナムとなった次第です。 新しく作ったページは ikuryoku.jwu2022 です。URL はこのようになります。 写真の場所、写真の文章のベトナム語訳をそれぞれコメント欄につける、ということになっております。 この写真撮影と、原文になる日本語に関しましては、人間社会学部文化学科の学生に協力してもらい、作業してもらいました。 それをコメント欄で訳していく、という形になっております。 本来は、ベトナムの方に生田緑地に来てもらい、写真を撮りインスタに上げていってもらう、ということを考えましたが、いま新型コロナ禍で、とくに留学生がほとんどベトナムに帰国しております。 それで、人がいないということで、本学の学生に生田緑地に行ってもらい写真撮影をしてもらい、その文章にベトナム語訳をつける形にしました。 今回の特徴としては、生田緑地への交通案内のベトナム語版を作りました。 ベトナム語のハッシュタグをつける、ということも行いました。 これがスマホ版のインスタグラムのページとなります。 左側の写真がトップページになります。 ここに英語で「a guide account for Ikuta Ryokichi Park」と書いてありますが、その上がベトナム語訳となります。 特徴としては、左側の画面の、写真の上の方に、様々なリンクを貼っております。とくに交通案内を載せております。これはあとでお見せします。 こういう形で、東京・横浜から現地に行きやすい、行き方がわかる形で情報を載せております。 これが、インスタグラムの写真のページになっております。 とくにコメント欄ですね、ここに日本語で撮影者にコメントを書いてもらっているんですが、その下に、これはどこの場所かということを書いております。 生田緑地内の岡本太郎美術館とベトナム語で書き、その下にハッシュタグで、 ベトナム語で美術館と入れております。その後に、上の日本語の文章のベトナム語訳が載っている、という形です。 これは、インスタグラムのページの、PC で見たものです。 このよう形で、それぞれの写真に、場所がどこか、コメントのベトナム語訳をつける、ということをしております。 これが、生田緑地へのアクセスの案内の画面になります。 これの左側が、小田急線を使っての行き方のページで、新宿から登戸、向ヶ丘遊園に行き、そこからバスに乗って行きますよ、というのがベトナム語で書かれております。 右側が、登戸からのバスアクセスの時刻表になります。平日、土曜、日曜という形で書いております。 このように、ベトナム語をインスタグラムに散らすということで、日本にいるベトナム人に生田緑地を利用してもらいたい、将来的には、インバウンドで増加するだろうベトナム人にも、このページを活用してもらいたい、と考えております。 続いて、家政学部住居学科の薬袋研究室の3年生によるワークシート作成の取り組みをご紹介します。都市計画の研究室ですので、日本民家園の各建物の立地していた環境を意識していただけるような内容の3つのワークシートを作成しました。 このようなワークシートの作成を行った背景には、生田緑地にはいくつもの博物館施設があるのに、学びの連携が十分ではないことを残念に思っていたということがあります また、私共は都市計画、地域居住の研究室なのですが、日本民家園の展示では、もともと立地していた場所の情報が多くはないことを残念に思っていました。 古民家は建物そのものにも「多くの知恵が詰まっていますが、立地していた場所や立地環境に合わせた建物の作りからも多くのことを学べます。 実はこのような学びは、自然と共生した豊かな暮らしの知恵と同時に、災害への備えにもつながる地形の理解にも結びつきます。 今回は楽しく地形等を意識するようなワークシートを作成してみました。 九十九里浜に建っていた作田家を用いたワークシートです。 当時の作田(さくだ)家は、佐久田村の名主であり、鰯漁の網元も勤めた有力な家柄でした。このような財力を反映して当時の民家としてはかなり大規模な家であったそうです。 まず作田家について説明します。 民家園内ではこの位置にあります(オレンジの枠にアニメーションついてます) かつて千葉県九十九里浜市に位置していた。海から2km程の場所にあり、漁業により生計を立てていた。 私たちが作田家を取り上げた理由としては、まず作田家が民家園唯一の漁家(ぎょか)であり珍しいこと、学習に関する問題点として、文章での説明が多く情報も少ないということ、また作田家について研究した過去の先輩の資料が残っていたため、その研究を踏まえて作成することができるのではないかと考えたからです。 これらのことから、漁家の地形との関わりまで視覚的に学べる小学生低学年むけの教材を作成しようと考えました。 ワークシートを作成するにあたり作田家オリジナルキャラクターさくださんを作成し、楽しく読んでもらえるよう工夫をしました。 構成はこのような流れとなっており、Q&A方式で表に問題、裏に回答がある形になっているため、気軽にパラパラとめくりながら作田家について学ぶことができます。 ここからは実際に作成したワークシートを紹介します。 表紙ではさくださんの紹介と、どのようなことが学べるかを記載し、手にとってもらいやすい工夫をしています。 地形について学ぶページでは、海の近くに住まいを構える作田家について知るために九十九里浜の特殊な地形について学ぶことができます。ここでは、海の近くの地層と川崎の地層を比べて、かわさき宙と緑の科学館と連携学習できるような問題を設けました。 先ほどの地形の学習を踏まえて、どこに家を建てるかを考えるページでは、家と自然災害の関係についても学べるような問題を作成しました。 最後に、当時の暮らしを学ぶ、といういうことで間取りで見る暮らし、広い視野で見る暮らし、当時の仕事から見る暮らしとして、鰯漁で栄えた九十九里浜の歴史もより学べる問題や豆知識を各所に設けました。 このように、現状設置されている説明資料だけでなく、作田家を多角的に捉えつつも視覚的にもわかりやすく、楽しく学べるワークシートを活用することで、子供にも積極的に作田家に興味を持ってもらいたいと考えました。 そしてこのワークシートを通して、民家だけではなく、家と地形といった地理的な関わりや暮らしについてなど、包括的な理解を促すことができると考えます。 こちらのQRコードを読み取っていただくとワークシートがご覧いただけます。 私たちは日本民家園の水車を選び、水車のワークシートを作成しました。 水車は昔、動力として人々の生活に欠かせないものでした。 しかし、どのような仕組みで水車が動き、具体的にどのような役割を果たしていたのかということについてはよく知りませんでした。 ワークシートは、小学校高学年から中学生程度の子どもたちが使用することを想定しました。 水車の仕組みや役割についての問題、また、民家園が位置する川崎市に流れる多摩川の生態系に関する問題を出題しています。 自分で答えを書き込む方式で作成することで、水車小屋を詳しく観察してもらい、答えを見つけてもらうことが期待できます。 写真や図を多く用い、水車が動く様子を容易に理解してもらえるよう、工夫しています。 子供だけでなく、大人が読んでも学びのある内容になっています。 ワークシート作成時の工夫は、次の3点があります。 まず、1つ目に、絵や写真を多く用いることで、子供たちが取り掛かりやすいようにしました。 問題の難易度は高いものも多いですが、絵や写真を用いることで、理解が容易になるよう工夫しています。 次に2つ目には、簡単なものから難しいものまで、様々な難易度の問題を取り混ぜました。 子供たちがただワークシートを埋めること防ぎ、簡単な選択肢が友達との話題となり、協力して進められるよう工夫しました。 3点目には、民家園に隣接する科学館にも、立ち寄ってもらうことのできるような作問を心がけました。 川崎に流れる多摩川の生態系についての問題は、科学館の展示、そして地域の自然環境に興味を持ってもらうことを目的としています。 日本民家園と、川崎 宙と緑の科学館に両方訪れてもらうために、ワークシートの問題の解答を見つけながら、両方を見学するという想定をしています。 ワークシートは、QRコードでも回答できるようにします。 このワークシートを通して、水車と生活との関連について、理解を深めてもらうことを期待しています。 現在、生活の中で水車を見かけることが滅多になく、民家園は、数少ない水車を見ることのできる貴重な場所です。 昔の人々の生活にとって欠かすことのできなかった水車について、民家園の実物を見るだけでなく、ワークシートに取り組むことで学びを深めてもらい、訪れてよかったと思ってもらえるのではないかと考えています。 今回は、「水路めぐりたい、実は知らない川崎の冒険ツアー」と題して、川崎、特に生田エリアをより深く体験するための企画を提案させていただきます。 事前に知っておくとより楽しめる情報もお伝え出来たらと思います。 皆さんは生田に来られたことがありますか。生田には丘陵地の地形を生かした川崎市最大の都市公園である生田緑地や、生田の地にゆかりを持つ藤子・F・不二雄のミュージアム、また春と秋に開苑する生田緑地バラ苑などたくさんの見どころがあります。 広大な生田緑地の敷地内には、江戸時代の民家などの25の文化財建造物を全国から移築・展示している川崎市立日本民家園、世界最高水準のプラネタリウムが有名なかわさき宙と緑の科学館などもあります 今回私たちは、水路巡り隊!と題したセルフツアーを作成しました。 日本民家園にある清宮家の工夫と地域の特色を、実際にまちを歩きながら体感し、まちや住居への知見を深める教材となっています。 今回とりあげた清宮家は、日本民家園のほど近く、多摩区登戸に建っていました。 右の地図の青い旗が日本民家園、赤い旗が清宮家となっており、非常に近くにあったということがわかります。 日本民家園にある民家の多くで、旧所在地の風土に合わせた様々な工夫を見ることができますが、 この清宮家は、現在建っている場所と旧所在地が大きく変わっておらず、(日本民家園がある場所、つまり)多摩区登戸の昔の姿を私たちに伝えてくれる貴重な資料となっています。 多摩区登戸といえば、多摩川がすぐそばを流れています。 多摩川は、山梨県・東京都・神奈川県を流れる一級河川で、全長138kmにも及びます。 清宮家のある川崎の名前の由来は、多摩川の先にできた土地という意味を持ちます。 多摩川は暴れ川として有名で、大雨のたびに何度も大洪水をおこし、流路を変えてきました。 1589〜90年の大洪水で多摩区内の流路が北遷し現在の位置となりました。 多摩川に架けられる橋は、洪水で頻繁に押し流され、元禄から明治の初め頃まで、人々は渡し賃を払って舟で川を渡っていました。 こちらが、清宮家のあった場所と多摩川の位置関係です。 このように、江戸から大正にかけて、多摩川は清宮家の位置を跨ぐようにして変遷しました。 このような変遷を遂げた登戸周辺には、洪水の際に陸に土砂が堆積して作られた自然堤防という場所がたくさんできました。 実は、清宮家もこの自然堤防の上に建っていたのです。 こちらの地図の黄色の場所が自然堤防で、家マークが清宮家をあらわしています。 地形の特色を生かし、水に強い場所に家を建てることで川にちかいこの場所でも長く暮らすことができました。 他にも、清宮家にはさまざまな洪水への工夫をみることができます。 多摩川とまちの関わりを見てみると、現在にも残るまちの変遷を見ることができます。 それが、1597年に作られた二ヶ領用水です。 これは、流路を変えた多摩川の湿地帯に敷かれ、水田開発に利用されたものです。現在は用水路としての需要はなくなりましたが、保存活動の結果、街中で美しい遊歩道として見ることができます。 こちらが実際のまちの様子です。 川のまちというように、曲がりくねった道が多くなっています。 特徴的な暗渠や、道を巡った先でみつける開渠は、今もまちに川がめぐっていることを感じさせます。 このように、清宮家と多摩川、そして多摩区登戸地域は、密接に関わりあってきたということがわかります。 今回のセルフツアーでは、実際に今あるまちの姿をめぐることで、住居、川、まちそれぞれへの関わりに関心をもってもらうことを目的としています。 楽しくスポット巡りができるよう、要所要所に注目スポットやエピソードを交えたマップとし、重要スポットにはチェックボックスを用意しました。 意識して歩かなければ見つけられないまちの姿を自身で探し見つけることで、新しい発見につながると考えます。 さらには、この地域に点在する様々な自然や歴史施設をめぐることのできるルートとなっているため、より深い学びへの発展が期待できます。 チラシのダウンロードはこちらのQRコードからできますので、ぜひ友達同士や家族で街を巡ってみてください! 日本女子大学の学生による取り組み、いかがでしたでしょうか?インスタによる発信でより多くの海外の方にもお越しいただき、豊かな自然のある生田緑地を楽しんでいただくだけでなく、日本民家園と宙と緑の科学館の両方にまたがって考える機会を持つワークシートがあることで、日本の魅力を、日本の賢さ、クールさをより深く理解いただけることを期待しています。 またこういった情報発信やワークシートは、海外の方だけでなく、日本人に対しても多くの気づきを提供できることを期待しています。皆さん、アクセスしてください。