当事者や家族のニーズから生まれた事業について
そもそも若年性認知症の事業が、当事者やその家族から相談されたものを実現したものです。他には、川崎市からの委託で、マイWayの経験や知見を活かして、生活困窮者や生活保護受給者の就労の場として、市内の介護事業所等に繋いでいくという事業を行っていました。合わせて、就労先に対して、生活困窮者や生活保護受給者の就労の場が必要であることも知ってもらうように働きかけ、当事者が、自分で仕事を見つけて生活保護から脱却していく支援にも取り組みました。
このように、既存の制度では対応できない課題について、いち早く対応することが重要だと感じました。
アットホームな雰囲気で働いてもらうことを大事に
マイWayのスタッフが大事にしていることは、やはり利用者さんが毎日楽しく働くということです。このため、アットホームな雰囲気づくりを心掛けているということでした。そのうえで、スタッフが意識していることは、いつも利用者目線でいること。マイWayに来て良かったなと思ってもらえるように、みなさんが元気に毎日過ごしてもらいたいと思っているということでした。また、当事者の方も働いているので、スタッフも利用者も分け隔てなく一緒にがんばっていこうという雰囲気にしているということです。
作業風景をみさせていただきましたが、スタッフの言われるとおり、音楽もながれアットホームな雰囲気の作業場でした。
お仕事は、わきあいあいとアットホームな雰囲気で行われています。
就労支援以上に居場所となっている。コロナ禍でも開所し続けた。
マイWayは、就労支援以上に居場所となっていると感じました。作業場全体の雰囲気が明るく、利用者さんたちはみんな楽しそうでした。若年性認知症の方に限って言うと、マイWayのような場はなかなかないので、行ける場所がある、悩みを言える場、共有する場、仲間をつくれる場をつくれていることが良かったんだと感じました。利用者さんからも生活のはりにもなるし、うれしいと言われているということでした。
マイWayは、利用者のみなさんの居場所になっている。コロナ禍でも閉鎖せずに感染を気をつけながら開所し続けた。居場所を閉じてしまうと、障害をお持ちの方は、ずっと家に閉じこもってしまうようになる。そうならないように、開け続けることを大事にしました。
利用者さんの声
「(やら)ねばならない」があることが大事
若年性認知症の利用者さんから、お話を伺いました。
私は定年退職で仕事をやめたが、家にずっと閉じこもっていると刺激がないので、さらに悪くなってしまうと感じました。私はテレビを観ることが好きなのでずっと観ていることができるが、それだと良くないと感じていました。このため、心配した娘がマイWayを紹介してくれました。
自宅からマイWayまで電車で20分くらいかかるのですが、通勤するだけでも刺激があって良いと思います。たとえば、電車に乗ることでも周りに気を遣ったり、注意を払ったりします。そのような刺激が大事だと思います。ずっと家にいると何も刺激がないので、注意力などが落ちてくる。通うだけでも症状を悪くさせないと思います。また、外に出るには、それなりにおしゃれもしないといけないし、そういうのが必要だと感じています。
また、マイWayに来ると、自分がやらないといけないことがあります。「(やら)ねばならない」ことがあることが重要だと感じています。さすがに一般的な仕事のようにノルマがあるわけではないが、スタッフからのプレッシャーは感じます(笑)。そのようなプレッシャーがあることも大事だと思うのです。人間は、「ねばならない」ということがないと、ダメになってしまいますね。
さらに、マイWayに来て周りの人とコミュニケーションをとることも大事で、お話ししているなかでこの人は何を考えているのかな、と考えることも必要だと思うのです。そして、同じような症状を持つ人と知り合うことができる。同じ悩みを持つ仲間と、悩みを共有できることも精神的な安定につながります。ひとりだとこの仕事は続かなかったと思う。同じ症状を持つ仲間がいると、ほっとします。
別に給料がほしいわけではなく、今の自分ができることで社会に貢献したいという思いがある。前に長年勤めていた会社の趣旨で、まわりに還元されるような仕事に取組むということがあって、賛同していた。今は定年退職したが、マイWayでは今でも同じような思いで仕事ができることが良い。これが心の支えになる。そして帰ってからのビールがうまい(笑)
人間は、「ねばならない」があることが大事だと思います。「やってもよいよ」だけでは、なかなかやらないですよね。とはいえ、他人から「ねばならない」と言われて腑に落ちないでやるのはだめで、自分で納得してうえで、「ねばならない」をつくることが大事だと思います。それが達成感を感じることにつながるのです。
利用者さんがおっしゃっているよに、ゆるい形での「ねばならない」があることが大事であり、それが居場所につながると感じました。
作業場の様子を取材
今やっている作業は、大手ネットショッピング会社に出品している企業さんの、商品のセット組みや、商品のバーコードのシール貼り、商品に付けるおまけの袋入れを行う作業です。
この企業さんからは、継続してお仕事を頂いています。この業務を受注したきっかけは、この企業の方が、マイWayに飛び込みで来てくれて依頼されました。この企業の社長さんは、福祉系で働いたご経験があり、一緒に相談しながら、どんなことができそうかを考えています。
その企業からは、急ぎの仕事が舞い込むこともありますが、そういう時は、みんなで力を合わせて対応しています。メンバーのみなさんは、もともと企業にお勤めしていた方が多いので、納期が決まっている作業は特に、団結して取り組まれています。
また、メンバーみんなで手づくり品をつくって、高津区のイベント、たとえばJR溝の口駅自由通路で開催されているKAWASAKI産SUNフェスティバルで販売したりしています。先日のフェスティバルでは、あっという間に手づくり品が売れてしまいました。「はたらく」とは単に仕事をするだけでなく、誰かの役に立てることなども大切にしています。
KAWASAKI産SUNフェスティバルでの販売の様子。
いつもみなさんと一緒にお仕事ができること、喜びや達成感を共感できることがうれしいと感じています。
マイWayの皆さん
取材を終えて
皆さんテキパキと働いておられ、休み時間には笑い声の響く明るい雰囲気の作業スペースでした。
利用者さん自身が自分のやるべきことを見出だせる居場所に通えることで、「生きる力」が輝いていると思いました。
困っている方の声に応えることで支援を展開されてきたそうで、利用者さん一人一人の性質や生活面にも寄り添う姿勢が丁寧に感じられました。
「NPO法人マイWay」のことをもっと知りたい
- 場所:川崎市高津区下作延6丁目4番地3号エムズヒル2F・3F
- 利用日:月~金曜日9時30分~16時(祝日・年末年始除く)
- 定員:20名
- 種別:就労継続支援B型事業
- 問合せ:NPO法人マイWay
電話044(833)5886(9時~17時 (土日祝・年末年始 除く)) - ホームページ:https://my-way.jp/