院長挨拶

皆さん、市立川崎病院ホームページにようこそ。病院長挨拶ですが、毎年春に更新しようと考えておりましたが、今年はコロナ禍に見舞われ、これが落ち着いてからと考える中、日時がたって遅れてしまいました。

さて、当院ですが、昭和時代の伝染病院から始まる長い歴史の中で、時代の要請に応え、地域の公立病院として数々の高度医療の機能を強化してまいりました。それは、急性期医療としての救命救急、外傷治療、集中治療であり、最新画像診断装置による診断、高難度手術、鏡視下手術、放射線治療等に裏打ちされたがん診療であり、小児周産期医療、精神科医療、感染症医療、難病医療、災害医療などの政策的医療であります。昨年2019年は、4月に働き方改革関連法が施行され、時間外労働の縮減などの医師の働き方改革を本気で進めなくてはならない時期になっておりました。また、同年9月には、厚労省から公立・公的病院の再編統合の再検証の必要な424病院の提示が行われるなど、ここ数年、政府の進める地域医療構想も正念場に入ってきたところです。このように、あらゆる意味で、病院が業務の効率化を進めていかなければならない時期に、世界的なコロナ惨禍に見舞われたわけです。

2020年2月にクルーズ船乗客から当院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応は始まりましたが、これが収束した後も3月から市中感染の大きな波がやってきましたが、救命センター病棟の全面コロナ対応化、医師の特別チーム編成、1病棟の閉鎖、手術治療の抑制などにより乗り切りました。いったん収まったものの、6月中旬からは次の波がやってきて、現在に至っています。これまでの間、7月末日時点で113名のコロナ関連入院を診ていて、うちCOVID-19確定例は71名、うち重症例は20例に上ります。重症例でもほとんどの方は軽快退院されています。指摘しておきたいことは、これだけの数の患者を見ているのにも関わらず、全く院内感染を起こしていないことです。それは、当院では医療職が厳密な感染管理を、継続的に緊張感を持って行なっているからです。また、外から感染を院内に持ち込まないための工夫も多々行なっています。外来者にお願いしている体温チェックは職員全員に課しておりますし、体調不良者は登院しないように指示しています。COVID-19入院病棟は一般病棟と独立しており、動線も完全に分けております。病室は基本的に陰圧室となっており、一般病棟等に感染を拡げる心配はありません。病院内は完全に清潔に保たれており、感染症病棟も完全にコントロールされています。その点では、安心して一般診療を受けていただけます。

ただ、市内での検査陽性率は一時、1%を切っておりましたが、ここに来て5%程度となっており、市中に陽性者が一定数存在することを想定しなければなりません。医療者が市中で感染することがありえるようになってきています。そして、無症状の感染者がかなり存在する厄介さを考えると、病院での感染管理の考え方も、修正が必要になってきています。例えば、従来防護具は感染患者から医療者を守るものでありましたが、これからは防護具で医療者の不顕性感染から周囲を守ることも考えていかなければなりません。医療者は自らが感染している可能性も考えながら業務をしなければならない、ということです。

ここ6ヶ月の間、総力をあげてCOVID-19対応をしてまいりましたが、この間、手術治療や救命救急医療に大きな制約が生じました。一般患者さんには予定手術の延期など大きなご迷惑をおかけいたしました。COVID-19対応が短期決戦では済まないことがはっきりしてきた中で、COVIDを第一義的に診療してきた考え方を、これからはCOVID-19対応も一般診療も共に両立させる方向に舵を切っていかざるを得ません。COVID-19は日常の中にあることを前提にした、病院運営を行なっていかねばならないのです。今後は、COVID-19の入院を行なっている病院は感染管理のスキルの高い安全な病院との認識が進むでしょう。COVID-19との付き合い方を知っているからです。

COVID-19対応はまだまだ続きます。市民の皆様のご協力も引き続きお願いします。面会禁止、エントランスでの検温、つつじ外来への誘導、追加された術前検査(LAMP法や胸部CT)など、数々のご不便をおかけしますが、患者ご自身の健康管理と病院の機能維持のためですので、何卒、ご協力をお願いいたします。

病院運営的には、COVID-19対応以外にも、医師働き方改革、地域完結型医療への転換、地域医療構想・地域包括ケアシステムの実現など、課題が山積みですが、何れにしてもCOVID-19存在下の効率的医療を推進していかなければなりません。市民の皆さん、地域医療をともに担う皆さんからの支持をいただきながら、協調して進めていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
入れない、罹らない、拡げない。

2020年8月1日
川崎市立川崎病院 病院長 金井歳雄

病院長 金井 歳雄