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エコシティたかつ


「たかつ水と緑の探検隊」調査日の記録


1  オリエンテーション

本日の作業の概要の説明(岸委員長)
オリエンテーション
チャオプラヤ川(メナム川)の水害や名古屋での100万人への避難勧告など、温暖化による豪雨傾向が顕在化している。 また、生物多様性の保全も温暖化と大きな関係がある。
「エコシティたかつ」は、変化に先駆けた温暖化適応策、生物多様性保全を「流域」を基本とした地べたの構造から 総合的に捉えて取り組んでいる。
「谷戸」とよばれる典型的な「小流域地形」となっているたちばなふれあいの森は、その取り組みが、分かりやすく実施できるところ。 モデル的な取り組みとし、他の地域にも広げていきたい。
本日は、まず2つの谷戸の周辺を全員で回り、その後グループに分かれてマーキング作業をする。 また、エノキの木の下にいる生物についても確認する。

 

市民健康の森を育てる会の紹介(徳武会長)
徳武会長
広場のあるところを「丘」、この場所は「森」と呼んでいる。
会では、樹木の伐採、雑草の手入れなどを行っている。雑草の手入れが大変で活動の中心になっている。 また、ホタルの飼育も行っている。2月には放流する。いずれは自然繁殖できると良い。

2  調査

全員で谷戸の周囲を確認
全員で谷戸を確認
<岸先生の解説>
谷戸地形と管理

降った雨が集まってくる小さな谷を鎌倉幕府の影響のあった地域では「谷戸」と呼ぶ。
谷戸は自然を管理する際の規範となる大切な場所。谷戸の管理によって、水害や土砂の流出、生物が棲みつく環境ができるかが決まる
。 たちばなふれあいの森の谷戸では、階段をつくって人が通る場所を限定し、下草が残るように配慮しているが、 階段の両側は削れてきている(南側の谷戸)。また、土砂が流れないよう、谷の下で止められると良い。

 

雑木林の植生(シロダモ、アオキが増えている)
雑木林はクヌギ、コナラなどの落葉樹が中心だが、現状は、常緑樹のシラカシもみられるようになっている。 理論的には、ほっておくとシラカシばかりになると言われているが、温暖化の影響で寒さが好きなシラカシではなく、 シュロやシロダモ、アオキが増える傾向にある。
シロダモやアオキ、シュロは赤い実をつけ、それをヒヨドリが食べて広がっている。
シロダモやアオキ、シュロは、昔からあるが増えると森や川が暗くなり、下草が育たなくなるなどの課題がある。
伐採し、川や森を明るくする必要がある。 竹林の管理においては、下草が少ないので、今後、どのように増やしていくかが課題である。

雑木林の植生

 

トキワツユクサの駆除が必要
トキワツユクサ(別名:ノハカタカラクサ)は増えるとユリやランが芽を出せなくなる。 要注意外来植物に指定されているが特定外来に指定しても良いほど、危険な外来種だ。 湿気の多い日陰に適する。雪や霜は苦手だが、近年は霜もそれほど降りなくなった。
処理は難しく、折れた切れ端から根が出て新たな株として再生するため、根から丸ごと取り、 葉や茎の切れ端を残さないように細心の注意が必要。根のはり方に特徴があり、A0層 (表土の一番上の腐葉土が積もっている部分)とA1層の間に根をはる。 A0層を手で引っ掻きながら、根から丸ごと取るようにする。各自1㎡ごとに持ち場を決めて行う。 取ったものは、黒い袋などに入れ、光合成を遮断する必要がある。焼却処分でも良い。 不用意な折り取りによって、分布拡大につながっているので注意が必要。
夏は、日本の在来種であるツユクサとの区別が難しい(ツユクサは、トキワツユクサよりも葉が小さい)。 冬に葉があるものがトキワツユクサなので、区別しやすい冬に駆除するのが良い。
観葉植物として植えているものが、崖上の民家などから入ってくる傾向にある。 雨などによって、下へひろがっていくので、元(ソース)を絶つことが大切である。

トキワツユクサ

 

イイギリ
たちばなふれあいの森は、良い植物が多い

ヤブニッケイの木がある。葉を噛むと良い香りがする。かなり大きくなる。
シダ類もたくさんの種類がある。もぐらもいる。 ヤブツバキもみられる。ヤブツバキは大きくなるまでとても時間がかかる。
イイギリもある。地域の人に大切にされてきた木だと伺える。

 

ホタルの育つ環境づくりに向けて
水路に杭を打っているのは川底を安定させる効果があり、とても良い。 土砂を砂防ダムのように少しためて、草を切って思い切って光を当ててやるとカワニナが育ちやすい環境になる。
ゲンジボタルは、自然繁殖だと数十匹だろう。たくさん光を当てた方がカワニナは育つ。
ヘイケボタルは、サカマキガイでも良い。また川の流れが無くても良く、湿っていれば良い。 川底を深くすると側面が乾いてしまうので、深くせず湿らせてどろどろの状態にし、 光のあたる水辺にすれば自然繁殖に挑戦できる。ヘイケボタルの方が取組みやすいのではないか。

 

マーキング作業
マーキング
グループに分かれて「トキワツユクサ(赤いテープ)」「シロダモ(白いテープ)」「アオキ(黄色いテープ)」のマーキング作業を行った。このマーキングを基に1/21(土)には、トキワツユクサの駆除作業を行う。
エノキの落ち葉の中でみられる生物の確認作業
エノキの木の下の落ち葉の中には、オオムラサキ、ゴマダラチョウ、テングチョウなどの幼虫が越冬する。 木の周りの1mぐらいの範囲の落ち葉が飛ばされないように竹で垣をつくり守ると良い。 暖かくなるとアカボシゴマダラチョウの幼虫が見られるようになる。
【調査で発見した生物】
  • ゴマダラチョウの幼虫/2匹
  • アカスジキンカメムシ/6匹
  • エサキモンキツノカメムシ/2匹
  • ヨトウムシ/2匹(落ち葉の裏にいたのではなく、下の土から掘り起こされた)
※アカボシゴマダラチョウの幼虫は見られなかったので、自然度が高く、寒い環境にあることが分かった。


雑木林の植生

 

3  意見交換会(橘出張所)

参加者の自己紹介及び感想

まとめ(岸先生)
地べたにはりついた生物の世界は体感して知るのが一番良い。
今回は、トキワツユクサが谷にも繁殖していることが確認された。
エコシティたかつでは、温暖化、生物多様性の問題に対して、地べたの構造に基づいて総合的に取り組んでいきたいと考えている。 たちばなふれあいの森での取り組みが良い事例となり、他に広がっていくと良い。ここで、学んだ人が他の地域にノウハウを伝えて行けると良い。 そのような人が増えると希望が持てる。
1/21(土)はトキワツユクサ等の駆除を行いたい。水の流れやホタルのことについては高津区市民健康の森を育てる会の方と相談をして方向性を 決めていきたい。




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