国史跡橘樹官衙遺跡群
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国史跡橘樹官衙遺跡群とは
国史跡橘樹官衙遺跡群(くにしせき たちばなかんがいせきぐん)は、武蔵国橘樹郡の役所跡である千年伊勢山台遺跡[橘樹郡家跡]と、その西側に隣接して造営された古代の寺院跡である影向寺遺跡から構成される古代官衙の遺跡です。
橘樹官衙遺跡群は、地方官衙の成立から廃絶に至るまでの経過をたどることのできる貴重な遺跡で、その成立の背景や構造の変化の過程が分かり、7世紀から10世紀の官衙の実態とその推移を知るうえで重要であるとして、平成27(2015)年3月10日に川崎市初の国史跡に指定されました。
千年伊勢山台遺跡[橘樹郡家跡]
千年伊勢山台遺跡は高津区千年の丘陵上に営まれた縄文時代から中世にかけての複合遺跡です。このうち、古代橘樹郡の役所にかかわる遺跡を「千年伊勢山台遺跡[橘樹郡家跡]」といいます。
郡家(ぐうけ)とは、古代の律令制度下でおかれた郡において、郡司(ぐんじ)以下の官人が政務をとった役所のことです(考古学の用語としては、郡家のことを郡衙と呼ぶこともあります)。郡家には、郡庁(ぐんちょう)・正倉(しょうそう)・館(たち)・厨家(くりや)などが設けられました。
このうち、郡庁は郡の政務をとる庁舎、正倉は税として納められた頴稲(えいとう=穂首刈りをした稲穂)などを納める倉庫群で、溝や塀で区画された場合は正倉院(しょうそういん)と呼びます。館は宿泊施設、厨家は郡家で行われる給食や饗宴のための厨房で、その他に手工業生産のための工房や祭祀場などがおかれました。
橘樹郡家跡も、このような施設からなっていると考えられますが、現在のところ確実に判明している施設は、租税を納める倉庫が並んでいた正倉院のみです。
橘樹郡家跡では、最も広い部分で東西約210m、南北約160mの東西南北を区画する溝の一部が確認されています。
また、正倉院の西側には、さらに郡家に関連すると考えられる大型建物群が広がっていることが分かってきました。
橘樹郡家跡の確認調査で発見された正倉院内部の建物跡は、建物の主軸方向がほぼ東西南北に沿っているグループと、建物の主軸方位がやや西側に振れているグループが存在しています。
この違いは建物が建てられた時期の違いと考えられています。これらのグループの中でも建物どうしの重なりや規模などから、さらに新旧が分かれ、現在では7世紀後葉から9世紀後葉まで4時期の変遷を想定できます。
橘樹官衙遺跡群の遺構配置
- 橘樹官衙遺跡群の遺構配置推定図(S=1/2000)(PDF形式, 7.59MB)別ウィンドウで開く
現在の発掘調査の成果から推定される遺構の配置を地図上で見ることができます。
影向寺遺跡
影向寺は、寺の縁起では天平年間の創建とされていますが、境内及び周辺での発掘調査の成果から、創建は7世紀終わりごろであることが明らかになりました。これは、橘樹郡家跡で確認された古い時期の建物群とほぼ同時期にあたり、古代影向寺の創建と古い段階(評)の役所の造営に関連があったことが推測されます。この古代寺院の遺跡を影向寺遺跡と呼んでいます。
現在の影向寺は古代に創建されたころの伽藍は失われていますが、発掘調査の成果から7世紀の終わりごろに、現在の薬師堂とほぼ同じ場所に瓦葺の金堂が創建されたのが始まりと考えられます。
境内からは「旡射志国荏原評(むさしこくえばらこおり)」や「都」とへら書きされた瓦が出土しており、古代影向寺の造営や修理にあたっては、隣接する荏原郡や都筑郡からの支援があったことが推測されます。
また、8世紀に入り塔が整備されたあと、金堂の再建が行われたようです。再建された金堂の補修にあたっては、武蔵国府が管理する南多摩窯跡群で生産された瓦が利用されました。これらのことから、影向寺が橘樹郡だけではなく、武蔵国府が補修などに関わるような、南武蔵国の中心的な寺院であったことが想像されます。
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保存活用の取組
(指定まで)
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- 橘樹官衙遺跡群の国史跡指定について
平成27年3月10日文化財保護法に基づき文部科学大臣から国史跡に指定されました。
(指定後)国史跡橘樹官衙遺跡群保存活用計画の策定(平成30年2月)
現在、国史跡橘樹官衙遺跡群を将来にわたり保存し、史跡の価値と魅力を広く伝えていくため、史跡の適切な保存管理、活用、整備、管理運営体制等についての基本的な指針と、個別の取扱のための基準を定めるための保存活用計画を策定しました。
国史跡橘樹官衙遺跡群整備基本計画の策定について
『国史跡橘樹官衙遺跡群保存活用計画』に基づき、遺跡群を将来にわたり保存し、史跡の価値と魅力を広く伝えるとともに、遺跡群及びその周辺地域がもつ歴史や価値を活かしたまちづくりを図るための保存整備に関する基本方針、整備目標等を示した基本計画を、平成31年1月に策定しました。
活用事業
詳しく知るために-刊行物のご案内-
国史跡橘樹官衙遺跡群について、わかりやすく解説するリーフレットです。(無料)
遺跡の範囲が地図に落とされた解説付き探訪マップ(無料)。
川崎市埋蔵文化財調査報告書第8集。橘樹官衙遺跡群の総括報告書[古代編](有料頒布)。
橘樹官衙遺跡群保存活用事業 史跡めぐり
橘樹官衙遺跡群やその周辺の文化財を、専門職員の案内で巡ります。
お問い合わせ先
川崎市教育委員会事務局生涯学習部文化財課
住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地
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