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川崎市住民投票制度検討委員会報告書(概要版)

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制度構築に向けた17の論点

論点1 個別設置型条例及び常設型条例
論点2 住民投票の結果の拘束力
論点3 諮問型住民投票制度における「尊重義務」とは何か
論点4 住民投票の対象事項
論点5 住民投票の実施区域の設定
論点6 設問及び選択肢の設定
論点7 住民の発議権及び投票権
論点8 議会及び長の発議
論点9 住民投票の実施機関
論点10 地方公共団体の情報提供のあり方
論点11 住民投票の投票運動
論点12 住民投票実施の定例化
論点13 選挙との同日実施
論点14 成立要件等の設定
論点15 執行停止制度
論点16 異議の申出(不服申立て)
論点17 住民投票の再請求・再投票

論点1 個別設置型条例及び常設型条例

 常設型条例とは、あらかじめ住民投票の対象となる事項や発議の方法などを条例化しておくものであり、個別設置型条例とは、住民の意思を確認する必要が生じたつど、住民の直接請求や議会又は長の住民投票条例案の提出により、議会の議決を得て制定されるものである。
 常設型条例は、制度として安定していること、必要なときに迅速に対応できること、個別設置型よりも多くの署名を集める必要があるが、規定方法によっては署名が集まれば確実に住民投票が実施されることなど、個別設置型条例に比較して、住民としてのメリットが多い。

  • 常設型条例は、これまで全国で20あまりの地方公共団体で制定されている。なお、本検討委員会では、2003年12月31日時点で制定されていた、12の地方公共団体の常設型住民投票条例(以下「12の常設型条例」という。)を参考にさせていただいている。

論点2 住民投票の結果の拘束力 ~拘束型住民投票と諮問型住民投票~

 住民投票の結果が長等を拘束する(又は、住民投票の結果を団体の意思とする)仕組みを住民投票条例に規定することは、違法であるとするのが通説であり、諮問型(拘束力はなく、尊重することを規定する)として制度設計することが妥当である。

  • わが国で行われた条例に基づく住民投票のすべてが、諮問型住民投票である。

論点3 諮問型住民投票制度における「尊重義務」とは何か

 最高裁判例(群馬中央バス事件)を参考とすれば、尊重義務とは、住民投票の結果を慎重に検討し、これに十分な考慮を払うことと考えられる。合理的理由のない限り、これに反する決定をしないことまで求められるかについては、仮に求められないとしても、何らの理由もなく住民投票の結果に反する決定をなしえるとは考えられない。逆に、求められるとしても、政策決定における住民投票の結果の尊重義務は、その裁量の範囲において、最高裁の事案である行政処分における審議会答申の尊重義務に比較してより広いと考えることができよう。

論点4 住民投票の対象事項

対象事項の基本的な考え方

 住民投票の対象事項は、一般的に言えば「市政運営上の重要事項」ということができ、国として判断すべき事項や他の地方公共団体に関することで、住民投票を実施する地方公共団体に影響を及ぼさないものは除外されることになろう。
 しかし、住民投票制度が、住民参加の重要な制度として活用されていくためには、なるべく対象事項を限定しない規定方法が望ましく、対象事項を「市政運営上の重要事項」と広くとらえた上で、制限列挙的にネガティブ・リスト(住民投票の対象とはしない事項を列挙しておくもの)を併用することが最も現実的な方法といえる。

  • 12の常設型条例のすべてが「市政運営上の重要事項」とした上で、制限列挙的にネガティブ・リストを規定している。

ネガティブ・リストの規定についての考え方

12の常設型条例で規定されているネガティブ・リスト

  1. 市(町)の機関の権限に属しない事項
  2. 法令の規定に基づき住民投票を行うことができる事項
  3. 専ら特定の市民又は地域に関係する事項
  4. 市の組織、人事又は財務の事務に関する事項
  5. その他住民投票に付することが適当でないと明らかに認められる事項

※ ただし、三野町においては5.の条文は規定されていない。

  1. 市の機関の権限に属しない事項
     「権限」を「決定権限」というような狭い解釈をせず、地域に重大な影響を与えることについては、国等に意見表明を行うことなども地方公共団体固有の権限としてとらえるべきである。
  2. 法令の規定に基づき住民投票を行うことができる事項
     この事項を条例に基づく住民投票の対象とすることは、すでに法律上の制度があるため意味がなく、また、法律上の疑義も生じるため、ネガティブ・リストに入れることは妥当と考えられる。
  3. 専ら特定の市民又は地域に関係する事項
     この規定を定める理由の1つとして、特定の住民又は地域の利害に大きくかかわることを、直接的な利害にかかわらない多数の住民の判断に委ねることから生ずる不合理を避けることがある。しかし、施設の建設についてはすべてこの規定に該当し、住民投票の対象外とされる可能性もある。そのため、規定の必要性や方法について慎重に検討すべきである。
  4. 市の組織、人事又は財務に関する事項
     これらの事項は、決定した政策をいかに効率的かつ効果的に、そして確実に執行するかという長の執行権の前提になるものであり、それが純然たる内部管理の事項である場合は、住民投票の対象事項としてなじまないものであろう。しかし、この規定に該当するものが政策判断を伴う場合もありえるので、規定の方法やその適用の仕方について慎重に検討する必要がある。
  5. その他住民投票に付することが適当でないと明らかに認められる事項
     この規定は、長に大きな裁量を与えるものであり、長の判断の是非について争いが起こる可能性がある。そのため、議会や第三者機関が関与する仕組みを設けるなど、長の裁量権に一定の枠を設定するようなことを検討する必要がある。

直接請求の除外事項等

 地方自治法において、地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関する条例の制定改廃を直接請求の対象から除外しているのは、これらは代議制の下で決定されるべきとの考えに基づくものと思われる。しかし、これらを住民投票の対象事項とすることは法に直接抵触するものではなく、このような事項こそ民意の反映が必要であるとの考えもある。特に、住民投票の定例化と義務的レファレンダム(特定の事案については必ず住民投票にかけなければならないという仕組み)の組み合わせを考える場合に、直接請求の除外事項を住民投票の対象として検討することには、大きな意味があると思われる。
 なお、高浜市のように、直接請求が議会で否決等された場合にのみ、条例の制定改廃について住民投票を発議することができるという仕組みを検討することも意味がある。

論点5 住民投票の実施区域の設定

実施区域に対する考え方

 これまで実施された住民投票は、すべてその地方公共団体の全域を投票区としている。しかし、例えば、施設建設に当たって、建設予定地域に限定した住民投票が行われれば、全域で行った場合の結果と相反することが十分予想される。全域を投票区とすることが通常であるが、そのように設計するとしても、逗子市住民投票付託に関する条例案(1984年議会で否決)のような、市を8地区に分割した中で、2地区以上の地区における有効投票の2/3以上が全体の住民投票の結果と相反する場合は、住民投票の結果を無効にするという成立要件の設定の仕組みも参考にして、検討する必要がある。

  • 12の常設型条例のすべてが、地方公共団体の全域を投票区としている。

区民投票と対象事項

 本市においては、各区の地域特性の強さ等から、区を1つの投票区域とした区民投票に対する潜在的要求はあると考えられる。しかし、拘束力はなくとも、区民投票は、対象事項によっては少なからず全市に影響を及ぼすような可能性もあり、また、市民全体の代表者である市長が区民(一部の市民)の意思を尊重しなければならないのか等、区民投票は今後の検討課題である。

論点6 設問及び選択肢の設定

設問及び選択肢の設定の基本的な考え方

 同じテーマ、同じ二者択一形式で住民投票を実施したとしても、その設問や選択肢の設定の方法によっては、投票結果に大きな差が生じることが予想される。そのため、なるべく恣意性を排除した、公正かつ公平な設問、選択肢の決定の仕組みを構築する必要がある。

  • 12の常設型条例のすべてが、二者択一で賛否を問う形式としている。

常設型条例における設問及び選択肢の設定と発議の関係

 設問及び選択肢の設定についても、条例の策定過程で議論される個別設置型条例に対し、常設型条例の場合は、すでに条例という土俵が用意されているため、だれがそれを行うかを明確に規定する必要があるが、発議者の意図を尊重するという観点からも、それは原則として発議者が行うものと考えられる。

  • 12の常設型条例のすべてが、明確な規定を持っていない。

論点7 住民の発議権及び投票権

未成年者について

 住民投票は、その発議や投票によって、未成年者になんら不利益的な影響を与えることなく、逆に、未成年者の権利を守ることにもつながることから、未成年者を除外する合理的理由はないと考えられる。

  • 12の常設型条例中8条例が、18歳以上に資格を認めている。

外国人について

 住民投票は、本市に居住する住民の意思を確認するためのものであり、本市の住民である外国人が住民投票に参加することは当然と考えられる。
 なお、外国人登録法、外国人のアイデンティティー及び投票資格者名簿の縦覧等の問題から、投票資格者名簿の作成に当たって、自由意思に基づく登録という手続が必要と思われるが、それを必要としない制度設計が可能かどうかについても検討すべきである。

  • 12の常設型条例中8条例が、永住外国人に資格を認めている。

発議に必要とされる署名数

 住民投票の発議においては、どの程度の署名数が適当かという合理的基準はなく、立法政策の問題といえる。その設定に当たって、法律に基づく住民投票で採用されている有権者の1/3以上や1/6以上よりも高い(厳しい)要件とすることは、法との均衡を失する可能性がある。下限については、濫用を防ぐ等の観点から、直接請求の場合に必要とされる1/50以上を上回ることが必要であり、人口規模や他の地方公共団体の事例等をも考慮しながら決定すべきである。

  • 12の常設型条例中、投票資格者の1/3以上としているものが5条例、1/5以上としているものが2条例、1/6以上としているものが3条例、1/10以上としているものが2条例である。なお、政令市である広島市は1/10以上としている。

論点8 議会及び長の発議

議会及び長の発議権の是非

 議会及び長は、民意を把握しようとする場合にアンケートを行うことや、自ら個別設置型条例を提案し、住民投票を実施することも可能であり、また、長は選挙の公約で意見を表明し、選挙で住民の意向を聞くこともできることから、議会及び長に発議権を認めず、住民のみに発議権を認めるべきとの考えがある。
 しかしながら、次のことから、議会や長に発議権を認めることは一定の妥当性がある。

  • アンケートでは一部の住民しか参加できないために、参加意欲の減退につながることが考えられること
  • 住民投票制度は、その政治的な重みをもとに、誰が発議しようと、その結果に対する尊重義務が議会や長に適用されうるということ
  • そのつど個別設置型の条例を制定する場合は、住民投票の対象とする課題の議論と、制度設計の議論が複雑に絡まり、住民投票に至らない場合も考えられること
  • 選挙の結果は、公約として提示した長の意見に対する判断のみで形成されるものとは限らないこと
  • 市の存立に係る問題や将来に大きな影響を与える市政の重要課題について、住民の意思を明確に把握する必要がある場合や議会と長の意見の調整が図れない場合において、議会や長の立場として住民投票を行う必要があるケースは考えられること

 

  • 12の常設型条例中10条例が、議会及び長の発議を認めている。

議会発議と議員発議

 議会発議は、議会の意思決定により発議するものであり、議員発議は、一定数以上の議員により発議するものである。議会による発議と議員による発議をともに制度化した場合、前者を無意味なものとしてしまうことから、両者をともに制度化することはできない。また、議員発議という制度を採用すれば、議員発議については、議員の権限の創設ともとらえられ、議会発議に代えて、議員発議を採用する場合は、慎重な検討が必要となろう。

  • 12の常設型条例のすべてが、議員の発議を認めていない。

論点9 住民投票の実施機関

 選挙管理委員会は、長から独立した行政委員会であるということ以外に、投開票事務に関するノウハウを有していること等から、住民投票の実施機関は長とした上で、実際の投票事務や名簿の管理などについては、選挙管理委員会に委任する方法が最も現実的と考えられる。

  • 12の常設型条例のすべてが、選挙管理委員会への事務委任を規定している。

論点10 地方公共団体の情報提供のあり方

 住民への情報提供は、住民投票の前提として重要である。情報の提供主体は、長とする場合が多いが、その中立性をどのように担保するかが問題になる。選挙管理委員会とする事例もあるが、自ら情報を持ち得ないために投票対象事項や日時、投票所の案内などの事務的事項に関する情報提供にとどまるものと考えられる。また、議会や長の意見表明のような方法や、長による賛成派・反対派が自由に意見を出し合える仕組みづくりの方法も、情報提供手段として考えられる。

  • 12の常設型条例中8条例が、長及び選挙管理委員会の双方が情報提供を行うこととしており、4条例が長のみである。

論点11 住民投票の投票運動

 投票運動は、投票資格者に対する情報提供という観点からすると、最も効果的な手段であるとも考えられ、当然、買収や供応、脅迫などの悪質な行為は禁止されるべきであるが、それ以外については基本的に制限を設けないことが望ましいと考えられる。
 また、諮問型の住民投票条例であるならば、投票運動に対する罰則規定を設けることについては疑念があり、倫理的要請にとどめざるを得ないとの意見もあるが、買収などの悪質な行為については、禁止規定を実質的に担保するために罰則規定を設ける必要性が高いと考えられる。
 なお、運動資金の規制は技術的に困難である。

  • 12の常設型条例のすべてが、罰則規定を設けていない。

論点12 住民投票実施の定例化

 住民投票制度を垣根の低い、活用しやすい制度とするためには、その定例化は大きな意味があろう。例えば、選挙に合わせて必ず住民投票を実施する、又は、選挙とはリンクさせずに、毎年又は一定期間ごとに、必ず住民投票を実施するという制度設計が考えられる。
 また、義務的レファレンダムを定例化と組み合わせるということの検討も大きな意味があると思われる。
さらに、定例化は、投票の実施時期を政治的な争点としないという効果のほか、各発議主体は、住民投票の実施時期を目指して行動し、議論を深めていくことが可能となる。
 しかし、定例化は、毎年又は数年に一度数億円の費用がかかるということであり、その費用をいかに少なくするかを考える必要がある。この点からも選挙との同日実施は検討に値しよう。

  • 12の常設型条例のすべてにおいて、定例化している事例はない。

米国の住民投票制度

米国の住民投票制度の表

※ 出典:『「直接民主制の諸制度」に関する基礎的資料』 (衆議院憲法調査会事務局 2004年3月)37ページ

論点13 選挙との同日実施

 法律に基づく住民投票は地方選挙と同時に行うことができるとされており、条例に基づく住民投票も選挙と同日に行われている例がある。これらは、有権者の負担の軽減、それに伴う投票率の向上や投票費用のメリットに着目しているものと思われるが、課題も多い。

  • 12の常設型条例中、「投票日を変更できる」と規定しているのが7条例、「同日に行うことができる」と規定しているのが1条例、同日実施に関する規定がないのが4条例である。

同日実施の意味と課題

  • 投票率及び投票行動への影響
     国政選挙との同日実施の場合、両者の争点がリンクする部分は一般的にみて少なく、住民投票の争点が選挙の投票行動に与える影響は少ないと考えられるが、選挙の投票率を高める効果があると考えられる。
     地方選挙との同日実施の場合は、住民投票の争点と選挙の争点は密接なかかわりを持つことが考えられ、投票率への影響のみではなく、投票行動への影響も国政選挙との同日実施に比較して大きいと考えられる。
  • 選挙の争点の明確化あるいは分離化
     同日実施は、住民投票の争点については住民投票で意思表示し、選挙については別の判断材料で投票するという投票行動を招く場合もあるが、争点が明確にされることにより、有権者の目を政治に向けさせ、選挙を活性化させるとともに、政治状況の変化をもたらす場合もある。このことは、通常、肯定的にとらえられるであろうが、4年間の市政全体を信託する選挙が、単一の争点で判断されてよいかという考えもある。
  • 同日実施後における議員及び長の活動への影響
     同日実施の場合、単独の住民投票に比較して投票結果がその後の議員や長の行動に大きな影響を与え、住民の意思を尊重するということをより強める結果となることが考えられる。
  • 発議者の恣意性の制限
     発議権者が、自己又は自己の属する集団の選挙が有利となるような争点を提示し、同日実施を求めることが考えられ、このことから、同日実施を認めるべきではないという見解がある。しかし、不要な住民投票を他の目的のために実施しようとしているのならば、その旨を相手方の集団が主張し、全体に問えばよいことであり、その結果、発議した者又はその属する集団に有利に働いたとしても、それは住民の意思であるとの意見もある。
     発議権者の恣意性を制限するためにも、個別の争点の発議という仕組みではなく、義務的レファレンダム的な設計についても検討に値するものといえる。

公職選挙法にかかわる問題

  • 選挙運動と住民投票運動が同時に行われることの問題
     同日実施の場合、住民投票運動が選挙運動とみなされる可能性が高い。また、市議会議員選挙や市長選挙の場合、「確認団体制度」により確認団体以外の政治活動が禁止され、住民投票運動を行うことは困難となる。このように、同日実施により、最も議論が必要な投票直前の時期に、公職選挙法の規定によりその機会が奪われてしまう可能性があるが、いくつかの問題はあるものの住民投票運動を行う団体が確認団体となることは可能なこと、住民投票は長い間の議論を経て投票が実施される性質のものであり、また、告示期間を選挙に比して長くとることにより、十分に議論を行う時間を確保することが可能であるとの理由から、同日実施を否定するものではないとの考えもある。
  • 選挙と住民投票の投票資格者の違いによる問題
    【投票所の問題】
     住民投票と選挙を同日実施する場合、選挙権を持たない未成年者や外国人が選挙の投票所に入場することは、公職選挙法で禁止されていることから、選挙と住民投票の投票所をまったく別々に設置することが考えられるが、その場合費用の軽減効果はほとんど見込めない。しかし、同一施設内においても理論上、両者が独立した投票所として位置付けることができれば費用の軽減効果も見込まれ、選挙の公正性を阻害することにはならないと考えられる。ただ、その場合、外国人のプライバシーの配慮について検討する必要がある。
     また、外国人のための投票所を各区役所に1ヶ所ずつ設置する方法も考えられるが、この方法は外国人が各投票所において投票するよりもプライバシーへの配慮が容易であり、さまざまな工夫も可能であることから、検討に値する制度設計といえる。
    【郵便投票の問題】
     外国人に対するプライバシー保護の観点からみると、郵便投票は1つの解決策として検討に値するものであるが、公正性、公平性の担保、さらに多額の費用と膨大な事務量が発生することなど、検討すべき大きな課題が存在する。そのため、不正投票に関する厳格な規定を設けるべきか、本人の選択制とすることが妥当かなども含め、郵便投票の採用には慎重な検討が必要である。

論点14 成立要件等の設定

 一定率以上の投票率にならなければ、住民投票は成立しないという成立要件を規定するべきかという問題がある。高い成立要件を設定すると、多数派を占めるグループが、住民投票において票を獲得するための運動よりもボイコット運動を展開した方が容易に自らの意思を現実化できると判断し、ボイコット運動を展開する可能性が考えられる。そのため、ボイコット運動の禁止という規定を置くことも1つの手法であると考えられるが、ボイコット運動も政治的主張の1つであり、それを禁止することは、憲法上の問題を招く危険性もあり、成立要件を規定しないこと等を含めて慎重な検討が必要である。

  • 12の常設型条例のすべてが成立要件を設定しており、1/2以上としているが10条例、1/3以上としているが1条例、賛否いずれかの過半数の結果が投票資格者総数の1/3以上に達した場合としているのが1条例である。

論点15 執行停止制度

 執行停止制度とは、住民投票を行うことが決定した場合、住民投票の対象事項にかかわる事務を停止させる仕組みである。住民投票の対象が法律に基づく行政処分に係るものである場合、その事項を条例で制限することになるため、執行停止は法的に認められない。また、その対象が契約等の私法上の行為である場合には、その事項を法的には可能といえるが、住民投票に比べ簡易な制度である住民監査請求に類似の仕組みがある。さらに、住民投票の結果に対する議会や長の義務は、尊重義務にとどまるという点から考えても、執行停止制度を導入する積極的理由はないと思われる。

  • 12の常設型条例のすべてが、執行停止制度について規定していない。

論点16 異議の申出(不服申立て)

 条例に基づく異議の申出制度は、申出に対する長や選挙管理委員会の判断で終わってしまい、司法による判断という手続につなげることができず、混乱を招くだけとなる可能性もある。しかし、長等に再考を促し、その上で示された長等の判断の是非について広く世論の判断に委ねるということは意味があり、制度を導入するかどうかは慎重な検討が必要であろう。
 他方、事後的な異議の申出制度を構築するよりも、例えば、選択肢の設定を行うに当たっては、議論のフォーラムを設置することなど、異議の申出の対象となりえる事項について、事前に意見調整の場を設定することも必要であろう。

  • 12の常設型条例中、規則により、署名簿や投票資格者名簿に関して異議の申出を規定しているのが8事例ある。

論点17 住民投票の再請求・再投票

 住民投票の結果は、ある時点、条件の下での住民の判断であり、社会経済情勢等が変化すれば、同一事案であっても異なる結果が導き出される可能性がある。そのため、ある程度の期間を経過した場合は、再請求・再投票を認めることには妥当性がある。
 また、具体的な期間設定は、他の地方公共団体の事例や選挙との関係を考えれば、1年から4年未満の間で判断されることとなろう。

  • 12の常設型条例中、2年が経過するまで再請求・再投票できないと規定しているのが11条例あり、残り1条例には規定はない。

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