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「働き方改革」から「働きがい改革」、そしてSDGs(2023年12月号)

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かながわ補助金研究会 中小企業診断士・社会保険労務士 志賀 清隆

このページは、広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

「働き方改革」という言葉も、今では多くの人が耳慣れてきたのではないでしょうか。最初に聞いた時には「何のこと?」と思った人も多かったようですが、ここ数年の間に日本の労働文化や企業の経営方針に深く根付いてきたように思います。この働き方改革は、労働環境の改善や働く人々の生活の質の向上を目指してきました。それではこの先、働き方改革の次に求められるものはどういう取組でしょうか? また最近よく聞くSDGs(持続可能な開発目標)と働き方との関係を考えたことがありますか?
今回は、そんなお話をしたいと思います。 

働き方改革

浸透してきた「働き方改革」

「働き方改革」が広く認知されるきっかけとなったのは、約7年前の2016年9月に安倍政権下で「働き方改革実現会議」が設置されたことです。この会議を通じて各種の改革案が議論され、2018年6月に国会で「働き方改革関連法」が成立しました。これにより、労働基準法や労働契約法などが改正され、「労働時間の上限規定」や「同一労働同一賃金」などの制度が導入されました。

当時、日本の労働環境は長時間労働や過労死の問題に加え、若い世代の労働意欲の低下や、女性や高齢者の労働力活用等の課題が顕在化していました。これらの背景を受けて、労働環境の改善や多様な働き方の実現が求められ、残業時間の上限規制や休日の確保による長時間労働の是正、テレワークやフレックスタイム制度の導入、さらには正社員と非正規社員の待遇格差の是正、女性や高齢者の労働参加の推進などの施策が遂行されました。

働き方改革の進展により、日本の労働環境は大きく変わり始めました。「ワークライフバランス」の考え方が浸透する中、従業員が仕事と私生活を適度にバランスさせ、ストレスや過労の低減、生活の質の向上が実現されてきています。「ジェンダー平等」の推進とともに、男女の固定的な役割を超えて個人の能力や適性を最大限に活かす職場環境も整いつつあります。これらの取組は、日本の労働文化の変革を支えるとともに、「多様性の実現」へとつながり、さまざまな背景や価値観を持つ人々の共存や協力が進んでいます。加えて、従業員やその家族の健康づくりを企業経営の柱の一つと捉えた「健康経営」への取組も増えてきましたが、これも働き方改革の一環といえます。

このように、さまざまな働き方改革への取組により「働きやすさ」の観点からは一定の成果が出てきているといってもいいでしょう。では、次に向かうべきはどのような方向でしょうか?

次のフェーズは「働きがい改革」

働き方改革が世の中に浸透しつつある今、次のフェーズとして「働きがい改革」が注目されています。働きがい改革は、単なる労働環境の改善だけではなく、働くこと自体の価値や意義を再評価し、働き手一人ひとりが仕事に対して情熱や満足感を感じられる環境を構築することを目指すものです。

この働きがい改革を進める上でのキーワードの一つに「ウェルビーイング」があります。ウェルビーイングとは、一般的には「幸福感」や「良好な心身の状態」を指しますが、最近では単に心身の健康だけでなく、従業員が自らの仕事に誇りを持ち、自己実現を達成する環境の実現を指すようになってきました。企業がこの概念を取り入れ、従業員のウェルビーイングをサポートすることで、働く人々の満足度やモチベーションの向上、組織の継続的な成長が期待できます。

さらに、重要なキーワードとして「ワークエンゲージメント」が挙げられます。ワークエンゲージメントは、従業員が仕事にどれだけ熱心に取り組んでいるか、仕事への熱意や情熱、集中度を表す指標です。高いワークエンゲージメントを持つ従業員は、仕事の生産性や創造性が向上すると同時に、職場の雰囲気やチームワークにも好影響をもたらします。

パーパスとビジョン・ミッション・バリュー

これら2つのキーワードを支えるのが、「パーパス経営」です。パーパス経営とは、企業が単に利益を追求するだけでなく、社会的な価値や存在意義を追求する経営スタイルを指します。「パーパス」と混同されやすい言葉として「ビジョン」「ミッション」「バリュー」がありますが、「パーパス」はそれらの上に位置する概念と捉えることができます(右図参照)。企業が持つパーパスを明確にし、それを共有することで、従業員のウェルビーイングを促進しワークエンゲージメントを高めることができるのです。

パーパス経営の実践を通じて、従業員が仕事に対しての情熱や満足感を感じ、その中で自己実現を果たせるような環境の構築が、次なる経営革新の鍵となるでしょう。この取組を進めることで、企業は持続的な成長を遂げると同時に、社会的な価値や存在意義を高めることができるのです。パーパス経営については多数の書籍やオンライン記事がありますので、興味を持たれた方はご参考になさってはいかがでしょうか。

SDGsとの関係は?

最近、新聞やテレビなどでSDGs(持続可能な開発目標)に関する報道をよく目にするようになりましたね。中小企業の半数以上は「SDGsに積極的」という調査結果もあります(下図参照)。

SDGsへの理解と取組

でも、具体的にどう取り組んだらよいのか、悩んでいる企業も多いと思います。そんな企業の方々は、まずは自社で取り組んでいる働き方改革やこれから取り組もうとしている働きがい改革の内容を振り返ってみて、SDGsのどの目標に紐づくのかをお考えになってはいかがでしょうか。

例えば、健康経営やワークライフバランスへの取組は「目標3:すべての人に健康と福祉を」につながりますし、女性の労働参加推進は「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」、働きがいの追求は「目標8:働きがいも経済成長も」につながります。こう考えると、「SDGsって、意外と身近なんだ」と感じられますね。すると、他の活動もSDGsのいくつかの目標に紐づいてくるようになります。そうすれば、自信をもって「私たちはSDGsに取り組んでいます!」と宣言できますよ。

すべての人に健康と幸福を
ジェンダー平等
働きがい