労働相談Q&A（2023年12月号）

このページは、広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

労働基準法15条『労働条件の明示』では、労働契約の締結時に一定の労働条件を書面で明示しなければならないと定めています。労働条件に関するトラブルが発生した際、同書面に明示されている内容は、労使間で合意した労働条件とみなされるため重要な意味を持ちます。関連する相談事例を3例ご紹介します。

労働条件の明示は書面に限られていましたが、労働者が希望すれば、メール等が可能になると聞きました。
LINEなどで労働条件を箇条書きにして送ってもいいのでしょうか。

労働基準法15条『労働条件の明示』では、賃金、労働時間など厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならないとしています。これまで明示方法は『書面の交付』に限られていましたが、平成31年4月1日からは、ファクスや電子メール、SNS等でも明示できるようになりました。これが可能になるのは、まず『本人が希望した場合』です。さらに「電子メールなどの記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る」としています。従って、LINEなどのメッセージアプリを利用する際も、労働者側が印刷して保存できるよう、PDFなどの添付ファイルで送付することが必要となります。

アルバイトの労働時間はシフトで定めていたため、労働条件通知書にも『シフトによる』と明示していました。しかし、「もう少し具体的に記載してほしい」と要求されました。どの程度詳しく明示すべきでしょうか。

飲食店などでシフトを組む場合、労働条件通知書には「シフトによる」と記載する事例が多くみられています。このような形態には柔軟に労働日時を設定できるというメリットがある一方、労働者の希望する労働日が設定されないことにより、労働紛争が生じることもあります。令和4年、厚生労働省は「シフト制労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項」を公表しました。始業・終業時刻については、「労働契約の締結時点で、すでに始業と終業の時刻が確定している日については、労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは不足であり、労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する必要があります」としています。

詳しくは、「シフト制労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項」ホームページ外部リンクをご参照ください。

今後予定されている『労働条件の明示』に関する改正を教えてください。

令和6年4月より、『労働条件の明示』ルールが改正され、労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加されます。主な追加点は以下のとおりです。

• 全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時
  (1)就業場所・業務の変更の範囲

• 有期労働契約の締結時と更新時
  (2)更新上限（通算契約期間または更新回数の上限）の有無と内容

• 無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時
  (3)無期転換申込機会、(4)無期転換後の労働条件

詳しくは、「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」ホームページ外部リンクをご参照ください。

川崎市では労働相談を実施しています。詳しくは川崎市ホームページをご確認ください。

2023年も残すところ1か月となりました。この1年を振り返ってみると、WBCで侍ジャパンが感動の優勝を果たしたり、新型コロナの位置付けが5類に引き下げられたりと明るいニュースがあった一方、ウクライナ情勢や資源・物価高などには変化の兆しが見えていません。さまざまな課題が山積する社会に少なからずの閉塞感を覚える中、個人としては、日々の暮らしにある何気ない出来事に、小さな幸せを感じたり、驚きを発見することを大切にしようと心掛けています。
川崎市は来年7月に市制100周年を迎えます。こうした歴史的な節⽬に当たり、市民や企業、働く方をはじめ、多くの皆さまとともに、川崎の発展に尽くされた先達に感謝しながら、多彩なイベントや記念事業を通じて、喜びを分かち合いたいと思います。それでは、皆さまもどうぞ良いお年をお迎えください。