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2.子どもの参加の成果からみえてきたもの

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 子どもの意見表明・参加が子どもの権利であるとの認識が一般に低いなかで、市民の理解・協力を得ながら子どもの参加を推進していくことの行政職員の「やりづらさ」は当然にあると思われるが、子どもに関わる施策担当者以外の市職員の認識度も同様に低いことが推測され、子どもの意見表明・参加を阻んでいる事実は見逃せない。
 また、子どもの意見表明・参加が、条約や条例を根拠に権利として保障されなければならないという議論とともに、子どもの参加が推進されることにより、具体的に何がどう変わるのかということが明確に意識されなければ「子どもの参加」の継続や発展は難しい。
 今回の子どもの参加の検証過程のなかで、とりわけ条例事業においてみられた成果-子どもの参加を促進することでどのような効果が生まれてきたか、あるいは生まれつつあるか-を初めに確認しておきたい。

(1)子どもが力を得る

ア 自己肯定感が強まる

 例えば、市子ども会議に参加した子どもとのヒアリングで「ありのままの自分を認めていいんだとわかった」などの子どもの発言があったが、参加をすることで、自己肯定感・自尊感情が持てたり、強まったりしている。子どもは自尊感情を抱くことで、初めて他の人々を受け入れ、社会や集団の一員という自覚をもつことができ、豊かに育まれるのである。また、主体的に参加し、自分で考え、考えたことを自分の言葉で伝えたり、行動するということを繰り返すなかで、子どもは矛盾や対立、困難や葛藤などさまざまな問題を自分で乗り越えていく力を身に付けているのである。市子ども会議の子どもの、「自分も思っていることを言ってもよいのだということがわかった。その後どんどんものが言えるようになり、今では緊張することもなくどこでも誰にでもきちんと自分の思っていることを伝えることができるようになった。」という発言はそのことを実証している。
 子どもの権利、子どもの参加は今までの学校教育と全く別ものではなく、これまで教育目標と掲げられていた子どもの自主性、主体性や子どもの自律、自立と重なるものと考えられ、これらは子どもの権利、子どもの参加を基礎にすれば、いっそう進展する。

イ 豊かな関係性がひろがる

 子ども夢パーク運営準備会の子どもは、2003 年に入ってからは毎週土曜日が活動日という「過密スケジュール」にもかかわらず、開設準備に主体的に取り組み、試行錯誤をしながら多くの困難や失敗を乗り越え、オープニングイベントを「成功」させている。今の子どもは他者との関わりが淡白で、人との関わり方を知らないとよく言われるが、準備会の子どもたちは参加することで多くの友だちやおとなとの関係を、ある時は「緊張」をはらみつつも豊かに築いてきている。市子ども会議の子どもからも「学校以外の友だちがたくさんできた」とか「今まで思いもしなかった世界の子どものことが気になりだした」などの発言があったが、能動的に参加することで新しい出会い、発見があり、新たな関係性を築いたり、関係性をより深めていくこともできる。

ウ 構成員として自律的な力を得る

 条例では、子どもはおとなとともに社会を構成するパートナーであり、社会の在り方や形成にかかわる固有の役割があるとしているが、実際、ある学校教育推進会議においては、おとなの支援を得ながら子どもがおとなと対等に意見を表明することで子ども自身が学校の構成員として自覚や自信を深め、自律性を高めている。
 子どもは参加を通じて、対等に話し合い、合意を得ていくプロセスを体得し、民主主義の基礎を学んでいくことができる。

(2)おとなが変わる

ア おとなの子どもの見方が変わる

 子どもの意見表明・参加が単にその場に子どもがいる「お飾り」「みせかけ」の状態ではなく、子ども自身の自主的・主体的な取組である場合、どの事業でも子どもに対するおとな側の捉え方が大きく変わっている。かわさき子どもの権利の日事業の子ども集会に参加したおとなは子どもたち自身が自主的に行う運営のすばらしさに大きな驚きをみせ、子どもをみる目が変わったと評価している。子どもを保護の対象としてのみ捉え、「甘やかし」の構造のなかで付き合っているだけでは得られない成果である。子どもは参加し、多様な人間関係を築いていくなかで、おとなの「常識」を越えた力を発揮している。

イ 教職員・行政職員の子どもへの向き合い方が変わる

 例えば、権利条例パンフレット作成に際し子どもの意見を聴いた職員も、おとなには思いつかないような子どもの発想を評価している。子どもを支えつつ、子どもと対等に話し合ったおとなほど子どもの感性、発想、創造力などの子どもの潜在的な能力や自立性、社会性、責任感などに驚嘆している。
 子どもの意見表明・参加を権利として認めることは、子どもの言うがままにおとなが従うことではない。ある時は葛藤がおき、ある時は対立が生じるのは当然のことであり、子どもを支援しつつ対等に話合いを繰り返すのは大変なエネルギーを必要とするが、その関係性のなかでこそ新しい価値、「力」が生まれてくるのである。言い換えれば、おとなが子どもの受けとめ方、支え方をきちんと理解し、おとな自身も子どもを受けとめる力を高めていくことができるのである。
 一方において、参加に意欲をもつ子どもは少数固定化傾向にあり、多くの子どもが「めんどうくさい」と参加に消極的である。その背景にある「子どもの忙しすぎる事実」が、子どもの自主的・主体的な参加を阻んでいる一要因ともなっている。このような状況の下で子どもの参加を促進するために要する努力は大変なものがあるが、子どもの参加により、おとなの子ども観が変わり、おとなと子どもの関係が変わることで、社会のありようが自律・自立と多様を前提とした共生の社会へと展望されることとなる。

(3)事業の深まりと広がり

 子どもが、現実におとなとともに生活している家庭、育ち・学ぶ施設、地域に意見表明・参加をしていくことは、それぞれの場がより民主的に、また子どもの視点が生かされ、子どもにとっての居場所となる上でも欠かせない。そのことは子どもにとってだけではなく誰にとっても優しい居場所、地域づくりにつながっていくはずである。このような考えに立って展開している幾つかの事業では、事業自体の改善にとどまらず、他の関連事業や取組にも効果が広がっている様子がうかがえる。例えば、学校教育推進会議等が学校に導入され、子どもの意見表明・参加がきちんと位置づけられたことにより、学校の管理運営などさまざまな活動に子どもの意見表明・参加の視点が入りつつある。2003 年度には市立小学校校長会が独自に「子どもの権利に関する条例の趣旨を生かした学校運営と子どもの参画」をテーマに、市内の小学校114校全校の現状と今後の方向性を調査し、子どもの参加・参画の視点を学校運営にどのように活かしていくかについて、参考となる実践例や課題などをとりまとめている。
 市子ども会議では、条例施行3年目を迎え、子どもの参加の段階を広げ、また、子どもの参加の支え役となるサポーター(注2)の養成にも力を入れ、取組を深めようとしている様子がうかがえる。
 地域教育会議における子ども会議においても、行政区単位、中学校区単位での取組に工夫がみられる。条例が施行されたことで、子どもの意見表明・参加が地域における自主的な活動のなかでも深まってきているように思われる。
 このように、事業が単発に終わらず、子どもの参加の視点での活動の深まりと広がりがみられるようになってきたことも、大きな成果だと思われる。

*注2「サポーター」
 子どもが意見を言いやすいように雰囲気づくりなどをしたり、子どもが自分の考えを整理しきれないでいるようなときに整理しやすいように支えたりして、子どもが主体的に参加できるように支える支え手のことをいう。

(4)子どもの参加の権利についての認識の向上

 権利委員会では、今回の検証を通して子どもの参加の権利についての認識度を高めたいという狙いがあった。子どもの権利施策推進部会の職員に権利委員会の議論を毎回聴いてもらったことで、参加の権利概念については理解しているものと確信している。それが、事業を通して子ども、市民に伝わり、子どもの参加、参加の支え方の輪が更にひろがっていくことを期待したい。

お問い合わせ先

川崎市こども未来局青少年支援室

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