4.参加しにくい状況にある子どもの参加の実態・成果・課題
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子どもの参加について個別に配慮しなければならない課題として、参加しにくい状況にある子どもの問題がある。条例第16条に例示されている個別の支援を必要としている子どもー不登校の子ども、非行や問題行動のある子ども、長期入院中である子ども、女性シェルターに母と共に入所している子ども、乳幼児などー、抱えている参加しにくい理由はさまざまである。
実態意識調査に伴うヒアリング調査等を、親が外国人の子ども、障がいのある子ども、児童養護施設等で生活する子どもに実施した結果、こうした子どもの多くがつらくてどうしようもないことを人から言われたり、されたりしたことがあると回答している。そのときの気持ちとして(自分自身がしっかりしなければいけないと思って)がまんした、(誰にも相談できなくて)つらいままだったと答えている。
参加する権利の柱として意見表明があるが、「つらい」「苦しい」「やめてほしい」「助けてほしい」といった声を子どもが発することのできる環境を整備することが、権利の侵害からの救済システムの充実・強化とともに早急に必要とされている。
また、意見表明をしにくい子どもの意見を聴くときには代弁者からの意見を聴くという手法も有効であるが、その場合代弁者の判断が含まれていることもあることに留意する必要がある。
さらに、一般に子どもは子ども同士の関わりあいのなかで、さまざまな事柄について学んでいる。その意味では、参加しにくい立場にある子どもとそれ以外の子どもの交流について支援することも、お互いの参加意欲をひきだす相乗的な効果が期待できる。
(1)異文化を背景に持つ子ども
<実態>
「学びたいことを学べた」と(ほぼ)感じている子どもは約6割であった。「外国人という理由で差別やいじめで困った」子どもは約23%おり、聞き取り調査で「学校に行きたくない」理由として「行事が嫌だ」と応えた子どもがいたが、学校の行事が母国と違うこと、自分の居場所が与えられていないため、参加意欲が失われているためと思われる。
<成果>
市では、小・中学校に在籍する日本語の分からない外国人児童・生徒に対して、日本語指導等協力者の派遣を行い、学校における生活言語としての日本語指導、保護者と学校との橋渡しなどを行っている。この制度により、日本語はもとより、文化の違いや生活習慣の違いなどで生じる問題などに関しても、解決しやすい状況ができるとともに、異文化を背景に持つ子どもが、行事等に参加しやすい環境づくりに貢献している。また、日本人と外国人双方が、互いの文化を尊重し、ともに生きる豊かな社会を築いていこうとする意識と態度をはぐくむことを目的とした「民族文化講師ふれあい事業」の実施などを通して、異文化を背景に持つ子どもが学校内で受け入れられやすい環境づくりが行われている。
<課題>
主に子どもが利用する施設において、異文化を背景に持つ子どもを受け入れる体制が必ずしも十分なされているとは言いがたい。また、保育園、幼稚園などの行事参加には、親子で参加することが多く、親子ともに日本語が十分でない場合には不参加になったり、参加しても満足感が得られないことが多い。
日本語指導等協力者の派遣制度により異文化を背景に持つ子どもが日常会話ができるようになったとしても、授業内容が分かるための学習言語を習得しているわけではないので、授業への参加がかなり困難な状況にある子どももいる。
(2)障がいのある子ども
<実態>
障がいのある子どもは、学校行事への参加はある程度進んでいるが、地域行事への参加はあまり進んでいない。その一方で、大切と思う権利のなかで子どもやおとな、職員に最も支持が低い「参加する権利」が、障がいのある子ども本人からの回答では「ありのままの自分でいる権利」と並んで第2位にあることを考えると、子ども自身は社会参加に意欲はあるが、さまざまな原因で、実際には地域や社会に参加できていないという状況がみえてくる。
<成果>
市内の全ての小・中学校に「障害児学級」が設置されており、通常学級の障がいのある子どもには、学校での生活介助のための補助指導員制度が用意されている。
2002年度からはADHDやLDなどの通常の学級における特別なニーズのある児童生徒のさまざまな教育支援のあり方を研究する事業が実施されている。
<課題>
地域の保育園、幼稚園、学校などでの教育や交通機関、道路、建物のバリアフリー化の推進、スポーツや文化活動などあらゆる機会への障がいのある子どもの参加を保障する取組を進めることがより一層必要である。
現在見直しが行われている市の障害者保健福祉計画は、障がいのある人が地域の一人の市民としてあたりまえに暮らすことのできる社会の実現や、社会への参画と権利の擁護などについて審議されているが、子どもの権利、子どもの参加の視点から検討されることも必要である。
(3)不登校の子ども
<実態>
子どもにとって学校とは、知識を得るにとどまらず、人間関係を築き、社会参加を体験し、成長に必要なさまざまな糧を得る場になっている。しかし、さまざまな複合的な原因がもとで学校にいけない子どもは年々増加しつづけている。不登校の問題は誰にでも起こりうる問題であり、一人ひとりの子どもに配慮した支援が求められる。
<成果>
子どもの居場所と参加活動の拠点として開設した子ども夢パークの施設内に、不登校の子どものためのフリースペースを設け、その運営を実績のあるNPO法人に委託している。学校復帰を目指した「ゆうゆう広場」とは別のありようを模索している。
<課題>
不登校の子どもにとって、学校での情報、友だちからの情報がなかなか入手しにくい状況におかれ、「情報」不足が大きな課題となっている。家から出ない子ども、あるいはフリースペース・フリースクールなどに行っている子どもにも共通した課題である。
また、情報不足とあいまって参加する意欲を失いがちな不登校の子どもには、意欲を取り戻す場となるような安心してほっとできる居場所を確保することも大切である。
(4)乳幼児
<実態>
核家族化が進み、地域社会が崩れつつあるなかで、「子育て」をめぐる環境は大変厳しい状況にある。
生殖補助医療技術が発達した時代にあって、子どもは「授かるもの」から「つくるもの」へと変わり、子育ての考え方も「少なく生んでよく育てる」方向に変わってきている。そのことで、親が子どもを「自分の所有物」として自分の力でよりよくするとか親の考える路線に子どもを駆り立てるということも起こりやすくなっている。
また、子育てに父親は仕事等が忙しく参加できず、母親一人が相談相手もなく、孤立した状況で子どもと向き合うなかでストレスをためていくケースが多く、とくに専業で子育てをしている母親に育児不安が強い。育児の価値は認めつつも子どもといるだけの生活、「母親」である以外に自分の世界がもてず、社会から閉ざされてしまっているという状況に対して不安や不満、焦りを感じている母親も多く、きめ細かい子育て支援策が求められている。
このような状況のなかで、乳幼児の代弁者である保護者が子どもの権利や条約・条例の「子ども観」を理解していく必要性が以前にも増して高くなっているが、そのための学習をする機会等が少ないのが現状である。
<成果>
市は子育て支援策として保育園の充実、こども文化センター、子育て支援センター、子育て広場、子ども夢パーク等を開設するなど未就学児に対する環境はかなり充実している。
また、2001年度には、市民館などが中心となり、子育てネットワークが発足し、子どもが参加しやすい環境づくりや、子どもの意見を代弁する母親の意見表明の機会などを設けるなど積極的に取り組んでいる。
保健福祉センター(保健所)が発行している「母子健康手帳」に、2002年度から子どもの権利条例についての説明が1ページ織り込まれている。
<課題>
乳幼児はとくにおとなから守り育てられることが必要であり、保護者たるおとなの子ども観に大きな影響を受ける。それゆえ、とりわけ保護者が子どもの権利を的確に理解することが求められ、そのための学習、研修の機会を提供していかなければならない。
乳幼児を持つ父親、母親が関心を示し、理解しやすいような子どもの権利学習のプログラムを検討していくことも課題となる。
乳幼児の意見表明・参加にとって大きな課題は、乳幼児自身が十分な意見表明ができない点にある。これを補うためには、保護者等の周りにいるおとなが子どもの意見を汲み取り代弁することが必要になる。乳幼児の「声なき声」を聴くための手法、条件整備などの一層の研究とその普及啓発に努める必要がある。
今日、乳幼児の参加を保障するためには、保護者の社会的環境を整備することが重要になっている。市は次世代育成計画を策定する準備にとりかかっているが、子どもの参加の保障を促進するための条件整備について検討を行い、その視点を織り込むことが大切である。
なお、条例では第16条第1号に例示した以外に、性的マイノリティ、病気感染者、非行等からの立ち直りの支援の必要な子ども、女性のためのシェルターに入所している子どもなど、社会のなかで少数の立場や弱い立場におかれている子どもを想定している。
第一期子どもの権利委員会では、これらの子どもの権利、とくに参加の権利について調査審議することができなかった。しかし、これらの子どもが意見表明・参加をしていくための固有の課題があることについては十分に認識しており、今後の課題としたい。
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