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サンキューコールかわさき

市政に関するお問い合わせ、ご意見、ご相談

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3.個別事業にみる子どもの参加の実態・成果・課題

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(1)条例事業

ア 子どもの権利の普及・教育・研修

(ア)かわさき子どもの権利の日事業(第5条)

<目的>
 市民の間に広く子どもの権利についての関心と理解を深めるための事業として、かわさき子どもの権利の日(11月20日)前後に実施している。おとなへの普及啓発を目的とした働きかけとともに、子どもたちの主体的な取組・活動が活発となり、将来川崎の子どもが世界の子どもとつながっていくことができるよう期待されている。

<実態>
 2001年度はかわさき子どもの権利の日のつどいを子どもとおとなを対象に実施し、子ども約150人、おとな約250人の参加を得た。子ども会議準備会、「子ども・夢・共和国」等の19人の子どもからなる子ども委員会(小学生7人、中学生12人)が自主的に企画運営したが、3回の委員会での運営は時間の問題もあって大変厳しいものがあった。
 2002年度は11月に実施するのは忙しくて難しいという子どもたちの意見で、おとな向けと子ども向け(子ども集会)を切り離して実施し、子ども集会には126人の子どもが参加した。子ども集会は子ども会議の子どもが中心となって子ども会議のメンバー以外の子どもの意見も聴くために企画運営をしたもので、子どもたちにとってかわさき子どもの権利の日事業としての位置づけは弱いものであった。
 事業手法としては市民との協働による取組を模索している。その一つが市民企画事業である。2001年度は6グループ、2002年度は14グループにより実施され、あわせて約220人の参加を得た。また、2003年度の「権利の日のつどい」については実行委員会の方針のもとに実質的な企画・運営を行う推進委員会を設置し、公募市民や市民企画事業グループの代表者等を構成員とするなど市民との協働性を強化した。
 関連事業として、教育委員会では子どもの権利の日の一週間を「川崎市子どもの権利に関する週間」と位置づけているが、そのことで多くの市立幼・小・中・高・聾・養護学校がこの時期に授業公開や権利学習等を行っている。

<成果>
 権利の日事業を単発のイベントに終わらせることなく、担当部署のみならず局を超えて幅広く取組がなされている。子どもの権利について子ども・おとなの関心を喚起し、理解する層を少しずつ拡大しており、子どもの権利についての意識の向上に一定の成果が見られる。例えば、子どもの権利に関する週間を設けることにより、市立幼・小・中・高・聾・養護学校においては子どもの権利の学習等に取り組んでいる。全国をみても川崎ほど子どもの権利についての取組が活発になされているところはなく、その努力は大いに評価できる。
 かわさき子どもの権利の日事業は行政の責任として実施しなければならないが、その手法として行政単独ではなく幅広く市民とともに取り組むことで、より市民のニーズに見合った事業展開が図られるとともに地域での裾野の広がりを期待できる。市での取組は市民との連携・協働を強く意識しており、現在はまだ模索の段階とはいえ、その姿勢は評価できる。

<課題>
 現段階では、子ども自身が子ども集会を子どもの権利の日事業として意識化していないということ、権利の日事業として位置づけるには子どもの日程調整に無理が生じることなどの問題を抱えており、無理にあわせようとするとおとな側が子どもを引き回す危険性がある。子どもの参加による市民一般への子どもの権利普及の成果を認めた上で、当面おとなを対象とした事業に特化することも一途と考える。ただ、子どもたちが子ども夢パークという日常的な活動拠点を得ることで、権利の日事業についての考えや取組み方も変わってくる可能性があり、子どもの活動・考え・判断を待って結論を出すことが望ましい。
 また、子どもと協働して取り組む場合や子どもに協力してもらう場合には、子どもの主体性、自主性を損なうことがないように、子どもの活動スケジュールに特段の配慮をすることも必要である。
 権利の日事業の取組を市民との連携・協働により進めるなかで、子どもに関わる既存団体、NPO、市民活動グループとどのような連携・協働ができるのか模索し、緩やかなネットワーク化を図っていくことが望ましい。

(イ)子どもの権利についての広報

<目的>
 「子どもの権利はわがままにつながる」とか「子どもの権利よりも義務や責任を教えることが先決」という考えがいまだに根強くあるなかで、とくに子どもを支えるおとなの子ども観を問い直し、子どもの権利について広く市民に普及・広報活動をすることは極めて重要である。
 また、子どもが権利を理解し、権利を行使することで、権利を身につけていくことができるように、子どもの年齢と成熟に見合った広報が必要とされている。

<実態>
 条例制定以前から市では「子どもの権利条約ってなに」(小学校低学年、高学年、中・高校生用)を毎年小学1年生、4年生、中学1年生、高校1年生全員に配付し、子どもの権利条約の普及啓発活動に努めてきたが、条例制定後にはそれに加え、子ども版、おとな版の条例パンフレットを作成し、子ども版については市内の保育園、幼稚園、小・中学校、聾・養護学校に在学(園)しているすべての子どもにこれまでは毎年配付している(高校生にはおとな版を配付している)。発行部数は子ども版、おとな版あわせて2001年度186千部、2002年度130千部である。
 子ども向け条例パンフレット作成過程で、子ども5人に2回ほど構成や文言が理解しやすいかどうか意見を聴き、実際子どもが理解しやすい文章表現に変えることができた。

<成果>
 条例制定時の調査で1割未満であった条例の認知度が、条例を施行して約1年後の調査によると、子ども45.2%(小学生年代56.6%,中学生年代43.5%,高校生年代31.6%)、おとな31.0%(子どもがいるおとな49.3%,いない20.1%)と大幅に向上しており、条例に関する市の広報・取組の成果としてとらえることができる。
 パンフレット・ポスター等により条例を知った子どもの割合は、授業・先生の話70.8%(小学生年代では80.5%)に次いで2位の45.1%であり、おとなでの割合は、65.7%第1位となり、2位の新聞28.9%を大きく引き離している。職員でもパンフレット・ポスター等が71.1%で1位、次いで授業・先生の話52.3%、研修・講演43.0%という結果であった。パンフレット・ポスターが広報手段として大きなウェイトを占めていることがわかる。川崎市のように、広く広報をしている自治体は例がなく、初期の条例の普及に果たした役割は大変大きいものがある。

<課題>
 子どもの参加の権利について、条例で定められた子どもの権利のなかで大切だと思う人の割合が前述のように最も低かった。市子ども会議、子ども夢パーク事業、学校教育推進会議などの本格実施から1年を経過したこともあり、子どもの意見表明・参加の権利についてはあらゆる施策、事業の企画立案、執行に配慮すべき事項であることについて、市がもっと意識的に広報する段階にきている。
 子どもの参加については、少数固定化傾向にあるという実態が明らかにされた(上記調査報告書)。子どもの参加とは、何事にも受身になりがちな今の子どもがまわりに自発的に働きかけることが、権利の行使の出発点になることを意図している。受身になりがちな子どもの現実と条例が目指すおとなのパートナーとしての子ども観とのギャップを意識し、より多くの子どもが参加しやくなるように広報においても工夫をしていくことが課題となる。
 この7月23日に子ども夢パークが子どもの活動拠点として開設されたが、今後市子ども会議や夢パーク運営委員会の子どもの活動が飛躍的に増大する可能性があり、広報に関しても子どもがその一部を自主的に展開することが考えられる。子どもの権利条例策定過程で子ども委員から条例制定後は広報の部分を子どもが主体的に担っていきたいとの発言があったが、市の広報の一部を子ども自身が編集主体として担っていくための条件整備としてどのような課題があるかを整理し、支援方法を模索していくことなどが望まれる。そのことを行政の広報戦略のなかでどのように位置づけ、支援していくのか検討していくことも課題である。
 子どもが広報に参加することにより、わかりやすい表現上の工夫をするレベルから参加の権利を子ども自身が深く理解し、他の子どもにとっても容易に理解できる内容となるよう働きかけを行うなど支援していくことも大切な視点である。

(ウ)権利学習資料作成事業

<目的>
 条例第7条で、市は家庭教育、学校教育及び社会教育の各分野で、子どもの権利についての学習等が推進される際の条件整備に努めるものと規定している。子どもの権利についての学習教材、資料等は市販されているものが少なく、子どもはもちろんのこと、市民、教職員が手に入れようと思っても難しいのが現状である。そのような状況も踏まえ、市として条件整備の一つとして子どもが子どもの権利を理解しやすい権利学習資料を作成している。

<実態>
 学識者・教職員等から構成される「子どもの権利学習資料作成委員会」を設置し、小学校高学年用資料、中・高校生用資料及びそれぞれの指導者用手引を作成し、市立学校の小学5年生、中学1年生、高校1年生に、指導者用手引を当該学年担当の教師に配付している。
 子どもが理解しやすい資料とするために、主に言葉遣い、構成等について子どもに意見を求め、その結果権利カードがわかりやすく、具体的で子どもにとってなじみやすいものになった。子どもの意見が反映できなかったところについては子どもにその理由を説明している(参加回数5回、参加人数延38人)。
 条例パンフレット(子ども版)が9割強の小学校、8割強の中学校で使用されているのに対し、権利学習資料は小学校で80.7%、中学校では33.3%であり、とくに中学校での使用率が低い。主に中学生との対話においても、権利学習資料について記憶がないという子どもが2/3もおり、権利学習資料が普及、定着していないという事実を実感した。
 現在、資料作成委員会では現場の意見を聴きながら子どもが学びやすく、学校でより活用されるような教材に改訂中である。

<成果>
 小学校高学年用資料、中・高校生用資料、指導者用手引きを作成し、活用を促していこうとする市の姿勢は評価できる。この資料作成が現場の教師の意識を喚起し、権利学習の具体的な実践のイメージ化を図り、権利学習への取組に大きく作用した面を見逃すことができない。
 また、子どもが理解しやすく、活用しやすい学習資料であることが必要条件であるが、子どもが資料作成に参加することで、子どもにわかりやすい権利学習資料を作成している。

<課題>
 権利学習資料の使用率が低い理由の一つに配付時期の問題がある。子どもの権利に関する週間にあわせて11月に配付しているが、年間カリキュラムに活かし、現場が受け入れやすいように資料の配付時期を工夫する必要がある。
 権利学習資料は、単にわかりやすいというだけでなく、子どもが学びやすく、権利行使に活用しやすい学習資料として意味があるのかどうかという視点から改良しつづけることが大切である。その意味でも、子ども、学校現場の教師の意見を聴きながら作成していくことが求められる。また、(1)低学年になればなるほど意識化が難しく教材作成も難しい面があるが、低学年用の学習資料を研究開発する (2)子どもが権利を理解しやすいように、いじめ等現実に子どもの生活のなかで大きな課題となっている個別具体的問題を権利の視点から捉えなおすような具体的実践例を織り込む (3)教師が権利学習を具体的にイメージできるような内容にすることなども課題である。

(エ)権利学習講師派遣事業

<目的>
 学校教育等で子どもの権利学習を推進するための条件整備を市に義務づけているが、権利学習の導入として、子どもが権利意識を身に付け、暴力や権利侵害から自分を守る方法などを学習するCAPプログラムの講師等を学校に派遣することを目的とする。

<実態>
 CAPプログラムは、「安心」「自信」「自由」などの子どもにとって基本となる権利の意味やその行使の仕方、あるいは、自己や他者の尊重などについて、ワークショップを通じてわかりやすく学びあうものである。小学校2~4年生のうちから学校が希望する1学年、原則1クラスごとに実施している。このプログラムを実施するにあたっては実施学年の保護者や教職員を対象にワークショップを併用した講演会を実施している。

権利学習講師派遣事業

 

2001年度

2002年度

参加場面数

35校87学級

39校114学級

参加人員

3,112名

3,722名

予算

178万円

224万円

職員数

89名+アルファ

112名+アルファ

ファシリテーター・サポータ数

267名

336名

<成果>
 権利への気付き、自己肯定意識の向上や能動的に参加することで得られる「子どものエンパワーメント」という視点からみてCAPの学習活動は効果的であり、権利学習の導入としての意義は高い。
 参加型学習方法の効果については一般に確認されているところであるが、ロールプレイングを採用したCAPの学習方法は臨場感があり、他の権利学習に与える影響は高いものがある。

<課題>
 権利学習は権利侵害を解決していく力をどのように蓄えるかということに力点がある。
 CAPの導入により学校の権利学習に対してどのような影響を与えたのか、他の実践領域と組み合わせることでどのような効果が得られたのかを検証することが必要である。
 また、権利学習を体系的に実施していくためには、学校が学習の方法等について多くの情報を得ておくことが必要であり、権利学習の選択肢を増やすことができるようにCAP以外の手法について情報提供をしていくことも課題である。
 CAPは権利学習の一学習形態であり、他のさまざまな権利学習と系統的に組み合わせ、学校独自の権利学習を実践的に深めていくことが求められている。

イ 川崎市子ども会議

<目的>
 市政について社会の構成員である子どもが意見を提案する機会を保障するため、市子ども会議を設置している。子どもたちが市政の問題を自分たちのこととして捉え、考えていく、また、社会に参加し、他の子どもやおとなを理解し、関係を深めていく力を身につけていくことをねらいとしている。
 市子ども会議が子どもの参加のモデルの一つとして機能することで、学校や施設、地域においても子どもの参加が一層促進されることを目指している。

<実態>
 川崎市では、学校の社会化、地域の教育力の向上を目指して地域教育会議が中学校区で1990年に設置された。1994年には子ども会連盟により各行政区の子ども会議が開催され、学校代表や各区の子ども会代表の子どもによる子ども議会、95年には中学校区の地域教育会議の子ども会議、96年に子ども人権集会を開催した。その後、97年度から2001年度まで実施された「川崎子ども・夢・共和国」では公募により集まった子どもたちがまちづくりについて考え、話し合い、行動してきている。また、条例づくりにおいて子ども権利条例調査研究委員会子ども委員会が設置され、子ども委員が自主的に子どもの意見をまとめていったが、それらの地道な取組が市子ども会議へ発展してきた。また、2001年度は公募による「市子ども会議準備会」をたちあげ、子ども委員がどのような子ども会議をつくっていくかについて協議し、本格的な市の子ども会議運営のための約束ごとについて話し合った。
 2002年度本格的に市子ども会議が開催され、公募による81人の子どもが集まっている。
 年齢は10歳(13人)から17歳(4人)までで、小学生年代の子どもが約4割を占めていた。初めて出会う子ども同士が多い中で子どもの権利に詳しい大学院生のファシリテーター(注3)が毎回支え手としての役割を果たした。
 子どもの関心事に従い盲導犬部会、環境部会、学校部会等9の調査研究部会をつくり、子どもの話合いによって、学習、見学、ヒアリングなど丁寧に進めていった。
 毎回、会議の後「反省会」を持ち、参加意志を持ち、参加可能な子どもとファシリテーター、職員が対等に会議の振り返りと次回の進め方について話し合っている。この振り返りは子どもたち自身がどうエンパワーしているのか自覚していく機会でもある。
 メンバー以外の子どもの意見を聴くために子ども集会を権利の日事業の一環として開催し、2002年度子ども126人、おとな120人の参加を得た。子ども自身の企画運営で行われ、おとなはあくまでも傍聴者として参加した。市子ども会議の子どもたちは、地域教育会議の子ども会議の子どもに参加を呼びかけ、会場ロビーでは、市子ども会議の調査研究部会の活動状況とともに地域教育会議の子ども会議の活動の様子を伝えるパネル等が展示された。
2002年度は子どもの意見により、ビデオで活動報告を作成し、9人の子どもが市長に直接ビデオを手渡し、市長と活動について話合いを行った。

<成果>
 市子ども会議は、子どもが権利について深く考え、実践することで権利を身につけていくことも一つの目的としている。子どもが関心のある事柄について丁寧に学習やさまざまな体験、交流を積み重ねていくなかで、「自分を肯定する気持ちが生まれ、意見をちゃんと言ってよいのだと思うようになり、今ではどこでもきちんと意見を人に伝えることができるようになった」「学校や近所以外の子どもと友だちになり、今までと違う考え方やひろがりを感じるようになった」「会議でいろいろな人と出会い、自分が楽になり、それまで負担に思っていた学校にも進んでいけるようになった」などの子どもの発言があったが、市子ども会議に参加することで子どもたちが生きる力を身につけていることや子ども同士のつながりをつくっている事実を確認することができた。
 参加意欲を持つ子どもは少数で固定化の傾向があり、多くは無関心という今の子どもの状況が明らかになっている。実際、子どもを募集したものの応募なしという他都市の事例もあったが、公募で約80人の子どもの参加があったのは、これまでの市の取組の成果があがっていることを裏づけるものである。「子ども・夢・共和国」参加の経験のある子どもの口コミや参加している子どもの誘いが作用している面や中学校区、行政区の地域教育会議の子ども会議で育ってきた子どもが市の子ども会議につながってきている面もある。
 職員が子ども会議にかかわり、試行錯誤を繰り返すなかで、子どもの活動の支え手としてのあり方を深く考える契機となっている。市のなかで子どもの参加の支援方法の本格的な検討が始まったといってもよい。

*注3「ファシリテーター」
 子どもが意見を言いやすいように和やかな雰囲気づくりをしたり、わからないことがあったら説明をしたりして、子どもたち自身が達成目標を決め、合意をしながら達成していくことを支える支え手をいう。サポーターと同じような意味で使われることも多い。

<課題>
 子どもの活動をどう積み重ねていくかという継続性の問題がある。忙しい子どもが毎回参加することは難しく、毎回の話合いの積み重ねをどうしていくのかという日常活動上の問題がある。また、子どもは成長していくわけで、一人の子どもが関わる期間はそれほど長くはない。2年目の2003年度は参加した子ども43人の8割が継続参加の子どもで、継続性の問題は表面化していないが、子どもが参加し、リーダーとして育ち、新しい子どもに受け継がれていくためのシステム、おとな側の支え方が常に問われることとなる。
 市子ども会議が「一部の熱心な子どもによる取組」と捉えられ、特別視される存在と化してしまうことも考えられる。現在は公募方式のみで子どもに参加を呼びかけているが、参加していない子どもの意見に、より配慮するためのしくみづくりを考えることも課題である。
 市子ども会議が地域教育会議の子ども会議と連携を図っていく必要性については当初から課題として認識されている。地域に生活している子どもにとって市レベルか区レベルかという「枠」は意味をなさない。市の子ども会議と地域教育会議の子ども会議は子どもにとってはともに主体的に参加できる場として存在する。市や地域教育会議の子ども会議を契機に地域において子どもの意見表明・参加がごくあたりまえのこととして捉えられ、推進されるようにお互いの活動を認め、活発化していくことを考えることが大切である。
 子ども夢パークのなかに市子ども会議事務室という日常的な活動場所ができたことで、市子ども会議の活動が広がりをもつことが期待できる。夢パーク本体、市子ども会議、不登校の居場所とそれぞれの仕切りのなかで使用されるだけではなく、それぞれの活動がつながっていくように支援をすることが必要である。そのために各々の役割分担と協力関係をどのように築いていくのか、そのスタッフをどのように支えていくのかなど、継続的で多様な参加支援のあり方、システムを検討し、早期にそのシステムを確立することが求められている。
 行政だけが直接市子ども会議の子どもの支え手として支援をするのは限界があり、子ども夢パークが開設されたことを契機にその役割を限定的に捉え直し、子どもの支援者を支援する方向で検討をしていくことが大切である。

ウ 川崎市子ども夢パーク事業

<目的>
 子ども夢パークは、子どもの遊ぶ権利を保障するとともに、子どもの自主的、自発的な参加活動を促進するためには、子どもが安心して自由に利用できる拠点が必要であるという認識からつくられた。子どもにとって自分が受け入れられる居場所、安心してさまざまな活動ができる拠点として、子どもの子どもによる子どもための施設として運営することを目指している。

<実態>
 施設は、JR南武線津田山駅約250mに位置しており、敷地面積9,871.76平方メートル、延床面積1,827.57平方メートルである。2003年7月23日に供用開始した。
 施設の基本構想、基本計画、基本設計の段階まで子どもワークショップを開催し、子どもの意見を設計に反映するよう試みている。ワークショップに参加できない子どもたちの意見聴取のため、夢パークで何をしたいのか、どんなものがほしいのか、誰と過ごしたいかなどについて周辺学校の協力で、アンケート調査を行っている。
 子どもの提案意見で夢パークのコンセプトに合わないもの(例えば8階だて建物、レストラン)、逆に子どもの意見になかったが行政で整備したい機能(例えば施設全体を管理する機能、不登校児童生徒への対応)については行政が子ども、市民にそのつど説明を行っている。
 2002年4月おとな委員16人(団体委員9人、公募のおとな委員7人)、公募の子ども委員21人から構成される運営準備会が発足し、開設まで19回会議を、その他に運営について共通理解と課題整理のため5回の見学会と4回の学習会を開催している。
 2003年度は開設に向けた具体的な準備や最低限のルールづくりの合意形成を図った。子ども部会ではオープニングイベントをどうつくり上げるかが大きな課題となり、2003年4月以降ほぼ毎週集まり、話合いと準備に追われた。
 子ども部会を条例づくりにかかわってきた大学生がサポートし、子どもの意見の引き出し役・整理役を務めている。さらに、5月以降は夢パークにスタッフとして採用された5人の非常勤職員が子ども部会のサポーターとして交替で参加している。
 2003年2月、川崎市は川崎市子ども夢パーク条例を制定しているが、その過程では条例案などを子どもにわかりやすい形で資料提供し、子どもの意見を尊重して基本的な枠組みをつくっている。また、その第4条で、子どもの意見の尊重及び子どもの参画の配慮義務を規定している。

<成果>
 施設設計については、さまざまな制約条件から提案された意見を大幅に整理せざるを得なかった点や、その説明が子どもたちの十分な理解や納得を得られたかどうか疑問が残るなど運営について反省すべき課題もあるが、子どもワークショップを開催することで、夢パークと子どもの参加が広く知られてきたことは評価できる。
 運営準備会の子ども委員は子どもの子どもによる子どものための活動場所として夢パークを捉え、自主的な運営に意欲的である。子どもがこの夢パークに関わることで力をつけ、自己確認をしてきている。子どもの多様な活動が交錯し、衝突し、刺激しあうことにより、お互いの根を深め、地平を広げあうような豊かな関係が築かれていく緒が生まれ始めている。
 運営準備会では他施設の見学、学習、議論を積み重ねながら、子ども部会では職員は事務的なサポートに徹しつつ、また、おとな部会では市民と対等な話合いを継続しながら合意形成にいたるまで、職員はスケジュールを睨みながらも「待つ」という姿勢を保とうとしていることは評価できる。
 子どもの参加を支える条件整備を積極的に模索し、他の事業の先例となっている。例えば、(1)経済的支援策として、子ども委員に交通費実費を支払っている。(自己申告制で、自転車などできた場合、定期を利用した場合などは支払われない) (2)子どもが意見を出しやすいサポーターがいる(現在、日常的なかかわりをもっている夢パークのスタッフ及び子ども夢共和国や夢パーク推進委員会子ども部会で活躍していたOB・OGがボランティアとして子どもをサポートしている)。 (3)話し合いのためのさまざまなグッズを用意している(常にマジック、模造紙、ポストイットなどワークショップ必需品を備えておき、だれでも、どんな意見でも出せるような運営を心がけた)。 (4)お茶、お菓子なども適宜用意し、リラックスした雰囲気づくりに配慮している。 (5)子どもの参加を支えるおとなの基本的なこと(子ども夢パーク運営準備会のルール)として、おとなのペースで運営しない・子どもの意見を尊重する・子どもにわかりやすい言葉を使い話し合う、という3点を意識しているなどである。
 子ども夢パーク運営準備会では、市民との協働というコンセプトのもと、市民と行政の連携、協働が果たしてどこまで可能なのかという命題に挑戦するかの如く実践的に推進してきた。その過程のなかで意見の食い違いがある点についてもお互いの意見、主張を言い合い、お互いの立場、意見を認め合うなかで方向性を模索してきている。今後についても子ども夢パーク事業が市民との連携・協働による共創社会づくりに与える影響は大きいものがある。

<課題>
 夢パークの基本構想、基本計画、基本設計の段階において、子どもワークショップを開催し、意見を聴いているが、最大のポイントである基本設計にどのように生かされたのかという点について子どもの達成感は少ないようである。夢パーク施設は子どもがつくりつづけていくことをコンセプトにしているが、子どもの意見の反映、できない場合の説明についてはとくに配慮を必要としている。

 運営委員会での子ども委員とおとな委員の人数配分や人間関係づくり、子ども委員以外の子どもの意見をどのように聴き、反映させていくのか早急な対応が迫られている。子どもの活動拠点での日常的、継続的な参加活動の支援体制、スタッフ態勢等については、行政として子どもの意見表明・参加の支え手をどのように支援していくかという視点で検討する必要がある。
 子ども委員の意見をまとめあげていくしくみを子ども自身がどうつくりあげていくのか、また「子どもの意見を尊重した運営」を実現していくためにはどういう具体的なしくみをつくっていくのかなどが課題である。

エ 学校教育推進会議

 条例事業であるが、学校・幼稚園に関わる事柄なので、ここでは、(2)施設の運営に関わる事業(条例上の育ち・学ぶ施設、主に子どもが利用することが想定されている施設)ア学校・幼稚園の(イ)において、記述することとする。

(2)施設の運営に関わる事業(条例上の育ち・学ぶ施設、主に子どもが利用することが想定されている施設)

ア 学校・幼稚園

(ア)学校・幼稚園における子どもの参加(全般)

<実態>
 学校(園)の教育目標、運営方針などを立てる上で子どもの意見を参考にしている学校(園)の割合は小学校では37.5%、中学校では48.0%である。その意見聴取の方法として、小・中学校では学校教育推進会議、代表委員会、生徒会などで出される各委員や役員の意見を参考にすることが多い。
 学校運営方針の説明を子どもに対して実施しているのは、小学校70.6%、中学校86.3%、高校55.6%であり、保護者に対して、幼稚園、小・中学校で100%、高校で75.0%している。
 また、地域住民に対しては小学校93.6%、中学校86.0%、高校12.5%となっている。周知方法として、小・中学校では全校朝会、学年集会、学級活動、学校教育推進会議、学校便りなどがあり、保護者に対してはPTA総会、保護者会、学校説明会、学校便りなどで、地域住民に対しては学校教育推進会議、学校便りなどを活用している。生徒会・児童会で話し合われていることとして、小・中・高等学校とも学校行事や学校生活一般、委員会活動が多く、教職員の関わり方について、小・中学校では求めに応じて助言、議事運営について指導する場合が多い。高校では助言が中心である。環境整備、施設整備について子どもの意見を聴いているのは、小学校73.6%、中学校61.7%、高校で25%である。

<成果>
 学校教育推進会議、権利学習等が導入されたことにより、子どもの意見表明・参加が子どもの権利として学校(園)で位置づけられた意義は大変大きい。
また、子どもの意見表明・参加とこれまでの教育活動の目標であった「子どもの主体性・自主性」との共通点・違いあるいはその意味などが日常的な教育活動のなかで問い直され、従来、指導方法の枠のなかだけで取り入れられてきた子どもの参加は質的な転換が図られ、学校(園)の管理運営などさまざまな活動に子どもの意見表明・参加の視点が入りつつある。

<課題>
 学校(園)、家庭、地域の連携に欠かせない信頼関係構築の基盤となるのが「説明」「情報公開」「透明性の担保」である。学校(園)運営上の情報等について学校(園)側は保護者や地域住民に学校便り等を通して知らせてはいるが、学校の教職員に比べて保護者や地域住民が把握している情報は少ないという実態がある。この情報の格差が参加を実質的に阻む厚い壁となっている。さらに、子どもにはおとな以上に学校の意思決定システムなどの基本的な知識・情報が入りにくく、子どもはとくに学校運営上の情報から遠い存在となりやすい。地域に開かれた学校(園)づくり、子どもが主役の学校(園)づくりを積極的に進めるには、情報の格差を是正することが求められる。学校(園)が、保護者、地域住民、子どもにもきちんと理解できるように情報の提供に、より一層配慮するように教育委員会として学校(園)に働きかけを行うことが大切である。
 学校のなかで子どもの自主的・主体的な活動舞台である生徒会・児童会や代表委員会を子どもの参加という視点から捉え直していく必要がある。子どもの意見を集約し、深める場として機能し活性化していくように、子どもの参加という視点から児童、生徒指導のあり方についても教育関係者が意見交換や研修を行う機会を積極的に設けていくことが望まれる。
 さらに、子どもの意見表明・参加がどのように進められているのかについて学校(園)内外での実践交流を踏まえながら自己評価を重ねていくことが求められる。

(イ)学校教育推進会議

<目的>
 この推進会議は、2002年度に導入された学校教育法施行規則上の学校評議員的な機能と子どもの権利条例第33条の「より開かれた育ち・学ぶ施設」における「定期的に話し合う場」としての機能を併せ持つ。学校運営や学校規則など直接的に学校に関する問題について校長、子ども、教職員、保護者、住民の5者が意見交換をするなかで開かれた学校づくりを目指すとともに学校の諸活動に子どもの参加を促進していく核としての役割を担っている。

<実態>
 教育委員会として「学校教育推進会議設置の指針」「学校教育推進会議設置要綱例」を作成、配付した結果、2001年度の試行では90.5%の学校(園)で、2002年度には全校(園)で本格的に実施されている。学期ごとに年3回実施されているところが多く、会議形態としては「おとなと子どもが一緒」に取り組んでいる割合が高い。

<成果>
 学校の教職員、保護者、住民、子どもが一緒に話し合う場が学校等の生活の中にあれば参加してみたいと思っている子どもは4割弱(「思う」10.8%、「やや思う」27.0%)、おとな、職員でその場に子どもが参加する必要があると「思う」「やや思う」人が8割前後に達している(78.5%、86.3%、「子どもの権利に関する実態・意識調査」)。この会議により、初めて学校(園)で子ども、教職員、保護者、住民が一堂に会し、話し合う機会が設けられた。子どもの意見表明・参加が子どもの権利として制度上学校(園)で明確に位置づけられたことになり、その意義は大変大きい。
 学校教育推進会議に子どもが参加することによる効果とこの会議によって学校の子どもの参加に与える効果とが考えられるが、小学校校長会人権教育委員会が「子どもの権利条例の趣旨を生かした学校運営と子どもの参画」について実践状況調査をするなど、とくに小学校において学校内における子どもの参加気運が芽生えている。
 子どもが意見を出しやすいように雰囲気づくりなど条件整備のための工夫をおとな側がしており、学校内における教職員、おとな側の子どもの参加支援が意識化されている。

<課題>
 学校(園)においては学校教育推進会議が全校(園)で開催され、学校の基本方針、運営などについても子どもの意見表明・参加が図られ、着実な成果をあげている学校もあれば、まだまだ模索段階の学校もある。いずれにしても、子どもの数や会議の運営など子どもが参加をしやすい条件の整備、会議内容の伝達とフォローアップ、成果をはじめ会議のあり方の交流などが一層必要になっている。市立の学校全体が学校教育推進会議における子どもの参加について推進する立場で共通の理解が得られるよう支援することが大切である。

(ウ)権利学習

<実態>
 権利学習は小学校100%、中学校93.6%、高校77.8%、幼稚園62.5%、聾・養護学校33.3%で実施されており、幼稚園では日々の活動のなかで、小・中学校では特別活動、道徳、高校では特別活動のなかで行っている学校が多い。
 教職員の研修として、小学校では73.6%の学校で実施しており、年間1~2回が多い。中学校では64.4%、高校では55.6%、PTAと一緒に実施しているのは小学校26.9%であった。

<成果>
 権利学習は多くの学校で実施されており、とくに小学校では全校で取組まれている。そのこと自体条例が制定され、教職員の意識化が図られていることの成果といえる。
 子どもが権利を学習することにより、子どもの意識、行動にどのような変化がみられたかが大きなポイントであるが、当委員会と子どもとの対話のなかで、権利学習を受けたことで、「嫌なことは嫌だと言えるようになった。」「けんかの時、相手にも権利があることをいうと反省する子どもがでてきた。」などの発言があった。ほかにも、権利学習が一人ひとりの子どもに権利の相互尊重の精神を培う契機となっていることを確認することができる。

<課題>
 子どもや市民との対話では、権利学習についての印象度が低いばかりか学習したことさえ記憶にないという子どもが多く、学校(園)の「意欲」とは別に子どもや市民への定着度はまだまだ低い。権利学習を年間カリキュラムにきちんと位置づけることができるよう、最低基準となる指導時間数や指導事例などを教育委員会として学校(園)に提示していくことを検討することも重要である。
職員との対話のなかで権利を「わがままに使う子どもがでてきた」という意見もあったが、ありのままの自分をだせるということは権利意識を獲得する鍵である。子どものわがまま論とか責任論は条例制定後も根強いものがあるが、自分の権利を放棄する子どもが他者の権利も無視し、相互尊重の精神や「共同性」を忘却していく事実を踏まえ、子どもが自己肯定感を持ち、能動的・自発的活動の総体としてどのように向上したかという視点から評価すべきである。
 子どもの参加の権利自体についての学習が意識的に取組まれている様子をうかがい知ることができなかった。子どもの参加する権利についてはとくに学校(園)内の子どもの参加のしくみづくりとあわせ、その意義と手法を確立していくことが大切である。また、国語や社会などの教科、道徳、特活、総合的学習について、子どもの意見表明・参加の視点が織り込まれるということが重要である。学校(園)における子どもの参加の権利については、学習指導形態、スケジュール作成、カリキュラム編成をはじめ理論的整理と実践の蓄積が求められており、学校(園)での大きな課題である。

(エ)適正手続

<実態>
 適正手続(注4)については高等学校のみ調査・評価を依頼した結果であるが、退学、停学等子どもを懲戒処分する手続について要綱等を持っている学校はない。教育的指導としての家庭謹慎等について予め情報を提供している学校は77.8%であり、その方法として生徒には入学ガイダンス、保護者には学校説明会、保護者会で説明している。
 また、いわゆる自主退学が問題になることがあるが、その理由として、(1)暴力や喫煙などの反社会的行為、(2)授業の欠席が多いことにより、単位が修得できずに進級・卒業ができない場合等がある。その場合、事前に子ども本人や保護者に対しては十分に情報といくつかの選択肢を提供しつつ話合いを行い、決定している。
 ここでは、学校において処分や教育的指導に関する情報を予め子どもや保護者に提供し、実際の決定の際には意見を述べる機会を保障することをいう。教育的指導の場合、複数の教職員が同席し、保護者を交えて指導方針とその理由を説明している。また、当事者の事実確認及び保護者同伴での指導の際に、担任を含めた複数の教職員で子どもの意見を聴いている。

*注4「適正手続」
 行政上の決定過程で事前に事実を告げ、意見を陳述する機会などを保障することで、人権の保障や行政の公正性を担保しようとするもの。

<課題>
 条例第25条第6項では、子どもに対して停学、退学、家庭謹慎、出席停止などの処分や指導が決められる時、事前に本人から事情や意見等を聴くなどの弁明の機会を設けることが必要であることを定めている。処分や指導に関する手続を明文化した要綱等を持っている学校はなく、各校においては教育的配慮から、懲戒処分をした事例は過去1件もない。
 教育的指導の結果として家庭謹慎などを子どもに課す場合には、保護者は勿論子ども本人の意向を複数の教職員が十分聴いた上で決定することが各校の教師間の「了解」事項となっているが、そのような場合や卒業(進級)判定、進路決定等子どもの将来に大きな影響を与える事項について決定するときには、子ども(または代弁者である保護者)の意見を十分聴くなどの手続を明文化しておくことが求められる。また、その手続に子ども(または保護者)が異議申立てができる制度を組み込んでおくことも大切である。
 その手続のなかには、子どもが意見を表明する権利があることを子どもに伝え、意見表明しやすい雰囲気づくりなど学校側が配慮することも盛り込むことが必要である。

イ 保育園

<実態>
 年度当初「川崎市公立保育所運営指導方針」を各園に提示し、運営方針を策定する時の重点項目の一つに「子どもの人権の保障について」をおいている。園の基本計画や方針などを策定するにあたり、約半数の園がクラス別懇談会や保育参観、個人面談等の時間帯に保護者から意見を聴いている。生活のきまりについては約7割の園が集会やクラス単位で保護者、子どもの意見を聴いている。
 生活場面では全保育園で保護者、子どもから意見を聴いている。保護者、子どもが安心して利用できる施設づくりには欠かせない。
 67.3%の公立の園で権利学習・研修を実施しており、年1~2回開催するところが多い。

<成果>
 保育分野においても、子どもの権利保障を推進していく役割を担っているとの認識を保育士の方々が持っており、子どもの権利に根ざした保育を意識的に実践していこうとする姿勢が見受けられる。現在、条例内容を踏まえて保育所保育指針を作成しているところであり、その意味合いは大きいものがある。

<課題>
 乳幼児の場合、保護者から子どもの代弁者としての意見を聴くことは重要であるが、絶えず保護者が子どもの代弁者として意識しているわけではなく、乳幼児の参加や意見を汲み取るおとなの力量形成が大きく問われている。また、保育士等の職員に子どもの権利に関する研修機会を増やし、その意義、手法などについて共通理解を得ていくことが重要課題となる。
 学校教育推進会議が学校内でも子どもの参加を牽引する役割を担っているが、条例制定過程でも検討されたことであるが、保育園においても子どもの参加による保育園版の会議を設置するよう働きかけを行っていくことが必要である。

ウ 児童養護施設

<実態>
 自立支援計画の作成、見直しの際にも子どもの意見を聴いている。児童福祉司が入所中の子どもと会っている回数は2~18回である。
 施設の運営への参加に関しては子どもたちが話し合う場を持ち、その結果を尊重し、検討していくしくみを用意している。
 子どもの進路決定の時には、子どもと職員が話合い、子どもの意志を尊重している。
 生活場面での子どもの参加は、行事への参加や食事のメニューづくりなどにも意見を取り入れている。苦情解決のための第三者委員会について、県社協が福祉サービス運営適正化委員会を設けている。

<成果>
一般の子どもの条例認知度45.2%に対して施設入所の子どもの認知度は55.2%と高い。認知手段として、一般の子どもでは最も高い「授業・先生の話」(37.5%)を超えて、半数以上の子ども(56.3%)が施設職員を通して聴いている。施設職員の努力の結果であり、その取組は評価できる。

<課題>
 施設職員、子どもともに学校、地域への参加意欲が低く、自己完結型の施設となりやすい傾向がみられる。地域に開かれた施設を目指し、運営委員会、評議員会などに地域の住民、卒園者、入園している子どもの参加を促進するよう働きかけを行うことが大切である。
 施設運営や子どもの進路などへの子どもの意見表明についてしくみはあるが、子どもの実感とのずれがあるように見受けられる。子どもの参加の実質化を進めることが今後の課題となる。

【児童相談所における課題】

 子どもの措置変更あるいは措置停止・措置解除については、児童相談所の所内会議(職員のみ)で親の意向、家庭状況、施設の意見をあわせて討議しながら決定しているが、子ども自身の意見がきちんと聴かれることを保障するため、第三者(専門家)を入れるなど子どもの意見表明を担保できるよう検討することが求められる。
 児童相談所の児童福祉司は施設入所している子どもと年間何度か接触しているが子どもはほとんど覚えていないなど、時に子どもの認識とのずれがみられる。訪問の際、子どもとの関係性を重視し、子どもの意見をじっくり聴き、子どもの最善の利益をより一層擁護する立場で積極的に子どもと関わる必要がある。
 一時保護所に入所している子どもは自分の処遇がどうなるのか不安を抱いており、意見表明・参加をしづらい状況に置かれている。子どもが参加するための条件として、安全で安心できる場の確保が重要であり、その視点から混合処遇の現状を見直すことが大きな課題となっている。子どもの権利を不必要に制限することのないように職員が十分な配慮をするとともに子どもの生活指導について、子どもの意見を定期的に聴く機会を設け、採りいれることができないときは、その理由を子どもにわかる言葉で十分に説明をするように努めることが大切である。

エ 主に子どもが利用する施設

(ア)こども文化センター

<実態>
 2003年4月から、これまでの社会福祉法人青丘社への桜本こども文化センターの委託に加え、財団法人かわさき市民活動センターにこども文化センターの管理を委託し、地域に根ざした地域主体の施設として運営を行っており、子どもの施設を主目的としながら施設の有効利用を図り、市民活動・ボランティア活動の推進をも目指す施設として位置づけられた。
 2002年度からの2年間、中高校生の居場所づくりを試行的に調査研究事業が4館で実施され、また、中高校生のニーズを把握するためアンケート調査を行った。
 子どもの意見を聴取するため、常連の子どもによる子ども会議を実施したり、リクエストボックスを設置している施設もある。ファシリテータ、サポーターなどの支援制度をもっているのは2割にすぎない。こども文化センターを安心してくつろげる場所として評価しているのは職員が25.3%であるのに対して、子ども全体では5.7%しかおらず、とくに高校年代では2.7%に留まっている。

<成果>
 こども文化センターでは、2003年4月から中高校生の居場所づくりに重点をおく事業転換がなされたことにより、これまで地域において特定の居場所を持つことができなかった中高校生の地域における自主的・主体的な取組の場となることが期待できる。

<課題>
 各施設の運営について審議、決定を行う運営協議会に「子ども」や「青少年」の代表が参加することができるようなしくみづくりを行うことが求められる。とくに地区によっては構成メンバーとして中学校区の地域教育会議の子どもなどに参加を呼びかけることも視野に入れ検討することが考えられてよい。
 少子化が進み、地域において子どもの数が減少していくなか、施設利用数・率の増加は期待できない。利用の質を向上させることが重要であり、主体的に子どもが施設利用に参加し、運営に関わっているのか、子どもの力量形成に施設運営や事業が活用されているのかという視点が求められる。そのためにも、子どもの支え手として専門の人材の配置を検討していくことも課題となる。

(イ)その他主に子どもが利用する施設

<実態>
 施設運営への子どもの参加のしくみは現在どこも持っていないが、どのような参加方法、意見の反映方法がよいのか各施設の運営協議会などで継続して研究・検討している。各施設ともアンケートや反省会による意見集約や利用団体から寄せられる子どもたちの感想文などを施設運営の参考にしている。
 事業の企画・運営に子どもが参加している施設は75%である。子どもが事業に参加する場合、物的支援として保険加入の手続を施設で実施し参加者が実費負担している。

<成果>
 現在、多くの子ども施設で子どもが施設運営に意見を表明するしくみとしてどのようなものがよいのか、参加方法、意見の反映方法などについて研究・検討がなされており、そのこと自体が子どもの参加を促進する意味合いをもっている。施設によっては青少年で組織された施設ボランティア集団が子どもの意見を聴き、子どもとのコミュニケーション形成や子どもと施設のパイプ役として効果をあげている。
 また、子ども施設においては、より多くの子どもの参加を得るためには子どものニーズ・意見に敏感にならざるを得ない面もあり、施設で実施する事業の企画・運営に子どもが参加する割合は高い。

<課題>
 子どもが利用する施設全体に言えることであるが、子どもの参加の固定化傾向に対して各施設でどのように対応していくのか熟慮を要する課題である。子どもは、面白いこと、楽しいこと、自分の存在価値を実感できることなどには積極的に参加したいと思っており、そのための工夫をすることが求められる。子ども施設が子どもたちの居場所として利用され、異なる集団、グループ等との相互交流をしていくことで、子どもが多様で自由対等な共生の知恵を得ていくことも射程にいれながら具体策を考えていくことが重要である。
 各施設の運営協議会に子どもが直接参加することが難しい場合、運営協議会のもとに「子ども運営委員会」などをつくり、子どもの意見を聴いたり、保護者、地域住民や職員が一体となった子どもへのサポート体制を整えることが必要である。

(3)子どもの権利保障を目的とした事業及び主に子どもを対象とした事業

(4)子どもが生活する場、地域のことなどについて子ども自身の意見を取り入れることが可能な事業

<実態>
 子どもの参加に関する調査・評価票結果によれば、以下のような現状がうかがえる。

  • 対象事業 44事業
  • 子どもだけの組織・機構をつくっているのは3事業
  • 参加する子どもの選出方法 「団体代表」約23%、「公募」約26%、「制限がない」約48%・参加する子どもの意見の立場 「個人の考え」7割強、「どちらともいえない」約29%、「代表する団体の代弁者」はない。
  • 参加できない子どもの意見を聴くしくみ 「ある」が約18%、「ない」が約82%
  • 企画の段階から子どもの参加をとりいれているのは5事業
  • 子どもの意見を反映できない場合の対応 事情説明 8件、個別対応 1件、ワークショップにて検討 1件
  • 子どもが参加しやすいように配慮していることとして、曜日・時間・場所の設定、言葉遣いなどの雰囲気づくり、少人数のグループ行動、お互いの年齢になってゲーム等を考える。出前講座
  • 子どもの参加の広報は約88%している。パンフレット・ポスター・広報誌で実施しているのが約76%、学校を通じて実施しているのが約33%。
  • 参加する子どもの物的支援として、交通費支給、傷害保険など7割実施
  • 参加しにくい子どもの参加について工夫をしているのは約1割、スタッフ・指導員の加配、手話通訳など。
  • NPO,NGO等との連携・協働「している」事業が約28%

<成果>
 子どもは地域への参加を通して、地域のことや地域に参加すること自体の意味を感じ、考えることができ、学校生活のなかで培われる力とは異なった知恵・知識・力を獲得することができる。子どもの参加による効果について、担当職員はほとんどのものが肯定的に捉えている結果がでており、今後の地域における子どもの参加の進展が期待できる。
 また、川崎駅東口まちづくりワークショップ、都市計画マスタープラン中原区構想検討委員会への子どもの参加が保障されたことは、次代を担う子どものまちづくりへの参加事例として貴重である。

<課題>
 子どもの参加を推進するための最大の課題は、事業担当者である職員が子どもの参加・意見表明についてどれだけ意識化できているかという問題である。今回、44事業が対象事業として提出されたが、本来もっと高い数字が予測されていた。教育、福祉、青少年健全育成、相談・救済分野に関わる職員だけではなく、全職員を対象とした研修が求められる所以である。条約・条例の理念、趣旨を基本に子どもの参加についての条例事業の事例を具体的に紹介するなど、職員がイメージ化しやすいよう工夫をし、研修・実践交流の機会を設けていくことが求められる。
 地域で子どもの参加のしくみをつくって子どもを募集したとしてもなかなか子どもが集まってこないという実態がある。そこで、子ども会議の子どもたちに参加をよびかけることとなり、忙しい子どもがますます多忙になるという恐れも生じてきている。子どもの参加の目的を確認し、参加のための条件整備を行うことが先決であることを職員に知らせていくことが求められる。

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