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中小企業のブランディング(2023年4月号)

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  • 更新日:

このページは、広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

かながわ補助金研究会 中小企業診断士 吉田 由紀

ブランディング

皆さまは、自社のブランディング(=ブランドを創ること)を考えたことはありますか?「ブランドって高級品のことでしょ。」とか「ブランドって自分で創るものなの?」などと思った方も多いかと思います。今回は、いわゆる「高級品のブランド」ではなく、経営戦略に活用できる概念と、働き方にも波及が期待される効果について、お話ししたいと思います。

1:ブランドとは?

 まず、「ブランド」と言われて思いつくものは何でしょうか?例えば、「トヨタ」や「サッポロビール」、「Apple」など会社名を思い浮かべた方や、「レクサス」や「エビスビール」、「iPhone」など商品名が出てきた方もいらっしゃるかと思います。会社名はコーポレートブランドと呼ばれ、言わば家風であり、商品名はプロダクトブランドと呼ばれ、会社の子どもたちに相当します。また、「鎌倉野菜」や「京浜工業地帯」、「シリコンバレー」など、地域名のついたブランドもあり、これらは地域ブランドと呼ばれ、町おこしに活用している自治体もあります。さらに最近では、ユニクロの「ヒートテック」やSHARPの「プラズマクラスター」、SUBARUの「アイサイト」など、目に見えない技術を見える化した技術ブランドも認知度が高まっています。「ブランド」とは、高級品や一流品を示す意味で使われることが多いですが、従来はマーケティング用語であり、「ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)」のことを意味し、近年その捉え方が広がってきています。

2:「ブランド」の考え方の変化

 さて、この「ブランド」ですが、1980年代の半ばを境に、考え方が変わってきました。それ以前は、「ブランド」はプロモーション(広告・販売促進戦略・PR・人的販売)の一部であり、「ブランドをマネジメント」していました。そのため、内容としては、ロゴマークやシンボルマークの作成、凝ったネーミングやデザインといった、ブランドプロモーションの位置づけでした。しかし、1980年代後半になると、「ブランド」そのものが企業の資産という考え方になり、「ブランドでマネジメント」する経営戦略そのものとの位置づけに変化してきました。

「ブランド」の考え方の変化
 Before(~1980年代前半) After(1980年代後半~) 
 考え方

 「ブランド」はプロモーション
の一部

(広告・販売促進戦略・PR・人的販売)

「ブランド」は企業の財産 
 マネジメントブランド「を」マネジメントする ブランド「で」マネジメントする 
 内容

・ロゴマーク、シンボルマーク 

・ネーミング

 ・デザイン

・イメージ

・プロモーション 

など

経営戦略そのもの

「ブランドコンセプト(ブランド理念)」に沿ったすべての事業活動

 位置づけブランドプロモーション活動 

ブランド経営

(上記内容+マネジメント) 

3:ブランディングの方法

 ところで、皆さまの会社の経営理念は何でしょうか?「自社の製品で笑顔を増やしたい。」や「安心・安全な社会を目指して」など、そこには、経営者の思いが詰められていることと思います。その経営理念を基に、具体的な事業活動に落としていくことが経営戦略であり、「誰に」「何を」「どのように」提供して収益を上げていくかを策定していると思います。また、競争優位性を築くために、自社の「強み」による差別化戦略を取っている企業も多いことでしょう。これらは、ブランディングに必要な以下の3条件と重なります。つまりどんな企業でもこの3条件を満たせば、ブランディングは可能です。

条件

  1. 能力・意志がある:経営理念
  2. 社会・顧客ニーズに対応している:訴求ポイント
  3. 他との違いがある:強味=自社らしさ(=ブランドコンセプト)

 ブランディングの基本方針は、この自社らしさ(=ブランドコンセプト)を抽出すると共に、それに基づいた事業活動を展開することです。例えば、SUBARUは、自社の技術ブランドである運転支援システム「アイサイト」を、すべての自社乗用車に搭載する、という事業活動を実施しています。

 ブランディングの結果、企業として「何をすべきか」、また「何をしてはならないか」の判断基準が明確になります。また、顧客への対応方法で、「ああ、この会社らしいね。」と思われ、外部からも内部からも選ばれる唯一無二の存在になることができます。さらに、従業員が自社のブランディングに共感・共鳴することで、外部から選ばれる誇り、内部から生まれる活力や仕事のやりがいにより、従業員の家族を含め周囲の人達の心身に健康をもたらす、といったさまざまな効果も期待されています。

4:実施例

 現在放映中のNHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」はご存知でしょうか?主人公はパイロットになる夢を持ち、それに向けて邁進しますが、さまざまな困難に出会いながらもそれらに立ち向かって上昇していく、という内容です。この主人公の実家は、東大阪で特殊ネジや自動車部品を製造する工場を経営しています。この会社ですが、1980年代に、父親が2代目社長に就任し、経営危機を乗り越え、2000年代初頭に「株式会社IWAKURA」に商号変更する際に、ブランディングを行っています。ドラマの物語とはいえ、前述の3条件をしっかり満たしていますので、確認してみましょう。

  1. 能力・意志がある:特殊ネジはもちろん、金属部品の製造にも引き続き力を入れていきたい。ゆくゆくは、飛行機にうちの部品を載せたい。(社長の強い思い)
  2. 社会・顧客ニーズに対応している:特殊ネジの需要増加
  3. 他との違いがある:(他社が不可能だった)どんな特殊なネジも作れる技術力

 いかがでしょうか?そして、2代目社長は「小さなネジの、大きな夢。」というスローガンを設定し、従業員もその思いを理解して、その後の経営危機も一丸となって乗り越えていきます。

5:まとめ

 「ブランド」とは、プロモーションの一部だった高級品や一流品を示す用語とは限らず、企業の資産という考え方になってきています。そのため、ブランディング(=ブランドを創ること)は大きな会社だけができることではなく、3条件((1)能力・意志がある、(2)社会・顧客ニーズに対応している、(3)他との違いがある)を満たせば、どんな企業でもブランディングできます。

 これを機会に、皆さまの企業もブランディングして、自社のファンを増やせませんか?

参考文献:「超実践!ブランドマネジメント入門」、上條憲二、株式会社ディスカバー・トゥエンティワン

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