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主体的な社員を増やすには?(2023年6月号)

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  • 更新日:

このページは、広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

かながわ補助金研究会  鈴木崇史

主体性がない社員

 「うちの社員には主体性がない」という悩みを多くの経営者からお聞きします。「みなさん悩んでいらっしゃいます。でも原因は社員さんではなく御社の経営にあるのではないでしょうか。」と私はいつも答えます。一体どういうことなのか説明をしていきます。

1.主体的であれば良いわけではない

 ここで一つ、問題提起です。社員が主体的に動くことは会社にとっていいことなのでしょうか。例えば戦前の日本では、上官の指令を待たない越権行為であっても成果が生まれれば咎められないという文化もありました。その結果、戦争は拡大し、時の政府は静止できず、追認することを繰り返しました。また、極端な例ですが2013年頃に社会現象となったバイトテロもモラルのない若者たちによる主体的な行動です。このように従業員が主体的であればいいわけではなく、企業理念・経営方針・行動指針に沿わない行為は大きな悪影響を及ぼすものであり、越権行為や不法行為は固く取り締まる必要があります。

ポイント(1)

ある社長の嘆き・・・「うちの社員には主体性がない」
この「主体性」とは「企業が求める主体性」である

2.良い主体性を生むには

  1. 権限を明確にする
     前段でお話した通り、組織を保つためにはルールを明確にする必要があります。例えば、発注内容や契約金額の決定権であったり、アルバイトの採用権限などが該当します。役職ごとにここまでは決めて良い、ここから先は決められないというラインを明確に引くことで責任の範囲を超える損害を組織に与える事態を防ぎます。反対に、超えてはいけないラインを設けることで、当該役職者が主体性を発揮してよい範囲が明確となりますので、その範囲内であれば安心して決定権を行使できるようになります。良識がある従業員にとって、越権行為と指摘される心配があっては主体的な判断を下すことはできません。
  2. 企業理念・経営方針・行動指針の明確化
     主体的な判断を下してよい権限を与えただけでは、従業員は主体的な判断・行動をすることはできません。ここで必要となるのは判断の基準です。そして、その判断基準を明確に示すことは経営者が従業員に何を望むかを表現するものとなります。これが「行動指針」です。例えば、自身の業務範囲を超えて積極的に意見具申をしてほしいのであればこれを行動指針に明記すべきです。他に行動指針の例としては「判断に迷った際には顧客第一で特別な対応を検討する」なども挙げられます。良識ある従業員は会社に貢献したいとの希望を有しています。しかし、会社が何を目指して存在しているのかがわからなければ具体的な行動はできません。会社の存在理由・進む方向を示したものが「企業理念」です。また経営者が進もうとしている方向を示したものが「経営方針」です。これを記入し、社員に公開していなければ「会社が求める」主体的な行動はできません。企業理念・経営方針・行動指針・権限明確化が揃うことで初めて、「会社が求める」主体的な判断を従業員が行える環境が整います。
  3. 人事評価・ボーナスへの反映
     前述の通り、企業理念・経営方針・行動指針・権限明確化が揃うことで主体的な社員が生まれる基盤ができました。しかし、これだけでは主体的な社員を「増やす」には不十分です。社員の行動を変えるためには「主体的な行動」を評価・賞賛する仕組みが必要です。ある製造業の中小企業では人事評価の項目に改善提案の件数を挙げています。求める行動を具体化し、評価し、昇格やボーナスに反映することが「主体的な行動」を効果的に促します。別の企業では社内のコミュニケーションを活性化するために、他部署の方への感謝を伝えるメッセージを社内掲示板に投稿した方に対し、少額ながらボーナスが出るそうです。このような具体的な行動を促す仕組みが個々の社員の「望ましい」主体的な行動を促進します。
主体性がない_2

ポイント(2)主体性を生む条件

企業理念・経営方針・行動指針・権限明確化 + 賞賛する仕組み

3.必要となる経営者の覚悟と忍耐 

  1. 経営者の覚悟がなければすべてが台無しに
     ここまで「企業が求める」主体的な社員の生み出し方、増やし方をご説明してきました。では、このような取組みを始める上で注意すべき点について述べていきます。それは、すべてを台無しにする失策をしないということです。その失策をする可能性があるのは経営者その人です。例えば、社員が決められた権限内で企業理念や経営方針に沿って何らかの判断を下した際に望ましくない結果、例えば失注・クレーム発生・損失計上に繋がった際に、経営者がこの社員の判断・行動を叱責してしまったら・・・この社員のみならず他の社員の方も今後主体的な判断・行動を避けることになります。主体的な判断を求められる中で、失敗して叱責されるくらいであれば、言われたことだけを実行する方がはるかに楽です。企業理念・経営方針・行動指針に沿った行動に対しては望ましくない結果が生じた場合でも責任は経営者が負う、主体的行動をとった社員は守り抜くという覚悟が重要となります。
  2. 仕組みの運用を形骸化させないこと
     経営者の覚悟に加えて必要となるのが忍耐、粘り強さです。人事制度を整えたり、ボーナスを設定したり意見具申や、社内提案の制度を整えても、一朝一夕に成果が出るものではありません。新たな仕組みを創ったのに、いつの間にか存在が忘れられていることもよく聞きます。経営者は多忙であり、社員の教育などの長期的な課題だけを意識できるわけではありません。目先の売上・資金繰り等への対応を優先せざるを得ない状況もあります。しかしながら、仕組みを作ったのに経営者が情熱を失ってしまったら元も子もありません。「また、社長の思い付きか・・」という失望が社内に生まれるだけの結果となります。仕組みを粘り強く運用するという忍耐が求められます。

4.まとめ

主体性_まとめ

 本稿では「うちの社員には主体性がない」という多くの経営者の悩みの解決方法を示しました。そして主体性を持ちにくい原因は企業理念・経営方針・行動指針・権限明確化のいずれかを欠いている企業側にあることを説明してきました。最初から「企業が求める望ましい」主体性を発揮できる社員はいません。いかに主体性を育て発揮させる仕組みを作り、粘り強く運用していくか、経営者の手腕が問われます。

お問い合わせ先

川崎市経済労働局労働雇用部

住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地

電話: 044-200-2271

ファクス: 044-200-3598

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