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多様なSOGI (ソジ)を尊重し、誰もが活躍できる職場づくりに向けて(2023年11月号)

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社会保険労務士 加地 一章

このページは、広報誌「かわさき労働情報」のインターネット版です。

はじめに

SOGI

本年6月にLGBT理解増進法(正式名称;性的指向及びジェンダーアイデンティティに関する国民の理解増進に関する法律)が施行されました。また、7月にはトランスジェンダー職員のトイレ利用制限を違法とする最高裁判決も出され、性的マイノリティの方々への事業主としての対応が求められつつあります。中には「うちの会社にはLGBTの社員はいない」、「対応したいけど、職場が窮屈になるのでは?」とお考えになる事業主の方もいらっしゃるかと思います。本稿が現状の認識を深めるきっかけとなり、多様なSOGIを尊重し、職場の全員がより生き生きと活躍し、会社全体の生産性向上につながる一助となれば幸いです。

1. 『SOGI』とは

SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった略称です。LGBTが性的マイノリティ当事者だけを指す総称であるのに対し、SOGIは、特定の性的指向や性自認の人のみが持つものではなく、異性愛の人なども含めすべての人が持っている属性です。

  1. 性的指向
    恋愛または性愛がいずれの性別を対象とするかをいうものです。人によって、性的指向のあり方はさまざまです。ご自身と異なる性別の人を好きになる人、自分と同じ性別の人を好きになる人、相手の性別を意識せずにその人を好きになる人がいます。また、誰にも恋愛感情や性的な感情を持たない人もいます。
  2. 性自認
    自己の性別についての認識のことをいいます。生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致する人を「シスジェンダー」といい、一致しない人を「トランスジェンダー」といいます。トランスジェンダーには、生物学的な性が男性で性自認が女性、生物学的な性が女性で性自認が男性といった場合があります。他に、男性・女性のいずれにも属さない性自認を持つ人を意味する「Xジェンダー」などさまざまなものがあり、自分の性別をどのように認識するかは人それぞれ違います。

性的指向や性自認は、本人の意思で選択したり変えたりできるものでも、矯正したり治療したりするものでもなく、個人の尊厳にかかわる問題として尊重することが重要です。周囲の人達が、そのことを理解して、普通のことだと受け止めて接するだけでも、当事者の生きにくさは相当改善するといわれています。

2. 性的マイノリティの存在割合は?

日本におけるLGBTの割合は、調査機関・調査方法によってデータにバラつきがありますが、現在では約3 %〜10%といわれています。

  • 大阪市で行われた調査ではLGBTが3.3%、決めたくない・決めていない等の回答を合わせると8.2%、電通ダイバーシティ・ラボの2020年の調べでは8.9%、LGBT総合研究所「LGBT意識行動調査2019」では約10.0%、名古屋市総務局総合調整部男女平等参画推進室の調査では1.6%となっています。

その一方で、2019年に厚生労働省が行った労働者アンケートでは、性的マイノリティの労働者に「いまの職場の誰か一人にでも、自身が性的マイノリティであることを伝えられているか」について尋ねたところ、結果は次のようになっており、当事者の約8割が、自身が性的マイノリティであることを職場の誰にも伝えていないという結果になっています。

性的マイノリティの労働者

3.『カミングアウト』と『アウティング』

性的マイノリティの当事者が、自身の性的指向や性自認について他者に伝えることを「カミングアウト」といい、逆に、本人の同意なく、その人の性的指向や性自認に関する情報を第三者に暴露することを「アウティング」といいます。

性的指向・性自認という機微な個人情報を意に反して明かされることは本人にとって非常に苦痛になる(強い不安感や緊張感を強いられる)にとどまらず、「個の侵害」型のパワハラに該当する場合があります。同僚などからカミングアウトされた場合には、打ち明けてくれた事実に理解を示すことが、当事者の安心感や信頼に繋がります。また、経営者や人事担当者・管理職が、職務上、社員が性的マイノリティであると把握した場合に、たとえ善意であっても、本人の同意なくその情報を第三者に伝えてしまうことは絶対にあってはならず、アウティングに該当するため注意が必要です。職場のどの範囲まで伝えてよいかについては、当事者本人の意思を尊重しながら入念に確認し、丁寧にコミュニケーションを取りましょう。

4.職場における性的マイノリティに関する取組事例

本年6月に施行された「LGBT理解増進法」では、第6条(事業主の努力)で、事業主に対し3つの努力義務を課しています。
『事業主は、基本理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関するその雇用する労働者の理解の増進に関し、普及啓発(1)、就業環境の整備(2)、相談の機会の確保(3)等を行うことにより性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する当該労働者の理解の増進に自ら努めるとともに、国または地方公共団体が実施する性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策に協力するよう努めるものとする。』
注)カッコ内数字は筆者注

ここでは、「LGBT理解増進法」で努力義務とされた3つの対応に関する取組事例を紹介します。

(1) 普及啓発 北海道 宿泊業、飲食サービス業 100人~300人

  • 責任者会議にて、LGBTについての各回20分程度の研修会を数回にわたって実施している。LGBTに関連する用語や実態について勉強している。研修会においては、札幌市が公開している資料を活用している。責任者は、受けた研修の内容を朝礼や昼礼で展開している。

(2) 就業環境の整備 岐阜県 製造業 100人未満

  • 経営者間の交流から、性的マイノリティの当事者の方と知り合い、社内の研修を実施してもらうようになった。就業規則に性的マイノリティに関して記載した。
  •  社内の人間関係づくり、相互理解に注力している。お互いの違いを知ろうと言葉にすることは簡単だが、実際に理解し合うことは難しい。社内において、LGBT当事者や障害者等に対して、不快感を持つ人が少なからずいるのは仕方ないが、当事者の存在をないものにするような振る舞いは許さないという姿勢でいる。

(3) 相談の機会の確保 福岡県 サービス業 100人~300人

  • ダイバーシティ&インクルージョン推進室を相談窓口としているほか、外部の相談窓口業務を当事者団体に委託している。社内のチャットシステムで、当事者団体の代表とチャットできる。また、当事者団体の代表が2週間に1度は来社して相談対応できるようにしている。

さいごに

多様なSOGIを持つ方々が活躍できる職場づくりに向けての対応に、特有の難しさを感じられる方もまだまだ多いかと思います。LGBTの当事者でもあり『LGBTQの働き方をケアする本(自由国民社)』の著者でもある宮川直己さんは、対応に当たって大切なことは以下の3点だと言われています。

  1. 正しい知識を身につけること
  2. 相手を人として尊重する意思を言葉と行動で示すこと
  3. 丁寧に対話を重ねること

この3点は、LGBTの方々への職場での対応に限らず、職場で働く誰もが生き生きと働くために、マネジメントの立場におられる方々が実践すべき基本動作であるともいえます。

それでも対応にお困りの場合は、お近くの社会保険労務士や労働局 総合労働相談コーナーへご相談ください。   

神奈川労働局 総合労働相談コーナー 045-211-7358

  • 本稿で取り上げた「性的マイノリティに関する取組事例」は、厚生労働省の『多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集 ~性的マイノリティに関する取組事例~』からほんの一部を紹介しました。その他の事例は以下URLよりご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000630004.pdf外部リンク

お問い合わせ先

川崎市経済労働局労働雇用部

住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地

電話: 044-200-2271

ファクス: 044-200-3598

メールアドレス: 28roudou@city.kawasaki.jp

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