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インタビューのあらすじ(テキスト情報)(2)

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慶應義塾大学医学部生理学教室 教授 医学博士 岡野 栄之氏

キング スカイフロント コンセプトビデオ ~インタビュー編(2)~

 

私は、2001年まで大阪大学の医学部の教授をしておりまして、そこで人の脳の幹細胞を世界に先駆けて見出しましたし、それを使って脊髄損傷やパーキンソン病などを治療する研究を始めました。

 

これまで霊長類の遺伝子改変動物による実験を全くできていなかったんですけど、実中研の佐々木えりか先生らと共同いたしまして、世界で初めてマーモセットを使った遺伝子改変動物を2009年にネイチャー誌に発表できました。その後、さまざまな神経難病のマーモセットをこの方法で作ることができまして、製薬企業の創薬のツールとして使われ始めている状況です。

 

私たちは実中研との共同で、遺伝子改変マーモセット技術を世界に先駆けて開発することができたわけですけど、それをさらに普及させるということが大事になりまして、いろいろな所に技術移転しています。日本のみならず世界中でこの技術を使えるようにしていく必要があり、実中研と慶応が開発したこの技術は十分に普及の可能性を持っていると思います。

 

パートナーシップが広がり、新たなパートナーがさらに新たなイノベーションを起こすでしょう。イノベーションというのは、このように一つの核が広がるものだと思っています。このイノベーションの輪を広げていきたいです。

 

治らない疾患はたくさんあります。それが5年や10年の研究で一気に治るほど世の中甘くないと思っております。しかし、完全に治ることはなくても、少しでも患者さんの生活の質を高め、あるいは少しでも長生きできるような治療法を開発することは非常に大事なことです。最初から不可能だと思って投げ出さずに、少しでもできることをやっていくことが重要だと思っていまして、そのようなスタンスで私は研究をやってまいりました。

 

やっと我々の基礎研究が、実際に患者さんの治療に役立つ射程距離に入ってきたと思っています。さらにいろんな形でiPS細胞を使った再生医療などを加速していきたいです。

 

iPS細胞のアドバンテージは手軽に作ることができることです。各個人のiPS細胞を非常に簡単に作成できます。

健康な人からでも、あるいは重い病気になった人からでも iPS細胞を作成して病気のメカニズムの研究ができます。こういうことはES細胞ではほとんど不可能ですので、そこは iPS細胞のアドバンテージを徹底的に使うべきと思います。

一方、再生医療に関しては、今のところはES細胞の研究蓄積のほうが若干まだ厚いので、iPS細胞を使って再生医療する研究者は、これまでの ES細胞研究でどのようなことが行われてきたかということを理解しながら、研究をデザインすることが重要と思っております。

 

再生医療の研究は、ここでやっていますように、一人一人研究者が手作業で培養しているわけです。ところがこれを起業して製品化する時には、このような家内工業的な手作業では製品化が難しい。作業全部が自動化するような機械が開発されて、均一な規格の iPS細胞というものを作ることができ、そこから心筋を作るとか心臓を作るとか膵臓を作る、というような研究が非常に重要になり、それぞれのプロセスがどんどん自動化されていくでしょう。そのシーズとなる「何を作るか」は我々が開発しなければなりませんが、それぞれのプロセスを大量に行うシステムが重要になった段階では、工学研究者、ものづくりの技術者といった人たちと組んでいくということが、今後 iPS細胞を使ったビジネスで必須なことだと思っています。そういう意味において、絶好の環境にここ(殿町)はあるのではないでしょうか。

 

羽田空港が近いという国際性があり、さらに実中研が移転し殿町がライフサイエンスのコアになるというイメージができたところに、特区として国に採択されました。この流れで、さまざまな研究所や企業が集まり始めています。一旦このような結晶ができ始めたら、それが核になってどんどんいろんなものが集まりつつあるということがいえると思います。今までバラバラだったものが一気に殿町に結集して、非常に効率よく共同研究ができる場ができるのではないかと期待しています。

 

今まで、1人の人間、1つの企業、あるいは1つの組織ではできなかったイノベーションを実現する大きなチャンスです。

 

いろんな意味でどんどんぶつかりあって衝突しあって、核融合を起こしていかなければならないと思っています。

 

私たち自身の研究だけではなくて、皆さんの研究を我々に取り入れ、我々の研究を皆さんの研究や更にはビジネスも取り入れることによって、全く新しいコンセプトやチームを、この川崎の殿町で作っていきたいと思っております。筑波、神戸など、研究都市・医療都市で成功した例はありますが、それとはまた違う、ユニークなまちづくりをしていきたいと思っております。

 

羽田も近いですし、さらに国際性を重要視したいし、より実践的な医療を提供できる地になればいいと思っております。

 

ここ川崎の殿町は、本当に大きなポテンシャルを持ったまちになると思っています。世界に革新的な医療、革新的な研究、ここから世界に発信していきたいと思っています。