インタビューのあらすじ(テキスト情報)(7)
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味の素株式会社 常務執行役員 研究開発企画部長 経営学修士 農学博士 尾道 一哉氏
キング スカイフロント コンセプトビデオ ~インタビュー編(7)~
もともと私どもの会社はアミノ酸を作ったり、それの機能を研究したりしていたので、動物の血液中のアミノ酸の濃度を測ってみたらどうだろうかということに着目した研究者がいて、じゃあ健康なネズミと少し病気になっているネズミで測ってみたらどうだろうといったところで結構大きな違いが見られて、ただ、それだけでは何だかよく分からなくて、そこを突き詰めていくうちに、ひょっとするとこういったものが健康状態を表すような指標になり得るのではないかというところからスタートしているんです。
人間の体の中でアミノ酸というのは非常に重要な役割をしていて、我々の体を構成しているたんぱく質、これが非常に主要な成分なんですが、それを構成している要素がアミノ酸です。人間の体は我々が生きていく上で代謝であるとかさまざまなことが起こっているんですが、そこには必ずアミノ酸が介在していて、それを経由して我々は生きているわけですけれども、そのアミノ酸レベルの変化に着目することによって、我々の健康状態であるとか、あるいはある種の病気であるとか、それらの診断であるとかに応用できるのではないかというアイデアがあって、それを試行する中で、そういったことが実際に可能であることがわかりました。人間の健康状態であるとか体の状態を表す、従来の健康診断とは全く異なるコンセプトの技術が、アミノインデックス®というものになります。
通常のアミノ酸測定方法では1つのサンプルで2時間ぐらいかかるので、1つの機械で1日に数件しか測れないのですが、10分以内で測れるような方法も我々は確立しましたし、その辺は機器メーカー、あるいは試薬メーカーなどと協働する中で、感度も数段高くしました。
ただ、アミノ酸をきちっと正確に測るには、ある程度状態のいい形で測る必要があり、そのまま血液中のサンプルを放っておくと、ある種の不安定なアミノ酸に影響が出たりするので、分析方法の確立で非常に難しい面がありました。
アミノ酸の場合は少し低温で保つ必要があるため、最初の実験のときは氷水の中にサンプルを入れて、氷冷する中で安定性を保ったりしていました。サンプルを通常の状態で何時間もほったらかしにしていると、どうしてもデータがぶれてしまいます。効率よくきちっと病院等でもサンプルが取れるように、サンプルを長時間安定的に低温状態で保管できるキューブクーラー®というデバイスを、神奈川県のネットワークを通じて知り合った、特徴的な技術を持っている中小企業さんと共同開発しました。このような経緯もある中で、このアミノインデックス技術が確立してきたという、さまざまな背景があります。
やはり川崎というのは、非常に「知」が集積している場所だと思うんですね。それから、東京近辺で日本の中心に位置していて、産学官の連携が非常に得やすいという地の利があります。実際にアミノインデックス®を開発した過程でも、ほとんどの臨床データを神奈川県内の大学や病院が中心になって取っていただきましたし、デバイスでも、神奈川県の中小企業のカノウ冷機さんという会社と協力して、新しいキューブクーラー®というデバイスを作っています。そういう面で地の利があると考えますね。
(キング スカイフロントへの)一番大きい期待は、異分野のものが融合した中から新しいものが生まれてくることです。さまざまな技術、機能が集まり、コーディネートされる中で、将来にわたって新しいものを生み出す力とか、原動力になるというのは期待感がありますね。
我々は食品やライフサイエンスを扱う企業ですが、川崎臨海部には、電機メーカー、機械メーカーなどさまざまな領域の企業がありますし、あるいは研究機能ということでも非常にとんがった専門領域を持った研究機関もございます。うまくコーディネートする中で、これまでなかったようなおもしろいもの、ユニークなものが出てくるチャンスがありますし、そういったものを世界に対して発信していくような可能性も大いにあると思います。
一企業人の立場を超えて、新しい大きな、世界の人々に役立つような技術や事業が作れたらうれしいです。そういうことを一緒にやっていきたい。1つ1つの企業ができることとか、私ができることは限られていると思うんですけれども、そういったものが集まる中で、この地域が世界に貢献できたら幸せなことだと思いますね。
新しいものを作っていくとき、既成概念にとらわれると、どうしても自分の領域でということで、可能性を最初から摘んでしまうところがあります。これまでの経験を持ち寄り、オープンな取り組みの中で、さまざまな違ったものが集まることで、ユニークなものができあがります。今、川崎・キングスカイフロントのような場を利用しながら、いろいろな世界と結びつく中で新しいものを作れたら本当にすばらしいことだと思いますし、そういうことができる環境にあると思うんですね。我々も頑張っていきたいと思います。一緒にやっていただける方がいるのであれば、ぜひ一緒にやらせていただきたいと思います。
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