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インタビューのあらすじ(テキスト情報)(6) 

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富士フイルム株式会社 取締役 常務執行役員 兼 富士フイルムホールディングス株式会社 取締役 戸田 雄三氏

キング スカイフロント コンセプトビデオ ~インタビュー編(6)~

 

フイルムというものがいわゆる事業として消えていく、デジタル化が新しく来るといったときに、フイルムという事業には寿命があると。これは致し方ない。どこの世界でも一緒。だけど、それを支えてきた技術に寿命はないはずだと。うまく発掘して、うまくその本質を磨き上げれば、ほかの分野で応用できるという、一つのそういう内的な要因というか危機感があったわけですね。

 

第2の創業として新しい事業領域を作らなければいけない。では、どこかに出ていかなければいけない、どこかで進化していかなければいけないということで、やるべきことを探した。

 

もともとフイルムというのは非常に微妙な、精密な、いわゆる化学の権化なんですね。フイルムは非常になじみのある製品ですけれども、あの中で行われている化学反応というのはとんでもなく精密で、ナノレベルのコントロールが必要な技術なので、これを何かに活かせないかと。例えば、フイルムを支える技術の一つとして有機合成の技術があります。ケミカル材料を合成する技術です。これは富士フイルムがオリジナルの材料を20万種持っている。フイルムですから、感光したり、フィルターの色素であったり、タンパク質と結合しやすい材料がたくさんあるわけですな。そういうものは医薬品にも使えるわけですね。医薬品とフイルムっていうのは、一見すると全く関係のない世界だけど、1つ2つ基盤技術や共通技術を並べると、親和性はあるわけですよ。

 

殿町は地理的な条件が非常にいいところ。これは神奈川県知事も言っており、僕らも思わず発した言葉は、出島にしようと。

 

出島はステージなんだ。舞台。だから、自分たちがそこで何か作ったという自己満足で終わるのではなく、それを世界に披露しなければいけないと。ショーケースだと。世界から殿町に来やすい。ここで、世界の人たちの目にさらしてもらいたい。

 

日本ではこんなことができるんだということを見せたい。

 

殿町は情報の発信と受信の基地であり、グローバルで先頭に立つための新しい基地。

 

だから、現代版出島というのがいいんじゃない?

 

それから、空の玄関、海の玄関に近いし、前に太平洋が開けているし、この絶好の好機を使わないと、後で後悔します。

 

自分たちが作ってきた財産というものを人に評価させるのではなくて、自分で評価しよう。自分自身が自分自身の価値を一番知っているんじゃないか。その価値を見つけたのならば、発掘したのならば、その価値を次の世代に「種」として、豆の木としてつないでいく義務や責任が僕らにはあるんじゃないのか。

 

例えばカメラを作っていて、ただカメラだけを見ていても、次の世代に残すようなエールにもならないし、形にもなりにくい。だけど、カメラを作っていると同時に信頼を作っていると考えると、カメラが支える理想や、本質的な意味に気が付く。これに気づいてから、我々の場合ですとフイルムに立ち戻ったとき、フイルム自身に求める理想像が全然違ってくるんですよね。そうすると、自分がやっていることをいつも反省するようになる。いつも俺はこれでいいのか、もっと楽しいことができるんじゃないか、もっと高いことができるんじゃないかと、そういう発想になってくる。

 

単なるモザイクではなくて、本当に溶け合う。混ざり合うだけじゃなくて、溶け合う。そうすると、今まで単独で持っていた機能がもっと響き合って、溶け合って、全く新しい宝石ができるか、金属ができるか。まさにそれは人の熱によるるつぼのイメージ。溶け合うためには相当熱を出さないと溶け合わない。

 

川崎に感じていて、もう一つ僕がやりたいことは、使命感だと思うんですね。このままの世の中でいいのか、次の世代に我々は何を残さなければいけないのか、日本として世界にどう貢献していくのか。ただ自分さえよければいいというのではなくて、人生一回しかないので、人に褒めてもらう必要はないけれども、自分が終焉を迎えるときによくやったと一言言ってあげたいじゃないですか。

 

自分たちの実現したい世界をなるべく人の力を借りてうまく実現しようという発想では、るつぼにならないですね。るつぼというのは、自分が実現したい世界よりももっと大きな、もっと高い、溶け合う結果ですから。るつぼにするには、殿町全体をマネジメントするプロデューサー機能が非常に重要だと思います。一人一人の参加者が、自分たちの関心も満足させながら、自分たち一人ではできないもっと大きなことも同時に実現できるように。

 

この殿町で何を実現するのかということ。次世代に引き継ぐ「種と土と風」のようなコンセプトが非常に重要かもしれない。