テキストページ2(令和5年度幸区防災講演会)
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令和5年度「幸区防災講演会」を実施しました

テーマ2「女性やお年寄りの視点からの防災」
私は東京大学生産技術研究所で研究を行っており、日本防災士会の本部理事の田中健一と申します。
特に、高齢者の方へ、お一人で生活されている方・女性の皆さま乳幼児をお抱えのお母様方、障害をお持ちの方々、そうした方々にいくつかの防災・減災の具体的なポイントを、自分で守る防災という視点からお話をしたいと思います。
私たちは、地震・洪水・土砂災害など、さまざまな自然災害のリスクに常にさらされています。
これらの災害は突然に起こり、私たちの生活に深刻な影響を与える可能性があります。災害に対する備えは私たちにとって非常に重要です。家庭や地域で具体的な防災計画を立てること、家具の固定や非常用品の備蓄、避難準備、今すぐできることから始めましょう。また、地域の防災計画策定に積極的に参加することが大切です。さらに、災害時の適切な心構えも重要です。自分が助かってこそ組織や地域を救うことができます。自助は共助につながります。しかし、共助は自助にはつながりません。そして、普段やっていないことはいざという時も出来ません。だからこそ、人や組織のネットワーク訓練やイメージトレーニングで実技を磨く最大限の災害への備え、応用力で備える。継続は力です。継続しないと力にはなりません。
災害発生時において、人命救助は最優先されるべき事項です。人命を守ることが災害の復旧・復興を加速させるという重要な点を強調しています。人が亡くなるとそうした悲劇はコミュニティに深い悲しみとトラウマをもたらし、復興を遅らせる可能性があります。しかし、人命が救われることで、コミュニティの士気が高まり、住民が協力して迅速な復旧・復興に取り組むことができるのです。人的資源の確保は復興プロセスにおいても非常に重要です。被災者が生存していれば、その地域の労働力が復旧・復興作業に貢献できます。
災害が起きた時に、被災者の方々に行政が行う対応を災害救助といいます。大きな災害が起きると人々はまず近くの学校や施設に避難します。この、逃げ込む場所がいわゆる避難所です。避難所では、炊き出しで食事が出されたり、水が配られたり、さまざまな支援が行われます。災害救助法を上手に活用し、救助の実を挙げた例は複数ございます。例えば、2007年の兵庫県佐用町での水害被害での被害者の長期間にわたる捜索活動、東日本大震災における木造仮設住宅の導入やみなし仮設住宅の積極的活用など過去の災害で得られた経験と教訓を巧みに生かして被害者を救ったケースは多々あります。創意工夫し、災害の状況に合わせ、現代社会に適応した使い方をすれば、災害救助法の本領が発揮され、人命や生活を救うことができるはずです。
災害時要援護者とは、災害が発生した際に一人で避難することが難しい人のことを指します。この中には、高齢者や障害をもつ方、妊産婦、乳幼児、外国人、また、災害でけがをして避難が困難な人も含まれます。過去の大規模災害では、避難所や地域のサポートにおいて、災害時要援護者の避難生活に差が出たと言われています。大規模な避難所では混乱が起き、個別の対応が難しかったり、十分なサポートが行き渡らなかったりすることがあります。そのため、川崎市では災害時要援護者避難支援制度を導入し、地域の支援組織に情報提供された方々の名簿を提供しています。地域の皆様が協力し合い、共助による避難支援体制を整えることも重要です。災害時には皆様のご協力が必要です。避難生活者、とくに災害時要援護者の安全と安心をまもるために地域の力を合わせて支えあいましょう。
過去の災害では、とくに高齢者の安全が大きな課題でした。これを受けて、2005年には避難準備情報が設けられましたが、更なる問題が露呈しました。2016年の台風10号での犠牲者を教訓に、避難準備・高齢者等避難開始へと名称が変更されました。そして、2021年、さらにわかりやすく高齢者等避難に改称され、避難情報は「高齢者等避難」、「避難指示」、「緊急安全確保」の3つに整理されました。これにより、対象者が明確だと避難情報の迅速化が図られ、高齢者や要援護者の安全が一層確保されるようになりました。
災害時の避難について考えてみましょう。災害が発生したら、私たちはどこに避難すればよいのでしょうか。災害が発生した場合、安全な場所に避難することが非常に重要です。避難先は、その災害の種類や状況によって異なります。地震や津波の場合は高台や堅固な建物への避難が必要です。洪水や土砂災害が予想される場合は安全な場所への避難が求められます。避難する際には、速やかに情報収集し、地域の避難ルートや避難所の場所を確認しましょう。家族や近隣住民と連携し、助け合いながら安全な場所へと移動しましょう。
東日本大震災時、女性たちが経験した困難について、彼女たちの声を通じてご紹介いたします。震災時、多くの女性たちは日常生活の中で、特有の困難に直面しました。例えば、シングルマザーは、物資を受け取る際に小さな子供たちを連れていく必要があります。非常に大変だったと言われています。また、避難所の威圧的な空気の中で女性や立場の弱い人々が自分の要望を出したり発言したりすることが困難でした。さらに、シングルマザーの一人は、車と仕事を流され、失業保険の延長を受けても生活するのが難しかったと話しています。そして、若い女性たちは生理用品の不足に苦しみ、代わりにトイレットペーパーを使用するしかなかったとも述べています。これらの声は、東日本大震災における支援活動の経験に関する調査や東日本大震災被災地の若年女性調査と提言などの報告から収集されました。このような実体験に基づく声は、災害時の支援活動において、女性のニーズに注意を払い、より敏感で包括的な対応をする重要性を示しています。
インクルーシブな防災
災害時には、障害のある方や高齢者を含め、誰もが取り残されることなく、あらゆる人を受け入れるという考え方が重要です。我々は、災害時、地域の避難所で配慮が必要な人々をどのようにみまもり、支えるのかを考える必要があります。とくに、コロナ禍ではこのようなインクルーシブな防災の実現が難しい状況がありました。しかし、事前に地域で、障害のある方や高齢の方とともに防災訓練や避難行動の支援計画を策定し、災害時に必要な支援について相談をできる関係を築いておくことが大変重要です。
非常時におけるお互いの人権を尊重するためには、たくさんの課題があるということを認識し、こうした災害時こそ、周囲の人との助け合いや、お互いへの思いやりが重要となるのです。災害というものは、非日常の世界です。
お問い合わせ先
川崎市幸区役所危機管理担当
住所: 〒212-8570 川崎市幸区戸手本町1丁目11番地1
電話: 044-556-6610
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