令和5年度幸区こども・子育て講演会「子どもの貧困について考えよう」テキスト情報
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【本編】子どもの貧困について考えよう ~子どもを取り巻く複合的な課題と子どもの居場所の役割~ テキストページ
○講師(今井久子先生)
Zoomがありますので、マイクに近づいてお話しさせていただきます。
今日寒い中、皆様お越しいただきまして本当にありがとうございます。認定NPO法人キッズドアの今井と申します。
私の自己紹介につきましては、チラシを御覧いただければと思います。
私も今日皆様にお話はしますけれども、実践家として、現に、何でしょう、こどもの課題と向かい合いながら、模索しながら、やっている存在です。ですから、皆様に何かお教えするというよりは、一緒に考えていきましょうというスタイルで今日お話しさせていただこうと思っています。
認定NPO法人に入りましたのは、私も公務員で仕事しておりまして、定年退職した後です。チラシを御覧になっていただいて、計算すると年齢が分かるかなと思うんですが、今日は割愛させていただきます。
それでは、資料を共有させていただきます。
映っていますね、よかったです。
今日は幸区様から、こどもの貧困について考えようというテーマをいただいております。貧困と社会課題について、これから皆さんと一緒に見ていきたいなと思っています。
Zoomのほうですか。
大丈夫ですか。うまくいったようです。
今日の流れについてちょっとお話しします。
まず、こどもの貧困、あとそれから孤立した子育て、虐待など、こどもに関する社会課題というのは非常に拡大しています。こどもが置かれている社会課題の全ての出来事の発端が貧困であるということではありません。経済的困窮がこどもたちが置かれている社会課題と結びつきやすく、また一旦そうなったときに、そこから復帰する、あるいは改善する選択肢が非常に狭くなってしまうという特徴がございます。
こどもをめぐる社会の問題や課題への対策は、少子化が非常に進む日本ですけれども、だからこそ、こどもを大切に育てられる社会をどうつくっていくのか。こういうことは国がやることなんだよねと言って、こども家庭庁とかもできましたが、国の対策が成果を上げるまで待つことはできないですよね。こどもたちは日々成長していきます。私たちにできることとして、この講演の最後に、地域に第3のこどもの居場所をつくりましょうという提案をさせていただきます。
それでは、こどもの貧困について、私どもの法人でつくったビデオがございます。別に手を抜いているわけではなくて、とてもコンパクトにまとめられていますので、それをちょっと御覧いただきたいと思っています。ここは誰が話しても同じ中身ですので、そのビデオの前に、失礼ですけれども、認定NPO法人キッズドアってこんなところですよという紹介のスライドもついておりますので、それも併せて御覧ください。
「こどもから未来を開こう。キッズドア。こどもの貧困と学習支援。この動画では、こどもの貧困と学習支援について、4つのパートに分けてお話をしていきます。
まず初めにキッズドアの活動内容の御紹介、次に日本のこどもの貧困について、そして、特に深刻なひとり親家庭の問題について、最後に教育格差の原因について見ていきます。
キッズドアの活動内容の御紹介。全てのこどもが夢や希望を持てる社会の実現というビジョンの下、小学生から高校生、若者まで幅広い層への無料学習会の運営を中心に、居場所支援、社会課題に対する啓発活動や政策提言、地方創生まで多岐にわたって活動しています。
キッズドアは、こどもの貧困問題の解決に向けて、教育を軸にアプローチするNPOです。生まれてきた環境や災害によって、こどもたちの将来の夢や希望に不平等が生じる社会はおかしい。貧困などの困難な環境にあるこどもたちにも、フェアなチャンスのある社会システムをつくりたいという思いから、キッズドアは2007年に設立されました。
こちらは貧困の連鎖を表した図です。
親の収入が少ないということから、こどもたちが十分な教育が受けられず、もし進学を諦めてしまったら、その後の就職にも不利になってしまいます。その結果、収入の高い職に就くことができなければ、そのこどもたちもまた貧困の問題を抱えてしまいます。貧困状態の家庭のこどもの学習を支援し、自分が希望した進路に進むことで、彼らが貧困状態を脱し、貧困の連鎖を断ち切ることを目的として、学習支援を行っています。
キッズドアの学習支援の特色は、主に3つあります。1つ目は、一人一人のペースに合わせた寄り添い型の学習支援、2つ目は、居場所型、通塾型、訪問型、オンライン型などの多種多様な学習会の形態、3つ目は、学習だけではないさまざまな体験や機会の提供です。
学習支援といっても、ただ勉強を教えるだけでなく、親や先生以外の大人と出会うことで、新しい価値観を得たり、悩みや不安を一緒に考えることで、困難を乗り越えたり、家庭や学校だけでは経験できないような体験活動を通して成長できる場となるよう、多方面からサポートしています。
それでは、なぜこのような活動が今必要なのでしょうか。背景にある日本のこどもの貧困について見ていきましょう。
こどもの貧困とは、こどもが経済的困窮の環境に置かれることで、発達の諸段階におけるさまざまな機会が奪われた結果、人生全体に影響をもたらすほどの深刻な不利を負ってしまうことを指します。この経済的困窮が問題の中心にあり、さまざまな不利と結びついてしまうのです。
この図が示すように、家にお金がないということが、経済的な次元を超え、衣食住や健康面、親の心理面、学習環境、体験などのさまざまな面に影響を及ぼします。このような複合的な不利がこどもの可能性を奪っていってしまいます。
貧困の影響は、個人間で見たときには複合的な不利が課題となりますが、世代間で見たときには連鎖が課題となります。特に学習・教育機会の制約が原因となって、貧困の連鎖が続いてしまうのです。
次に、貧困率について見ていきましょう。
貧困率とは、ある社会や国の人口全体の中で、貧困と定義される人口が占める比率のことをいいます。一般的には所得を指標とし、その中のある所得水準を貧困線と設定します。その貧困線に満たない所得の人口の比率を貧困率としています。現在採用している基準は、所得分布の中央値の50%を貧困線としています。2019年の調査では、貧困線は127万円となっており、世帯人数で調整すると、2人世帯で180万円、3人世帯で220万円、4人世帯で254万円となっています。
次に、相対的貧困率について見ていきましょう。
初めに、貧困には絶対的貧困と相対的貧困という2つの観点があります。絶対的貧困というのは、食べるものがなくて飢える、着る服がない、住居がないなどの生理的水準の観点から必要を欠いた状態で、生存できるかどうかに近い貧困です。
そして、日本で起こっている貧困は相対的貧困に当たり、見えにくい貧困と呼ばれています。お金がなくて修学旅行に行けないなど、社会的、相対的に定義されるような必要を欠く状態で、社会参加の機会が損失するような貧困です。これは、絶対的貧困と相対的貧困のどちらのほうが深刻であるということではありません。先ほど御紹介した日本の貧困線127万円というのは、そのお金があれば必要最低限の生活ができるという意味を持つものではないのです。
それでは次に、日本の相対的貧困率を確認してみましょう。
現在の日本では、こどもの貧困率は13.5%となっており、実に7人に1人のこどもが貧困状態にあります。2012年の16.3%と比べると改善傾向にありますが、依然として厳しい状況です。
こちらは、一番所得の低い世帯のこどもと標準的な世帯のこどもの所得の格差を表す相対的所得ギャップを示した図です。この所得ギャップが小さい国では貧困率が低くなる傾向があり、例えばノルウェーやフィンランドなどは上位に位置していますが、日本はギャップの大きい下位のグループに位置しています。このことは、貧困の深さを表しているとも言え、日本は最貧困層のこどもたちが取り残されかねないような社会であると言えます。
それでは、実際にキッズドアに通うこどもたちはどのような状況でしょうか。
学習会に遅れて到着してある子は、親の代わりに小学生の妹にお昼ご飯を作っていたことが理由だったり、自分が行ける高校なんてないと諦めていたある子は、志望校が見つかってうれしくても学費の心配が拭えなかったり、塾では当たり前の模擬試験も、ある子にとっては全く聞いたことのないものだったり、学習会でうれしかったことが、物がもらえる、クーラーがついているということだったりします。
このように、データに基づく事実のほかにも、日々の活動を通して見えてくるこどもたちの状況には、私たちが思いもしないようなことがたくさんあることが分かります。
次は、特に厳しい状況にあるひとり親家庭の問題についてお話ししていきます。
こちらのグラフは、こどもがいる現役世帯の相対的貧困率を表したものです。日本のひとり親家庭の貧困率は特に高く、48.1%にも上ります。ひとり親家庭のおよそ半数の家庭が貧困に陥ってしまっており、非常に厳しい状況であることが分かります。このことは、OECD加盟国の中で比較すると、さらに顕著に表れます。このグラフの中で、日本は一番右端にあり、ひとり親家庭の貧困率が世界で見ても最も厳しいことが分かります。
さらに、こちらのグラフでは、母子世帯の就業率とひとり親世帯の相対的貧困率をOECD加盟国の中で比較しています。普通は、デンマークのように就業率が高ければ貧困率は下がるものですが、日本の場合は、就業率は高いにもかかわらず、貧困率も高い状況になっています。
このように、日本のひとり親は働いているにもかかわらず貧困率が高い状況を見ると、こどもの貧困は自己責任ではなく、社会構造の欠陥がつくり出していると言えるでしょう。
それでは、なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。
日本の母子家庭の皆さんは就業率81.8%と、多くの方が働いているにもかかわらず、その収入は平均200万円と、低い傾向にあります。これには、その約半数の方々がパートやアルバイトなどの非正規雇用で生計を立てていることが影響していると言えます。同じひとり親の父子家庭と比べてみると、男女で収入に差があることも分かります。
こちらのグラフは、こども・子育てに関する公的支出のOECD平均を示したグラフです。そして、こちらのグラフは、教育機関に対する総支出のOECD平均を示しています。日本は、このどちらの場合も、OECD加盟国と比較しても平均以下となっており、このことから、日本は子育てや教育に対する公的支出が十分ではない国であると言えます。
それでは、日本が取っている政策効果はどれほどあるのでしょうか。日本の所得格差は、OECD平均よりも高い水準になっています。以前は所得再分配効果が弱く、OECD加盟国の中で唯一、再分配によって貧困率が上昇してしまう状況にありました。現在は改善されてきてはいるものの、いまだ十分ではありません。
現在の日本の所得再分配には、労働年齢層への社会保障給付が少ない、税による再分配が小さい、家族政策支出が少ないという特徴があり、こどものいる世帯の貧困率が改善されにくい現状があります。ただし、近年では給付型の奨学金や高校・大学の授業料の減免などの施策も増えてきており、こども世帯へのさらなる対策が期待されます。
また、少し目線を変えてみると、こどもの貧困対策は、福祉ではなく投資だという見方もできます。もし1人のこどもが高校に進学できずにフリーターとなり、生活保護を受給した場合は経済的損失が起こりますが、そのこどもが学習支援を受けることで、高校を卒業し高等教育を受け、中小企業の正社員となることで、貧困の連鎖から救うことができた場合は、結果的に、国にとっても大きなプラスになると言えます。1人を連鎖から救うことが国にとっても大きなプラスになるのです。
これまで、さまざまな面からこどもの貧困がもたらす課題や原因を見てきましたが、今、私たちの社会にある生きづらさの中心にこの経済的困窮が隠れているとしたら、スマホを持っている子は貧困ではない、きれいな服を来ている子は貧困ではないと言い切れるでしょうか。スーパーで働いている高校生は、バイト代を家族の食費に充てているかもしれないし、夜中にコンビニの前にいる少女は、安心して帰れる居場所がないのかもしれません。このように、私たちはこれまでの常識やステレオタイプを捨てて、とにかく目を向ける、気づくことが大切です。
こどもから未来を開こう。キッズドア。」
○講師(今井久子先生)
失礼いたしました。
今、ビデオを見ていただきましたが、大きくまとまっておりまして、つまり、日本の構造的な、社会構造的な問題であると、こどもの貧困が社会構造的な問題であるということは御理解いただけたかなというふうに思います。
ここにも経済的困窮による複合的不利というふうに書いてありますが、こういった社会の中で生きづらさを感じているこどもたちが非常に多いということになります。こどもの衣食住、健康面、あと親の心理面、あと学習環境など、さまざまな面で影響が出ているということが、今回のビデオで御覧いただいて、御理解いただけたかと思います。
それでは、この複合的な不利がこどもの可能性を奪っているということをもう少し詳しく見てみようというふうに思います。
これ、先ほどビデオの中でも図がありましたが、ちょっと少し詳しく見てみますね。
困窮世帯のここが真ん中にありますが、やはりお金がないので衣食住も平均以下になるだろう。あとそれから健康面、何でしょう、困窮世帯のこどもはやせているというばかりではなくて、いや、全然また反対なんですね。炭水化物の摂取量が多く、特にジュースだとかお菓子だとか、手軽におなかがいっぱいになるものでおなかを満たしている。お肉は買えないけれども、お米を買ってふりかけでご飯を食べられるということを考えると、こどもの糖尿病の率が非常に高いです。
足立区で、こどもの健康面での調査がございまして、足立区はこどもの糖尿病の罹患率が高い。足立区といいますと、東京23区の中でも貧困層が結構多い区ですので、そういったところも比例しているというふうに思います。
それから、ここにある孤立、やはり地域のコミュニティですとか、いろいろな付き合いですとか、そういったところも低減される。あと、それからこのビデオのもう3番目とか4番目に学力との関係というのもあるんですが、今日は時間の関係で割愛させていただきましたが、ここに低学力というのがありますが、親の収入とこどもの学力が比例しているということはさまざまなデータで出ております。東大に入学したこどもの親の平均年収は1,000万以上というようなことになっております。
それから、意図的ではなくても、ネグレクト、不適切な養育の状態に置かれているこどもも多いということです。親がダブルワーク、トリプルワークなどをして、なかなかこどもの面倒を見てあげられないということで、結果的に不適切な養育になってしまったり、また、親が非常にストレスを抱えて、こどもに当たってしまったりということも、現象として出ています。こういったさまざまな要因があります。
そして、これらの複合的な要因というのは、1つだけではなく、絡み合っているということが特徴です。そしてまたそれぞれの要因がここにあります、児童虐待、いじめ、暴力、非行、外国ルーツとか、こういったこどもの社会課題等が複合的に存在していて、それらの複合課題がまたそこで単一ではない、例えば貧困と不登校ということを1つ例に挙げてみたいんですけれども、行政がぼちぼち始めております不登校のこどもの居場所づくりというのもありますし、キッズドアでも、そうですね、2教室受託しております。
ただ、やはり民間のフリースクール、通うにはすごくお金がかかります。そうすると、家に引き籠もっているという状態になったり、また大学の医学部とか理工系に行きたいけれども、すごくお金がかかるので断念したり、文系のほうに方向転換したりということはままあります。
それと、あと私が実際に出会ったお子さんで、そうですね、高校生なんですけれども、夜、親が帰ってこない。帰ってこないというか、夜仕事をしているんですね。寂しさのあまり、高校生といえども、高校1年生ぐらいですと一人で寂しいわけです。それで、外をうろうろしていて、非行の仲間に入ってしまったという子もいます。
そうした、こういう社会の中で、私たちため息ばかりついていられないので、とにかくこどもに皆さん関心を持ってくださいということを今日お伝えしたいと思います。こどもに関心を持つ社会をどうつくっていくのか。そして、その根底には、やはりこどもたちが決して幸福とは言えない状況に置かれているんだという認識を持っていただければというふうに思います。
これから少しずつちょっと皆さんと考えていきたいと思います。
まず、ちょっと遊びというものをここで取り上げてみたんですが、皆さんこどもたちはどこで遊んでいると思われますか。私みたいな高齢者が言うのはあれですけれども、もう、私自身も小さいときは、友達と町の中を駆けずり回って遊んでいたり、鬼ごっこで、鬼ごっこするといっても公園とかではなくて、よそのうちの庭に入り込んで隠れていたりなんてことあるんですが、そんなことはもう既に幻想となっておりまして、外で、本当に外でこどもの姿を見かけないと思いませんか。それで、こどもたちはどうしているのかということですね。
その前に、遊び、何で私が遊びを取り上げたかということなんですけれども、こどもが育つ3要素というふうに今ここに書いてあります。この中で、皆さんどれが一番大切だと思われますか。もちろん食べることは、生命の維持とこどもの心身の発達の基盤ですからまず一番ですよね。給食が一日の食事、食事の中で唯一給食だけという子もいるわけです。これ、かなりちょっとセンセーショナルなニュースにもコロナ禍でなったと思います。学校が休校になったときに、こどもたちの食生活がすごく貧弱になっている家庭が多いというようなニュースもあったと思います。給食が一日で唯一の食事になっているこどもとか、夏休み明けはこどもがやせているという報告も実際にあります。
私も、コロナ禍で学習教室も閉鎖になったときに、そういうこどもたちの状況もあったので、週1回ですけれども、教室の生徒の家庭にお昼のお弁当を配るという活動を始めたりしました。
食事の件はこれ、まだまだ話せばたくさんあるんですけれども、じゃ食事の次に大切なのはと聞かれたら、きっと皆さん学習というふうにお答えになるというふうに思うんですね。でも、私は、遊びの重要性に着目しています。
時代的な環境の変化で、今申し上げましたように児童館とか、何か公民館の中のこどもの遊び場とかというのも随分高度経済成長期に増えたと思いますが、公園も整備されました。でもどうでしょう。そこで、こどもが本来の遊びが保障されている場所だと思いますか。何か禁止事項ばかりで、本当にこどもが豊かに遊べていると言えるのかなという疑問を持っています。
こどもが育つ3要素で、この5つ、これ全部遊びの中で自然にこどもが獲得できるんですね。臨機応変な問題解決力。そうですよね、一緒に遊びながら、何かあったらこうしよう、ああしようと自然にこどもたちが考えて行動していくわけです。
そして、今度何して遊ぼうかな、想像力とか、あと夢見る力、こんなことしたいなとか、あともちろん友達同士ですからコミュニケーション力、そして、あそこのお寺の塀に上っちゃうぞとかと、すごい行動力とか、それには、親、大人が見ていない時間にしようという計画力も大切です。遊びって本当にこどもを育てる基盤なんですね。
ですから、今こどもたちが非常に脆弱になっている一つの要因ではないかというふうに思っています。
これ実際にデータなんですけれども、放課後どこで遊ぶんでしょうかというちょっと小学生バージョンを調べてみましたら、やっぱり80%以上が家の中、あと公園、運動場という子もまだ小学生ではいますけれども、あとその他のところですとゲームセンターとか、あと、みんな屋内ということになっています。これじゃなかなかこどもの姿を見ないだろうなと。あと、公園で遊んでいるこどもたちに私、出会ったことあるんですけれども、元気よく遊んでいるというよりは、公園のベンチにお互い座ってゲームをやっていました。
あと、こちらですけれども、ここ新しい遊び場でしょうか。これ何だか分かりますか。なぜ集まるのかと書いてありますけれども、トー横キッズと言われている子たちが今新宿の歌舞伎町にたくさん集まってきている。家に居場所がないこども、不登校のこどもがよく来るということを、この地域でこどもの活動している人が話していました。トー横キッズと言われている中高生で、中には小学生もいると聞いています。実は私、この講演会が終わりましたら、新宿の歌舞伎町に行く予定なんですね。そこでこども食堂をやっている方がいまして、その方をちょっと訪ねて、どんな状況なのかを見てくるつもりでいます。
地域のつながりも失われている今、親や家庭に頼れないこどもたちは、あらゆる社会の資源や教育、愛情などから孤立しやすい状況があります。一体何をここにこどもたちが求めてやってきているのか。70人ぐらい歌舞伎町のこども食堂にこどもたちが毎回来るようなので、十分話を聞いてきたいというふうに思っています。
続いて、不登校のお子さんについてちょっと見てみたいと思います。
皆さんの身近なところで、隣のおうちの何々君はこの頃学校に行ってないね、なんていうようなお子さんいますか。恐らく気がついている方いらっしゃると思うんですね。もしここに民生児童委員さんとかいらっしゃったら、もしかして、登校促しのお手伝いをされていたりとかという方もいるかもしれません。
ここの表題の下に書いてあるように、不登校が一番新しい数字ですね、昨年度29万9,048人で過去最多ということで、注目すべきは、ここなんですね。前年比が22%という、すごいですよね。特に最近、小学生の不登校が増えています。
どうして不登校になるんでしょう。不登校の定義は、ここに書いてありますように、30日以上の長期欠席者ですから、登校渋りで学校行ったり行かなかったりなんかあった、また学校に行っても教室に入れないで、学校は行っているけれども保健室登校とか別室登校というようなお子さんは含まれておりません。
これは文科省の調査なんですけれども、1位は本人の無気力・不安というふうに書いてあります。2位が生活リズムの乱れ、3位がいじめを省く友人関係ということで、上位3個並んでいます。
要因として最も少ないのがいじめだというふうには書いてあります。あと学業不振というのが高校では6.2%、中学校6.2%ということです。
これが文科省の調査ですね。文科省の調査というのは、こどもにアンケートを取って書いてもらう数字ですね。そこをちょっと押さえておいていただきたいんですが。文科省に怒られちゃうんですけれども、私は不登校の原因探しに意味がないというふうにがっつりここに書かせていただきました。
こどもが、学校の調査ですので答えた結果ですから、先ほどのは。私がここに加えてほしいのは、先生が嫌いという調査項目もないじゃないですか。授業が分かりにくいとか、英語の先生は大嫌いだとか、あと小学校1年生の子でも、入った途端に、もう先生に、なかなか小さいと、小学生ですと自分の意思をうまく伝えられないで頭ごなしに怒られてしまったりする、それだけでも学校に行かれなくなってしまったという小学生もいるぐらいですから。ただこの学校の調査ですから、学校で質問票に書いてもらったものですから、そこらはちょっと、そういう状態でアンケートを取った結果だなというふうに思っていただければと思います。
まず、ここにちょっと書きましたが、こどもが学校に行けなくなる理由に、明確な理由なんていうのはなかなかないんですよ。学校に行きたがらないこどもが、友達が嫌だと答えた場合、さっきの順位ですと、いじめを省く友達関係に当てはまるんですね。
でも、その根っこには、例えば友達に着ているものでからかわれたとか、友達と同じものを持っていなかったとか、友達と一緒に遊びに出かける交通費がなくて行かれなかったとか、いろいろあるんですよ。
不登校の最大の要因となっている、ここに書いてある本人の無気力・不安というのがありましたじゃない、第1の。あの原因は、私は、何かあの調査を見ると本人が何かやる気がなくて怠け者でみたいな捉え方をされると、すごく困るんですね。私は実際に不登校の子と話してみて、いろいろな原因の結果そうなっているんですよ。
だから、何々があった結果、無気力になってしまった。何々があった結果、やる気がなくなってしまった。だから、アンケートでは1位が無気力となっていますけれども、その結果、その何々のところは表れていないですね。
このように、原因というのは1つではなく、ここもいろんなことがかみ合わさっていると認識をしていただいて、原因探しに全く意味がありませんということをお話ししたいです。
じゃどうするのか。それを考える基盤というのが、ここに書いてあります3つの法律にあります。一番上が児童福祉法です。児童福祉法は全てのこどもに関する法律の基盤になっています。この児童福祉法の改正によって、一番最初の第1条ですか、児童はこどもの権利条約の精神にのっとりというようなことがたしか書いてあったと思います。ちょっと皆さんも、皆御覧になって、全て児童は児童の権利に関する条例の精神にのっとり云々かんぬんから始まるんですね。
これ平成29年にたしか改正されたときに、これ入れられたんですが、このとき私はものすごく画期的なことだというふうに思った。こどもが人間としてやっぱり一番、大人と同じ人間として扱われるということが法律に明記されたわけですから。あと、つい最近ですと、22年の6月にこども家庭庁ができまして、こども基本法というのが、このこども基本法も、こどもの権利条約の精神を基に4つの何でしょう、事柄で成っております。あとそれから、東京都もそれに基づいてこども基本条例とかをつくりました。
とにかく、それで一番大切なのは、大切というか一番不登校の子を考える上で重要なのは、この義務教育の段階における、普通教育に相当する教育機会の確保法というのがありまして、ちょっと待ってください、この法律によって、今までは全てのこどもが、不登校のこどもが本当に学校に戻ることがベスト、学校にどうやって戻そうかという対策が多かったんですけれども、今ではここに書きましたオンライン授業であり、フリースクールであれ、いろいろな学び方をこどもが行き来できるような仕組みが求められていますということで、まず学校に代わる第3の居場所というようなところもこどもの居場所として認められてきているということで、この法律によって、大分不登校のこどもたちへの対応が変わってきています。
何しろ、おうちで引き籠もっているよりは、どこにかの社会の関係性の中にいて、そこで学びが保障できればいいじゃないかと。それで、ここにキッズポートってどんなところというスライドに載っていますけれども、このキッズポートというのが、キッズドアが受託している不登校対策の場所の名前なんですね。ここに、上のほうに、自分のペースでできる。一人一人に合わせて学習サポートしてもらえる。いつでも温かいスタッフが待っているよというようなことですとか、スタッフとたくさん話せる。いろんなことに、勉強だけじゃないいろんなことに挑戦できるというような特徴を持たせています。
実を言いますと、ここ、この4つ書いてありますけれども、私たちも本当手探りで、どうやって向かい合ったらいいんだろうというところから始めていたんですね。不登校の子は、もちろん家にいるので非常に体力がないんですよ、みんなインドア派なので。もう近くの公園に遊びに行こうと言っても、たった10分ぐらい歩いただけで次の日筋肉痛になったという中学1年生の女の子がいたので、私は本当に驚きましたけれども、そんなところから出発しています。
それで、そのこどもたちといろいろ話していく中で、みんな自分に自信がなかったですね。自分なんか消えちゃったほうがいいとか、もう自分なんか、本当にもう何か鏡で顔を見ると嫌だみたいな子もいました。
ここは、先ほどのキッズポートの状態なんですけれども、不登校支援。ここにこどもの変化を少し追っています。この図なんですけれども、最初キッズポートに来たときは、これまでの自分が嫌いな子が、キッズポートに来ることで、自分って何かいいじゃん、こんなことできる自分もいいじゃん、なかなか、例えば遊び1つでも何でも褒められるわけですよ。ゲームでいろんなこと、キャラクターの名前全部言えるみたいなところでも。嫌いだった自分がまず好きになる、ここから出発します。
自分らしくしていても、大人とお話もできるし、周りのこどもとも何か一緒にやれているねという実感を持って、そうすると、ここまで来るとこどもというのはすごく力があります。次にやっぱり何かやることを見つけてくるんですね。高校へ行ってみたいという言葉が出れば、中学3年生になると高校進学のためのサポートをします。不登校ですから、東京ですと、川崎市は、神奈川県はちょっと事情はよく分かりませんが、東京都はものすごくたくさんチャレンジスクールというのがあるんですね。面接と作文で入れます。ですから、不登校によって教科学習ができなくても、しっかり自分の意見を面接で言う練習をしたり、作文を書く練習をしたりすると入れます。高校に入って学び直しをするんですね。
1年間は中学の教科書から始まり、今はいろいろアプリとかを使いながら、もう復習してやっているのを見せてもらいましたから、そこのチャレンジ校に行っている子に。本当にちゃんと学校行けれているんだねと驚きましたけれども。
あともう一つここに大切なのが、折り合いをつけられる。例えば、ちょっと困難なこととか、嫌な、自分と合わない人がいても、その人はそういう性格なんだと。自分とは違うんだ、だけれども、ここで一緒にやっていくことは価値があるというふうに思えるようになるんですよ。今まで自分が非常に虐げられているというか、自分が認められない状態の中で相手を認めることもできないですが、自分に自信がついてくると人との折り合いがつけられる、こうして社会に出していってあげると、すごくこどもは成長していきます。
続いてヤングケアラーについてです。
ここの講演会でも、何か前に取り上げたということなので、今日は説明は省かせていただきます。ただ非常に特徴的なのは、家庭内の出来事として気づきにくいということですね。
こどもたちの声を聞くシステムと、独りにしない取組をというふうに書いてあります。まだまだこのヤングケアラーの問題というのは非常に対応が難しいです。でも、行政ですとか公的機関がやることで一番大切なのは調査。これを調査をやる自治体がすごく増えてきまして、調査をやると、うちの自治体にもある一定数いるなということが分かります。そうすると、相談窓口の設置、それからこの調査をやるというのは大体学校を通してやることが多いので、学校の先生たちの認識も深まります。
相談窓口ができてケースを拾うことができれば、他機関と連携し、そして、同じヤングケアラー同士のピアサポートもできますし、そして、当事者がエンパワーメント、つまり力をつけていくと、自分はこういう状態に置かれていても、話を聞いてくれる人がいるんだとか応援してくれる人がいるんだということになると、今度、今までは当事者が声を上げているということも始まっています。
下の図は、これ厚生労働省において文科省と連携して行われたヤングケアラーの実態に関する調査研究というのを日本財団がまとめたものを、そこから拝借したんですけれども、調査をしたこどもたちで、一体何歳ぐらいからヤングケアラーとして始まっていますかというと大体平均して9.9歳ですね。ここ、中学生、高校生といますが、全日制高校生の中の自分がヤングケアラーだと答えた子の中で一番多かったのは、家計を支えるためにアルバイトをしているというのが64.5%、ヤングケアラーの中で、兄弟の世話とか、あと親の世話とかおばあちゃんの世話とかというものよりも、これが一番多かったということにちょっと着目していただきたいと思います。
あと、こちら2つ、Dさん、Yさんですけれども、これ私が実際にこの子たちが中学のときに関わった、今でいうヤングケアラーのこどもです。そのときはまだヤングケアラーという言葉はなかったので、この子たちがヤングケアラーというふうには、そういうカテゴリーでくくってはいませんでしたが、親の、家庭の生活を支えるために、学習時間が奪われたり遊ぶ時間が奪われているというこどもというふうに認識をしておりました。
このD君ですけれども、ひとり親家庭で生活保護を受けていました。ひとり親家庭ですが、親は鬱病で働けません。お姉ちゃんもいましたけれども、お姉ちゃんも鬱病で働けません。兄弟2人が中学生だったんですけれども、代わりばんこに夕食を作ったり、あといろいろ洗濯をしたり掃除をしたりしていました。無料学習会も、だから毎日は来られないんですね。中学2年生のお兄ちゃんを先たくさん行かせると、お母さんが受験、中学になって高校行かなきゃいけないからということで、弟は最初少しだけしか来られなかったり。でも、お兄ちゃんが中学3年になって今度、勉強が忙しくなると、弟が今度は家事を担ったりして。
一番覚えているのが、何かイベントがあったんですよ、教室で。そのときに、なかなか来ないので、時間に来ないなと思っていたら、何と夏の暑いときにお米30キロ、だから15キロずつだったのかどうか分からないですけれども、お母さんに精米してくるように言われ、何か田舎から送ってきたらしいんですね。何もそのイベントのときにと思いましたけれども、そんな一遍にね、えっ、この暑いのにこんな俵かついでと、もう本当にそのときに、いやあ、この子たちがどういうことを家の中で役割として担っているんだろうということで、改めて私も本当に愕然としましたが、今ではこのいわゆるチャレンジ校に2人とも進学していまして、お兄ちゃんのほうは卒業しました。
Yさんですけれども、ここのうちは本当に大変で、ここの方も生活保護の家庭の子だったんですけれども、ここに来るまでの間、母親も親の愛情をきちんと受けて育ってきた親ではないので、本当にお母さんも、何でしょう、お母さんを褒めてあげるとすごく喜ぶお母さんでした。自分が受け入れられたいということがすごく強くて。このお姉ちゃんがもう全部家事一切やっていまして、買物から、あとこの子も生活保護だったんですけれども、福祉事務所に医療券取りに行ったりするということもこの子がやっていて、お母さんはほとんどそのケースワーカーさん大嫌いで全然つながっていなかったので、私、この子と一緒に福祉事務所に行ったこともあります。
この子は、ここに書いてあるように、お母さんがヘビースモーカーで、こどもたちの服にたばこの臭いがすごかったんですね。学習会に来たとき本当にえっと思うぐらいで、コートを脱いでかけたのはいいんですけれども、すごい臭いでした。
でも、こども同士というのは優しいんですね。誰もそのことは言わずに、こっちでトランプやっているから入る?、と初めての彼女に声かけたりしていて、ああ、この子たちすごいと思いました。
本当にそういう状態の中で、結局、母親が病気が悪化して、一回は児童養護施設に入るというようなことになって、この子は家庭復帰はちょっと難しかったのであれですね、児童養護施設を出て、それからグループホームに入って、高校はそこから通っていました。今、専門学校に行っています。
これ何か話すと、ずっとこれ話したくなってしまうので、ちょっと、こういう子ですね。ヤングケアラーという言葉はそのときの、本当にさっきも言いましたけれども、なかったんですが、やっぱりこどもらしい時間を持てないということが一番大変なことだなというふうに思いますので、無料学習会につながったということで、この子にここに来るために、すごく親にお願いしました。ここに来ることで、こういうこの子の、何でしょう、いいところが伸びてきてとか、あとお母さんも少しゆっくりできるよねみたいな、何かちょっと忘れましたけれども、そんなことで言って、来る日数を徐々に伸ばしていってもらったと。中学生として居場所でもすごく役割を発揮してくれているんですよなんていうことも言ったと思います。
続いて、児童虐待です。これは、本当に私も長い間この仕事をずっとやってきて、この仕事が一番長かったなというふうに思います。
これもすごいですね。18歳未満のこどもが親などの保護者から虐待を受けたとして全国の児童相談所が対応した件数が21万9,000、大体あれ、9,170件という数字が出ています。これも上昇率がすごいんですね。
この頃、児童虐待のニュースがないときないですよね。あの毒殺の事件ひど過ぎませんか、あれ。御存知ですよね、皆さんね。ただ、そればかりでなく、私もちょっと調べたんですけれども、一昨年は大阪で、これはおばあちゃんが孫をベビーカーに乗せて置き去りにして、熱中症で死亡させたという事件がありました。あれですね、このおばあちゃんはまだ47歳だったんですね。ベビーサークルの中に3日間にわたって閉じ込めて、十分な水や食事も与えなかったというようなことが書いてあります。
あと青森県の八戸で、5歳の長女に水を浴びさせて放置して、低体温症で死亡させた21歳の母親と同居する31歳の男性。それからもう一つは、あれですね、こどもにしつけのために正座をさせ続けて、そのとき、こどもの両手を後ろでタオルで縛って正座させていたそうです。足にはもう床擦れができるぐらい認められたということで、強要とか暴行の事件ということで親は逮捕されておりますが、このこどもの肉体的とあと精神的な苦痛を考えると、本当にもう胸が痛くなります。
でも、何でこういう事件が起きてしまうのかということですよね。ちょっと先ほどの数字ですけれども、かつては家庭のことは他人が介入しないという風潮もありましたけれども、2000年の児童虐待防止法の成立から通報が増えてきたということがこの件数が多くなっているというだけでは、説明がつかないんですよ、これだけの増え方というのは。虐待もそうなんですけれども、要因を見ると、さまざまな引き金になっているなということは確かにあるんですね。家族のストレスとか、住環境だとか、貧困などの経済的な問題とか、社会的孤立というのは、この虐待の問題にはよく言われることです。
ただ、そこも、虐待の原因を統計的に取って探すという、何でしょう、明らかにこれだというのはすごく難しくて、ないです。というのは、全てケースが違っているし、ただ1つだけ共通して言えるのは、やっぱり社会的な孤立、あと貧困もある程度手伝っているということは、とにかくストレスフルな、親がストレスフルな状態にあることは間違いない。
あとそれから間違った養育、さっきの正座じゃありませんけれども、あれ本当にこどもによかれと思ってやっていたんでしょうかね、しつけということで。この頃町でも非常に過度なこどもへのしつけといいますが、対応を見かけることありませんか。異常なまでの怒鳴り方だとか、昔、私じゃないんですけれども、北千住の駅前でこどもを張り倒していった親がいて、実を言うとその親は、数日後にまた別の形で通報された親でして、その事件が、それを目撃したという職員がいて、その人が、それがその親だったということですごい驚いたんですけれども、何しろストレスフル。親がストレスフルというのが多いです。
虐待の内容で、心理的虐待というのが59.1%で一番多いという統計の数字が出ています。身体的虐待、ネグレクト、あとそれから性的虐待。心理的虐待が最多となっていますけれども、これはDVを目撃することも、親の、例えば父親から母親が殴られているのを見ることも心理的的虐待として規定されていて、それを含めたというために、数字が伸びているというふうには言われています。
そして、私も実際に仕事の中でこの4つはあくまでも統計的な分類で、それぞれが独立して発生しているわけじゃないんですね。ネグレクトとか養育放棄とかは不適切な養育ですけれども、これが一番、実はこどもの成長発達に大きな影響を及ぼします。つまり、なぜかというと、親からの適切な庇護とか愛情が与えられないで成長するんですよ。だから、愛着不全を起こして、そういった子が大人になって、自分がこどもを持ったときに、どのようにこどもに愛情をかけてあげるのかということよりも、何でこの子、こんなにみんなからかわいがられたり、かわいいわね、赤ちゃんとか言われて、私はこんなふうにされたことはなかったとか、何かこどもに嫉妬する、変な言い方ですけれども、そういうお母さんに私出会ったことあります。私はこんなにかわいがられていないのに、何でうちのこどもだけかわいがられるのって実際にお母さん言っていました。
こういった、本当にでも人間って、小さいときに絶対必要な愛情だとかケアだとかされないと、大人になってもそれを求めるんですよ。そこを埋めて、やっと埋めて、だからよく言うじゃないですか。児童養護施設から里親さんだとかに預けられたお子さんが、試し行動で里親さんに本当にわがまま勝手なことをしたりだとか、自分はどのぐらいまで悪いことしたら受け入れてくれているんだろうと、こどもはそう思ってやっているわけじゃないんですけれども、本能的にそうやる。あと何でしょう。何でしょう、赤ちゃんの哺乳瓶なんかを自分で小学生なのに、そこにミルク入れてこれで飲みたいって言ってみたりとか、やっぱりそうやって、どんどんこっちに、本当にここぽっかり空いたところを埋めて、里親さんが認めてくれてやってくれて抱っこしてくれて、やっと小学生として、そのうちの子になれるんですよ。だから、里親さんも本当に大変は大変です。養育家庭、またいろいろな制度的な里親さんと養育家庭さんとかいろいろありますけれども、どちらも初めてこどもを受け入れるというと、そういう、親が本当はやらなきゃいけなかったところから始まりますので、小学生になったから大丈夫かなというのはないですね。身体的虐待も非常に多いです。
ただ、さっき申し上げました児童福祉法が改正されて、児童のしつけに際して体罰はいけませんよと、体罰を加えてはならないという法改正がされたということは皆さん御存知です。日本の児童福祉法にはそう書いてありますので。あと、何でしょう、こどものここに権利の全てを奪う行為というふうに書いてあります。ですから、殴られたから、けがをした、体が痛い、お医者さんに行って治療をするということじゃないんですね。
例えば身体的虐待、心理的虐待の子がDVを目撃しただけではなく、例えば身体的虐待と心理的虐待とかネグレクトとか、結構複合的にあるんですよ。例えば、殴られながら褒められている子とかいるわけなくて、罵倒されながら殴られたりとかするわけですよね。だから、でも体に傷があるから身体的虐待に分類されていますけれども、本当にこの児童虐待というのは、こどもの生きる全てを奪うというふうな行為だと私は思っています。
そこで、これ見てください。川崎市のこどもの権利条約、これ川崎市のホームページに載っているんですね。なかなかこういうこどもから大人へのメッセージ、これ2001年なんですね。まず大人が幸せにいてください。大人が幸せじゃないのに、こどもだけ幸せにはなれません。大人が幸せでないと、こどもに虐待とか体罰が起きます。条例に、こどもは愛情と理解を持って育てるとありますが、まず、家庭や学校、地域の中で、大人が幸せでいてほしいのです。こどもはそういう中で安心して生きることができますと書いてあるんです。
私、久しぶりに児童虐待のこのパワーポイントのシートをつくったとき、つくったというか、それでちょうど川崎市ってどうなっているのかなと見たらこれが出てきて、先ほど申し上げましたように、ストレスフルな親、社会から孤立した親、あと間違った養育に対する知識、こどもへの愛情、そういったことで、大人が本当に、何て言うのかな、自由であったり幸せであったりする状況ではない、ないわけですよ。それで、ここで出会って、ああ川崎はこんな、本当にこれは虐待を防止するためにとても大切な宣言なんだなということを改めてちょっと読ませていただいた次第です。
しかし、川崎市というのは、これ2001年ですけれども、すごくすばらしいのは、この当時というのは、日本にまだこどもの権利条約なんて誰も見向きもしないような時代だったと思うんですね。日本でいち早くこれを条例化した。自治体の条例化したという自治体って、これすごくて、私も川崎が自治体条例として制定しましたと聞いたときはすごい驚いたものです。本当に虐待のメカニズムをよく反映した宣言だなと改めて見ましたね。
この児童、こどもの権利条約ってどんなのかというのだけは、ちょっとずらずらと書いておきますけれども、何かすごい古い法、国際法なんですね。1989年11月20日に国連総会で採択されたということですからね。そして、1990年に発効されて、日本では1994年に批准しましたという法律です。
ですから、ここから考えると、2001年に自治体条例化しているってすごくないですか。川崎市民、すばらしいと思っています。でも、このこどもの権利条約が、これからのこどもの幸せだとかこどもの必要な政策をつくっていく上で、一番中心になる条約なんです。
それでは、今日の社会課題を皆さんと考えていくというところは少しちょっとおしまいにして、生きづらさを感じるこどもに必要な居場所ということで、あと30分ぐらいお話ししたいと思います。
貧困とか孤立からつながりをつくるには、どのような方法があるのだろうかということなんですね。居場所というのはいろいろな形があります。今日は、私どものやっている居場所を中心に少しお話ししたいんですけれども、学校も心地悪いとか、家では親の規制が強い。かなりこの親がこどもに対して支配的な家庭というのがもうすごく多いですね。こどもは一体どこでほっとするんでしょうか。自分らしさとか、こどもらしさとか、どこで出せるんでしょうね。こどもは勝手に、ここ嫌だからこっちに住むって引っ越すことができません。家とか学校とか地域。昔、コンビニの前というのもありましたけれども、この頃コンビニの前もあまり見かけないなというふうに思っています。
そこで、第3の居場所と言われている概念が必要になってきて、家でも学校でもないところを第3の居場所というふうに呼んでいます。これは、実はこどもの貧困対策から始まったこどもに対する学習支援というような、生活困窮者自立支援法の中にある学習支援という施策で始まったものなんですが、地域で増えているこども食堂なんかも、今ではこどもの居場所として規定しています。こどもの自己肯定感を育み、貧困や孤立、孤独を解消する、家でも学校でもない第3の居場所ということです。
皆さん、こども食堂とかはありますか。ありますよね。こども食堂ってやっぱりすごく一番取り組みやすいのかなと思います。お料理ならできる、ならできるというか、普通、子育てをした方とか、そうじゃなくてもお料理好きな方ってたくさんいらっしゃって、しかも、お料理を作ってこどもに出すとと、すごくおいしいとか、反応がすぐもうダイレクトですからね。ですから、結構全国的にもこども食堂が急増していまして、こども食堂の連絡協議会みたいなものまで全国規模でつくられるようになっています。
キッズドアの居場所について少し御紹介します。安心できる空間であるということです。これが、こども食堂であれ、学習支援の教室であれ、一番大切なことですね。安心できる空間というのは、私が思うようにはさまざまな要因があるし、人によって結構見解が違うんだろうなというふうにも思います。
ここに書きました1対1の関係の中で、安心よりも、関わる人が多くなる中で、こどもたちがそれぞれいろんな子が来るので、その組合せによっても変わってくるし、またそこにいるスタッフの気、何でしょう、性格だとか、いろいろな要素によってもメンバーによっても変わってくるし、なかなかどうやったら安心安全な居場所をつくるという難しさもあるんですけれども、ここでは、いろいろな人たちのつながりを持てる場であって、そのつながりの度合いというのは、その場の状況にあります。あと、誰かの居心地のよさがほかの人の居心地のよさを妨害しない。みんながいられる、居心地のよさを味わえるような場所。これを、そういう運営をしていくというのが、なかなかちょっと工夫がいるところですね。あとただ1つ、認め合える場所ということです。
キッズドアの学習教室についてお話しすると、学習塾ではないんですね。だから、この子の成績が上がるということだけを目的としているわけではありません。経済的な要因で塾に通えない児童生徒に無料で学習会を提供してきましたけれども、メインとして見れば、どっちかというと学習以外の交流の機会、あと学習自体が身につくように、小さなことでもできたら褒めて、やる気を引き出していくことですね。何といっても、ここの場では何か勉強はしても、なかなか勉強の学習習慣がついていないお子さんも多いので、また家に学習する環境が整っていない子もいます。妹が教科書を破いちゃったとかね、ありますね。
私は、こどもの居場所じゃないんですけれども、家庭訪問による学習支援をやっているところもありまして、ちょっと人が足りなくて行ったことがあるんですが、家庭訪問。その子は小学校6年生と、中学2年生のお兄ちゃんのうちだったんですが、もう本当に何もないんですよ。行ったら、何も。生活保護でもなくて、お母さんは働いていました。引っ越したばかりということもあるんですけれども、どこにあるの、教科書と言ったら、押し入れに入っていると言って、開けたら、何か開けても見えないから、布団どかして奥のほうに教科書が出てきて、ランドセルはと言ったら、何かランドセルは台所の横に放り投げてあったりなんか。じゃ勉強しようかと言ったら、テーブルの、台所のテーブルだったんですけれども、やっぱり分かりませんがべたべた、ただべとべとっとしていて、ちょっとこれじゃ教科書汚れちゃうねと言って、そこ拭いて、これじゃ、例えば時間割とか合わせて、忘れ物しないように学校に行くというのは、すごいこの子難しいだろうなと思って聞いたら、いや今日も何か笛忘れたとか言っていました。
だから、そこの家庭に行って勉強を教えたんではなくて、まず自分の持ち物をどこに置こうかということで、押し入れの中で、じゃここ、お母さんに何々ちゃんのスペースにしようと言って、散らばっていたのを持ってきて、そこをつくって置いたと。これなら忘れないねと。時間割どこと言ったら、ランドセルの下のぐちゃぐちゃになって、蛇腹で出てきたので、それを伸ばして、ちょっと壁に張ったりというようなことをした。今度いつ来るのとか言っていましたけれども、1か月に1度なんですね、そこは。家庭訪問による学習支援というのは。だから、学習支援というよりは、どちらかというと学習環境を整えたり、親でも学校の先生でもない第三者がうちに来て、いろんなことを話ししたり遊んだり、そういったことにも力を入れている事業なんですね。これ、ある埼玉県のある指導課からもらっている事業なんですけれどもね。本当に実際に行ってみると、びっくりしましたね。ですから、学習習慣を身につけるというようなこともとても大切です。
あとそれから、やはり一人一人の利用児童の状況に合わせたペースで見てあげるということです。もう本当に優秀、どんどんやるというようなこどもは非常に少なくて、戻って学習をすると。どんどん戻って、どんどん戻って、割り算、九九、そんなところまで戻る中学生もいます。教えるのではなく、勉強のパートナーになるという気持ちでやっています。一緒に勉強する日を決める。毎日来られる無料学習会なんですけれども、学習日といって、絶対この日は来なきゃいけないという日もあるんですけれども、この宿題をやるために、今度またおいでよと言って、また来てね、いつ来るの今度は、なんていうふうな言葉かけをしながら一緒にやっています。
そんなにこどもに勉強なんて教えられないわという人もいると思うんですけれども、分からないところを一緒に考えるというスタイルでやっていただければいいかなと思います。結構ボランティアさんもたくさんお手伝いいただいています。そういった方には、例えば分からないところ、たくさん参考書とかもありますので教室に、ここからもうそれを持ってきて、こどもと一緒にそこを探して、あっここに書いてある、この公式を使えばいいんだとか、あと教科書にも、この教科書のここ読めばいいんじゃんみたいなことを言いながら学習を進めていく。特に、ただ本当に難しいのは、大学生とか元先生とかという方に頼ってやっていたりしますけれども、本当に和気あいあいと楽しく、勉強ってこんな楽しく進むんだなということが、キッズドアの学習会のボランティアをやっていただけると分かるかなと思います。お勧めです。
こどもにとって、やっぱり安心できる人がいるというのはすごく大切なことで、私たち一番大切にしているのは、マンツーマンの学習ということで、寄り添って傾聴するというか、よく話を聞くということですね。だから、勉強しながら、今日部活でさ、何とかかんとかだったんだよとか、もう先生むかつくんだよとか言って、どうしたのと言ったら、いろんなことをしゃべってくれたりとか、もう絶対あいつは許せないとか、何かそんなこと、話も勉強と一緒に出てきます。そういうことを聞いてあげることで、こどもたちが何かストレス発散にもなって、学習にも向かえるかなということですね。
あと、もう一つ大切なのが、これ赤で書きました。条件つきではない承認とか肯定なんです。こどもというのは大体、何でしょう、学校でもそうだと思うんですけれども、何々ができたとか、何々に取り組みました、よく取り組みましたねというような、そういったことを褒められるんですね。褒められるというのはすごく大切なんですけれども、何々だからとか、何々ができたからではなくて、君がそこにいる、こどものその存在を承認して褒めてあげるということなんですよ。なかなか難しいかもしれないんですけれども、例えば、何々ができたからということではなくて、だから何でもいいんですね。お世辞じゃ駄目です。心からですけれども。
例えば、じゃ、それできたことにつながるじゃんということを言うかもしれないけれども、何気なく何かのお手伝いをしていたと。もうそれはもちろん何々ができたということではなくて、頼んでもいないけれどもやってくれるわけなので、本当に、あっありがとう、その一言ですね。あとそれから、例えばもう勉強で、いつも振り返りシートとか書くんですけれども、どこまで進んだとかいろいろ書く。でも、書けない子もいるんですよ、はっきり言って。とても字がきれいに書けましたみたいなふうにして。
ですから、本当に点数化できないことでも何か探して、その日一日を肯定してあげるというようなことをやっています。存在の肯定といいますか。それがすごく大切ですね。
まあでも本当に、こどもって少なからず家庭でもそうですし、学校でもそうですし、必ず何かできることに対するジャッジによって育ってきているということなんですよ。だから、何かこう自信がなくなっちゃうと、さっきの不登校の子じゃないですけれども、ああもう自分は駄目なんだというようなことになってしまったり。ですから、そういう、ここの条件つきではない承認、肯定というところをすごく重視しています。
こどもは、自分は受け入れられているとか、自分のことを大切に思ってくれて気にかけてくれる、この人たちは自分の味方になってくれる、そういったことがこどもの心のよりどころになるような関係性ができてくるといいます。
特定の人との関係性の中にしか、学校とか、なかったこどもたちが第3の居場所に来て、心許せるスタッフの輪の中にいて、そこで何かこう自分を発揮していく。みんなでわいわいがやがややりながら、そんなときに何かあったら悩みも出てくるし相談もできるし、だから、人というのは、何ていうんでしょうね、そういう悩みを相談できるような場所、この人とは好きなことを何か話せるよというような人。本当にもう大したことじゃないんですけれども、何か本当にそういう場所、多分何かそういうことが意図的に準備しないとないというところが、この社会のすごくこう、何でしょうね、今の時代のつらいところだなと思っています。
地域のこども食堂の話もしましたが、最初はその地域のこども食堂というのは貧困のこどもを対象としていましたけれども、今は地域の交流の場というふうなところになっていると思います。最初の頃はありましたよね、あそこは貧乏な子が行くところだからというレッテル張りになっちゃうんじゃないかとか、こどもなら誰でもオーケーで無料とか、大人は300円というような設定で運営しているところが多いと思うので、随分地域にとって必要なところになってきているのかな。
私、食べ物のことを考えるときって、いつもアンパンマンを思い出すんですね。皆さんアンパンマンのマーチの歌詞、改めてまたちょっとユーチューブとか何かで探してみて、ググってみてほしいんですけれども、すごくすてきです。うん。今日はここで歌いませんけれども、見てください。
食べることというのは、やっぱりすごく大切なんですよ。おなかいっぱいじゃないのに勉強しなさいと言ったって無理でしょう。食べることはこどもの笑顔をつくることって、これは居場所型のあれですね、学習会で焼き肉パーティーをやっているところです。ボランティアの大人の人たちがたくさんこれいますが、もう教室中煙だらけになってしまってもう二度とやりたくないと思いましたけれども、すごかったですね。
こちらは学習の合間の休憩時間。勉強以外にこういうところをすごく大切にしています。こうやってスタッフがいて、パズルか何かを組み立てていたりというようなところですね。何かさっきの学習の時間にうまくできなかったけれども、ここですごい力を発揮している子がいたりとか、やっぱりこどもにとってわいわいがやがやってとても大切なんです。
あと、自分独りでうちでジグソーパズルやったりなんかするんじゃなくて、同じものでも大人が見ていてくれるから根気よくできると。取り留めもないおしゃべりとか話を聞いてくれる大人とか、お手元にお配りしていると思うんですけれども、「個人金融」とかいう、何かちょっと、その雑誌皆さん恐らくほとんど見ないと思うんですけれども、お手元にお配りしている私の書いたものをお読みいただけると、居場所学習会の内容についても少し理解していただけるかなと思いますので、それもありますので、お時間あるときには読んでみてください。
あとそれから、学習以外の様子ということなんですけれども、こちら、これも学習会場での写真ですけれども、何やっているのかな、ちょっとよく分からないんですけれども、右のほうの赤いエプロンは、何かのイベントのときにお料理を、フランス料理を教えてもらうって、シェフからフランス料理を教えてもらうイベントだったというふうに思います。こうやってこどもたちの、あとキャリアトークをやったりとか、いろいろな体験を増やしていくということをやっています。
これ、コロナ禍でこどもたち、何かめちゃめちゃ怪しげな写真で、これに関連する写真その「個人金融」の、何でしょう、原稿の中にも入っているんですけれども、これはワカメ切っているんですね。めちゃめちゃ怪しげです。これ宮城県の雄勝町というところにある、石巻市の雄勝町というところから食材を送ってもらって、そことオンラインでやっているんですね。これよく分かると思う、これは送ってもらったシャケをさばいているんです。
コロナでホームステイというひどい状態に私たち置かれましたけれども、コロナ禍ではもう経済的格差がすごく顕著になりましたね。こどもが置かれているその生活環境の格差というのがすごくて、やっぱり狭い部屋で家族が険悪な状態で過ごしている貧困家庭と、あと、オンラインで有料サービスがすごく増えました、あのとき。教科学習、教科の学習だけではなくて、こういういわゆる食材を送ってきて、親子でオンラインで楽しむ。食材こども1人6,000円ぐらいのやつとか、結構目にしました。
だから、意識的な親というのは、そうやって外に出られないからオンラインでこどもに体験学習をさせるということもできた。キッズドアの無料学習会でも、こういうのできたらいいなと思っていたら、何とこういうご支援がありまして、学習会でもこれを取り入れて、実際オンラインでやったという写真ですね。これは、企業さんの支援で稲刈りに行ったところです。こっちはキャリアトークをやっているところとかですね。
ちょっと今、そろそろ最後なんですけれども、体験格差という言葉を今日ご披露したいと思うんですが、先ほどの一番最初のところに、経済的困窮がいろんなことを呼ぶよという丸い図があったと思うんですが、一番何を節約するかといったら、やっぱりこどもたちへの、例えば美術館に連れて行きましょうとか、キャンプに連れて行きましょうとか、そういう出費を一番、親は節約します。せざるを得ません。そのために、困窮家庭のこどもは非常に体験格差、体験する機会が少ないというふうに言われています。
ここに、それは私が言っているのではなくて、3つぐらい書いておきました。日本における体験格差についてということで、これは文科省2021年の調査ですね。体験が充実しているこどもについて、その背景として、父母の収入や学歴が高い傾向にある子が充実していますよということが文科省のデータで出ていますということですね。これは、私がさっきコロナ禍でお金のある家庭はこうしていましたよという話と一致していると思います。
あと2番目は、これは令和3年のこどもの生活実態調査の文書、これ内閣府ですね。一般的に体験の場や機会が提供される度合いは、こども、これら家庭の要因によって格差があると考えられます。貧困層のこどもたちは、多様な経験をしたり、人間関係を構築したりする機会も限定的にならざるを得ませんというようなことが書かれています。
そして、一番下が日本財団の調査ですね。体験学習はこどもの非認知能力を育てるという報告があります。これ、一番最後の下のほうはすごく重要なことを言っていて、私は先ほど一番最初のほうで、遊びの持つ重要性というのは、遊びは実はこどもの非認知能力を育てるということなんですね。先ほど申し上げたように、人とのコミュニケーション能力とか、計画力だとか、創造性だとか、そういったものを育てる。つまり、学校の通信簿の点数にない能力です。それが、こどもたち、遊びとか体験によって培われるということを、日本財団のほうのこの調査で言っています。
こういった文化的・社会的体験、そういうのが、初めにお話しした遊びの一つだというふうに私は考えています。体験と、何でしょうね、体験とはこれまでに経験したことないとか、文化とか人とかに触れて、こどもの、原稿にも書きましたこどもの五感、五感って匂うとか、見るとか、聞くとか、触れるとかという五感ですね、それが働いて、歓声を上げて、わあ、すごいねと、こどもが目を輝かせて笑い声があって、アクティブで、そういった場面ですね。
何々の体験が必要とかということではなくて、私はこどもの五感がフルに働く、そういうものが体験学習だと思っているので、これ勝手に今私が規定しているんですけれども、そうできるものだったら実は何でもいいよと思っています。キャンプした経験がないとか、あと、そうそう、そういう子は結構います。
ただ私、この間何かの支援で、そうですね、こどもたちと出かけるときに新幹線を待っていたんです、上越のほうに行くので。そうしたら、新幹線に乗ったことないとか言っている子がいるので、改めてそこにいた、えっ新幹線乗ったことない人と言ったら、おーっとか手が上がって、えっ何でと思ったけれども、そうなんだ、よかったね、今日新幹線来るよ、これからと言ったんですけれども、不登校だから修学旅行に行かなかったので、新幹線に乗ったことがないと言っていました。
その代わり、それもある男の子、私が実際にその子と対していて、この子、何かやけにアルコール類の銘柄が詳しいんですよ。あなた、何でそんなこと知ってるの、私も結構お酒好きだけれども、よう知ってるなあと言ったら、家にいっぱい、瓶が並んでたとか言っていて、お母さん結構アルコール飲んで、なかなか家事ができないのでその子がやったりなんかしてでしたから、その子料理上手なんですよ、だから。
だから、体験といっても、やっぱりアルコールの瓶の名前とか銘柄じゃなくて、さっき私が言った五感、わくわくどきどきして、歓声が上がって、目がきらきらして、そういうものが必要なんですね。ちょっと変な例になってしまいましたが、こどもは応援してくれる大人がいると前向きな気持ちでいられますよということです。
ただ、私、キッズドアの無料学習会と、ここの図なんですけれども、キッズドアだけでも何もできません。こちら、行政の方、それから社会福祉協議会とか児童相談所とか、いわゆる関係機関も支援しつつ、就労支援センター、ちょっと気がつくまでに書いておきましたが、そういったところとやはり連携しながら、本当に必要な情報をもらったり、また情報交換したりしながら、本当に必要な、必要とする人たちに対して支援をしていくという、いわゆる包括的なといいますか、地域包括的な支援というのが求められていて、キッズドアもその中のたった一つです。でも、こういった私たちみたいな民間と、やっぱり行政とつながっていくということがすごく大切です。
あと虐待の問題について言えば、もう全国どこでもあります、地域ごとに。要保護児童対策地域協議会というのがありまして、そこで話されることについては皆さん守秘義務が課せられて、民生児童委員さんなんかも今日参加していらっしゃるというふうに聞いていますが、皆さんまたそういうお立場で、情報を得ても、すごくその、何でしょう、躊躇することなく通告したり、必要なところに報告したりしながら、ただ、やはり何でしょうね、困っている。本当は、だから問題がある子というのはやっぱり困っているところなんですね。その人たちをやっぱり孤立させないために、どんどんつなげていく役割は、今日いらっしゃっている皆さんはもう本当に担っていただけるなというふうに思っています。
最後に、こどもから未来を開こうという、これキッズドアのスローガンですけれども、ステートメントというのを用意しておりまして、ちょっとそれ、ここにはないんですけれども、読ませていただきます。
「こどもは希望、社会の宝、たとえどんな状況であっても大切にされる存在、そんな当たり前を、未来も当たり前に守っていくのは、私たち大人の役割です。こどもが本来あるべき姿で生き生きと育つ日常が、今、失われています。格差や差別、社会システムそのものが、こどもたちにはあってはならないほどゆがんだ関係を生んでいます。日本に生きるこどもたちは、大人も知らない生きづらさに悩んでいます。こどもたちに起きている待ったなしの問題に真正面から向き合っていきましょう」というようなステートメントをつくりました。
今日のキッズドアを知っていただくということも、ありがたいことなので、私たちからのメッセージも最後にお伝えさせていただきます。
時間になったと思いますので、これで私のお話は終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
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