二ヶ領用水久地円筒分水

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2010年6月7日

二ヶ領用水久地円筒分水

二ヶ領用水久地円筒分水 1基

建築年代

昭和16年(1941)

規模

幅16.0m

構造形式

鉄筋コンクリート造

所有者

川崎市建設局

所在地

高津区久地341

指定

国登録有形文化財 平成10年6月9日登録

解説

 二ヶ領用水の名は、江戸時代の川崎領と稲毛領にまたがって流れていたことに由来しており、現在の川崎市のほぼ全域を流れる神奈川県下で最も古い人工用水の一つである。慶長2年(1597)、徳川家康より治水と新田開発の命を受けた、当時の代官小泉次太夫は、約14年の歳月をかけて二ヶ領用水を完成させた。当時の記録によれば、二ヶ領用水は流域の60ヶ村、2007町4反9畝4歩の水田を潤し、米の収獲量は飛躍的に伸びたと伝えられている。
 二ヶ領用水は久地の地に設置された分量樋で、久地二子堀、六ヶ村堀、川崎堀、根方堀の4本の堀に分水されていた。分量樋とは、堰から溢れ出る流れを木製の門扉により分水する施設で、水路の入口の幅、下流での広がり幅等を規定し、4本の堀の灌漑面積に比例した水量比率を保とうとするものであった。
 しかし、水路の水流には独特の物理的性質があり、上流からの流量が変わり、水路の水位が変化することにより、各分水の水路幅を固定していても、分水される流量の比率が違ってくる。構造上、実際には正確な分水は難しかった。また、流域の水田の拡大とともに、日照り時等、水不足が深刻となり、水騒動が頻発するようになった。自分の地域の用水量を増やそうと、分量樋の樋口を堰きとめるなどの妨害を行う農民も現れ、文政4年(1821)に起きた「溝口騒動」をはじめ、用水をめぐる争いが絶えなかった。
 近代に入り、より正確な分水管理の可能な分水装置が求められ、その一つとして、大正年間より農業用水の正確な分水管理ができる「円筒分水」は造られていた。ただ、この分水装置には高低差が必要で、当初は上流に溜池がある所に造られていたが、昭和9年(1934)、水路の途中に円筒分水を設置したものが福島県や長野県で造られた。長野県の場合、川崎市の円筒分水のように円周の比率で分水するのではなく、装置の中央に吹き上げられ放射状に広がった水が直接分水されるので、流れに偏りが生ずる等、若干の欠点もあった。
 昭和16年(1941)、かつての久地分量樋のやや下流に円筒分水が造られた。二ヶ領用水の水は、多摩川の支流、平瀬川の下を2本のコンクリート管で潜り、円筒分水の中央の円筒から噴き上がってくる。その外側の直径8mの円筒は、噴き上がって波立った水面の乱れを抑える整水壁の役割をしている。さらにその外側にある直径16m円筒の円周を4本の堀それぞれの灌漑面積に合わせた比率の長さ(川崎堀38.471m、六ヶ村堀2.702m、久地堀1.675m、根方堀7.415m)により仕切って越流落下させることにより、流量が変化しても、各堀に一定の比率で分水されるようになった。当時としては、最も理想的かつ正確な自然分水装置の一つであり、その技術は、戦後に円筒分水を視察に訪れたGHQの農業土木技師により、アメリカにも紹介されたといわれている。
 この久地円筒分水を設計したのは、当時の神奈川県多摩川右岸農業水利改良事務所長であった平賀栄治(1892~1982)である。平賀は、円筒分水の設計・建設と同時に、多摩川の支流で、大雨になると二ヶ領用水に流れ込んで洪水を引き起こしていた平瀬川の改修にも取り組んだ。平瀬川が多摩川へ流れるように流路を変更し、平瀬川と二ヶ領用水がぶつかる地点で、二ヶ領用水の水を平瀬川の下に潜らせ、上流から流下した用水が噴水のように噴き上げるのを利用したのが円筒分水である。平賀は、円筒分水のほか、二ヶ領用水の2ヶ所の取水口のある、多摩川の上河原、宿河原の2つの堰堤の設計・建設を行うなど、多摩川の治水に尽力した。
 こうして完成した二ヶ領用水久地円筒分水は、都市化の進んだ現在では農業用水としての役割をほぼ終えたが、その後各地で造られた円筒分水の初期の例として、貴重である。

二ヶ領用水久地円筒分水平面図

二ヶ領用水久地円筒分水平面図

二ヶ領用水久地円筒分水断面図

二ヶ領用水久地円筒分水断面図

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