【事例11】川崎地区地域対話(一般社団法人日本化学工業協会レスポンシブル・ケア委員会川崎コンビナート会員企業)
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実施年月:平成23年12月

実施概要

取組のきっかけ
(社)日本化学工業協会におけるレスポンシブル・ケア(化学物質の製造者または取扱事業者が自己決定・自己責任の原則に基づいて、化学物質の開発から廃棄に至るまでの全ライフサイクルに渡り環境・安全・健康面について対策を行う自主管理活動)の取組の一環として、川崎地区の会員企業が合同で、最初は行政に対し発表するという形で実施した。回を重ねていくうちに、住民へ参加をお願いするようになり、現在の住民との地域対話という形になった。

取組の目標・概要
住民が、何を知っていて、何を知らなくて、何を心配しているのか、ということを知るためと、住民に化学産業における環境・安全活動の動向を理解していただくための方法として地域対話を実施している。
企業は次のとおり(平成24年7月現在)
・旭化成ケミカルズ(株)川崎製造所
・花王(株)川崎工場
・昭和電工(株)川崎事業所
・東燃化学(同)川崎工場
・日油(株)川崎事業所
・(株)日本触媒川崎製造所
・日本ゼオン(株)川崎工場
・日本ユニカー(株)川崎工業所
・サンアロマー(株)(次回より参加予定)
取組内容は、以下のとおり。
・平成9年から川崎地区地域対話を始め、現在、2年に1回の頻度で開催している。直近の地域対話(平成23年12月)は9企業で開催し、参加者は会員企業の周辺住民や学生、自治体職員等、計150名程度であった。
・内容は「環境全般」や「安全全般」を取り扱っており、毎回、会員企業の担当者が打ち合わせを行って、テーマ設定をしている。

取組実施上の課題、課題解決のための工夫
実施上の課題 | 課題解決のための工夫 |
参加者がどのような話を要望しているのかわからない。 | 参加者に対して事前にアンケートを実施し、聞きたい内容を確認した。また、事前に質問も受け付けて、パネルディスカッションの時に回答した。 |
参加者が多く広い会場なので、参加者が質問しづらい。 | 質問については、質問箱を設け、休憩時間に回収した。質疑応答の時間にこの時集めた質問に回答したほか、その場でも質問を受け付けた。 参加者の率直な意見を聞くため、対話集会後に立食形式の意見交換会を設定した。 |
周辺住民に声掛けするときは町内会を経由しているが、そうすると参加者が男性ばかりになる。 | 女性参加者を増やすため、土曜日開催にした。また、参加者募集において、女性にも積極的に声かけいただくようにした。 |
事業所の人が進行役を務めると、中立的にならない。 | ファシリテーターを採用した。 |
専門的な内容になると、わかりやすい言葉で説明するのが難しく、また中立的にならない。 | テーマに合った専門家(インタープリター)を採用し、講演とパネルディスカッションをお願いした。 |
参加者が広範囲から集まるため、開催場所の選定に苦慮。 | 全ての参加者が集まりやすい開催場所を選定した。 |
化学業界全体で行うため、個々の企業が何をしているところか伝わらない。 | 化学産業は一般の市民の皆様には馴染みのない場合が多く、当日資料に各企業の紹介ページを設け、化学産業の製品を原材料としてつくられている最終製品の写真を掲載することで、身近に感じていただく工夫をした。 |
複数の企業が自社の環境や安全の取組を話すと内容が重複したり、統一感がなくなったりする。 | 事前に企業の発表者が集まって練習を行い、内容の重複や、一般の人にわかりやすい表現となっているか等をチェックした。 |

取組の効果
・企業としては、直接住民の皆様、自治体、専門家と話すことにより、リスクコミュニケーションの勉強になる。
・各事業所の周辺住民等が参加しているため、自事業所周辺の住民以外にも事業所について理解していただく良い機会となっている。
・単独とは異なり、共催では毎回別のテーマで対話集会を行うことができるため、参加者が同じでもさまざまなことを聞いてもらえる。
・化学業界全体で行うため、参加者に説得力と信頼感を与えることができる。

実施内容

事前準備
・半年前から参加企業9社が7回集まり、企画、参加者の集め方等を話し合った。全体の取りまとめと事務作業は主に幹事企業が行った。
・参加企業9社とその周辺町内会のスケジュールを確認、調整して日時と場所を決め、会場予約を行った。
・内容を決める際に、住民の要望を反映するため町内会へ事前アンケートを行った。
・アンケートは全参加企業の担当者で内容の検討を行った。各町内会へのアンケートの配布は、参加企業が分担して行った。
・アンケート結果等を反映してプログラムを決定し、講演を依頼する専門家や行政との連絡調整、パネルディスカッションのパネリストへの出席依頼等の事務手続きを行った。
・各企業の取組内容の発表は持ち回りで3社ずつ行う。発表内容はそれぞれの企業の案にもとづき、全参加企業の担当者の話し合いにより調整した。
・発表本番の前に、発表者3者が集まり発表の練習を行った。そのとき、発表内容の重複の排除や、方向性の統一を図った。

開催概要
項目 | 内容 |
開催年月 | 平成23年12月 |
開催場所 | 川崎グランドホテル |
プログラム | 14:00 挨拶、事前アンケート結果について 14:15 専門家と行政による講演 15:05 休憩 15:15 企業3社の環境・安全に関する取組発表 16:00 休憩 16:15 パネルディスカッション 17:15 閉会挨拶 17:50 意見交換会 |
配付資料概要 | A4サイズ1ページの各事業所概要、事前アンケート結果、講演スライド |
参加者内訳 | 自治会・市民団体53人 JRCC会員企業「当地区」40人 JRCC会員企業「他地区」・事務局21人 学生1人 行政10人 |

開催内容詳細
【環境対策に関する説明】
全体的なテーマは「防災」を中心とした。
講演:「東京湾岸に影響を与える地震について」
「川崎市における地震防災対策について」
取組発表:「保安防災活動のご紹介」(工場内の安全システムや防災訓練について)
「省エネルギー活動」(ケミカルリサイクルとコジェネレーションシステム)
「健康・衛生活動について」(熱中症対策等について)
参加者からの質問 | 回答 |
・地震や火災に対し、コンビナートとしてどのように対応しているか。 | ・地震発生時は、設備を緊急停止させるため、緊急遮断弁と排水口が、地震計と連動して閉じるようになっている。タンクと配管についてはつなぎ目に可動性を持たせて壊れにくくしている。 ・設備については危険と思われる場所をリストアップし、危険率が高そうな所から改善している。 |
・津波に対しての対処はどのように考えているか。 | ・津波がきたら、安全にプラントを止め、堅牢な建物の3階へ避難する。 ・津波についてはこれまで対応できていないため、今日の専門家の話を参考に考えていきたい。 |
・震災時に、市民にはどのような支援を考えているのか。 | ・現状では支援対策として具体的に決まっているものはないが、緊急時に敷地内に避難できるようすることも考慮すべきであると考えている。 |
参加者の意見・感想 |
・化学工業からどのような被害が出る可能性があるか、安全確保をどのようにしているのかについて話を聞いて、安心した。 |
・これからも防災訓練等の機会に情報公開をしてほしい。 |
・企業の健康管理がしっかりしている、命を大切にするのは、すばらしいことである。 |
・住民と企業とが話し合って相互に理解を深めるのは非常にすばらしいことであるので、今後も継続を望む。 |

実施後に気づいた課題
・住民と事業所が気楽に会話できるのが理想であるが、そこまでに至っていない。
・化学業種だけでなく、他業種も入れた形で行ってほしいという意見があるが、化学業界での協議会活動で行っている関係上、実現には至っていない。
・教育委員会経由で教職員にも参加を呼びかけたが参加者はいなかった。日頃から付き合いがないと、参加していただくことは難しい。

当日の資料
・レスポンシブル・ケア川崎地区 地域対話発表予稿集
・質問票
・アンケート用紙
お問い合わせ先
川崎市環境局環境対策部地域環境共創課
住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地
電話: 044-200-2532
ファクス: 044-200-3921
メールアドレス: 30kyoso@city.kawasaki.jp
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